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アリー
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この町の宿屋は二つあるらしい、そして僕は高級な方の宿屋の一番高い部屋を取った。
宿屋の主人が町の主様からは代金は取れないと言うが、それでは逆に僕の方が困るので全額支払った。金なら腐るほどあるのだ。一泊金貨10枚程度はどうということは無い。
ベッドに寝転んで明日からの計画を考えて居たが、どうしてもアリーの事が頭から離れずに困ってしまう。
「僕はアリーの事を考える為にここに来たんじゃない‥‥」
そう言葉にするが何か空しい。そもそも、過去の自分は清算したはずだしもう過去には戻らないと決めているのだ。商人として立身出世をしてギルドの連中を見返してやる!のだ。
「いつか大金持ちになってそしてアリーと‥‥違う、そうじゃない」
何を考えても、アリーの事ばかりになってしまい‥‥僕は考える事をやめた。
ベッドから飛び起きて魔法剣を取り出して武技を一通り演武してみる。
「武技、皆塵」
ブオオオン‥‥
凄まじい音を発して目視不可能な高速で怪しい光を放つ魔法剣の連撃が唸る。
「はぁ‥‥でもこれも普通の剣でやると攻撃力ないんだよな、所詮レベル1だし」
逆に言えば、魔法剣なら結構なダメージが出るハズなのだ。それだけが今は心の依り所だ。
「今日の決闘の斧粉砕も、髭がレベル1の僕より弱かっただけなのだし」
それを考えたら、恐ろしくてとてもじゃないが素手でモンスターなんかと対峙したくない。
「そうだ!もっと金を沢山稼いで世界中の魔法剣をコレクションしよう‥‥」
その考えは魅力的だった、世界にはもっと沢山の魔法剣やあるいはもっと凄い剣もあるだろう?それさえあれば僕だって一人前の冒険者並みに探検も出来るのではないか?
いや、魔法剣だけではだめだ、僕の紙レベルの防御力を補うために魔法鎧や魔法盾も必要だ‥‥一体いくらお金があれば買えるのだろう。ただ、それを思うと俄然闘志がわいてくる。
そうだ、レベル1の僕にも財力で補えるものがあるのだ。
よし!頑張るぞ!まずはこの町の発展と共に僕の財力を増やし、各地の都市との交易を綿密にして利益を大きくしていくのだ。この町は成り上がるには打ってつけの町だと思っている。
それで最後は‥‥
トントントン‥‥
僕が妄想を広げているとドアをノックする音が聞こえる。
「はい、どなたですか?」
「あの?失礼ですがイジン様にお客様です」
「はぁ?」
はて、この町で僕に客なんているのだろうか‥‥あの髭かな?
疑問に思いながら階下のロビーに降りていくとそこにはアリーが一人で立っていた。
一瞬、階段の壁に身を隠してしまったが、今はもう別人だと認識されている事を思い出して、ゆっくりとロビーに向かう。
「あの‥‥先ほどはごめんなさい」
「はい‥‥」
「でも、貴方があまりにも私の知人に似ていたもので」
「その件でしたらもう良いのですよ」
僕はあくまでも他人のフリを通した。
「あの、それと、昨日の夜助けてくれたのも貴方ですよね?」
「そんな事もありましたっけ」
「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?私はアリアンヌです」
「はぁ、イジンです、ではこれで」
「あの!」
「まだ何か?」
「いえ、やっぱり他人に思えなくて」
アリーはそういうとそっと近寄り僕の手を取り手首を見た。そこにも生まれつきの蝶の形の痣があったのだ。僕はハッと気が付いて手首を隠した。
「やめて下さい、慣れ慣れしいのは好みません」
「ご、ご、ごめなさいごめんなさい」
「結構です、お引き取りください」
僕は心にもない事を言っていた。本当はアリーを抱きしめたくて仕方ないのだ。
僕はここにいる、元気だから心配するなと言いたかった。
