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レッドバジリスク戦

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 翌朝、集合場所に向かうと既に全員集まっていた。

「やぁ、お待たせ」

 依頼主である僕が合流すると皆で馬車に乗り込んで出発する。馬車の中でアリーを見ると相変わらず可愛い顔でにこにこしている。もっとも、僕の方を見ているわけではなく隣のイケメンのマッシュと話しているわけで。

 やっぱり、昨日の事はマキちゃんの勘違いだったのだと思う。大体僕がそんなにモテるわけがないし、アリーはいつもモテモテなのだ。僕なんか相手にするわけがない。

 馬車でしばらく進むと御者をしていた大男のデリーが鋭く注意を発した。

「不味いぞ!」
「どうした?」

 アモンが前に出て2人で観察している。

「あ~やばいね、そこに上級の野良がうろついているけどこのままいくと襲われるだろう」

 アモンは僕に「あれを倒すべきか、それとも逃げるか?」という問いを投げているのだ。

「倒せそうですか?」
「そうだね、ギリいけると思う」

 アモンは緊張しながら答える。

「では追加でそれの討伐もお願いします」
「皆良いか?」

 僕が依頼をするとアモンが皆に一応訊く、だがアモンの決定が全てだった。

「良し、行くぞ」

 アモンの号令で全員馬車を降りて繰り出す。

 そこに見えたのはレッドバジリスクだった。石化と猛毒を持っている厄介な奴でSランクの冒険者パーティー以外はあえて戦いを避ける相手だ。

 見ると、一定の場所をうろうろとしている。あそこで何かやっているのだろうか?

 近くに行くとその理由が判った、冒険者が襲われていたのだ。その冒険者の一人をバジリスクが口に咥え飲み込もうとした時にマサが先制の魔法攻撃を放つ。

「アイシクルアロー」

 ボボボボボッ!

 風切り音を発して大型の氷の矢が飛びバジリスクの喉に突き刺さる。ほとんどがバジリスクの分厚い鱗に跳ね返されていたが、それでバジリスクは冒険者を吐き出してこっちを睨んだ。

「隊形はA、連携はC、先に足から狙う」

 リーダーのアモンが聞き覚えのある命令をだした。それは先頭2人体勢で攪乱波状攻撃を意味していた。

「祝福の衣!」

 アリーが防壁魔法を唱え、全員に状態異常耐性強化バフを掛ける。

「チェック‥‥あれは弱点は特なし、首が若干弱い、俺は足元に罠を張る」

 スカウトのマッシュがスキルを使い報告をした。

「戦陣の盾」

 同時に重戦士のデリーがセルフ強化スキルを使い突進する。

 僕はそれを後方から眺める。ああ、僕はいつもこんな彼らに守られていたんだ‥‥今更ながら感動する。戦闘の邪魔ばっかりしていた僕は皆の頑張りに気が付きもせず勝手に落ち込んでいたのだ。

 そう考えたら少しでもお礼をしなければならないような気分になる。後ろで見ているだけだなんて申し訳ない。ただ、最弱なので前に飛び出して戦うのは避けなければならないのだが。

 それで腰道具入れから攪乱用のクラッカーを出して手に持ち叫んだ。

「皆、クラッカー行くぞ!」

 それを思いきりぶん投げる。一つ二つ三つ。結構な速度で飛んでいき頑丈なバジリスクの頭にぶつかり炸裂する。

 パン!パン!パン!

 それでバジリスクが一瞬ひるんでいる隙にアモンが必殺の剣技を繰り出し突撃を掛けた。

「光剣」

 バシューン!

 グォオオオオオ!

 剣から放たれた巨大な光の剣がバジリスクの大きな前足を貫き地面に縫い留め、バジリスクが吠える。

「良し!行けえ!!」

 ズン!ドン!

 デリーが巨体をもう片方の前足に体当たりさせながら戦斧を叩き込む。

「ファイヤーアロー」

 ボボボボボ‥‥

 マサが間髪入れずに炎の矢を連打するとバジリスクが開けた大きな口に吸い込まれていくのが見える。

 同時に、スカウトのマッシュが動きが止まったバジリスクの足元にワイヤーを張り終えた。

 ズズーン!

 それで完全に前足がマヒして動けなくなったバジリスクが前方に倒れる。

「光剣!」

 ドシュ!!

 再度アモンが必殺を使い、バジリスクの下がった頭にそれを突き刺し、デリーがとどめの重い打撃技を頭部に叩き込んで始末した。

「杭打ち!」

 ズーンズーンズーン!


 終わってみたら無傷で完勝だった。

「やるじゃん‥‥」

 僕は茫然としてみていた。このパーティーは僕が居た時よりも遥かに強くなっている‥‥そう感じた。
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