27 / 52
旅立ち
しおりを挟む
「師匠……僕、やっぱり旅に出ます」
ラセルはリーナが去ったあと、暫く考え込んでから決意したように言う。
「急にどうしたのじゃ?さっきの女の子になにか……」
「いえ、彼女は無関係です……」
本当はそれが一番関係していた。
ここにいる事がバレた以上、オルド師匠に迷惑がかかるのは確定に思われた。
命を狙われるのは自分だけで良い。
リフレクトマントで監視の目から逃れられても、実際に目撃されてしまったら終わりなのだ。
「ごめんなさい、皆に迷惑が掛かると悪いので……」
ラセルはそれだけ言うとそそくさと旅支度をしてしまう。
「おお……」
「短い間ですが今までお世話になりました、お元気で……師匠」
オルドが何か言いかけたが、それを振り切るかのようにラセルは速歩きをして、ついで爆走し始めた。
ドオオオ………
「おお……若いというのは良いものじゃな、ホッホ」
オルドはラセルの思い切りの良さに呆れつつ笑った。
………………………………………………………………………
翌日、リーナは室長からの指示とは無関係に工房を訪ねた。
「こんにちは」
「おや、これは昨日のお嬢さん」
今日はラセルではなく老職人が出てきた。
リーナは昨日少し言い過ぎた事を詫びる為に、手作りのお菓子を持参して訪ねていた。
彼女は昨日の事で彼に合わす顔が無くて、老職人が対応してくれた事に少しホッとする。
「ラセルいますよね?これを彼にお願い出来ますか?もし良ければオジサマもどうぞ」
リーナが手渡す可愛らしい手編み籠には焼菓子が詰まり、良い香りを漂わせていた。
「ホッホ、済まないねぇ……折角来て貰ってのぅ、じゃが……ラセル君は昨日旅に出ると言って出ていってしもうたわ」
「え……?」
「いやなに、急なことでワシにも何がなんだか……」
「か、彼はどこに行ったのですか?」
リーナの声が震えていた。
「行き先はなにも言わずに走って行きおった……急なことでワシにもよく……」
「……」
既に老職人の言葉はリーナに届いてなく、彼女は混乱した頭で呆然とし籠を老職人に押し付けてクルリと踵を返して歩き出す。
「そんな……そんな……」
気がつくとリーナの頬から熱い涙が伝わりおちていた。
「え、なにこれ……」
彼女は何故自分が涙を流していたの判らずに手で顔を擦る。
「なんなの……よ」
彼女は憤慨しながらも止めどなく溢れてくる涙を拭った。
ラセルを失って初めてリーナはようやく自分の本心に気がついたが、既に手遅れだった。
その日、リーナは室長を訪ねて緊急の報告をした。
「ラセルが昨日逃走したようです、行き先は不明であります」
「……そうか、またなにか判ったら報告してくれ」
リーナの報告にレガーは淡々としていて、それがリーナに違和感を覚えさせた。
……こんなに重大な報告なのに、何故あそこまで蛋白なのか……
一方、レガーからすれば厄介事が一人で勝手に消えてくれた事に感謝するほどである。
その温度差がリーナに不信感を持たせた。
……もしかして、室長はラセルを捨て去った気で居るのではないか?
……仮にそうだとすると絶対に許せない……
ラセルへのレガーの対応は冷静に考えてみたら妥当なものであると頭では理解できていたが、リーナの心がそれを許さなかったのだ。
その日、リーナは決心して再度室長を訪ねて辞職願いを提出した。
「今日限りでお暇を頂戴いたします」
「なぜ急に?」
レガーはあまりにも突然の事に髭を触るのすら忘れて、リーナの辞職願いを手にして驚いていた。
「……ラセルを探しに行こうと考えてます」
「なんだ、そんな事か」
「なんだとはなんですか!?」
レガーの言葉にリーナは思わず感情的になってしまう。
それでレガーは彼女の初めて見せるその態度に全てを悟った。
「これは失礼した……うむ、直に行って存分に探すと良い」
「……は、ありがとうございます」
「それと、ここを辞める必要はない、これは仕舞っておくよ」
「なぜですか?私の勝手な振る舞いであるのに……」
「私とて有能なリーナ君を失うのは痛手なのだ……君がラセル君を無くしたくないと思うのと同じように」
「……あ、ありがとうございます!無礼な振る舞いをお詫びいたします」
「構わんよ……若者はそうでなくてはな」
レガーは髭を撫でながらリーナを眩しそうにみて言った。
ラセルはリーナが去ったあと、暫く考え込んでから決意したように言う。
「急にどうしたのじゃ?さっきの女の子になにか……」
「いえ、彼女は無関係です……」
本当はそれが一番関係していた。