アリーは少し涙目になりながら走って宿屋を出て行った。
「ごめんよアリー‥‥」
宿屋の主人が町の主様からは代金は取れないと言うが、それでは逆に僕の方が困るので全額支払った。金なら腐るほどあるのだ。一泊金貨10枚程度はどうということは無い。
ベッドに寝転んで明日からの計画を考えて居たが、どうしてもアリーの事が頭から離れずに困ってしまう。
「僕はアリーの事を考える為にここに来たんじゃない‥‥」
そう言葉にするが何か空しい。そもそも、過去の自分は清算したはずだしもう過去には戻らないと決めているのだ。商人として立身出世をしてギルドの連中を見返してやる!のだ。
「いつか大金持ちになってそしてアリーと‥‥違う、そうじゃない」
何を考えても、アリーの事ばかりになってしまい‥‥僕は考える事をやめた。
ベッドから飛び起きて魔法剣を取り出して武技を一通り演武してみる。
「武技、皆塵」
ブオオオン‥‥
凄まじい音を発して目視不可能な高速で怪しい光を放つ魔法剣の連撃が唸る。
「はぁ‥‥でもこれも普通の剣でやると攻撃力ないんだよな、所詮レベル1だし」
逆に言えば、魔法剣なら結構なダメージが出るハズなのだ。それだけが今は心の依り所だ。
「今日の決闘の斧粉砕も、髭がレベル1の僕より弱かっただけなのだし」
それを考えたら、恐ろしくてとてもじゃないが素手でモンスターなんかと対峙したくない。
「そうだ!もっと金を沢山稼いで世界中の魔法剣をコレクションしよう‥‥」
その考えは魅力的だった、世界にはもっと沢山の魔法剣やあるいはもっと凄い剣もあるだろう?それさえあれば僕だって一人前の冒険者並みに探検も出来るのではないか?
いや、魔法剣だけではだめだ、僕の紙レベルの防御力を補うために魔法鎧や魔法盾も必要だ‥‥一体いくらお金があれば買えるのだろう。ただ、それを思うと俄然闘志がわいてくる。
そうだ、レベル1の僕にも財力で補えるものがあるのだ。
よし!頑張るぞ!まずはこの町の発展と共に僕の財力を増やし、各地の都市との交易を綿密にして利益を大きくしていくのだ。この町は成り上がるには打ってつけの町だと思っている。
それで最後は‥‥
トントントン‥‥
僕が妄想を広げているとドアをノックする音が聞こえる。
「はい、どなたですか?」
「あの?失礼ですがイジン様にお客様です」
「はぁ?」
はて、この町で僕に客なんているのだろうか‥‥あの髭かな?
疑問に思いながら階下のロビーに降りていくとそこにはアリーが一人で立っていた。
一瞬、階段の壁に身を隠してしまったが、今はもう別人だと認識されている事を思い出して、ゆっくりとロビーに向かう。
「あの‥‥先ほどはごめんなさい」
「はい‥‥」
「でも、貴方があまりにも私の知人に似ていたもので」
「その件でしたらもう良いのですよ」
僕はあくまでも他人のフリを通した。
「あの、それと、昨日の夜助けてくれたのも貴方ですよね?」
「そんな事もありましたっけ」
「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?私はアリアンヌです」
「はぁ、イジンです、ではこれで」
「あの!」
「まだ何か?」
「いえ、やっぱり他人に思えなくて」
アリーはそういうとそっと近寄り僕の手を取り手首を見た。そこにも生まれつきの蝶の形の痣があったのだ。僕はハッと気が付いて手首を隠した。
「やめて下さい、慣れ慣れしいのは好みません」
「ご、ご、ごめなさいごめんなさい」
「結構です、お引き取りください」
僕は心にもない事を言っていた。本当はアリーを抱きしめたくて仕方ないのだ。
僕はここにいる、元気だから心配するなと言いたかった。
アリーは少し涙目になりながら走って宿屋を出て行った。
「ごめんよアリー‥‥」
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