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愛だけで生きていけると思うなよ
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「何故止められなかったんですか?」
「父上からゴーサインもぎ取った叔父上を止められる権力はまだ私にはないよ」
「いい笑顔してるのが微妙に腹立たしいです」
見送りに来たアーデルハイド殿下に文句を言う俺がいるのはラキアラス王国の一都、湾岸都市シーガイヤ。
どこかで聞いたことがあるような気がするが名前だが、石造りの鮮やかな建物が並ぶ街並みは過去の記憶と全く関係ないので気のせいだろう。
机上で軽く学びはしたが、元々地理って苦手な科目だったこともあって、周辺地理が定着してないんだよなぁ…
グローデン領は行ったから判る様になった。場所って行かないと覚えないよね。
そして何故俺がおかんむり状態なのかは、お察しの通りこの外交メンバーに俺が(「行かない」って言ったのに)入っているからだ。
「俺も見送りだって聞きましたが?」
登校しようと外に出たら、アーデルハイド殿下がいつものように予告なしでやってきてて「出発だよ。見送りに行こう」と拉致られたんです。無断欠席、ダメ!絶対!
「ファルム君「も」見送るんだよ」
「なんですかその屁理屈!」
「ファルム様!衣装の積み込みは完璧ですわ!」
嫌だ行きたくないとごねていたら、船の方からメディナツロヒェン嬢の声がした。何故俺を呼ぶのか。何だ衣装って…
「準備万端じゃないか。私とウィー君でしっかり見送るよ」
計画的犯行ですよね?いい笑顔なのが腹立たしい。
「次の公務がしくじる事を願います」
衆人環視のど真ん中、何も無いところでころべばいいのに。
「民まで被害が及ぶ呪いは止めてくれないか。本音を言うと私も行きたかったんだよ」
「騒動を特等席で見るためですよね」
「そうだよ」
アーデルハイド殿下、正直が過ぎます。
代わりのきかない業務じゃなかったら「学業って大事ですものね」って押し付けたのに!
いや、そもそも外交になんの役職もない一学生を連れていくのがおかしいと思うのですが?
「レニフェル様がお越しになられたら出発ですわ。二週間の船旅になると聞いておりますが、体調はよろしくて?」
トトト、と軽やかに船から降りてきたメディナツロヒェン嬢がにこやかに俺に「船酔いしますか?」と問うてくる。
「船は(今世では)初めてです」
前世では夜行フェリーとか乗ったことあるんだけど、揺れが違うんだろうなぁ…
「この船は王室の魔法船なので、一般客船より揺れは少ないそうですわ」
「我が国の外交用だからね。かなりいいやつだよ」
ハロルド様達は間もなく到着だろうか。メディナツロヒェン嬢と話をしている間に何かの報告を受けていたアーデルハイド殿下が、俺たちに船の簡単な説明をしてくれる。
今回乗る船は昨年完成した出来たてホヤホヤで、最先端技術(魔法込み)をこれでもかと詰め込んだラキアラス王国自慢の船だという。
アーデルハイド殿下は乗船済みで「スイスイ進んで楽しかった」と語ってくれた。よかったですね。
最新の船で行くのは速度や安全対策も大きいのだが、外交に関しては「舐められないようにブランドで固める」のがこの世界(我が国と交易のある国家間)の常識だからだという。
前世で上司に「いい時計」や「いい靴」を持つこと、「商談はファーストインプレッションでほぼ決まる」とか言われてたやつの国家版と考えれば理解はできる。内勤だったから交渉の場とか出た事ないけど。
「今までの船だとメロメ国まで軽く一月はかかるからね」
今回の船は魔物よけも標準装備だという。ゲームでも海のモンスターは強かったもんな。船手に入れた直後とか死に戻りまくったから、エンカウントしなくて済むなら助かる。
そういえばまだ本格的なモンスターバトルって見てないな。いや、リアル体験はしたくないです。安全な画面越しに空想のキャラクターを使ってやるから見れるだけで、俺はグロホラーとか苦手なんですよ。
どうせ画面越しに見るならパーフェクトボディな美女の触手プ…いや、俺は今美少年なんだから(俺の)夢を壊す行いはしちゃダメだ!自制心を強くもて自分!