ここにいる事がバレた以上、オルド師匠に迷惑がかかるのは確定に思われた。
命を狙われるのは自分だけで良い。
リフレクトマントで監視の目から逃れられても、実際に目撃されてしまったら終わりなのだ。
「ごめんなさい、皆に迷惑が掛かると悪いので……」
ラセルはそれだけ言うとそそくさと旅支度をしてしまう。
「おお……」
「短い間ですが今までお世話になりました、お元気で……師匠」
オルドが何か言いかけたが、それを振り切るかのようにラセルは速歩きをして、ついで爆走し始めた。
ドオオオ………
「おお……若いというのは良いものじゃな、ホッホ」
オルドはラセルの思い切りの良さに呆れつつ笑った。
………………………………………………………………………
翌日、リーナは室長からの指示とは無関係に工房を訪ねた。
「こんにちは」
「おや、これは昨日のお嬢さん」
今日はラセルではなく老職人が出てきた。
リーナは昨日少し言い過ぎた事を詫びる為に、手作りのお菓子を持参して訪ねていた。
彼女は昨日の事で彼に合わす顔が無くて、老職人が対応してくれた事に少しホッとする。
「ラセルいますよね?これを彼にお願い出来ますか?もし良ければオジサマもどうぞ」
リーナが手渡す可愛らしい手編み籠には焼菓子が詰まり、良い香りを漂わせていた。
「ホッホ、済まないねぇ……折角来て貰ってのぅ、じゃが……ラセル君は昨日旅に出ると言って出ていってしもうたわ」
「え……?」
「いやなに、急なことでワシにも何がなんだか……」
「か、彼はどこに行ったのですか?」
リーナの声が震えていた。
「行き先はなにも言わずに走って行きおった……急なことでワシにもよく……」
「……」
既に老職人の言葉はリーナに届いてなく、彼女は混乱した頭で呆然とし籠を老職人に押し付けてクルリと踵を返して歩き出す。
「そんな……そんな……」
気がつくとリーナの頬から熱い涙が伝わりおちていた。
「え、なにこれ……」
彼女は何故自分が涙を流していたの判らずに手で顔を擦る。
「なんなの……よ」
彼女は憤慨しながらも止めどなく溢れてくる涙を拭った。
ラセルを失って初めてリーナはようやく自分の本心に気がついたが、既に手遅れだった。
その日、リーナは室長を訪ねて緊急の報告をした。
「ラセルが昨日逃走したようです、行き先は不明であります」
「……そうか、またなにか判ったら報告してくれ」
リーナの報告にレガーは淡々としていて、それがリーナに違和感を覚えさせた。
……こんなに重大な報告なのに、何故あそこまで蛋白なのか……
一方、レガーからすれば厄介事が一人で勝手に消えてくれた事に感謝するほどである。
その温度差がリーナに不信感を持たせた。
……もしかして、室長はラセルを捨て去った気で居るのではないか?
……仮にそうだとすると絶対に許せない……
ラセルへのレガーの対応は冷静に考えてみたら妥当なものであると頭では理解できていたが、リーナの心がそれを許さなかったのだ。
その日、リーナは決心して再度室長を訪ねて辞職願いを提出した。
「今日限りでお暇を頂戴いたします」
「なぜ急に?」
レガーはあまりにも突然の事に髭を触るのすら忘れて、リーナの辞職願いを手にして驚いていた。
「……ラセルを探しに行こうと考えてます」
「なんだ、そんな事か」
「なんだとはなんですか!?」
レガーの言葉にリーナは思わず感情的になってしまう。
それでレガーは彼女の初めて見せるその態度に全てを悟った。
「これは失礼した……うむ、直に行って存分に探すと良い」
「……は、ありがとうございます」
「それと、ここを辞める必要はない、これは仕舞っておくよ」
「なぜですか?私の勝手な振る舞いであるのに……」
「私とて有能なリーナ君を失うのは痛手なのだ……君がラセル君を無くしたくないと思うのと同じように」
「……あ、ありがとうございます!無礼な振る舞いをお詫びいたします」
「構わんよ……若者はそうでなくてはな」
レガーは髭を撫でながらリーナを眩しそうにみて言った。
0
あなたにおすすめの小説
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
スキル『倍加』でイージーモードな異世界生活
怠惰怠man
ファンタジー
異世界転移した花田梅。
スキル「倍加」により自分のステータスを倍にしていき、超スピードで最強に成り上がる。
何者にも縛られず、自由気ままに好きなことをして生きていくイージーモードな異世界生活。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる