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愛だけで生きていけると思うなよ
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今世での俺の家、メロディアス侯爵家の起こりはラキアラス王国の建国まで遡る。王国を起こしたメンバーがメロディアス家の祖なのだそうだ。
建国時点で平民だったご先祖さま。本来なら王族に準ずる地位と領地を賜るところだが「地位も領地も要らない」とか言ったとか言わないとか。潔良いというか、単にしがらみが面倒だったのか。
その辺は昔の文献からの情報なので真実は判らないが、英雄の一族が低い地位というのもあんまりだと領地なしで侯爵に。
領地がなくても生活だけはできるようにと立派な屋敷を賜った。
それが現在メロディアス侯爵家が住んでいる敷地のだだっ広い豪邸だ。
後は能力に応じた職を…当時は貰っていたかもしれないが、子々孫々はそれぞれ適性があったはずなので就職のコネはもう消えているだろう。家名で多少の融通は効くかもしれないが。俺にもコネ効くかなぁ…
今まで一族で身を持ち崩す程の散財ややらかしをする奴が出なかったのは幸いというべきか。身の丈にあった生活ができる子孫が連なったおかげで今もなかなかいい暮らしが出来ています。ありがとうご先祖さま。
「メロディアスの一族は代々王族のご意見板みたいな扱いだから、多少のことは聞き飛ばして貰えるものね」
「それは知りませんでした」
「知らなくてその物言いなのも血筋というべきかな?」
本当に「物申す権利」持ってるの?アーデルハイド殿下の王族ジョークじゃないよね?
後から「冗談だったのに」ってやられそうで怖いんですけど。
「僕もそれは知らなかったなぁ」
聞きなれた声が割り込んできた、と思ったら父上だった。気づかなかった。いつの間に?我が父ながら謎の多いお方だ。
「陛下から「あの家の初代は地位も名誉も要らないから物申す権利だけ寄越せ」と言ったのが今も続いているから、言いたいだけ言わせたらいい。と聞いています」
なんだそれ?
「本気でダメな時は陛下も圧を飛ばしてくるから、そこだけ気をつければいいもんね」
いいの?
父上の乱入でアーデルハイド殿下の雰囲気が少し対外に寄った気がする。
対する父上はいつも通り。会話のお相手は我が王国の王太子殿下ですよ?
「ええ。メロディアス家は堅実で奔放な忠臣の家系ですから。是非ともファルムファス君を私の側近になって頂きたい」
「それはいつもお断りしています」
現時点でこれだけ負荷がかかっているのに、直属になったらもっと大変になるんでしょう?それは嫌です。
「陛下も僕によく「私の右腕はいつも空いている」って誘って来るけど、僕は家族の時間の方が大切だからお断りしているよ」
さすが父上。陛下にも王太子にもNOと言えるって凄い。
「さすが陛下。私も見習う事にしよう」
今の会話のどこに見習うところが?
「ファルム君、今なら私の胸が空いているよ。さあ、飛び込んでおいで」
立ち上がり、両手を広げたアーデルハイド殿下。それは見習わなくていい所ですね。
「ポーニッツ卿、今です」
「さあ帰りましょうね」
俺の一声でロシェル様がアーデルハイド殿下を確保。そのまま連れて帰って。どうぞ。
「なっ!ロシェル!裏切ったな?」
「裏切りではありません。私は常に、職務を優先するだけです」
アーデルハイド殿下の執務室は、見事な書類の山がそびえ立っているのでしょうね。
「するべき公務が溜まっているんですよ」
「嫌だ嫌だ!私はウィー君と一緒じゃないと帰らないぞ!」
成人の駄々っ子はみっともないですよ。まだ中毒症状抜けてないんですか。
「お求めのかわい子ちゃんは、こちらですよ」
あ、母上。いつ部屋に入ってきたんですか?
