この状況には、訳がある

兎田りん

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愛だけで生きていけると思うなよ

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「フィー見て!可愛い子いっぱいいるぅ!」
「オル兄様落ち着いて下さい」
「なんで俺ここにいるの?」
 対面から三日。学園の視察が叶い、ライオルノ王子が学園にやってきた。
 ロメオロス王子?青の館に置いてきましたよ?アーデルハイド殿下を付けて。
 そう。ロメオロス王子にアーデルハイド殿下が付くということは、学園の案内役が俺に回って…くるのはおかしいよね?
 普通こういうのって学園長とか教授とか大人がやるのでは?
 あと、ライオルノ王子。浮かれすぎです。妹君にフォローさせないでください。メディナツロヒェン嬢も一般学生と一緒にドン引きしています。
 俺?周囲に被害か及ばないレベルなら放置ですよ?細かいこと気にしてたら終わらないもの。

 視察の話が出た時、ライオルノ王子が
「学園は、制服があるんだよね?」
 と、切り出してきた。
「ええ。制服着用も学習の一つですので」
 学校は小さな社会だからルールを守ることは大事だということを学ぶ場でもある。
 マッチェレル学園の制服は基本形を崩し過ぎなければアレンジも目溢ししてくれるので、前世の学校に比べればかなり緩い方だと思う。
 高等部以上になると「どこの秘密結社ですか?」みたいなローブ着たやつがチラホラいて、「何だその格好は」「下に制服着てるからセーフ」みたいなやり取りもあるらしい(兄上談)
 そんなユルユルな制服着用という最低限のルールが守れない奴はどこに行ってもダメだろう。
 あと、制服は身分差を減らす(無くなりはしない)のに適した道具だと俺は思う。
 同じ服を着ていればパッと見平等に見える。学園の「学びは平等」という理念に沿うものだ。
 なんだかんだそれっぽい事を並べるけど、学生は結局「着る服に悩まなくていいのがいい」に辿り着くんだよね。

 私服だと「あいつまた同じ服じゃん」とか指さされて嫌な思いするし。
 いいじゃないか。好きな服はいつも着たいから何枚も買うんだよ。某リンゴメーカーの人みたいに有名にならないとダメなのかよ。何枚も持ってるって思わないのかよ!着心地が落ちないようにローテーション組んできっちり洗濯もしてるわ!女子はもっとチェック厳しいらしいな!こっちでも貴族はパーティ毎に服を変えないとダメらしい(母上談)し、つくづくめんどくさい…
 …あ、ウィー君がこっち見てる。心の闇は今は閉まっておこうね…

 「メロメ国にも本格的な学校を建てようと計画が上がっていてね。制服も参考に出来ればと思っているんだよ」
 そうですか。取ってつけたような言い訳ですね。問い詰めはしませんが。
「私が着ているのは初等部男子の制服です」
「シンプルだけど上品なスタイルだね」
 ライオルノ王子が瞳を輝かせながら制服に食いついてくる。
 俺の制服は兄上と揃いのラインなど、ささやかなアレンジになっているので見本としては悪くない筈だ。
「これは、女生徒の制服姿が楽しみだなぁ!」
 うわぁ、いい笑顔だ。やっぱりそっちが目的ですよね?
 女学生近づけないように根回ししておこう。
「イニフィリノリス王女殿下やラフテュ伯爵令嬢も学園では制服を着用されていますよ」
 聞き流されるだろうとは思っているが、これは一応言っておかねば。青の館に戻ったら見せてもらうといいですよ。
 ライオルノ王子の制服(の向こうに見える女学生)への食いつき方に、アーデルハイド殿下がちょっと引いていた。
 殿下のウィー君に対する熱もこんな感じですよ?ご自身を振り返って下さいね。
 メロメ国御一行様が青の館に引き上げた後、ロシェル様にウィー君のモフ毛ケアをお願いしておいた。ケアできただろうか…

 学園視察に時を戻そう。
「オル兄様、こちらが高等部の図書館ですわ。こちらは算術や領地経営、ラキアラス王国の法律に関する図書が多く所蔵されていますの」
「………うん。なんで書庫巡りになっているのかな?」
 イニフィリノリス王女の行動エリアって「本があるところ」しかないですもの…
「王女殿下の行くところとしては全く矛盾がありませんわね」
「そうなの?」
 メディナツロヒェン嬢が書庫巡りの理由を簡潔に説明すると、ライオルノ王子が驚いた。
「ご存知ないのですか?」
「わたくしは兄の活動圏内に入ることは稀でしたもの」
 わかる気がする。ライオルノ王子は本を読むより外に出て人と交流する事が好きそうだ。
 王女様も呼ばれないと出てこないだろうし、互いに気にかけてはいてもコミュニケーション取り合うとかなさそう。
「妹とはいえ女性の好みを把握出来ていなかったなんて…」
 違う。そこじゃない。
「ショックの受け方がおかしい」
「わたくしの兄たちは大体こんなものですわ」
 それもどうかと思う。
「メロメ国民の傾向ですわ。愛の国らしいでしょう?」
「えぇ…?」
 それ、愛の国関係ないですよね?
 愛の女神サヴィーニア様に投げても解決しないやつじゃないか。

 この後は軽く昼食を摂って、今の住処である魔研の書庫に。
 俺の思惑の一つ「学園の女学生とライオルノ王子を極力接触させない」は(多少の根回しはしたものの) イニフィリノリス王女のおかげで労せずに達成しそうだ。
 昼食も高等部のマナールーム(賓客をもてなす食事の作法等を学ぶための部屋。授業以外でも静かな環境下での昼食や会食、お茶会なんかに使用される。予約制)だし、大きな混乱はないだろう。
 唯一にして現状最大のの懸念はこれだ。
「見て、ファルムファス君よ」
「今日も愛らしく麗しいわね」
「あれは書庫の精霊では?何故メロディアス(弟)が一緒なんだ?」
「他国の特使を案内するとか将来有望過ぎて好き!」
 魔研から出てきた俺を遠巻きに見つめる「メロディアス兄弟を愛でる会」と騒ぎを起こして教室で授業が受けれなくなった大元の皆さん。
 その「書庫の精霊」はイニフィリノリス王女の事だよね?
 王女様のファンクラブも加わって、なかなかの数がストーキングしている。気づかない方がおかしいレベル。
 皆さん授業を受けて下さいね。

 さすがにこれは困るので護衛に付いてくれた近衛騎士の方々に時折散らして貰っているのだが、気づいたらまた集まっている。
 ライオルノ王子も時折手を振って見せるなどのサービスをするから、数的には増えてる気もする。
 なんだろう。追っかけに苦労するアイドルみたいな?なんとも言えない気分がする。
 そこも上申して法整備するべきだろうか。
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