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星の子と遊ぼう
星の子とエンカウント 1
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ある日、この世界の創世神であるラキアータ様に俺をいつもの白い部屋に呼び出してお告げを受けた。
「星の子が私の世界にお越しになりました。会いに行って下さい」
ラキアータ様は俺の返事を待たずに待ち合わせ日時と場所を告げ、「よろしくお願いしますね」と笑顔で見送ってくれた。
うん。これは丸投げされたやつだな。
ラキアータ様のお告げの場所は、メロディアス兄弟に馴染み深い雑貨店アンドリブの隣。アンドロインという喫茶店だ。
アンドロインをカフェと呼ぶ人も多いが、マスターが頑なに「ここは喫茶店だ」というので俺はそれに倣っている。
ここの太麺なナポリタンや少し硬めのプリンも美味しいのだが、俺のオススメはふっかふかのパンケーキ。国語辞典みたいな厚さのものを三枚重ねて四角いバターを乗せた夢溢れる一品。崩れ防止も兼ねてモリっと添えられた生クリームも素晴らしい。初見でデカさにビビり、気付いたら平らげていたという事実にもビビる奇跡のメニュー。
折角だから美味しいものも食べたいな。そう思いつつ俺はアンドロインに歩を進める。
ラキアータ様の言う「星の子」の容姿などは全く聞いて(聞かされて)いないが、接待を命じるという事はかなり凄い御方なのだろう。
多分見たらわか………いや、恐らくアレだ。そうに違いない。
アンドロインの通りに面した窓際の席に、主人公オーラを放ちまくる人物が優雅にカップを傾けている。嫌でも視界に入る存在感。
腰に届くほどのプラチナブロンド。プラチナというか光って…る?存在…が…?
視界に入った瞬間「神では?」という言葉が浮かぶ性別を感じさせない造形。近づかなくてもまつげ長いのがわかる。そして遠目からでも判る名状しがたきオーラ(すごい)。絶対この方でしょ?
美人や美形と讃えられる人や神を見慣れ(てしまっ)た俺も「マジかよ」ってなった。
え?あれ…人…の部類に入る…のか?ハイエルフ(いるらしいけど見たことない)って言っても信じそうだ。
あまりの存在感に、周囲の人々も「恐れ多くて近づけない」状態。街ゆく人々からチラチラ見られてますね。俺も遠巻きに見ています。
我が王国の王族もそこまでないぞ?あ、そう思うのは俺だけですか?そうですか。
とりあえず、声を掛けてみようか。……近づきたくないけど。
「やあ、僕はレミール。少し前に浮気者の婚約者をメッタメタに言い負かして晴れて平民となったイケてるお兄さんだよ」
アンドロインに入り、声を掛けようと近付こうとしたその時。向こうからかなりフランクに話しかけてきた。かっる!
…は?おにいさん?イケてるとか自分で言う?違和感ないけど。そのお姿で言われちゃったら「イケメン無罪」と返すしかない。
いやそれにしても酷い来歴を聞いた気がする。容姿にそぐわないですね。幻聴かな?
「夢や幻の類じゃないからね」
あ、現実ですか。そうですか…
「出会えた記念にスイーツでもどうかな?マスター、彼に本日のおすすめを」
流れるように同席が確定した。これは手練の技!
そしてマスターの接客がいつも通りでプロフェッショナル(賞賛)
「「俺は主人公だから大丈夫!」とか寝言言ってたから、「それは一人寝で微睡みながら言ってたらいいよ」って軽く締めてあげるのは優しさだよね」
それはベリーごろごろソースがめちゃウマのスフレケーキと紅茶を優雅に楽しみながらする話ではないですねぇ。
そしてまたゲーム世界混ざってるの?しかも崩壊させた後?主人公(自称)を軽く締めるって、とんでもない人(?)来たな…
レミール様はにこやかに語りながら俺を見つめていたが、
「…ラキアータ神の愛し子…その麗しき黒。見れば見る程君は凄く僕の好みだ。そういえばまだ名前を聞いていなかったね。艶やかな黒を纏う君の名を教えてくれるかい?」
と、名を聞いてきた。意識して言わなかった訳なんですが。
名乗らなくて済むかな、とかいう淡い期待は期待のまま終わりましたね。
その事を見透かすかの如くキラッキラな微笑みで口説き文句の様な台詞を言うのやめてください。エメラルドも自壊しそうなグリーンの瞳が美しいですね。
「…ファルムファス・メロディアスと申します。レミール様、俺の性的嗜好は異性です」
レミール様がとんでもない美形様なのは認めるが、ストライクゾーンド真ん中の報告は要りません。好みでなくても落ちそうです!