「ウィーくぅぅぅん!」
ロシェル様に羽交い締めされたアーデルハイド殿下がもがくが抜け出せない。護衛を兼ねている騎士なのだから、隙をつかないと無理でしょうね。
ウィー君へと伸ばした手が見事に空を切っていますね。
「僕のかわい子ちゃんはリオちゃんだけさ」
「私の天空の輝きはアルだけですわ」
この状況でも見せつけてくれるとか、メンタル鋼か。
母上の言った「天空の輝き」とは、王都で流行っているオペラのセリフだ。
女性主人公が「愛しい唯一の人」という意味を込めて男性主人公を呼んだのを「なにそれ素敵!」と、観た女性陣が使い始めてあっという間に流行った。
俺は観ていないから、全て母上の受け売りなのだが。それにしても口コミって凄い。
恋愛映画とかムズムズして苦手なんだよね。劇はまた違う感覚なんだろうか。
「………いつもこうなの?」
熱烈な両親に当てられて冷めたのか。アーデルハイド殿下が尋ねてくる。
「人前なのでいつもより軽めですね」
ウィー君も緩衝材になっているのだろうか。その場でチュッチュし始めないだけマシだよね、とは思う。
「コレで軽め…」
ロシェル様が「結婚するってこういうことか…?」と絶句している。
確かに独身には目に毒な風景ですよね。俺も両親じゃなければ「爆発しろ!」って走り去るところです。
「メロディアス家の日常なので、見慣れました」
「コレを見せられてしまったら「家族の時間優先」主義も納得です」
でしょう?
「そんなことより私にウィー君を返して!」
「両親が落ち着くまでお待ち下さい」
別室にお茶の用意が整った様なので、「再開してしまった以上、離れるなんてありえない!」とごねるアーデルハイド殿下とロシェル様を案内する。
ああなったらしばらく放置するしかないですもの。
そんなことより帰る度に思うんだけど、我が家の使用人達が有能すぎて好き。
両親が晴れやかな顔で俺たちの待つ部屋にきたのは一時間位経った頃だろうか。お客様とウィー君の効果か、いつもより早かったですね。
「あのまま寝室に行くルートもありました」
ガッツリ間近で見せつけられたウィー君も、なんだかお疲れな表情をしている(気がする)。
「君の家族が私の想像を超えてきた…」
俺とエンカウントした王族の皆様(アーデルハイド殿下含む)も大概ですよ?
建国時点で平民だったご先祖さま。本来なら王族に準ずる地位と領地を賜るところだが「地位も領地も要らない」とか言ったとか言わないとか。潔良いというか、単にしがらみが面倒だったのか。
その辺は昔の文献からの情報なので真実は判らないが、英雄の一族が低い地位というのもあんまりだと領地なしで侯爵に。
領地がなくても生活だけはできるようにと立派な屋敷を賜った。
それが現在メロディアス侯爵家が住んでいる敷地のだだっ広い豪邸だ。
後は能力に応じた職を…当時は貰っていたかもしれないが、子々孫々はそれぞれ適性があったはずなので就職のコネはもう消えているだろう。家名で多少の融通は効くかもしれないが。俺にもコネ効くかなぁ…
今まで一族で身を持ち崩す程の散財ややらかしをする奴が出なかったのは幸いというべきか。身の丈にあった生活ができる子孫が連なったおかげで今もなかなかいい暮らしが出来ています。ありがとうご先祖さま。
「メロディアスの一族は代々王族のご意見板みたいな扱いだから、多少のことは聞き飛ばして貰えるものね」
「それは知りませんでした」
「知らなくてその物言いなのも血筋というべきかな?」
本当に「物申す権利」持ってるの?アーデルハイド殿下の王族ジョークじゃないよね?
後から「冗談だったのに」ってやられそうで怖いんですけど。
「僕もそれは知らなかったなぁ」
聞きなれた声が割り込んできた、と思ったら父上だった。気づかなかった。いつの間に?我が父ながら謎の多いお方だ。
「陛下から「あの家の初代は地位も名誉も要らないから物申す権利だけ寄越せ」と言ったのが今も続いているから、言いたいだけ言わせたらいい。と聞いています」
なんだそれ?
「本気でダメな時は陛下も圧を飛ばしてくるから、そこだけ気をつければいいもんね」
いいの?
