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死ヘト誘フ黒キ蝶
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「そういえば、このような噂をご存じですかな?」
緩やかな口調で、ニシキが語った。
東の国の神子もまた行方知れずであることを。
いなくなったのはつい最近。ラムダの妹、テラが姿を消した時期と重なる。そこにどんな意味があるのか、東の国の神子がどこに消えたのか。
ニシキは目を細めて言う。
「はてさて、ワタクシにはわかりかねまするが……」
「テラは東の神殿に攫われたんじゃないかって話を聞いたんだけど」
「それは初耳ですな」
森の中とは違い見渡しの良い草原を、二人は歩いていた。
ラムダの横をひょこひょこと跳ねるようにニシキは歩く。姿こそ痩せて腰の曲がった老爺ではあるが、見た目の印象よりもずっと身軽だった。
「ところで先程からシロタエ様のお姿が見えませんが、いかがされておいでですか?」
「寝てるみたい」
衣服の、膨らんだ腹の辺りを示しながらラムダが答えると、ニシキが指を咥えんばかりの勢いで言う。
「おお、おお、なんと羨ましい……」
「ニシキおじいさんはヘビの家来なの? シ、シロ、ェ様? って呼んでるよね」
「ほっほ、シロタエ様の御名はこの辺りでは耳慣れない音ですかな。ワタクシとシロタエ様の関係は、そうでございますなあ……ムスコ、いや弟? さてなんと申しましょうか」
「息子か弟? じゃあヘビって実はすっごいおじいさん?」
「さあ、いくつに見えましょう?」
「二十幾つだと思ってた」
ニシキが何か言おうとして、開きかけた口を閉じた。二人同時に立ち止まり、前方を見据える。地平の先、その上空に黒い煙が立ち上っている。
「何やら剣呑な香りがいたしますな。いかがなさいますか?」
「行くよ。テラを探さなきゃ」
東西二つの国の境。そこに最も近いこの街は神殿から派遣された兵が斥候を目的として常駐しており、今は戦場と化していた。
そこかしこに転がる街の住民、そして兵士の死骸。炎が家を焼き、街は紅に染まる。
凄惨な光景の中、一人の少女が誰かの名を呼びながら、彷徨い歩く。
少女の背後に影が迫る。
鷹の意匠のエンブレムが刻まれた剣。東の神殿兵だ。
炎に閃く銀の切っ先が、飢えた獣の爪の如く、か弱い獲物を屠ろうとしたその瞬間。
ギィンという鋭い音と共に剣が弾け飛んだ。一瞬の間に武器を失った兵が何事かと理解するよりも早く、彼の思考は閉ざされる。悲鳴を上げることさえ許されなかった。鎧に包まれた体は血しぶきを上げ、地面に倒れて、重い音が鳴る。
音に気付いて振り返る少女の目端に、ひらりと黒い何かが横切った。
それは風変わりな衣の裾だった。纏う人間の動きに合わせて、ひらりひらりと翻る様はまるで宙を舞う蝶のよう。
黒い衣に身を包んだ少年―――ラムダは襲い来る兵士を次々と刀の餌食にしてゆく。鮮やかな身のこなしで攻撃を避け、相手の懐に入り込み、刃を振るう。表情は無に等しい。
淡々と敵を斬り伏せ、返り血を浴びるその姿に、命を救われた少女は瞬きも忘れて見入った。
だがその胸にあるのは感謝でも憧れでもない。
恐怖だ。
少女の目に、ラムダは恐ろしい怪物のように映っていた。
凍り付いて動かない少女の背を皺だらけの手が宥めるように数度叩く。
「さぁさ、こちらへ。逃げた住民たちは教会に避難しておるようです。このジジィと共に参りましょ」
教会には数人の大人と子供がいた。
ニシキが少女を送り届けると、小さな男の子が声をあげて泣きながら駆け寄ってきた。少女の弟で、二人で逃げる途中はぐれてしまったらしかった。
