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最高の2人
しおりを挟む翌週、前王の喪が明けた事を祝うパーティーの当日、僕は仕度を終えて変身したカレンの姿に目を丸くした。
「カレン、だよね?」
僕の声は裏返っていたかもしれない。
「そうよ」
「えへへ~、凄いでしょ?」
カレンは見た事もないような凄みのある美女に変身し、それを自慢そうにリーサが言う。
リーサの仕込みでドレスを買い化粧をしたカレンは、元々の美貌と相まって衝撃的な美女に仕上がっていた。
「うん……驚いた」
勿論、カレンの隣に立っているリーサも十分美女なのだが。
「おまたせー、うわぁ……素敵」
「おまたせしました……え!」
「うっす……!カレンねーちゃん?」
あとから屋敷のホールに降りて来たカッツ達3人組もカレンの姿に驚いている。
本人のカレンは皆にじろじろ見られて恥ずかしそうにしていた。
「それでは行こうか」
あまりカレンをジロジロと見て居てもカレンが可哀そうだったので、声を掛けて皆で屋敷を出ていく。
「行ってらっしゃいませ、皆さま」
執事のトーマスがいつものように見送ってくれたが、やはり彼もカレンの姿を眩しそうに見ていた。
王宮に入ると、そこには既に多くの王侯貴族が来場してそれぞれに挨拶を交わしたりしていた。
僕は早速カレンをマールに紹介しようとして彼女の手を取り、パーティー会場に改装された謁見の間の中央を歩んでいくと周囲からどよめきが起こる。
「はぁ……あれは誰だい?」
「素敵な方ね……どちらのご令嬢なのかしら?」
「おお、ついに軍師様も……」
等と皆一様にカレンの美貌を噂してどよめいた。
「マール王、本日は喪も明けておめでとうございます」
「うん、来てくれてありがとう、して、その隣の美女はどちら様かな?」
「カレンでございます、マール王」
カレンが自分で自己紹介をしてドレスのすそを持ち上げる、その会釈する姿も様になっていた。
流石肉体派だけあってなにをやらせても才能の塊だ。キリっと背筋が伸びて美しい。
「おお!カレン嬢だったのか……どこぞの姫かと思ったぞ」
僕の予測通りマールも驚愕していた。
「ではマール王、本日はカレンを宜しくお願いします」
「うむ、任せ給え」
僕はカレンをマールに預けて会場の隅に立っているリーサの所に行く。
「あの二人、お似合いだと思わないか?」
「ええ、とっても……素敵ね」
リーサは少し寂しそうにしながらも喜んで居た。
無二の親友が王と談笑して酒を傾けている姿は、リーサの目にどのように映ったのだろう……?
それは僕の想像を超えていたので解らないが、僕はリーサと共にパーティーに参加出来ただけで嬉しい。
ふと会場を見回すとカッツ達も、他の招待された有名な冒険者達とテーブルを囲んで談笑している。
彼らも自分達ですでにコミュニティーを作り上手くやっているようだ。
その後、マールから招待客への挨拶が行われて、楽団が演奏を始めてダンスが始まった。
「一曲踊って貰えますか?」
「はい」
僕はリーサの柔らかい手を取って、お願いをすると思わずニヤニヤしてしまう。
この時とどれだけ待ったことか。
彼女の腰に手を回して、ミニーと練習したダンスのステップを踏みだす。
ミニーよりは一回り大きいリーサに合わせてステップを修正して直ぐに軽やかに2人で舞った。
タタタッタッタ!ジャーン……
パチパチパチパチ……
パチパチパチ……
気が付くと音楽が一旦止まり、周りの貴族達が拍手をしてマールとカレンを祝福していた。
2人はだれが見てもお似合いのカップルで、嫉妬する事すら馬鹿らしい程整っていた。
僕とリーサも2人に拍手を送り、リーサは小さくカレンに手を振った。
カレンはマールと共に立ち少し顔が赤くなっている。
これまでの人生で一番の晴れ舞台だったに違いない。
そうして、その夜は賑やかに幕を閉じた。
その晩、自室に繋がっているバルコニーに出て王宮を眺めながら酒を呑んでいると、ミニーが部屋に入って来た。
「やぁ、どうしたの?」
「それはあたしのセリフです~」
ミニーはおちゃらけて答えた。
「なんでお独りなのですか?」
「そうだね……」
リーサはパーティーの後マールに招かれて、カレンと一緒に母親の皇太后へ挨拶に行ってしまった。
「寂しいのでしょう?」
ミニーがわざとからかう様に言う。
「あはは、まぁ寂しいな、ホラ!」
「きゃぁあ……あはは」
と言って、側にやってきていたミニーを抱き上げると彼女は驚いていた。
そのまま、バルコニーの大きな手摺に彼女を座らせる。
「ここに来て4か月か、僕達も変わったよな」
「はい……あたしはずっとこのままで良い」
ミニーは寂しそうに言う。
僕よりもミニーの方が寂しいように思えた。
「そうだな」
そう答えた僕には判っていた。これからも変わっていくのだろうと。
「ずっと変わらない僕らに乾杯」
「乾杯……」
僕からグラスを手渡されたミニーが一口飲み、僕は瓶をラッパ呑みした。
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