こちら、異世界対策課です 〜転生?召喚?こちらを巻き込まないでくれ!〜

依智川ゆかり

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ラストケース 人柱:被害状況『山賊』

4-1、やってきました、『山賊』案件

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 今日も今日とて、異世界対策課は職務を全うする。



「……またあなたですか」



 目の前にいるのは、顔馴染みの女神だ。
 ゲンナリと肩を落とした私に、彼女はおっとりと笑んだ。


「もう五人目の召喚ですよね」
「そうよねぇ。……何だったかしら、『窃盗』になるのかしら?」
「いえ、五人目からは『強盗』ですね。そろそろ良い加減にして頂けないですかね」
「ごめんなさいねぇ、私だって困っているのよー」


 彼女の世界では魔力は何よりも重要視されるものらしい。
 しかし、魔力の高さはほぼ血筋によって決まるため、高魔力者同士の婚姻を続けた結果、血があまりにも近くなりすぎて、虚弱体質で生まれる者が増えてしまった。 
 
 困った女神が思い付いたのが、異世界召喚だ。  
 こちらの世界から魔力が高い人間を呼び寄せられる上、新しい技術や知識を取り込む事も見込める。自世界の発展をさせるのに、もってこいの人材なのだ。
 
 とある国の王が召喚された少女を娶ったのを皮切りに、定期的に王族や高位貴族の婚姻相手として召喚するというのが恒例になってしまったらしい。迷惑極まりない。

 
「だってあの子達、勝手に召喚しちゃうんだもの」
「そもそも、召喚の儀式の方法はどうやって知ったんですか。……まさか、教えたりしてないでしょうね?」
「そんな事してないわよー。勝手に調べたんじゃないのー? 私の図書館で、知識の一部を公開しているから」
「そんな危険極まりない図書館、とっとと閉館してくださいよ!?」


 異世界転生などという禁術を、気軽に公開しないでほしい。
 暴発して次元の狭間に大穴が空いたらどうするんだ。大惨事にも程があるぞ。
 
 危機感も何もなく、いつも通りおっとりと答える彼女に頭を抱えていると、突然頭の中に念話が入った。



『──課長、見守、今の案件が終わったら、すぐに会議室に集合してくれないか』



 香山だ。
 直ぐに応答する。


『何かあったのか?』
『緊急招集。……『山賊』案件だ』


 香山の言葉に一瞬息を呑んだ。
 思わず、見守くんと視線を見交わせて小さく頷き合う。



『……了解。こっちが終わったら、すぐに向かう』




 
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