大人たちがニシキに感謝の言葉を伝えていると、教会の扉が開いた。敵襲かと大人たちは身構えたが、
「おお、ラムダ殿。よくぞご無事で」
恩人の態度から、相手が味方であることを悟り、ほっと胸を撫で下ろす。
ラムダは顔や髪、服が血で汚れていたが、気にせず、歩み寄って住民たちに告げる。
「街の中にもう敵はいません。それとあっちの、無事な建物の影に隠れる子供が何人か見かけたから後で誰か見に行ってあげてください」
「ああ、ああ! ありがとうございます! 本当に、なんと言えばいいのか!」
司祭らしき身なりの女性が膝を床につき、両手の指を組んで祈るように言った。
他の大人たちもまた、深く頭を下げていた。
安堵と、それ以上に多くを失った悲しみが押し寄せ、感情が溢れて泣き出す者もいた。その痛ましい様子にラムダは何も言えず、けれどふと動かした視線の中に他とは異なる反応を見つける。
大人たちが泣き崩れる後ろに、先程助けた少女がいた。
ラムダよりも恐らくやや年下の、テラと似た年齢であろう少女。
彼女は幼い弟を強く抱きしめ、青ざめた顔で、怯えた瞳でこちらを見ていたが、目が合うとびくりと肩を跳ねさせた。
ラムダは静かに視線を外すと、大人たちに向き直って言う。
「先を急ぐので、僕たちはもうここを発ちます。ただその前に、一つ、知っていたら教えてほしいことがあって」
司祭の女性が、弾かれたように顔を上げる。
「なんでしょうか? 私たちのお役に立てることでしたら」
「テラという女の子を知りませんか? 十三歳の女の子で、髪の色は僕と同じで」
「いえ、この街にはそうした人はおりませんし、旅の方も近頃はあまり……」
「そうですか、どうも有難うございます」
ラムダは軽く頭を下げて、それから背を向けた。
ニシキが後からついてくる。
扉を開き、出て行く時に、少しだけ振り返って言う。
「怖がらせてしまって、ごめんね」
緩やかな口調で、ニシキが語った。
東の国の神子もまた行方知れずであることを。
いなくなったのはつい最近。ラムダの妹、テラが姿を消した時期と重なる。そこにどんな意味があるのか、東の国の神子がどこに消えたのか。
ニシキは目を細めて言う。
「はてさて、ワタクシにはわかりかねまするが……」
「テラは東の神殿に攫われたんじゃないかって話を聞いたんだけど」
「それは初耳ですな」
森の中とは違い見渡しの良い草原を、二人は歩いていた。
ラムダの横をひょこひょこと跳ねるようにニシキは歩く。姿こそ痩せて腰の曲がった老爺ではあるが、見た目の印象よりもずっと身軽だった。
「ところで先程からシロタエ様のお姿が見えませんが、いかがされておいでですか?」
「寝てるみたい」
衣服の、膨らんだ腹の辺りを示しながらラムダが答えると、ニシキが指を咥えんばかりの勢いで言う。
「おお、おお、なんと羨ましい……」
「ニシキおじいさんはヘビの家来なの? シ、シロ、ェ様? って呼んでるよね」
「ほっほ、シロタエ様の御名はこの辺りでは耳慣れない音ですかな。ワタクシとシロタエ様の関係は、そうでございますなあ……ムスコ、いや弟? さてなんと申しましょうか」
「息子か弟? じゃあヘビって実はすっごいおじいさん?」
「さあ、いくつに見えましょう?」
「二十幾つだと思ってた」
ニシキが何か言おうとして、開きかけた口を閉じた。二人同時に立ち止まり、前方を見据える。地平の先、その上空に黒い煙が立ち上っている。
「何やら剣呑な香りがいたしますな。いかがなさいますか?」
「行くよ。テラを探さなきゃ」
東西二つの国の境。そこに最も近いこの街は神殿から派遣された兵が斥候を目的として常駐しており、今は戦場と化していた。
