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第二章 その感情の名を知る
46、水面下で何かが始まっているような、あらゆる違和感
しおりを挟む 後日、百家神社の宮司とお兄さんのお父さんが今後の話をするという話を聞いた。
宮司さんは百家くんのお祖父ちゃんだ。宮司ってお宮の代表者の事らしい。
彗煉寺ではお兄さんとしばらく話をして、時間になったので帰ることを伝えると、
「あの、君は携帯電話持ってるの?」
「うん、持ってるよ。アドレス交換する?」
「出来たら、そうしてもらえないかと思って」
「いいよ、家族以外でアドレス交換するのはこれで二人目」
私の言葉にクッと笑うと、お兄さんはいぶし銀のような渋い銀色の薄い二つ折りの携帯を取り出した。どっかの携帯会社が限定販売で出していたやつに似てる。
アドレスを交換して携帯をポケットに入れると、その上を大切そうに手で押さえて私を正面から見た。
「ありがとう。今日は会えてよかった」
「私も会えて嬉しかった。じゃあね」
手を振って別れる。
待ち合わせの場所に歩いて行く途中、お母さんとお祖父ちゃんも丁度用事が終わって本堂から出た所だったので声をかける。
「おお、麻美、暑いのにどこにおったんかの。いや~今日は暑いのお」
お祖父ちゃんは首に下げたタオルで顔を拭いている。
「えっと、知り合いに会ったから木陰で話をしてたの」
「知り合い?珍しいのお、アルバイトの道の駅の人か?」
「うん」
「本堂の中は涼しかったし、和菓子とお茶も頂いたよ、麻美も一緒にくれば良かったねって話てたの」
お母さんは帽子を被りながらそう言った。
「え~いいなあ。喉乾いたから自販でジュース買って車に乗るね」
「そうしなさい。ほら、そこの休憩所の右に置いてあるわよ」
緑茶のペットボトルを購入して飲みながら家に帰った。
家に帰ってから、お兄さんから『今日は話を聞いてくれてありがとう』というめメールがきたので。私は『会えて良かった。色々教えてくれてありがとう』と返事を返した。
それから百家くんにもお兄さんに彗煉寺で会った事をメールで知らせると直ぐに電話がかかってきた。
「白狐に東神家の事を注意するように言われたから、祖父ちゃんに東神家の事を相談したんだ。それで祖父ちゃんが動いてくれた。祖父ちゃんも前に向こうにはお祓いを拒否されたけど、ずっと気になってたらしい。この間、東神家に祖父ちゃんが行った時、俺も付いて行ったんだ」
「えっそうなの、どんな感じだった?」
「悪いモノが引き寄せられて来ていた。井戸の障りは家自体に憑いてる感じだな。取り敢えず、外からの邪気は跳ね返し、中の悪いモノは出せない様に護符を貼りつけて、結界石を置いて帰ったけど」
百家くんが先に動いてくれたらしい。頼りになる人だ。お寺でも白狐が私の周りで跳ね回っていたけど、どうやら私がお兄さんに会った事も私が連絡するよりも先に白狐から聞いていたらしい。
白狐はお兄さんが悪いモノに憑かれないように守ってくれているようだ。
「東神家には塙宝も一緒に行った方がいいと白狐が言ってる。来てくれるか?」
「うん、行ってもいいなら行かせてもらうよ。でも、関係者じゃないのに行っても大丈夫かな?」
「白狐はお前は関係者だって言ってるけど、確かに東神家にとっては神社の者じゃないのに来てるのは変に感じるかもしれないから、巫女としてついて来てもらうよ。装束をそれなりにして行けば見た目問題ないだろ。そのつもりだったし」
「え、う、うん?」
正直、そんな事を言われるとも思っていなかったので、ものすごく驚いた。
「今年の年末は巫女さんのアルバイトするんだろ、先に練習出来ていいじゃないか?」
「そんな簡単にいうけど、着付けとか教えてもらえるの?」
「伯母さんに頼んでおくよ。いつもアルバイトの子達にも教えてるから大丈夫。行く前に少し練習すればいいよ。ああ、それに祖父ちゃんが来てくれるならアルバイト代を出すって言ってた」
「えっ、アルバイト代まで貰えるの?」
「そりゃ巫女さんとしてついて来てもらうし、塙宝は俺の神力を上げてくれる相手だから、そのあたりも家で話をしてる」