…そしてそれを言ってしまってから、失礼だったな、って気づいた。初対面でその発言をしたこと、誠に申し訳ない。
「正直なのはいいことだ。好みに性の垣根はないのだけど、僕には魂の伴侶がいるから安心していいよ。それと、僕はもう平民だから様付けしなくていい」
嬉しそうに微笑んだレミール様は、国宝級の笑顔で「平民扱いしてくれ」という。カメラ下さい。一番いいやつを頼む。
…いや、無理でしょ?「星の子」って詳しく聞いてない(聞く気もない)けど他の世界の神様のことだよね?違ったとしてもラキアータ様が敬意を払う相手だよ?無理でしょ?(二回目)
「僕の半身は闇の王なんだ。だから闇の子も等しく僕の子。父様と抱き締めておくれ」
「…………は?」
何を仰ってるのか解りません。
困惑と疑問符しか出てこないご挨拶を交わした後、婚約云々でぶっ壊してきた話を聞くことにした。聞く、というより語られた。
「あいつ、頭と尻の軽い小娘の部屋を日替わりで渡り歩いてたんだよね」
「小娘…」
それは少年に聞かせていいお話ですか?後、ボコった婚約者は男性?
「僕は少し前までヤナラクの貴族令嬢だったんだ」
過去形…
ヤナラクってラキアラス王国のずっと西にある国だったような…授業ではまだ近隣諸国しかやってないけど、どこで知ったんだっけ?
「ショックでこの姿になったんじゃないよ。僕は元々両性なんだ。可愛いドレスも華麗な礼服も、似合うなら着るさ」
ああ、性の垣根が無いってこの事か。ドレスもクール系が凄く似合いそうですね。
「君は二週目だし、その辺は寛容そうだから何でも話せちゃいそうだなぁ」
二週目。
寛容かどうかは置いといて、二週目扱いでいいの?これ。
「普通二週目ってある程度順調に進めるはずなんですけど…」
ある意味「強くてニューゲーム」状態ではありますが。
「それだけ神の寵愛を受けてて一般人の如く平穏に過ごせるとか、無理だからね?神と厄介事はこっちが呼ばなくても来るんだよ?むしろ「来るな」って言う程加速ついて来ちゃうから」
アッハイ。受け入れ難いけど納得しました。
「星の子が私の世界にお越しになりました。会いに行って下さい」
ラキアータ様は俺の返事を待たずに待ち合わせ日時と場所を告げ、「よろしくお願いしますね」と笑顔で見送ってくれた。
うん。これは丸投げされたやつだな。
ラキアータ様のお告げの場所は、メロディアス兄弟に馴染み深い雑貨店アンドリブの隣。アンドロインという喫茶店だ。
アンドロインをカフェと呼ぶ人も多いが、マスターが頑なに「ここは喫茶店だ」というので俺はそれに倣っている。
ここの太麺なナポリタンや少し硬めのプリンも美味しいのだが、俺のオススメはふっかふかのパンケーキ。国語辞典みたいな厚さのものを三枚重ねて四角いバターを乗せた夢溢れる一品。崩れ防止も兼ねてモリっと添えられた生クリームも素晴らしい。初見でデカさにビビり、気付いたら平らげていたという事実にもビビる奇跡のメニュー。
折角だから美味しいものも食べたいな。そう思いつつ俺はアンドロインに歩を進める。
ラキアータ様の言う「星の子」の容姿などは全く聞いて(聞かされて)いないが、接待を命じるという事はかなり凄い御方なのだろう。
多分見たらわか………いや、恐らくアレだ。そうに違いない。
アンドロインの通りに面した窓際の席に、主人公オーラを放ちまくる人物が優雅にカップを傾けている。嫌でも視界に入る存在感。
腰に届くほどのプラチナブロンド。プラチナというか光って…る?存在…が…?
視界に入った瞬間「神では?」という言葉が浮かぶ性別を感じさせない造形。近づかなくてもまつげ長いのがわかる。そして遠目からでも判る名状しがたきオーラ(すごい)。絶対この方でしょ?
