21 / 35
これまでの裏話
ケース1裏 sideプリンセス鬼小折1 生まれたての神様
しおりを挟むあたしは、『菩提樹のプリンセス』という小説が元となって生まれた神だ。
「すごい面白かった! 最高!!」
「鬼小折先生、神! リンプリも神!!」
そんな人間達の多くの賞賛が、あたしを生んだ。
プリンセス鬼小折って名前はね、自分で付けたの。
だって、『菩提樹のプリンセス』は小説のタイトルでしょ? そのまま呼ばれるのは、ちょっと違うかなって思ったから。
『菩提樹のプリンセス』の『プリンセス』と、鬼小折まゆり先生の『鬼小折』を取って、プリンセス鬼小折。
可愛いでしょ? 自分では気に入ってるんだ。
生まれたての人間の赤ちゃんはただ泣く事しか出来ないけど、生まれたての神様は少し違ったりする。
自分でもちょっと不思議なんだけど、頭の中にちゃんと自分がやるべき事とか知識が入ってるっていうのかな。誰にも教えられてない筈の事を知ってるって感じ。
だって、あたしは神様だもの。
何でも出来て、何でも知ってるような気になっていた。
……それが本当は間違いだなんて、欠片も疑わなかったんだ。
「異世界転生って知ってる?」
そう教えてくれたのは、偶然出会ったあたしと同じように創作物を元に神格化した神様だった。
そういう経緯で生まれる神様って、実は少ないらしい。
つまり、数少ないあたしの先輩って事だ。
思わぬ共通点に色々と盛り上がった中で、話に出て来たのがその『異世界転生』だった。
「いせかい……てんせい?」
「あ、おにこちゃん知らないの? 最近の流行りだよ?」
先輩が言うには『異世界転生』は最近の神々の間──特にあたしのような自分で異世界を自在に創れる神達の中で、一大ブームを巻き起こしている遊びのようなものらしい。
「自分で創造した世界の中に、実際の人間の魂を入れてその様子を見て楽しむんだよね。おにこちゃんだったら、やっぱり『リンプリ』の世界じゃない?」
「え?」
「『リンプリ』の世界を自分で創って、死んじゃった人間の魂を転生させて、登場人物……例えば主人公の役をやってもらうの。面白そうでしょ?」
「何それ、面白そう!!」
主人公を変えるだけで、物語は大きく変わる。
もし、あの時あの人がああしていたら。
もし、あの事件が起こらなかったら。
そうやって、もしかしたらあるかもしれなかった新たな『リンプリ』の世界が見れるかもしれない。物語の可能性が広がるかもしれない。
だって、転生チートとか逆ハーレムとか、すっごい面白そうだもの!
そう思ったら、居ても立ってもいられなかった。
「もしかしたら古い神様達はあまり良い顔しないかもしれないけど、やる価値はあると思うよ」
──別れ際にその神様が言った言葉の意味を、もっとよく考えれば良かったのにね。
まずは、自分の領域内に『リンプリ』の世界を創る。
そして、主人公であるリン役をやってもらう人を探す為に、現世に降りた。
「誰にしようかなぁ……。あ、あの子良いかも。『ハヤマリオン』ちゃん」
リンとリオンで、一字違い。
もうこれは運命なんじゃないかな。
そう思って、浮かれながら彼女を連れて、自分の領域へと帰った。
しばらくリオンちゃんが『リンプリ』の世界で右往左往する姿を見守っていたある日、常世管理局の異世界対策課っていう所から呼び出された。
……異世界召喚が禁止行為って、どういう事なの???
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる