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第一話
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むかしむかし、そのまた大昔。
北風と太陽は仲がよくありませんでした。
今日もいつものように口喧嘩が始まりました。
「俺の方が強い」
「いいや、僕の方が強い」
口喧嘩では決着がつかないと悟った双方は、海岸沿いを歩いている一人の男に注目しました。
人間の世界では今は秋から冬にかけている時期。
ひんやりというより肌寒い時期です。
男はコートを羽織っていました。
「あの男のコートを脱がせた方が勝ちっていうのはどう?」
「いいぜ、俺からだ」
北風は思いっきり息を吸い込み、『ピュー』と冷たい強風を起こしました。
双方男の行動を見守ります。
「おお、寒い。今日は凍えるなぁ…」
男は持っていたカバンの中からマフラーと手袋、耳当てを取り出し、着用してしまいます。
いわゆる完全防寒対策でした。
「くそっ…なんでコートが飛ばなかったんだ?風量が足りなかったとか…?」
北風はぶつぶつと自分の駄目だった部分を考察し始めました。
根が真面目な北風。
太陽のことなんてこの時は眼中にありませんでした。
「ちょっとっ!僕を忘れて勝手に考察を始めないでくれるかな?」
「お前だって、あの男のコートを脱がせるなんて、土台無理な話なんだ」
「やってみなきゃ分からないだろ。さぁ、いくよっ!」
太陽は手を男に翳すと、太陽の手から光線が発射され、夏が来たような熱気が男の周りを包みました。
あまりの暑さに、男はつい先程装着したマフラーと手袋、耳当てを早々に外すと、厚手のコートまで脱ぎ捨てました。
そして一言こう言いました。
「ロケ地はここで決定だな」
ロケ地?
北風は何のことだか、さっぱり分かりません。
しかし、太陽は知っていたのです。
この男の正体を。
この男は今話題の人気アイドルグループのプロデューサーで次のCDのミュージックビデオの撮影場所を探して各地を転々としていたのでした。
そして、太陽はそのアイドルグループのファンだったのです。
太陽もミュージックビデオに参加したかったのです。
ここは海岸沿い。
綺麗な砂浜、コバルトブルーの海、照り付ける太陽、アイドル達の輝く水着。
実は、アイドル達の手伝いをしたいというのは建前で、アイドル達の輝く水着を見たいというのが、太陽の本音だったのです。
数日後、ミュージックビデオに参加するアイドルがやってきました。
北風もアイドルグループのファンだったのですが、プロデューサーの顔までは知りませんでした。
「カメラOKです。マイクOKです」
着々と準備が進んでいきます。
太陽も準備万端です。
「じゃぁ、始めるよぉ~。よぉ~い、スタートっ!!」
監督の掛け声で撮影が始まりました。
北風は置いてけぼりを食って、太陽ばかり撮影の手伝いができて羨ましくて仕方ありませんでした。
「俺も手伝うっ!」
大きく息を吸い込み、『ピュー』と冷たい風を起こしました。
「寒いっ!!」
アイドル達はウィンドブレーカーを着こんでロケ車に乗り込んでしまいました。
「何してくれるんだよっ!」
太陽は北風に激怒しました。
「俺だって手伝いたいんだ」
「君は冷たい風しか送れないんだ。そうなっては彼女達の撮影の邪魔にしかならない」
「でも…」
「あっちを見てごらんよ」
太陽の指さす方を見ると、この炎天下の中長袖でコートを着込んで撮影している女の子達がいました。
「どうしてあの子達はこの暑い中あんな服を着ているの?暑ければ脱げばいいじゃないか」
「馬鹿だな、北風は。あの子達はモデルだ。そして、あれは冬物の撮影をしているんだ」
「夏なのに?」
「流行を先取りしなければならないのが、彼女達の仕事さ。彼女達には君の力が必要となるはずだよ」
太陽に諭されて、北風は物は試しとモデルの子達の撮影に弱めに冷たい風を送ってみました。
「涼しい~」
すると、どうでしょう。
さっきまでは完全に作り笑顔のようだったモデル達が心からの笑顔を見せてくれたではありませんか。
北風は嬉しくなって、アイドル達の撮影ではなく、モデルの子達の撮影の手伝いを始めたのでした。
「どうだった?」
夜になって皆がホテルに戻った頃に太陽は北風に問いました。
「モデルの子達、かわいかった」
「そうじゃなくて…」
「喜んでくれて嬉しかった」
「必要とされていない時にやるのは、ただのお節介だよ」
「今回のことで、よく分かった」
「それならいいんだ」
少しだけ北風と太陽は理解し合えたように見えました。
しかし、北風は気付いていませんでした。
アイドル達の水着姿を太陽だけが独占していたことに。
