アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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 リーナを追って店を出ると彼女の脚は早くて既に大分先まで走っていた。

「早い!」

 朝市の混雑している中をリーナは驚くような速さで駆け抜けていく。

 ラセルは彼女の後ろ姿を見ながら、ついこの前まで自分が彼女から逃げていたのに今は逆に追いかけている事におかしさを感じていた。

「ふふ、ちょっと待ちなよ」

 ラセルはクスリと笑いながらリーナを追走しようとしたが、その時彼の超感覚が異常な人影を察知した。

「ひとり……いや二人か」

 リーナを追う人影が二つあった。

 一人は建物の屋根の上、一人は混雑している朝市の路上。

「リーナの仲間……ではなさそう」

 ラセルは彼等の動きに殺気を感じていた。

 彼等がどういう意図を持って居るのか気になったラセルはここから少し先、朝市を抜けた辻でリーナを捕まえることにする。

 タタタタ……

「リーナ!待って!」

 辻に出たところでラセルが大声で呼ぶとリーナは走りながら振り返り、それでバランスを崩して躓きそうになる。

 ザッダダッ!

 すると、彼女を追って至近距離に殺到していた二人がリーナを拘束しようと迫った。

 二人が懐に伸ばした手には何かが握られてる様子がラセルにはスローモーションで見えていた。

「イヤァッ!」

 バシュン!ドン!

 突然の男の襲撃にリーナが叫び、その声を聞きながらラセルは瞬時に二人を殴りつける。

 シュン……

 一人を仕留めたが二人目がギリギリでリターナーを使い瞬間転移で逃亡してしまう。

「なに!なんなの!?」

 リーナが呆然としている中、ラセルは気絶している男に呪いの指輪を幾つかプレゼントし、担いで路地裏に連れこむ。

 リーナを振り向くと彼女は目を丸く見開いた無防備な顔でラセルを見返していた。

「リーナ、自分が追われて居たのを気がついてた?」

 リーナは顔を左右に振り知らないとジェスチャーする。

 ラセルはアイテムマイスタースキルを使い男の身体をまさぐると通信用の魔法石が見つかった。

「ほら、これは通信アイテムだ、こいつらは特殊工作員だよ」

 ラセルはペンダント型のそれを男の首から引き千切りリーナに見せて言う。

「そんな……」

「その様子だと……気づかなかったのかな」

「……」

「リターナーを使ってリーナを攫おうとしていたのかもしれない」

「でも……なんでラセルは……」

 リーナは何故ラセルが追ってきたのか?と訊いたようにラセルは感じた。

「なんで?……リーナに行ってほしくないから……」

 ラセルは軽い調子で答える。

「なんであたしを助けたの?」

 リーナは口を尖らせて訊いた。

「それは……リーナだからに決まってるだろ」

「だからなんで!?」

「なんでって……リーナは大切、だから」

 ラセルがそう言うとリーナは今までの強い調子から一転してポロポロと泣き始めてしまう。

「ズルいわよ、そんな」

「そうかな……」

「だって婚約してるくせに」

「え?だれが?」

「ラセルに決まってるでしょう……」

「してないけど」

「うそ……」

「嘘なんてついてない」

 それでハッとしてリーナはラセルの両手を掴んで見る。

 そこには指輪があった形跡すら見当たらなかった。

「え」

「ミレーネの見せた指輪は防御用のアイテムで……僕がプレゼントした」

 「物だよ」と言いかけたラセルの胸にリーナが飛び込んで抱きしめる。

「そんな大げさじゃないか」

「もう、そういうのは駄目だよ……」

 リーナは男の子っぽく言う。

 ……やはり怒っているのだろうか?とラセルは訝しくおもう。

「なら、今度はリーナになにかプレゼントしようか?」

「……へへ、いいの」

「なにが?」

「良いのよ」

 リーナはそう言うと勢いよくラセルを突き放して背中を向けた。

 ……やはり、彼女はわからない……とラセルは思う。

「お腹減ったわ、ご飯まだあるかしら?」

 リーナは後ろを向いたまま言った。

「そうか?……でもコイツ」

 と、捕まえた男を振り返ると気絶していたはずの男が消えていく瞬間だった。

 シュン……

 消えてしまった男を見送り、二人は飯屋に話しながら戻った。

「ねえ、なんでラセルは帝国に来たの?」

「う~ん……そう言えばなんでだっけかな」

 ラセルはとぼけて答えた。
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