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異国ガリアント

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 その異国の地で俺たちは完全に迷子になってしまったようだった。大体文字も読めないし、周辺の状況を確認できないのだ。


 「これは……風君にはここがどこか分からないか?」

 「さーねー、でもなんとなく風の精気は感じるよ」


 「なるほど」


 その言葉で俺は土の精気を感じ取ろうとすると若干は感じられた。この地にも土の精霊が居る可能性が高いという事がそれで分かった。それに、土の精気があるという事は土魔法も少しは使えるという事なのだ。


 暫く、皆で街を観察していると道路を”揺り籠”に似た乗り物が通過していくのが見えた。


 「あ、あれ!」


 とミューが指さす先にその揺り籠を見た。という事は風魔法がこの街では普通に使用されているという事なのだろうと分かった。


 だが、圧倒的になにか別の精霊気を感じるのだ。思念を集中すると頭が痛くなるようなそれの正体が知りたくて風達に訊く。


 「この頭痛がするような圧迫感を持つ精霊気の正体はなにか分かるかい?」

 「う~~~ん……」

 「しーらなーい」


 と2人とも分からないという事だった。だがそれは主に街のいたるところから発しているのが段々分かって来た。例えば建物のキラキラ光る看板とか、照明装置、そして不思議な形の乗り物たち。


 「ここがどこか、何か手がかりがあればいいのだが……」


 俺がそういうとミューが目ざとく何かを見つけた。彼女の指さす先には宝飾店のような店が見えた。そこにヒントがあるのかも知れないという事なのだろう、と思い皆でその店に入る。


 すると店員がやってきて理解不能な言語で話しかける。


 身振り手振りで言葉が分からないというと、俺の頭に不思議なデザインのカチューシャを乗せてくる。


 「これで分かりますでしょうか?」

 「分かる!言葉が分かるようになった!」


 それは精霊魔法で動く魔法器の一つのようだ、でもこの感じはさっきから不思議に思っている謎の精霊気だった。それをミューにもそのカチューシャを乗せてもらい質問を始めた。


 「済まんが、ここがどこか教えて欲しい」

 「ここはザリーズの本店です」


 「ザリーズ……?」

 「宝石のブランド店です」


 「ああ、やはり宝飾店なのか……」

 「なにかお探しですか?」


 「ええ、実は地図か案内人を探しているのだ」

 「それですと、当店では扱っておりませんので……あちらの商店案内所を訪ねてみて下さい」


 と指さされるその店?はここから至近距離にある建物だった。ついでに俺はもう一つの質問をしてみた、カバンから財布をだして金貨を見せてこれが店で使えるかどうかという。


 「それでしたら質屋ですね」

 「やはり、異国の通貨ではモノ扱いになるのか」


 店員はそうだという、とりあえずは地図屋と質屋を探すために俺たちは宝飾店を出て商店案内所という建物に向かう。


 「こんにちは」


 というが、やはり上手く言葉が伝わらないようだったので、さっき被せてもらったカチューシャの事を手ぶりで表現すると、その年配の店員は棚から取り出して2人に被せてくれた。


 「ありがとう、助かるよ」

 「外国人かね、最近多いんだよね、観光かい?」


 「いや、まぁそんなところだ、取り急ぎ地図と質屋を教えて欲しいのだが」

 「地図ね、商店街の地図ならここにあるよ、ただで持って行っていいよ」


 「おお、それは助かる」


 その地図が読めないので色々と口で教えてもらい、設置されたペンで書きこんだ。


 「それにしても大きな商店街ですね……」

 「ええ、みなさんそうおっしゃいます」


 「所で、このカチューシャはどこで手に入りますか?」

 「ああ、これね。これで良ければ持って行ってください、どうせうちではほとんど使わないので」


 店主によると、そのカチューシャは本来国からの支給品で非売品だとの事。そしてここの案内所には外国人が沢山くるので山ほど在庫があるという。


 「それは助かる、本当にありがとう」

 「いえいえ、いいんですよ」


 俺は礼をいってその店を出てまずは質屋を目指した。徒歩で行くと小一時間といったところだ。


 地平の果てまで続くかのような巨大な商店街を俺たちは歩き、ようやくたどり着きそうな頃やはり道に迷った。地図では省略されているが、最後の最後に道がYの字に分かれていた。


 「これは……地図ではまっすぐ一本道になっているけど、どっちなんだろう?」


 周りに店を訪ねてみようと見渡すと占い屋が露天をだしていた。


 丁度良かったので、道を尋ねてみようとしたがそんなものは知らないと無下に断られた。だが、その占いオババがミューを見て言う。


 「そこのお嬢ちゃん!あなた二重生活しているね!」


 俺には意味が分からなかったが、オババはミューの瞳を覗き込んでさらに続けて言う。


 「これは因縁深いね……悪い子」

 「……」


 いきなりそんな事を言われたミューは驚くを通り越して固まっていた。

 失礼なオババだなとは思ったがお年寄りにきつく当たるのは俺の性に合わないので無視するほかなかった。


 「真実が知りたくなったらまたおいで」


 などとまだ変な事を言っている。声を掛ける相手を失敗したと思って隣の商店に入り道を訊くと、三軒となりの店だとおしえてくれた。


 「なんだ、すぐそばにあったんだな」


 俺たちは質屋に入り持っていた金貨などを計量してもらいこの街で使える貨幣で買い取ってもらった。ついでに「地図はあるか?」と聞くと沢山あるなかで好きなのをサービスしてやるからで持っていけという。


 この街では地図は値段が付かないほど安いものだったらしい。

 地図を見比べている内に、俺でも読める古い言葉で書いてある地図が見つかった。その大量に外国人がやってくると言う街の名前はガリアントという事がそれで分かった。


 ガリアント……初めて聞いた名前だった。


 改めて地図を見るとその巨大な魔法都市は端から端まで地平のかなたまで続いているように思えた。今日我々が歩いた距離なんて全体のほんの一部でしかないのだ。


 「う~む、とんでもない所に来てしまったようだな……」

 「あの、少しおなか空きませんか?」


 あ、そうだった。こっちに来てからかれこれ大分経つのだ。散々あるいたしお腹もすくだろう。


 俺たちは近所にある軽食屋に入り、それぞれが適当なものを注文してくつろいだ。

 メニューをみてもよく分からないので、メニューの絵をみて美味しそうなものを頼んだのだ。


 いくつか貰った地図の一番広域の物をそこで広げて今どこに居るのだろうかと、4人で検討してみるが良く分からない。俺たちが元居た世界の地形と記憶ですり合わすが、なかなか一致する地形を見いだせないでいた。


 暫く店に居たら夕方なので一旦店を閉めるという。変わった習慣だなとは思ったが、それで店を追い出されて、仕方なく宿屋を探す事にした。比較的近所に古くからやっている旅行者向けの宿があるようなのでそこで部屋を取り休む事にした。宿屋の番頭はミューをみて何か言いたげだったが、それだけだった。


 だが、その晩ミューは悪夢を見てうなされていた。


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