そこかしこに転がる街の住民、そして兵士の死骸。炎が家を焼き、街は紅に染まる。
凄惨な光景の中、一人の少女が誰かの名を呼びながら、彷徨い歩く。
少女の背後に影が迫る。
鷹の意匠のエンブレムが刻まれた剣。東の神殿兵だ。
炎に閃く銀の切っ先が、飢えた獣の爪の如く、か弱い獲物を屠ろうとしたその瞬間。
ギィンという鋭い音と共に剣が弾け飛んだ。一瞬の間に武器を失った兵が何事かと理解するよりも早く、彼の思考は閉ざされる。悲鳴を上げることさえ許されなかった。鎧に包まれた体は血しぶきを上げ、地面に倒れて、重い音が鳴る。
音に気付いて振り返る少女の目端に、ひらりと黒い何かが横切った。
それは風変わりな衣の裾だった。纏う人間の動きに合わせて、ひらりひらりと翻る様はまるで宙を舞う蝶のよう。
黒い衣に身を包んだ少年―――ラムダは襲い来る兵士を次々と刀の餌食にしてゆく。鮮やかな身のこなしで攻撃を避け、相手の懐に入り込み、刃を振るう。表情は無に等しい。
淡々と敵を斬り伏せ、返り血を浴びるその姿に、命を救われた少女は瞬きも忘れて見入った。
だがその胸にあるのは感謝でも憧れでもない。
恐怖だ。
少女の目に、ラムダは恐ろしい怪物のように映っていた。
凍り付いて動かない少女の背を皺だらけの手が宥めるように数度叩く。
「さぁさ、こちらへ。逃げた住民たちは教会に避難しておるようです。このジジィと共に参りましょ」
教会には数人の大人と子供がいた。
ニシキが少女を送り届けると、小さな男の子が声をあげて泣きながら駆け寄ってきた。少女の弟で、二人で逃げる途中はぐれてしまったらしかった。
大人たちがニシキに感謝の言葉を伝えていると、教会の扉が開いた。敵襲かと大人たちは身構えたが、
「おお、ラムダ殿。よくぞご無事で」
恩人の態度から、相手が味方であることを悟り、ほっと胸を撫で下ろす。
ラムダは顔や髪、服が血で汚れていたが、気にせず、歩み寄って住民たちに告げる。
「街の中にもう敵はいません。それとあっちの、無事な建物の影に隠れる子供が何人か見かけたから後で誰か見に行ってあげてください」
「ああ、ああ! ありがとうございます! 本当に、なんと言えばいいのか!」
司祭らしき身なりの女性が膝を床につき、両手の指を組んで祈るように言った。
他の大人たちもまた、深く頭を下げていた。
安堵と、それ以上に多くを失った悲しみが押し寄せ、感情が溢れて泣き出す者もいた。その痛ましい様子にラムダは何も言えず、けれどふと動かした視線の中に他とは異なる反応を見つける。
大人たちが泣き崩れる後ろに、先程助けた少女がいた。
ラムダよりも恐らくやや年下の、テラと似た年齢であろう少女。
彼女は幼い弟を強く抱きしめ、青ざめた顔で、怯えた瞳でこちらを見ていたが、目が合うとびくりと肩を跳ねさせた。
ラムダは静かに視線を外すと、大人たちに向き直って言う。
「先を急ぐので、僕たちはもうここを発ちます。ただその前に、一つ、知っていたら教えてほしいことがあって」
司祭の女性が、弾かれたように顔を上げる。
「なんでしょうか? 私たちのお役に立てることでしたら」
「テラという女の子を知りませんか? 十三歳の女の子で、髪の色は僕と同じで」
「いえ、この街にはそうした人はおりませんし、旅の方も近頃はあまり……」
「そうですか、どうも有難うございます」
ラムダは軽く頭を下げて、それから背を向けた。
ニシキが後からついてくる。
扉を開き、出て行く時に、少しだけ振り返って言う。
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