こちら、異世界対策課です 〜転生?召喚?こちらを巻き込まないでくれ!〜

依智川ゆかり

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これまでの裏話

ケース1裏 sideプリンセス鬼小折1 生まれたての神様

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 あたしは、『菩提樹のプリンセス』という小説が元となって生まれた神だ。


「すごい面白かった! 最高!!」
「鬼小折先生、神! リンプリも神!!」
 

 そんな人間達の多くの賞賛が、あたしを生んだ。
 
 プリンセス鬼小折おにこおりって名前はね、自分で付けたの。
 だって、『菩提樹のプリンセス』は小説のタイトルでしょ? そのまま呼ばれるのは、ちょっと違うかなって思ったから。

『菩提樹のプリンセス』の『プリンセス』と、鬼小折まゆり先生の『鬼小折』を取って、プリンセス鬼小折。
 可愛いでしょ? 自分では気に入ってるんだ。



 生まれたての人間の赤ちゃんはただ泣く事しか出来ないけど、生まれたての神様は少し違ったりする。
 自分でもちょっと不思議なんだけど、頭の中にちゃんと自分がやるべき事とか知識が入ってるっていうのかな。誰にも教えられてない筈の事を知ってるって感じ。

 だって、あたしは神様だもの。
 何でも出来て、何でも知ってるような気になっていた。
 
 ……それが本当は間違いだなんて、欠片も疑わなかったんだ。



「異世界転生って知ってる?」


 そう教えてくれたのは、偶然出会ったあたしと同じように創作物を元に神格化した神様だった。
 
 そういう経緯で生まれる神様って、実は少ないらしい。
 つまり、数少ないあたしの先輩って事だ。

 思わぬ共通点に色々と盛り上がった中で、話に出て来たのがその『異世界転生』だった。


「いせかい……てんせい?」
「あ、おにこちゃん知らないの? 最近の流行りだよ?」


 先輩が言うには『異世界転生』は最近の神々の間──特にあたしのような自分で異世界を自在に創れる神達の中で、一大ブームを巻き起こしている遊びのようなものらしい。
 

「自分で創造した世界の中に、実際の人間の魂を入れてその様子を見て楽しむんだよね。おにこちゃんだったら、やっぱり『リンプリ』の世界じゃない?」
「え?」
「『リンプリ』の世界を自分で創って、死んじゃった人間の魂を転生させて、登場人物……例えば主人公の役をやってもらうの。面白そうでしょ?」
「何それ、面白そう!!」


 主人公を変えるだけで、物語は大きく変わる。
 
 もし、あの時あの人がああしていたら。
 もし、あの事件が起こらなかったら。

 そうやって、もしかしたらあるかもしれなかった新たな『リンプリ』の世界が見れるかもしれない。物語の可能性が広がるかもしれない。


 だって、転生チートとか逆ハーレムとか、すっごい面白そうだもの!


 そう思ったら、居ても立ってもいられなかった。



「もしかしたら古い神様達はあまり良い顔しないかもしれないけど、やる価値はあると思うよ」



 ──別れ際にその神様が言った言葉の意味を、もっとよく考えれば良かったのにね。



 まずは、自分の領域内に『リンプリ』の世界を創る。
 そして、主人公であるリン役をやってもらう人を探す為に、現世に降りた。
 

「誰にしようかなぁ……。あ、あの子良いかも。『ハヤマリオン』ちゃん」


 リンとリオンで、一字違い。
 もうこれは運命なんじゃないかな。
 
 そう思って、浮かれながら彼女を連れて、自分の領域へと帰った。



 しばらくリオンちゃんが『リンプリ』の世界で右往左往する姿を見守っていたある日、常世管理局の異世界対策課っていう所から呼び出された。



 ……異世界召喚が禁止行為って、どういう事なの???




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