寝起きで語る小話

沖田ねおき

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地下鉄深夜午前二時

1.

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『まもなく、七番線に電車が参ります。危険ですので白線の内側までお下がりください』

地下鉄のホームに何度も耳にしたアナウンスが頭上で響く
少年は他の乗客と同じようにもうすぐやってくる電車を待ち構えていた

時刻は丑三つ時

この地下鉄ではこの時間にしかやってこない特別な電車がある
少年がその電車の噂を聞き、ここへやってきたのが数年前
日頃溜まっていた鬱憤を晴らすために通っていたら、いつの間にかハマってしまい今ではすっかり常連だ

13番線まである寂れた大規模な地下鉄は深夜になると表情を変え、バトルジャンキーのための運動施設となる
得物を持ち込むのも良し、武器を借りるのも良し
殺さない、敗者の保護をしない、ルールの絶対厳守の下に行われる一夜限りの戦闘

腕試しにやってきた新人、それなりに場数を踏んできた常連、長年通いつめたベテラン、依存するほどのめり込んだ廃人と様々な乗客で賑わう

もちろん、このことについて一般人は風の噂か都市伝説程度でしか知らないだろう
少年もかつてはその一人であった

漠然と、日常に刺激が欲しい…なんて思っていたからだろうか
地下鉄で行われることは大いに少年のその欲求を満たしてくれた

──とまぁ、そんなわけで少年はここでの相棒でsるゴルフクラブを握りしめ、駅に到着した電車の扉が開くのを今か今かと待っているのだ

扉が開いた瞬間、誰よりも先に車内へと乗り込む

「いっちばん乗り~♪」

機嫌よく言って今夜の相手は誰かと落ち着かない気持ちで待つ
毎度毎度、戦闘が始まる前のこのソワソワ感が好きだ

『ご乗車、ありがとうございます
この電車はタイマンバトル専用電車となっておりますので、三人目のお客様のご乗車や無理なご乗車はお止め下さい
また、ルール違反が生じた場合には直ちに運行を停止し、即刻職員が対応に当たりますので、ご理解の程よろしくお願いします』
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