5 / 57
日常
第三話
しおりを挟む
保と桃が最初に出会ったのは十年前に遡る。
きっと桃は覚えていない。
保が高校二年の秋、桜井家が主催のパーティーに呼ばれた。
来賓として呼ばれたのは元華族だらけの豪華なパーティーだった。
当時の保は成績はいい方ではなく、クラスでも周りからいじられる立場にあった。
パーティーなどの華やかな場所が生来苦手な保は、本当は行きたくなかった。
行けばクラスの連中に会い、会場でいじられるような気がしたからだ。
しかし、父の付き添いとしての役目があったため、どうしても行かねばならなかった。
会場に到着し、父は顔見知りに挨拶に行ってしまった。保は一人残された。
周りを見渡すと、想定した通り、会場にはクラスの連中がいた。
『おい、保。俺ら腹減ってんだわ。何か食うもん取ってこいよ』
「うん。わかった」
いつものことだ。彼らにパシらされる。
料理を取りに行って戻る。
『これ、さっき食ったやつじゃん。違うやつにしろよ』
『俺ら今腹いっぱいだから、それ全部お前食えよ』
結局保は連中に振り回されてばかりだった。
そんな時、まだ小学生の桃が近寄って来て一言言った。
「お兄ちゃんたち、そんなことしてかっこ悪いね。何が楽しいの?」
保と連中のやり取りを一部始終見ていたのだった。
周りの大人がこちらを見る。
何事かと人が集まってきた。
保をいじっていた連中は親に首根っこを掴まれて保に謝罪後帰宅の途に着いた。
桃はどこかに行っていて、パーティー会場にいなかった。
辺りを探していると、外の薔薇の垣根に隠れていた。
近づくと桃は泣いていた。
保ですらまともに言い返せない相手を相手にしたのだ。
怖くないはずがない。こんな小さな女の子が。
そっと近づくと桃は泣き腫らした目で振り返った。
「あっ、……さっきのお兄ちゃん」
「さっきは助けてくれて、ありがとう。怖かったね。ごめんね」
優しく抱きしめると、桃は安心したように身を預けてきて泣きじゃくった。
しばらく抱きしめていると、規則正しい呼吸が聞こえてきた。
ふと桃の顔を覗くと、寝ていた。泣き疲れてしまったのだろう。
静かに抱き上げて、桜井家の執事に引き渡した。
『桃お嬢様がお世話になりました』
少女が『桃』と言う名前であること、勇気があり、勇敢な行動を取ってしまうが、人がいる前では泣くこともできない意地っ張りなこと。
短い時間ではあったが、保は本能的にこの少女に惹かれていることに気付いた。
保は絶対にこの少女を守ると心に決めた。
それからずっと少女と一緒にいられることを考え、学校でなら一緒にいられる時間があると思い、教師になることにした。
なぜ養護教諭なのかはご想像にお任せしよう。
きっと桃は覚えていない。
保が高校二年の秋、桜井家が主催のパーティーに呼ばれた。
来賓として呼ばれたのは元華族だらけの豪華なパーティーだった。
当時の保は成績はいい方ではなく、クラスでも周りからいじられる立場にあった。
パーティーなどの華やかな場所が生来苦手な保は、本当は行きたくなかった。
行けばクラスの連中に会い、会場でいじられるような気がしたからだ。
しかし、父の付き添いとしての役目があったため、どうしても行かねばならなかった。
会場に到着し、父は顔見知りに挨拶に行ってしまった。保は一人残された。
周りを見渡すと、想定した通り、会場にはクラスの連中がいた。
『おい、保。俺ら腹減ってんだわ。何か食うもん取ってこいよ』
「うん。わかった」
いつものことだ。彼らにパシらされる。
料理を取りに行って戻る。
『これ、さっき食ったやつじゃん。違うやつにしろよ』
『俺ら今腹いっぱいだから、それ全部お前食えよ』
結局保は連中に振り回されてばかりだった。
そんな時、まだ小学生の桃が近寄って来て一言言った。
「お兄ちゃんたち、そんなことしてかっこ悪いね。何が楽しいの?」
保と連中のやり取りを一部始終見ていたのだった。
周りの大人がこちらを見る。
何事かと人が集まってきた。
保をいじっていた連中は親に首根っこを掴まれて保に謝罪後帰宅の途に着いた。
桃はどこかに行っていて、パーティー会場にいなかった。
辺りを探していると、外の薔薇の垣根に隠れていた。
近づくと桃は泣いていた。
保ですらまともに言い返せない相手を相手にしたのだ。
怖くないはずがない。こんな小さな女の子が。
そっと近づくと桃は泣き腫らした目で振り返った。
「あっ、……さっきのお兄ちゃん」
「さっきは助けてくれて、ありがとう。怖かったね。ごめんね」
優しく抱きしめると、桃は安心したように身を預けてきて泣きじゃくった。
しばらく抱きしめていると、規則正しい呼吸が聞こえてきた。
ふと桃の顔を覗くと、寝ていた。泣き疲れてしまったのだろう。
静かに抱き上げて、桜井家の執事に引き渡した。
『桃お嬢様がお世話になりました』
少女が『桃』と言う名前であること、勇気があり、勇敢な行動を取ってしまうが、人がいる前では泣くこともできない意地っ張りなこと。
短い時間ではあったが、保は本能的にこの少女に惹かれていることに気付いた。
保は絶対にこの少女を守ると心に決めた。
それからずっと少女と一緒にいられることを考え、学校でなら一緒にいられる時間があると思い、教師になることにした。
なぜ養護教諭なのかはご想像にお任せしよう。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない
草笛あたる(乱暴)
恋愛
《視点・山柿》
大学入試を目前にしていた山柿が、一目惚れしたのは黒髪ロングの美少女、岩田愛里。
その子はよりにもよって親友岩田の妹で、しかも小学3年生!!
《視点・愛里》
兄さんの親友だと思っていた人は、恐ろしい顔をしていた。
だけどその怖顔が、なんだろう素敵! そして偶然が重なってしまい禁断の合体!
あーれーっ、それだめ、いやいや、でもくせになりそうっ!
身体が恋したってことなのかしら……っ?
男女双方の視点から読むラブコメ。
タイトル変更しました!!
前タイトル《 恐怖顔男が惚れたのは、変態思考美少女でした 》
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる