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魔法剣

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 帝都を出る前に買い込んだ最高級の装備を身に着けるとなぜか自分が強くなったような錯覚がしてくるのが不思議だ。

「お金って凄いんだなぁ」

 その当たり前の事が自分には新鮮であった。今まで大金で装備を買った事がなかったので当然なのだが。

 そのまま、北の街道を進むと先に行けば行くほど殺伐としていた。街道のあちこちに壊された馬車の残骸が放置されているのが見える。

「嫌だなぁ‥‥」

 そしてその予感は当たってしまった。もう、日が沈み辺りが暗くなってしまったので寝床にする場所を探しながら街道を進んでいたのだけど、突然前方で騒音が聞こえ始める。元冒険者の勘では、その音はモンスターと誰かが戦っているものだと直感した。

 それで、馬車を見えない場所に寄せてから先の森の隅で戦っている様子を伺いに行くと、アイアンゴーレムと冒険者3人が戦っている様子だった。

「アリー!早く回復を!」
「今やっているの!」
「くぅ‥‥」

 ドーン!

 聞きなれた彼らの言葉からして、元幼馴染パーティーのメンバーだと直ぐに判った。しかもかなり苦戦している様子だ。

 前衛の戦士のアモンがゴーレムのパンチを受け止めきれず負傷しているが、アリーの回復魔法が間に合わない。もう一人の攻撃魔法のサムが頑張っているけど、アイアンゴーレムの対魔法特性は異常に高いのだ。

 ドンドン!ガン!

「ああ‥‥ダメだ」

 アモンがパンチの連打を浴びて地面に叩き臥されるのを見て、黙って見て居られなくなり僕は走り出した。腰から抜いた魔法剣を手にして一跳びで彼らを跳び越えゴーレムに襲い掛かる。素早く反応したゴーレムのパンチを避けてその首に剣を突き立てる。

 ザシュ!

 そのまま、自然に体が動き首を中心に剣を回しゴーレムの首を切り落とし、背後に着地したあとに斬撃の連打を入れる。

 バシュシュシュシュシュ!

 すると固いはずのゴーレムが簡単に分解されて倒れた。

「魔法剣って凄いんだな‥‥」

 僕がその剣の切れ味に興奮していると、2人がアモンを担いで起き上がっていた。

「大丈夫だった?」
「ありがとう、お蔭で助かりました」

 近寄って声を掛けると、回復したアモンが答えた。どうやら無事のようだ。

「それじゃ、気をつけて」

 ホッとした僕はアモンの隣を通り馬車に向かう。

「あ、あの!お名前を訊いても?」
「え、あ、うん通りがかりの商人ですよ」
「あれ?あの声テイジンに似てない?」

 僕がすっとぼけようとすると、アリーが鋭く指摘する。

「そうよね、私もそっくりだと思った、でもねぇ‥‥」
「あはは、ありえないよね」
「まさかね」

 皆で気のせいだという事で納得した様子だった。僕はそれでよかった。今更僕がやって来ても迷惑なだけだろうし‥‥。

 直ぐに馬車に戻って食事をとりそのまま眠ってしまった。

「僕だって、魔法剣があればあのくらい出来るんだ」

 その事実を噛みしめると何か勇気が湧いてくる。やはりお金の力は偉大なのだと思う。
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