後日このことに気付いた北風と太陽が口喧嘩を勃発されるのはまた別のお話。
北風と太陽は仲がよくありませんでした。
今日もいつものように口喧嘩が始まりました。
「俺の方が強い」
「いいや、僕の方が強い」
口喧嘩では決着がつかないと悟った双方は、海岸沿いを歩いている一人の男に注目しました。
人間の世界では今は秋から冬にかけている時期。
ひんやりというより肌寒い時期です。
男はコートを羽織っていました。
「あの男のコートを脱がせた方が勝ちっていうのはどう?」
「いいぜ、俺からだ」
北風は思いっきり息を吸い込み、『ピュー』と冷たい強風を起こしました。
双方男の行動を見守ります。
「おお、寒い。今日は凍えるなぁ…」
男は持っていたカバンの中からマフラーと手袋、耳当てを取り出し、着用してしまいます。
いわゆる完全防寒対策でした。
「くそっ…なんでコートが飛ばなかったんだ?風量が足りなかったとか…?」
北風はぶつぶつと自分の駄目だった部分を考察し始めました。
根が真面目な北風。
太陽のことなんてこの時は眼中にありませんでした。
「ちょっとっ!僕を忘れて勝手に考察を始めないでくれるかな?」
「お前だって、あの男のコートを脱がせるなんて、土台無理な話なんだ」
「やってみなきゃ分からないだろ。さぁ、いくよっ!」
太陽は手を男に翳すと、太陽の手から光線が発射され、夏が来たような熱気が男の周りを包みました。
あまりの暑さに、男はつい先程装着したマフラーと手袋、耳当てを早々に外すと、厚手のコートまで脱ぎ捨てました。
そして一言こう言いました。
「ロケ地はここで決定だな」
ロケ地?
北風は何のことだか、さっぱり分かりません。
しかし、太陽は知っていたのです。
この男の正体を。
この男は今話題の人気アイドルグループのプロデューサーで次のCDのミュージックビデオの撮影場所を探して各地を転々としていたのでした。
そして、太陽はそのアイドルグループのファンだったのです。
太陽もミュージックビデオに参加したかったのです。
ここは海岸沿い。
綺麗な砂浜、コバルトブルーの海、照り付ける太陽、アイドル達の輝く水着。
実は、アイドル達の手伝いをしたいというのは建前で、アイドル達の輝く水着を見たいというのが、太陽の本音だったのです。
数日後、ミュージックビデオに参加するアイドルがやってきました。
北風もアイドルグループのファンだったのですが、プロデューサーの顔までは知りませんでした。
「カメラOKです。マイクOKです」
着々と準備が進んでいきます。
太陽も準備万端です。
「じゃぁ、始めるよぉ~。よぉ~い、スタートっ!!」
監督の掛け声で撮影が始まりました。
北風は置いてけぼりを食って、太陽ばかり撮影の手伝いができて羨ましくて仕方ありませんでした。
「俺も手伝うっ!」
大きく息を吸い込み、『ピュー』と冷たい風を起こしました。
「寒いっ!!」
アイドル達はウィンドブレーカーを着こんでロケ車に乗り込んでしまいました。
「何してくれるんだよっ!」
太陽は北風に激怒しました。
「俺だって手伝いたいんだ」
「君は冷たい風しか送れないんだ。そうなっては彼女達の撮影の邪魔にしかならない」
「でも…」
「あっちを見てごらんよ」
太陽の指さす方を見ると、この炎天下の中長袖でコートを着込んで撮影している女の子達がいました。
「どうしてあの子達はこの暑い中あんな服を着ているの?暑ければ脱げばいいじゃないか」
「馬鹿だな、北風は。あの子達はモデルだ。そして、あれは冬物の撮影をしているんだ」
「夏なのに?」
「流行を先取りしなければならないのが、彼女達の仕事さ。彼女達には君の力が必要となるはずだよ」
太陽に諭されて、北風は物は試しとモデルの子達の撮影に弱めに冷たい風を送ってみました。
「涼しい~」
すると、どうでしょう。
さっきまでは完全に作り笑顔のようだったモデル達が心からの笑顔を見せてくれたではありませんか。
北風は嬉しくなって、アイドル達の撮影ではなく、モデルの子達の撮影の手伝いを始めたのでした。
「どうだった?」
夜になって皆がホテルに戻った頃に太陽は北風に問いました。
「モデルの子達、かわいかった」
「そうじゃなくて…」
「喜んでくれて嬉しかった」
「必要とされていない時にやるのは、ただのお節介だよ」
「今回のことで、よく分かった」
「それならいいんだ」
少しだけ北風と太陽は理解し合えたように見えました。
しかし、北風は気付いていませんでした。
アイドル達の水着姿を太陽だけが独占していたことに。
後日このことに気付いた北風と太陽が口喧嘩を勃発されるのはまた別のお話。
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