この状況には、訳がある

兎田りん

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星の子と遊ぼう

星の子とおやつタイム

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「あの後どう?ラキアータ神に話通じた?」
 「できた」ではなく「通じた」なんですね…
「話はしましたが、改善の気は無さそうでしたね」
「まぁ…そうだろうね」
 神様ですもんね。
「話聞いてくれる分、ラキアータ神は優しいよね。愛し子であっても話聞く姿勢すら見せないの結構いるよ。姿見せないのもいるし」
「確かに「神頼み」通じた事なかったです」
 流石に「神様?仲魔図鑑で名前覚えました」レベルの信仰心では無理だよな、って思ってはいましたけど。
精霊信仰万物に魂が宿る精神が独特に進化したガラパゴスヤバいよね」
 わかる。

「お待たせいたしました<爆とろんパンケーキ~本日はカスタード気分に季節のフルーツを添えて~>です」
 他の人には理解の範疇外であろう神様トークをしている俺たちの前に、アンドロインのマスターが注文の品を運んできた。
「うわぁ!これは凄い!ふっかふかじゃないか!」
 レミール様が凄く嬉しそうそうで何よりです。予約した甲斐がありました。
「これがファルム君のおすすめなんだね!二日前までに予約?するべき品だね!」
 俺が初めてこのパンケーキに出会ったのは、お隣の雑貨屋アンドリブのオーナーに連れられた時。「おすすめだよ」と、目の前に配された時の衝撃は忘れられない。当時の俺の表情は今のレミール様と同じくらい輝いていたに違いない(自画自賛)。

 爆パンケーキ(通称「爆パン」)の頭に着く爆○(爆れつとか爆盛りとか)の言葉と添え物は、仕入れの状況やマスターの前日の気分で変わる。
 盛大なアレンジも歓迎だが、俺はやはり拘り抜いたホイップ爆盛りが無限の可能性を感じるから好きだ。
 この感覚はなんだかんだ言ってポテトチップスの味の好みが地域限定や季節限定を一周した後、うすしおに落ち着くのと同じだと思っている。この件に関して異論は認めるが、意思は曲げない。
 本日の爆パンに話を戻すと、昨日はいい卵と心惹かれるフルーツに出会ったのだろう。
 セットドリンクの紅茶をカップに注ぎ中のマスターも、自信作を喜んでもらえて嬉しそうだ。
 周囲の視線も喜ぶレミール様と爆パンに集まっている。これでまた暫く爆パンの予約埋まっちゃうんだろうな。
 マスターに余裕が出来た頃を狙ってまた頼もうかな。その頃には兄上も戻ってきているだろうから、慰労を兼ねて誘ってみよう。
「ファルム君が家族大好きで微笑ましい」
 ありがとうございます…って、何をお持ちですか?

 爆パンを色んな角度から見ているレミール様が手にしているのは、前世で「無いと死ぬ」とまで俺に思わせた中毒性の高いあの板ですよね?
 見たことないもの持って爆パンを様々な角度から見てる人いたら、イケメンじゃなくても視線集めちゃうよね(納得)
「僕の眷属に再現させたいから記録は残しておかないと」
 言いながらパシャパシャやってるその品はやっぱりスマ…え?魔法の記録板?どう見てもスマホですよね?
 ゲーム…いや、WiFiどころか電波がないから無理か。
 ハマってたあのゲーム、連続ログイン記録が途絶えたのが一番の心残りです。
「味が記録できないのが残念でならない」
 流石に画像(動画含む)だけですものね。
 俺も紅茶が飲み頃の温度な内に食べてしまおう。…ご褒美の味がして最の高。

「マスター連れて帰りたいけど、やっぱりダメだよねぇ…」
 世界の楽しみを奪うのはおやめ下さい。
「充電どうしてるんですか…」
 電気の概念がほぼ無い(ある国があるらしい)この世界で、気に入ったもの撮りまくってたらあっという間に無くなるでしょ?
「ソーラー充電付きモバイルバッテリー」
「あぁぁぁー…」
 その手があったか!自然の力は偉大ですね!
「日差しが届かなくても光魔法あるし」
 レミール様しかできないやつ!
 …そもそもどうやって入手したんですか?羨ましい。俺も欲しい。何も考えずにゲームしたい。
「僕らはマジックバッグ以外の収納も持ってるからねー。ああ、このフルーツの蕩け具合もいいね」
 上位存在の特権だった模様。あの便利さを知っているからこそ羨ましいと心から思う。
「環境整ってないと脆い鈍器だからね」
 そう。俺の今の住環境では、充電切れたらただの「ちょっと硬い板」になるんだよなぁ…
 ソーラーバッテリー付きならネット以外の機能使えるからいけるかとも思ったんだけど。
「オーバーテクノロジーはトラブルの元だよ?」
 ………わかっています、わかっていますとも!でも見ちゃったからには、未練溢れまくりなんですよ!

「カメラ作っちゃえばいいのに」
 簡単に言わないでください。
「仕組みを知らないので作れないんですよ…」
 流石に知らないものを構築する能力は持ってない。外側だけならできるけど、スマホカメラちょっとかっこいい箱作っても中身がないなら俺だけが「欲しいのは中身ィ…」って歯ぎしりするだけじゃないか。
「カメラの仕組み自体は覚えちゃえばそう難しくないんだけどね。この世界は魔法もあるし代用できるでしょ」
 またそんな「ね、簡単でしょ?」みたいに言うー。
「何事もチャレンジだよ。まぁ…他の転生者見つけるのも手段の一つかな」
「それ」

 レミール様の「転生者」で思い出した。この世界は侵略されている。
「規模の大きな話きたね」
 ラキアータ様が知らない内に転生者だの転移者だの呼ばれて、よくわからないゲーム世界が展開されていたら立派な侵略ですよ。
「ああそうか。アレもヒーロー云々ほざいてたな」
 レミール様にも思い当たる節があって何よりです。喜ばしくない事でしょうけど。
「いやでもあの子でしょ?大丈夫だって」
「ん?」
 何かご存知の口振りですね。
「あっ…いやでも秘密じゃないし」
 口を押さえる姿も絵になりますね。いや、そうじゃない。
「ラキアータ様からの無茶振りを一つ減らすためにも、教えてください!」
 ゲーム世界が近場で起こると多分、いや確実に巻き込まれる予感しかしないんですよ!もうミーコちゃんは嫌だ!
「僕が世界で起こることに関与できるのは、神が「もう無理!」って匙を投げてきた時だけと決めているんだ」
 つまりどういうことだってばよ。
「世界を救うのは、君だ」
 嫌ですー!ダラダラ才能の無駄遣いして青春を謳歌したいですー!

「ははは、招かれたものだから仕方ないね」
 <招き猫>マジトラブルの元じゃないか…
「マスター、<季節のパルフェ>お願いできる?」
「承りました」
 あ、これ話してくれないやつだ(確信)

 結局有耶無耶にされて、スイーツを楽しんだだけの日になった。
 いや、いいんだけどね。
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