父上の乱入でアーデルハイド殿下の雰囲気が少し対外に寄った気がする。
対する父上はいつも通り。会話のお相手は我が王国の王太子殿下ですよ?
「ええ。メロディアス家は堅実で奔放な忠臣の家系ですから。是非ともファルムファス君を私の側近になって頂きたい」
「それはいつもお断りしています」
現時点でこれだけ負荷がかかっているのに、直属になったらもっと大変になるんでしょう?それは嫌です。
「陛下も僕によく「私の右腕はいつも空いている」って誘って来るけど、僕は家族の時間の方が大切だからお断りしているよ」
さすが父上。陛下にも王太子にもNOと言えるって凄い。
「さすが陛下。私も見習う事にしよう」
今の会話のどこに見習うところが?
「ファルム君、今なら私の胸が空いているよ。さあ、飛び込んでおいで」
立ち上がり、両手を広げたアーデルハイド殿下。それは見習わなくていい所ですね。
「ポーニッツ卿、今です」
「さあ帰りましょうね」
俺の一声でロシェル様がアーデルハイド殿下を確保。そのまま連れて帰って。どうぞ。
「なっ!ロシェル!裏切ったな?」
「裏切りではありません。私は常に、職務を優先するだけです」
アーデルハイド殿下の執務室は、見事な書類の山がそびえ立っているのでしょうね。
「するべき公務が溜まっているんですよ」
「嫌だ嫌だ!私はウィー君と一緒じゃないと帰らないぞ!」
成人の駄々っ子はみっともないですよ。まだ中毒症状抜けてないんですか。
「お求めのかわい子ちゃんは、こちらですよ」
あ、母上。いつ部屋に入ってきたんですか?
「ウィーくぅぅぅん!」
ロシェル様に羽交い締めされたアーデルハイド殿下がもがくが抜け出せない。護衛を兼ねている騎士なのだから、隙をつかないと無理でしょうね。
ウィー君へと伸ばした手が見事に空を切っていますね。
「僕のかわい子ちゃんはリオちゃんだけさ」
「私の天空の輝きはアルだけですわ」
この状況でも見せつけてくれるとか、メンタル鋼か。
母上の言った「天空の輝き」とは、王都で流行っているオペラのセリフだ。
女性主人公が「愛しい唯一の人」という意味を込めて男性主人公を呼んだのを「なにそれ素敵!」と、観た女性陣が使い始めてあっという間に流行った。
俺は観ていないから、全て母上の受け売りなのだが。それにしても口コミって凄い。
恋愛映画とかムズムズして苦手なんだよね。劇はまた違う感覚なんだろうか。
「………いつもこうなの?」
熱烈な両親に当てられて冷めたのか。アーデルハイド殿下が尋ねてくる。
「人前なのでいつもより軽めですね」
ウィー君も緩衝材になっているのだろうか。その場でチュッチュし始めないだけマシだよね、とは思う。
「コレで軽め…」
ロシェル様が「結婚するってこういうことか…?」と絶句している。
確かに独身には目に毒な風景ですよね。俺も両親じゃなければ「爆発しろ!」って走り去るところです。
「メロディアス家の日常なので、見慣れました」
「コレを見せられてしまったら「家族の時間優先」主義も納得です」
でしょう?
「そんなことより私にウィー君を返して!」
「両親が落ち着くまでお待ち下さい」
別室にお茶の用意が整った様なので、「再開してしまった以上、離れるなんてありえない!」とごねるアーデルハイド殿下とロシェル様を案内する。
ああなったらしばらく放置するしかないですもの。
そんなことより帰る度に思うんだけど、我が家の使用人達が有能すぎて好き。
両親が晴れやかな顔で俺たちの待つ部屋にきたのは一時間位経った頃だろうか。お客様とウィー君の効果か、いつもより早かったですね。
「あのまま寝室に行くルートもありました」
ガッツリ間近で見せつけられたウィー君も、なんだかお疲れな表情をしている(気がする)。
「君の家族が私の想像を超えてきた…」
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