……この街に着いた時にうっかり見てしまった第一街人のびっくり性癖(プライバシー保護のため公開できません)がまだ記憶に残っていたせいです。見ちゃってすみません。
「航行期間が半分になるのは革新です。素晴らしい技術ですわ」
メディナツロヒェン嬢はこの新しい船に乗るのを楽しみにしていたのだそうだ。スゴい船に乗れるのは気分がアガるもんな。
「そうですか。俺はこのまま帰りたいですね」
俺は散々「行きたくない」とごねている側なので、どんなにハイテクなものを持ってこられようがテンションは最底辺。
先程何かの報告を受けたアーデルハイド殿下が軽く動揺しているのが(スキルで)見えたから、嫌な予感もしている。
多分面倒事が増える。そんな予感だ。
「わたくしが来ましたわ!」
レニフェル様が近衛騎士の手を取り、馬車から降りてくる。同行するのだろう侍女が二人。………あれ?ハロルド様は?
「お父様は来ないわ!わたくしが今回の外交の主役よ!」
………嘘だろ?
アーデルハイド殿下を見ると、ス…と逸らされた。報告のあとの動揺はこれか!
「聞いてましたね?」
「……すまない。これは完全に予想外…」
でしょうね。知ってたら動揺しないですものね。
俺も「ステータススキルに精度とかあるんだ。色々弄ってみるか」ってあれこれ調整(という名の現実逃避)してなかったらわからなかったもの。王族のポーカーフェイス、マジすご。
そしてこのスキル、暴露具合がえげつなくて使用者にダメージが来る。好みのタイプとか性癖とか誰得…オンオフできるのマジ助かる…いや、確かに「能力見えたら(レベリング)楽そう」と思ったことはあったけど、ディープなものまで見たいとは言ってない。
「この船の様に、スタイリッシュかつ華やかに決めてまいりますわ!」
「レニ様素敵ー!」
レニフェル様、ショーか何かと勘違いしてませんか?メディナツロヒェン嬢はどこに向かおうというのか…
「父上からゴーサインもぎ取った叔父上を止められる権力はまだ私にはないよ」
「いい笑顔してるのが微妙に腹立たしいです」
見送りに来たアーデルハイド殿下に文句を言う俺がいるのはラキアラス王国の一都、湾岸都市シーガイヤ。
どこかで聞いたことがあるような気がするが名前だが、石造りの鮮やかな建物が並ぶ街並みは過去の記憶と全く関係ないので気のせいだろう。
机上で軽く学びはしたが、元々地理って苦手な科目だったこともあって、周辺地理が定着してないんだよなぁ…
グローデン領は行ったから判る様になった。場所って行かないと覚えないよね。
そして何故俺がおかんむり状態なのかは、お察しの通りこの外交メンバーに俺が(「行かない」って言ったのに)入っているからだ。
「俺も見送りだって聞きましたが?」
登校しようと外に出たら、アーデルハイド殿下がいつものように予告なしでやってきてて「出発だよ。見送りに行こう」と拉致られたんです。無断欠席、ダメ!絶対!
「ファルム君「も」見送るんだよ」
「なんですかその屁理屈!」
「ファルム様!衣装の積み込みは完璧ですわ!」
嫌だ行きたくないとごねていたら、船の方からメディナツロヒェン嬢の声がした。何故俺を呼ぶのか。何だ衣装って…
「準備万端じゃないか。私とウィー君でしっかり見送るよ」
計画的犯行ですよね?いい笑顔なのが腹立たしい。
「次の公務がしくじる事を願います」
衆人環視のど真ん中、何も無いところでころべばいいのに。
「民まで被害が及ぶ呪いは止めてくれないか。本音を言うと私も行きたかったんだよ」
「騒動を特等席で見るためですよね」
「そうだよ」
アーデルハイド殿下、正直が過ぎます。
代わりのきかない業務じゃなかったら「学業って大事ですものね」って押し付けたのに!
