アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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旅の友

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「僕はイシュタルから来たのだけど、君たちは?」

「我々はアツシ……」

「おい!やめろ」

「?」

 ラセルが自己紹介をしようと話すと、一人がいい掛けて片方がそれを遮った。

「いやすまないね、我々は方方から……偶々出合い共に旅をしている者だ」

 「やめろ」と遮ったほうの槍使いの若い男が話した。

 なにか曰くが有りそうだったが、ラセルには興味が無かった。

「僕はラセルだ、宜しく」

「……」

「済まないが、見ての通り我々はそれどころではないのでね……」

「そのようだね」

 ラセルはそう言うと、腰の皮の小袋から高級回復薬を一つ取り、差し出した。

「これを使ってあげると良い」

「それは!!」

「良いのか?」

「良いよ、どうせ僕には……」

 要らない物だ、と言いかけて口をつぐむ。

「助かる!ありがとう!」

「済まない……」

 そう言うと槍の男がラセルから瓶を受け取り、二人が両肩を担いでいる女性にそれを飲ませる。

「う~ん……あれ?どうしたのかしら……」

 女性は直に意識が回復して自分でシッカリと立っていた。

「良かった……ありがとう……」

「なんて御礼を言ったらいいのか」

「……もしかして貴方が私を助けて下さったのかしら?」

 そのおっとりして上品そうな女性は直に状況を把握してラセルに訊ねた。

「まぁ、そんなところです、僕はラセル」

「そうですか、私はミリーネと申します危ないところを有難うございました」

「ミ、ミリーネ様……お名前を明かされるのは……」

「あら、助けて頂いたのに嘘はいけないわ」

「……はい、私は護衛のバルデスでこっちは」

「俺はナハトだ、この礼は必ずさせていただく」

「そうね、それが良いわ」

 女性が元気になると途端に皆流暢に話した。

「この街道は帝国の辺境方面ですけど、一緒に行きませんか?」

 ラセルは初めは直に立ち去る積りであったけど、話し始めたらなんとなく独りで去りにくくなってしまう。

「それは助かります!ぜひに」

「全く面目無い……」

 護衛の二人は異口同音でラセルに感謝した。

「旅の友は多いほど賑やかで良いわね」

 ミリーネは嬉しそうにおっとりと言う。

 それでラセルはこの女性が上流階級の出身なのだと察した。

 パット見、ミリーネは単なる旅人風であったが、ラセルのパッシブスキルが高級なアイテムを多数感知していた。

 知ろうとした訳ではないが、近距離だと判ってしまうのだ。

 ミリーネの装備しているアイテムの殆どが美容や身体を清潔に保つ類いのものに思われた。

 旅にはあまり役に立ちそうもない。

 そして護衛の二人は、身体強化系のアイテムを複数と、魔法剣や特殊な武技を添加された槍や回復系の皮の鎧を装備している。

 単なる護衛というよりは親衛隊に近いのでないかと思われた。

 それでここまでなんとかサンドワームの襲撃から持ちこたえて歩いてきたのだろう。

「では行きますか」

 立ち話をしているとまたサンドワームが集まってきそうだったので、三人を促してラセルはあるき出した。


「ところで、ラセル様のご職業を訊いても宜しいかしら?」

「僕は鍛冶屋です」

「は?」

「なん……」

「あらそうなの?こんなところまでお一人で、ご高名な戦士の方かと思いましたわ」

 振り返り鍛冶屋だと答えると途端に護衛の二人は胡散臭い者を見る目つきになった。

 それはそうだ。

 サンドワームなんてソロで討伐するのはBランクの冒険者でも普通はやらない。

 単なる鍛冶屋がウロウロしているような場所ではないのだ。

「……元々本職は重戦士でしたので、当たりです」

 なんとなく言い訳がましくなってしまうが、黙っているわけにもいかず本当の事を少し話した。

「そうよね!そうだと思いました、ほほほ」

 ミリーネは納得したと言うように笑った。

「ですが……いやいや大したものですな」

「なるほど……」

 護衛の二人も無理やり納得してくれた様子だった。

 ただ、普通に考えてヒラヒラと身軽に砂地で跳ぶ重戦士などありえない。

 やはり、無理があるだろうなとラセルは自分で突っ込んだ。

 その後はこれまでの旅の様子などを雑談しながら半日ほど歩くと、夜前には辺境の街に到着した。

「宿など御一緒致しませんか?」

 ミリーネがラセルをさそったが、ラセルはそれを固辞して別の宿に泊まる。

 一応、近くの街までは同行したけれどこれ以上長居する気はないのだ。
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