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王都の住人
しおりを挟む僕には考えがあった。
道中で財宝を掘り出した経験から、この力を使えば大金持ちになれるはずだ。
実力を証明し金持ちになれば、僕をバカにしてくれた連中を見返してやることもできるだろう。
その為に鉱山を掘削してこの国に眠る膨大な資源を掘り出すのだ。
「初めまして、ニースと言います」
大勢の商人で混雑している商業ギルドの奥に進み、カウンターのお姉さんに話しかける。
「どんな御用件ですか?」
「実は、鉱脈の開発をしようと思いやって参りました」
「鉱山技師会でしたら既に解散されておりますよ」
「それはどうしてですか?」
「ほとんど掘りつくしてしまったからでしょうね」
そんな筈はないと僕は確信をもっていた。まだ沢山資源が埋まっているのを僕は知っている。
「どうしたら技師会を再開できますか?」
「……自主的に再開は出来ますが試掘等は国王様の許可が必要になりますので……」
つまり、簡単には活動出来ないという事らしい。
「具体的にはどうすればよいのでしょうか?」
「そうですね……これは商業ギルドからは指示は出来ませんが、王国議会の信頼を得られれば可能性はありますが」
「はぁ……それではとりあえず再開の申請をさせてください」
「はい、再開申請は受け付けられますよ」
お姉さんはそういうと、かつてこの国に存在した鉱山技師会の書類を出してきた。
「こちらですね、ここに新しい技師会長の名前等を記入してください」
「ニース・グラハム、職業鑑定師」
「はい結構です、これを王国へ定期便で送りますので承認が下りるまで暫くお待ちくださいね」
「はい」
僕はその正式なルートでこの国を再開発する事は困難なのだと思い知った。
「さて、次はどうしようか」
それで商業ギルドと隣り合わせに建っている冒険者ギルドに顔を出してみることにする。
「初めまして」
「はい、どういうご用件ですか?」
「実は依頼を出したいのですが」
「ではこちらに依頼内容を書いてください」
僕は一案を思い付き既に開発済みの鉱山の探索を依頼し、用紙に具体的な内容を書き込んだ。
大地の精霊の力と僕の鑑定のスキルで、既にこの土地の事なら地名まで殆ど知っていたのだ。
「このクエストですと、パーティーメンバーはCクラスで大丈夫そうですね、資金はおいくら程?」
「金貨一枚でお願いします、私も同行します」
僕は前金としてそれをカウンターに置いた。
「はい、では承りました、探索パーティーが決まりましたらお知らせしますのでまたここへ来てください」
「はい」
◆
その間ただ待っているというのも時間がもったいないように感じたので王宮へ何とか入れないかと画策する事にした。
それでもう一度商業ギルドに顔をだして各種の会合を精査する事にしたのだ。
「こんちはー」
「あら、またいらっしゃい」
二度目で顔なじみになったお姉さんに話す。
「商業ギルドの中で王宮と伝手を持っている会合はありませんか?」
「そうですね……鑑定師様でしたら、よろず鑑定士組合がありますよ」
「なるほど、ではそれに加入したいのですが」
「はい、では……ここに記入してください、後程組合長からの審査がありますので明日またお越しください」
良かった、こっちの方は何とかなりそうだ。僕はそれに手ごたえを感じ嬉しくなる。
「さてと、ここで活動するにはやはり家を借りるべきだろうな」
広場に立ち並んでいる不動産屋に向かう。
「こんにちわ」
「はい、いらっしゃい」
ドアを開けると感じの良さそうな親父が対応してくれる。
「一人暮らし向きのアパートを借りにきたのですが」
「はい、そういう物件なら多数ございますよ」
その後、親父さんと2人で王都内のアパートを巡り、中央通りに面した物件を賃貸する事に決めた。その景色の良いアパートの賃料は少し高目であったが、周辺住民の質も環境も良い事が僕には判っていたのだ。
前家賃とそれに半年分の家賃として金貨2枚を差し出して書類にサインする。
「はい、ではカギをどうぞ」
僕はそれを受け取り買い物に出かけた。
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