いや、そもそも外交になんの役職もない一学生を連れていくのがおかしいと思うのですが?
「レニフェル様がお越しになられたら出発ですわ。二週間の船旅になると聞いておりますが、体調はよろしくて?」
トトト、と軽やかに船から降りてきたメディナツロヒェン嬢がにこやかに俺に「船酔いしますか?」と問うてくる。
「船は(今世では)初めてです」
前世では夜行フェリーとか乗ったことあるんだけど、揺れが違うんだろうなぁ…
「この船は王室の魔法船なので、一般客船より揺れは少ないそうですわ」
「我が国の外交用だからね。かなりいいやつだよ」
ハロルド様達は間もなく到着だろうか。メディナツロヒェン嬢と話をしている間に何かの報告を受けていたアーデルハイド殿下が、俺たちに船の簡単な説明をしてくれる。
今回乗る船は昨年完成した出来たてホヤホヤで、最先端技術(魔法込み)をこれでもかと詰め込んだラキアラス王国自慢の船だという。
アーデルハイド殿下は乗船済みで「スイスイ進んで楽しかった」と語ってくれた。よかったですね。
最新の船で行くのは速度や安全対策も大きいのだが、外交に関しては「舐められないようにブランドで固める」のがこの世界(我が国と交易のある国家間)の常識だからだという。
前世で上司に「いい時計」や「いい靴」を持つこと、「商談はファーストインプレッションでほぼ決まる」とか言われてたやつの国家版と考えれば理解はできる。内勤だったから交渉の場とか出た事ないけど。
「今までの船だとメロメ国まで軽く一月はかかるからね」
今回の船は魔物よけも標準装備だという。ゲームでも海のモンスターは強かったもんな。船手に入れた直後とか死に戻りまくったから、エンカウントしなくて済むなら助かる。
そういえばまだ本格的なモンスターバトルって見てないな。いや、リアル体験はしたくないです。安全な画面越しに空想のキャラクターを使ってやるから見れるだけで、俺はグロホラーとか苦手なんですよ。
どうせ画面越しに見るならパーフェクトボディな美女の触手プ…いや、俺は今美少年なんだから(俺の)夢を壊す行いはしちゃダメだ!自制心を強くもて自分!
……この街に着いた時にうっかり見てしまった第一街人のびっくり性癖(プライバシー保護のため公開できません)がまだ記憶に残っていたせいです。見ちゃってすみません。
「航行期間が半分になるのは革新です。素晴らしい技術ですわ」
メディナツロヒェン嬢はこの新しい船に乗るのを楽しみにしていたのだそうだ。スゴい船に乗れるのは気分がアガるもんな。
「そうですか。俺はこのまま帰りたいですね」
俺は散々「行きたくない」とごねている側なので、どんなにハイテクなものを持ってこられようがテンションは最底辺。
先程何かの報告を受けたアーデルハイド殿下が軽く動揺しているのが(スキルで)見えたから、嫌な予感もしている。
多分面倒事が増える。そんな予感だ。
「わたくしが来ましたわ!」
レニフェル様が近衛騎士の手を取り、馬車から降りてくる。同行するのだろう侍女が二人。………あれ?ハロルド様は?
「お父様は来ないわ!わたくしが今回の外交の主役よ!」
………嘘だろ?
アーデルハイド殿下を見ると、ス…と逸らされた。報告のあとの動揺はこれか!
「聞いてましたね?」
「……すまない。これは完全に予想外…」
でしょうね。知ってたら動揺しないですものね。
俺も「ステータススキルに精度とかあるんだ。色々弄ってみるか」ってあれこれ調整(という名の現実逃避)してなかったらわからなかったもの。王族のポーカーフェイス、マジすご。
そしてこのスキル、暴露具合がえげつなくて使用者にダメージが来る。好みのタイプとか性癖とか誰得…オンオフできるのマジ助かる…いや、確かに「能力見えたら(レベリング)楽そう」と思ったことはあったけど、ディープなものまで見たいとは言ってない。
「この船の様に、スタイリッシュかつ華やかに決めてまいりますわ!」
「レニ様素敵ー!」
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