アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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収穫

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 魔人城からの帰り、ラセルは釈然としない面持ちで今回のクエストで手に入れた魔石類を馬に括り付けていた。

 あまりにも量が多いため馬がよろけてしまい、結局は半分くらいラセル自身が背負って馬を引くことになる。
 
 ラセルはこれまでの経験上、ダンジョン一つでこの収穫は多すぎるように感じていた……が、それもすべて指輪の効果であった。

「難所のクエストは少し考えものだなぁ」

 断崖のがれ場で馬が苦労して難所を超えるのを手伝いながらボヤいた。

「けど……次は来ないから構わないか」

 ラセルはテスタと名乗る魔人とのやり取りを思い出していた。

「あいつ……争いを避けていたようだ……」

 冒険者の常識として、魔人は凶悪で常に破壊衝動に突き動かされるような怪物であるといわれている。

 それが今回の件で考え直すべきだと感じていた。

「魔人が静かに暮らしたいとか」

 それを口に出すと思わず吹き出しそうになる。

 あまりにもお花畑というか、平和主義である。

「彼からしたら人族の方がよほど理不尽だな」

 魔人テスタと比べたらこの間捕まえた奴隷商の冒険者ハンターの方が余程魔的であるとさえ感じるのだ。

 それで魔人テスタをどのように位置づけて、ギルドへはなんと報告すべきか……とラセルは悩んでいた。

「魔人の角を持ち帰り、討伐達成と偽るのもスッキリはしないが……自分の為では無く彼の為にするのであれば……良いかな?」

 いつの間にか自分が魔人側に気持ちが寄っている事に気がついてハッとする。

 だが、あの魔人は無害なのも事実で、放置していても全く問題にはならない……。

「とりあえず、取引は成立したのだし……ギルマスと相談してみるか」

 面倒な事はギルマスへ。

 所詮自分は一介の冒険者に過ぎないのである……。



 ギルドへ報告に戻るとギルマスのテッドがニコニコして迎えてくれた。


「おめえ、無事だったようだな」

「ええまぁ、クエストは微妙でしたが」

「やはり途中で引き返しか?」

 ギルマスの顔つきが微妙に引きつっていく。

「一応は、これね」

 そう言い魔人の角をカウンターに置くとギルド中からため息のような声が渦まいた。

「おお……」

「魔人の角だ」

「やはり……やったんだな……ふぅ……」

 テッドは角をしげしげと見つめてため息をついた。

「それに関しては相談があるのだけど」

「うむ、取り敢えずクエスト完了だな、審査が終わったら精算があるからその時にでも聞かせてくれ」

 ギルマスは特に感動するでもなくアッサリという。

 それに反してギルドに居合わせた古参のメンバーは大騒ぎし始めた。

「あのラセルがソロで魔人を破ったらしい……」

「化物かよ」

「信じられん、なにかの間違いじゃねーのか」

「とんでもねえな」


「ギルマス、装備をありがとう」

 ラセルは礼を言い、預かっていた装備一式をカウンターに置く。

「良いってこと」

 ギルド中にどよめきがうず巻くなか、ラセルはギルドを後にした。


 ギルドを出て真っ先に向かったのは隣の素材屋だ。

 ギルドの横に併設されているから便利な店である。

「いらっしゃい」

 古びた木の扉を開けて入店すると、カウンターに座っているのはいつもの老店主であった。

「これを全て買い取って欲しい」

 ドサッドサッ……

 ラセルは大袋に入った宝石類や強化用の魔法石を買い取りカウンターに乗せる。

「はいどうも」

 店主がそう言い袋を開けて中身を確認すると固まってしまう。

「あんたこれどうしたね?」

「ダンジョンでドロップしたものだよ」

「……」

 店主は疑いの目でラセルをジロジロと見たあとにため息をついた。

 盗品なのではないかと考えていたようだ。

「……ふぅ……ま、宜しいか、査定に少し時間が掛るから後でまた来ておくれよ」

「宜しくね」

 それで次に行ったのはまた隣に建っている武器防具屋だ。

 ここに入るのは今回初めてだった。

 ニコルがケチなので入る機会が無かったのだ。

「こんにちわ」

「ようこそ、いらっしゃい」

 店では中年の男性店員が防具を磨きながらラセルを迎え入れてくれる。

「魔石で支払い出来ますか?」

「ええ、構いませんよ」

「良かったです」

「本日はどのようなものを?」

「えーと、魔法剣は有りませんか?」

 魔人クエストて炎の剣の便利さに目覚めて欲しくなったのだ。

「ええありますよ、どんな付与魔法がご入用ですか?」

「炎の剣とか」

「はい!少々お待ちくださいね」

 店員はカウンターの後ろの扉から事務所に入り少ししてから立派な装飾の入った剣を持ってきた。

「お高そうですね……」

 ラセルが剣を受け取り鞘から引き出すと、薄っすらと火炎の魔力を感じる。

「ええ……でも値引きいたしますよ」

「お幾らでしょう?」

「5万金です」

「5万ですか……」

 それで事務所に仕舞っていた理由がなんとなく判った。

「因みに氷の剣もありますか?」

「ありますとも、同じく5万金ですが」

「そう……ですか、この魔石で足りますか?」

 ラセルは大量に持ち帰った魔石の大袋をヒョイと片手で店員に手渡すと、受け取った店員はその袋の重量によろけた。

「おっとと……凄い量ですな、少々おまちを」

 店員はそれをカウンター脇の計量器へ運び、魔石を袋からだして計量器のコンテナにザラザラと入れていく。

「えーと、全部で5万金になります」

  丁度魔法剣一本分であった。

「この炎の剣をください」

「毎度ありがとうございます!」

 その、高額な炎の剣を購入したことでオマケとして色々とサービスして付けてくれた。

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