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防衛戦

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 翌日、早朝から王宮に参内しセスに状況を訊いていた。

「今日の王侯貴族の参列者の名簿は有るかい?」
「はい、ここに」

 セスが持っていたファイルから名簿の書類を取り出してみせる。

「今日不参加の有力貴族は居ますか?」

 僕はその名簿に鑑定を掛けて精査しながら訊く。

「いえ、国内の全有力者が参加する予定になっております」
「なるほど、しかし、これは……」

 僕の鑑定に若干2名の貴族が引っかかった。

「何か?」
「このフォルフェン伯とリシド卿はどのような方か判りますか?」

「はい、フォルフェン伯爵は北方の貴族で今回わざわざ王都へ警備を引き連れて参加する予定です、リシド卿はご高齢の為、代理で娘婿のフェラルド殿が従者と共に参列予定となっております」

「フォルフェン伯はなぜ警備を連れてきたのです?」
「王都で不測の事態が起こった時に援軍として、王子をお助けしたいとの事です」
「……それを信じたのですか」
「というと?」

 僕は一呼吸おいてからセスに鑑定の結果を少しだけ説明しようと試みた。

「まず、不測の事態が起こるという前提で軍を派遣しているとしか思えません、それから……」 

 僕はフォルフェン伯の行動のおかしい点を解説した。

「つまり内乱の可能性があるとおっしゃいますか?」
「うん、ほぼこいつは黒だね」
「では、王都の外で待機しているフォルフェン伯の警備兵を王都に決して入れないように手配します」
「そうしてくれ、それとリシド卿は危険人物です、入城したらその場で拘束してください」
「は?」
「僕の勘では、この人、娘婿ですか?アサシンです」
「……」

 僕の言葉にセスは絶句していた。

「何故そんなことが解るのか?と言いたいのは判ります、説明は難しいけど僕には判るのです」
「……はい、ではそのように手配します」

 名簿を鑑定した結果、娘婿のフェラルドは帝国からの刺客で元々が冒険者のアサシンであった。

 この多重に仕掛けられた巧妙な手口でハッと気が付く。

 僕はかつて鑑定師を目指す前は学者になりたかった。それで帝国の歴史を一通り学び、そこで帝国のやり口の巧妙さ、卑劣さを知った。

 そもそも今の帝国の領土は、100年前は諸国が割拠する戦乱の絶えない大陸であった。それを先々代の王が巧妙な手口で諸国を制覇し併合して帝国となって行った。

 そして、帝国に飲み込まれずにこの大陸で生き残ったのがこの王国を含む3か国である。

 残りの公国と、獣人国はそれぞれ王国と分断されており共同戦線を張る事すら出来ず、帝国に抑圧されつづけていた。

 王子暗殺未遂やら計画内乱、潜伏させた本職のアサシンの投入は帝国が本気で王国を潰しに来たと考えるべきだった。

「今、バースト火炎弓部隊はどこに配置されていますか?」
「少しお待ちを」

 セスはそう言うと常に持っている大判の手帳を広げて、そこにある略地図を指さした。

「この街道に10人の小隊と、裏街道に10人、そして王国内の要所に5人の分隊を3個配備してあります」
「なるほど、予備の部隊は?」
「予備兵は王都内で待機して、現在20名となっております」

 この配置センスは中々良かった。昨日王子がそのように配備したのだろうか。

「では、王都の予備兵を裏街道に10名派遣して増強してください」
「それはなぜですか?」
「モンスターの大群が迫って来ているからです」
「……」

 セスは又も絶句していた。

「なぜそれが判るのか?と疑問でしょうがとりあえずそうしてください」

 僕は昨夜、遠方を詳細に鑑定してそれに気がついて居た。

「それで、もう一つ……先日納品したファントムグラブを近衛にも装着させておいて下さい」
「……は!」

 それが何を意味するのか、セスには判ったようだった。

 それは、王子を守る最終防衛ラインなのだ。
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