美人や美形と讃えられる人や神を見慣れ(てしまっ)た俺も「マジかよ」ってなった。
え?あれ…人…の部類に入る…のか?ハイエルフ(いるらしいけど見たことない)って言っても信じそうだ。
あまりの存在感に、周囲の人々も「恐れ多くて近づけない」状態。街ゆく人々からチラチラ見られてますね。俺も遠巻きに見ています。
我が王国の王族もそこまでないぞ?あ、そう思うのは俺だけですか?そうですか。
とりあえず、声を掛けてみようか。……近づきたくないけど。
「やあ、僕はレミール。少し前に浮気者の婚約者をメッタメタに言い負かして晴れて平民となったイケてるお兄さんだよ」
アンドロインに入り、声を掛けようと近付こうとしたその時。向こうからかなりフランクに話しかけてきた。かっる!
…は?おにいさん?イケてるとか自分で言う?違和感ないけど。そのお姿で言われちゃったら「イケメン無罪」と返すしかない。
いやそれにしても酷い来歴を聞いた気がする。容姿にそぐわないですね。幻聴かな?
「夢や幻の類じゃないからね」
あ、現実ですか。そうですか…
「出会えた記念にスイーツでもどうかな?マスター、彼に本日のおすすめを」
流れるように同席が確定した。これは手練の技!
そしてマスターの接客がいつも通りでプロフェッショナル(賞賛)
「「俺は主人公だから大丈夫!」とか寝言言ってたから、「それは一人寝で微睡みながら言ってたらいいよ」って軽く締めてあげるのは優しさだよね」
それはベリーごろごろソースがめちゃウマのスフレケーキと紅茶を優雅に楽しみながらする話ではないですねぇ。
そしてまたゲーム世界混ざってるの?しかも崩壊させた後?主人公(自称)を軽く締めるって、とんでもない人(?)来たな…
レミール様はにこやかに語りながら俺を見つめていたが、
「…ラキアータ神の愛し子…その麗しき黒。見れば見る程君は凄く僕の好みだ。そういえばまだ名前を聞いていなかったね。艶やかな黒を纏う君の名を教えてくれるかい?」
と、名を聞いてきた。意識して言わなかった訳なんですが。
名乗らなくて済むかな、とかいう淡い期待は期待のまま終わりましたね。
その事を見透かすかの如くキラッキラな微笑みで口説き文句の様な台詞を言うのやめてください。エメラルドも自壊しそうなグリーンの瞳が美しいですね。
「…ファルムファス・メロディアスと申します。レミール様、俺の性的嗜好は異性です」
レミール様がとんでもない美形様なのは認めるが、ストライクゾーンド真ん中の報告は要りません。好みでなくても落ちそうです!
…そしてそれを言ってしまってから、失礼だったな、って気づいた。初対面でその発言をしたこと、誠に申し訳ない。
「正直なのはいいことだ。好みに性の垣根はないのだけど、僕には魂の伴侶がいるから安心していいよ。それと、僕はもう平民だから様付けしなくていい」
嬉しそうに微笑んだレミール様は、国宝級の笑顔で「平民扱いしてくれ」という。カメラ下さい。一番いいやつを頼む。
…いや、無理でしょ?「星の子」って詳しく聞いてない(聞く気もない)けど他の世界の神様のことだよね?違ったとしてもラキアータ様が敬意を払う相手だよ?無理でしょ?(二回目)
「僕の半身は闇の王なんだ。だから闇の子も等しく僕の子。父様と抱き締めておくれ」
「…………は?」
何を仰ってるのか解りません。
困惑と疑問符しか出てこないご挨拶を交わした後、婚約云々でぶっ壊してきた話を聞くことにした。聞く、というより語られた。
「あいつ、頭と尻の軽い小娘の部屋を日替わりで渡り歩いてたんだよね」
「小娘…」
それは少年に聞かせていいお話ですか?後、ボコった婚約者は男性?
「僕は少し前までヤナラクの貴族令嬢だったんだ」
過去形…
ヤナラクってラキアラス王国のずっと西にある国だったような…授業ではまだ近隣諸国しかやってないけど、どこで知ったんだっけ?
「ショックでこの姿になったんじゃないよ。僕は元々両性なんだ。可愛いドレスも華麗な礼服も、似合うなら着るさ」
ああ、性の垣根が無いってこの事か。ドレスもクール系が凄く似合いそうですね。
「君は二週目だし、その辺は寛容そうだから何でも話せちゃいそうだなぁ」
二週目。
寛容かどうかは置いといて、二週目扱いでいいの?これ。
「普通二週目ってある程度順調に進めるはずなんですけど…」
ある意味「強くてニューゲーム」状態ではありますが。
「それだけ神の寵愛を受けてて一般人の如く平穏に過ごせるとか、無理だからね?神と厄介事はこっちが呼ばなくても来るんだよ?むしろ「来るな」って言う程加速ついて来ちゃうから」
アッハイ。受け入れ難いけど納得しました。
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