寝起きで語る小話

沖田ねおき

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地下鉄深夜午前二時

3.

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木刀を退けると少年も攻撃を開始する
まずは先の彼のように相棒を振り下ろし、伏せがれれば横っ腹目掛けて振るう
隙ができたならば足元に狙いを定めて…

「クソッ!」

舌打ちと共に相手が顔を歪めた
脛に当たったのだろう、痛みのあまり体制が崩れる
少年はそれを狙って勢いよく相棒を振り下ろした

「ぉっ……踏ん張るねぇ……」

だが、間一髪のとこで防がれる
それどころか相棒は弾かれてしまった
見た目通り力は強いのだろう
相手は木刀を杖にゆっくりと立ち上がった

「女顔なんかに負けてられるかってんだッ!
ほら、来いよ…」

「降参しないんだ?
まぁ、こんなすぐに終わっちゃツマラナイもんね
てことで、いかせてもらうよッ」

少年は相棒を握り直し相手への攻撃を再開する
そこから決着が着くのは早かった

野球帽は負傷した足を庇いながら少年の攻撃を防ぎ耐えるしかなく、手首に向かって思い切りゴルフクラブを振り下ろされ木刀を落とされれば、もうされるがままだ

床に叩き伏せられ、それ以上の攻撃をされそうになったところでアナウンスが響いた

『6号車にご乗車のお客様、勝敗はもう着きましたので戦闘を終了してください
尚、これ以上の無理な戦闘、または一方的な戦闘行為でお相手様が命を落とされた場合は厳しい処罰の対象となりますので、予めご了承ください』

勝敗が着いた…少年に負けた…

状況を見れば分かることだが、それでもやはり悔しかった
相手を見くびりすぎていた

「君大丈夫?痛かった?っていうか痛いよね
駅に着けば手当が受けられるから、取り敢えずそれまで我慢してね」

心配そうに眉を垂らしながら少年は手を差し伸べる
先程までの容赦ない攻撃とは正反対だ
野球帽は性根の手を取り、半身を起こされ壁に凭れ掛けさせられる

「…悪いな」

「ん?」

「お前のこと舐めてた」

「あぁ、そんなこと
僕は何でか初対面の人に舐められやすいみたい
でも、そういう奴らを叩きのめすのって最高に気持ちいいから気にしてないよ♪」

少年の発言に「イイ性格してやがる」とは思ったものの、ふふっと笑った顔が存外可愛らしく、先程まで敗北感やら悔しさやらに浸っていたのがもう薄れてきていた

駅に着くまでの暫しの間、二人は会話を楽しむ

そして更け入っていた夜は段々と白み始めていくのだった

『ご乗車、ありがとうございました
またのご利用お待ちしております』
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