百家という家がどんな歴史を辿ってきた家なのかよく知らないけど、不思議な力を代々持ち続けてきた一族なのだろうと何となく推測した。でなければ常識から外れたこういう話は普通に受け入れられはしない。
「なんか至れり尽くせりで申し訳ないかんじ」
「お前はちゃんと分かってないけど、俺の貴重な相棒だからな」
「相棒かあ・・・」
「何だよ、そのあんまり嬉しそうじゃない返事は」
「そんなことないよ、聞きなれない響きだから噛み締めてただけ。東神家の事で動いてくれて正直すごく嬉しいし感謝してるよ。ありがとう」
「え、そ、そうか。何だよ、突然。ほんとお前って面白いやつだな」
私がお礼を言うと、百家くんは突然あわあわした。百家くんこそ面白いと思う。
次の日に冷房の効いた部屋で衣装合わせをしようと百家くんが言ってきたので、お母さんには少し早いけど巫女さんのアルバイトの為に着付けを習いに行くと言ったら、コンタクトレンズにしていきなさいと言われた。
ついでに私の適当に切ってある髪の毛をカット用のハサミで揃えてくれた。
「麻美も今度から美容室で髪をちゃんとしてもらおうね。三つ編みもそろそろ卒業かな」
「えっ何で?」
「だってお母さん高校生で三つ編みしてる女の子見たこと無いし、逆にその眼鏡と三つ編み目立ってるよ」
うっと痛い所を突かれた。逆に目立っているとは、それも困る。
「眼鏡はもっと薄いレンズで作れるそうだから今度作りに行こうか、今は可愛い眼鏡もたくさんあるし」
「そんなに私の為に散財しなくていいのに」
「まあっ、娘の為に使わなくていつ使うの?それにその程度は何でもないよ。お母さんにもっと頼ってね」
「・・・ありがとう、お母さん」
そうして、新しい眼鏡は直ぐに作ってもらった。お母さんの行動力は凄いと思う。
眼鏡のレンズは薄く、ちょっとモード系というのか、おしゃれな眼鏡を買ってもらった。眼鏡一つで印象が変わるのでとても驚いた。
前後して百家神社に巫女装束の着付け等を習いに何回か行くことになった。百家くんの伯母さんはとても面白くて優しい人だ。そして、おやつは美味しかった。
宮司さんは百家くんのお祖父ちゃんだ。宮司ってお宮の代表者の事らしい。
彗煉寺ではお兄さんとしばらく話をして、時間になったので帰ることを伝えると、
「あの、君は携帯電話持ってるの?」
「うん、持ってるよ。アドレス交換する?」
「出来たら、そうしてもらえないかと思って」
「いいよ、家族以外でアドレス交換するのはこれで二人目」
私の言葉にクッと笑うと、お兄さんはいぶし銀のような渋い銀色の薄い二つ折りの携帯を取り出した。どっかの携帯会社が限定販売で出していたやつに似てる。
アドレスを交換して携帯をポケットに入れると、その上を大切そうに手で押さえて私を正面から見た。
「ありがとう。今日は会えてよかった」
「私も会えて嬉しかった。じゃあね」
手を振って別れる。
待ち合わせの場所に歩いて行く途中、お母さんとお祖父ちゃんも丁度用事が終わって本堂から出た所だったので声をかける。
「おお、麻美、暑いのにどこにおったんかの。いや~今日は暑いのお」
お祖父ちゃんは首に下げたタオルで顔を拭いている。
「えっと、知り合いに会ったから木陰で話をしてたの」
「知り合い?珍しいのお、アルバイトの道の駅の人か?」
「うん」
「本堂の中は涼しかったし、和菓子とお茶も頂いたよ、麻美も一緒にくれば良かったねって話てたの」
お母さんは帽子を被りながらそう言った。
「え~いいなあ。喉乾いたから自販でジュース買って車に乗るね」
「そうしなさい。ほら、そこの休憩所の右に置いてあるわよ」
緑茶のペットボトルを購入して飲みながら家に帰った。
家に帰ってから、お兄さんから『今日は話を聞いてくれてありがとう』というめメールがきたので。私は『会えて良かった。色々教えてくれてありがとう』と返事を返した。
それから百家くんにもお兄さんに彗煉寺で会った事をメールで知らせると直ぐに電話がかかってきた。
「白狐に東神家の事を注意するように言われたから、祖父ちゃんに東神家の事を相談したんだ。それで祖父ちゃんが動いてくれた。祖父ちゃんも前に向こうにはお祓いを拒否されたけど、ずっと気になってたらしい。この間、東神家に祖父ちゃんが行った時、俺も付いて行ったんだ」
「えっそうなの、どんな感じだった?」
「悪いモノが引き寄せられて来ていた。井戸の障りは家自体に憑いてる感じだな。取り敢えず、外からの邪気は跳ね返し、中の悪いモノは出せない様に護符を貼りつけて、結界石を置いて帰ったけど」
百家くんが先に動いてくれたらしい。頼りになる人だ。お寺でも白狐が私の周りで跳ね回っていたけど、どうやら私がお兄さんに会った事も私が連絡するよりも先に白狐から聞いていたらしい。
白狐はお兄さんが悪いモノに憑かれないように守ってくれているようだ。
「東神家には塙宝も一緒に行った方がいいと白狐が言ってる。来てくれるか?」
「うん、行ってもいいなら行かせてもらうよ。でも、関係者じゃないのに行っても大丈夫かな?」
「白狐はお前は関係者だって言ってるけど、確かに東神家にとっては神社の者じゃないのに来てるのは変に感じるかもしれないから、巫女としてついて来てもらうよ。装束をそれなりにして行けば見た目問題ないだろ。そのつもりだったし」
「え、う、うん?」
正直、そんな事を言われるとも思っていなかったので、ものすごく驚いた。
「今年の年末は巫女さんのアルバイトするんだろ、先に練習出来ていいじゃないか?」
「そんな簡単にいうけど、着付けとか教えてもらえるの?」
「伯母さんに頼んでおくよ。いつもアルバイトの子達にも教えてるから大丈夫。行く前に少し練習すればいいよ。ああ、それに祖父ちゃんが来てくれるならアルバイト代を出すって言ってた」
「えっ、アルバイト代まで貰えるの?」
「そりゃ巫女さんとしてついて来てもらうし、塙宝は俺の神力を上げてくれる相手だから、そのあたりも家で話をしてる」
百家という家がどんな歴史を辿ってきた家なのかよく知らないけど、不思議な力を代々持ち続けてきた一族なのだろうと何となく推測した。でなければ常識から外れたこういう話は普通に受け入れられはしない。
「なんか至れり尽くせりで申し訳ないかんじ」
「お前はちゃんと分かってないけど、俺の貴重な相棒だからな」
「相棒かあ・・・」
「何だよ、そのあんまり嬉しそうじゃない返事は」
「そんなことないよ、聞きなれない響きだから噛み締めてただけ。東神家の事で動いてくれて正直すごく嬉しいし感謝してるよ。ありがとう」
「え、そ、そうか。何だよ、突然。ほんとお前って面白いやつだな」
私がお礼を言うと、百家くんは突然あわあわした。百家くんこそ面白いと思う。
次の日に冷房の効いた部屋で衣装合わせをしようと百家くんが言ってきたので、お母さんには少し早いけど巫女さんのアルバイトの為に着付けを習いに行くと言ったら、コンタクトレンズにしていきなさいと言われた。
ついでに私の適当に切ってある髪の毛をカット用のハサミで揃えてくれた。
「麻美も今度から美容室で髪をちゃんとしてもらおうね。三つ編みもそろそろ卒業かな」
「えっ何で?」
「だってお母さん高校生で三つ編みしてる女の子見たこと無いし、逆にその眼鏡と三つ編み目立ってるよ」
うっと痛い所を突かれた。逆に目立っているとは、それも困る。
「眼鏡はもっと薄いレンズで作れるそうだから今度作りに行こうか、今は可愛い眼鏡もたくさんあるし」
「そんなに私の為に散財しなくていいのに」
「まあっ、娘の為に使わなくていつ使うの?それにその程度は何でもないよ。お母さんにもっと頼ってね」
「・・・ありがとう、お母さん」
そうして、新しい眼鏡は直ぐに作ってもらった。お母さんの行動力は凄いと思う。
眼鏡のレンズは薄く、ちょっとモード系というのか、おしゃれな眼鏡を買ってもらった。眼鏡一つで印象が変わるのでとても驚いた。
前後して百家神社に巫女装束の着付け等を習いに何回か行くことになった。百家くんの伯母さんはとても面白くて優しい人だ。そして、おやつは美味しかった。
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