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始まりは断罪の目撃から
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しおりを挟む「だから私は悪くないのよ!」
そんな、生まれた意味を知るRPGの主人公みたいな台詞吐かれても困るんですけど。
明日送り返されるんだから、巻き返すチャンスないよ?
アリナ嬢の事はこの世界の歴史書に「あの聖女ガチャは失敗だった」って苦い一文が記されるんでしょうね。
良くも悪くも記録に残るなんて、偉業ですよ。すごいですね(棒読み)
「はっ………元の世界に戻ったら、正しい世界に呼ばれる可能性が…」
それはない。
アリナ嬢のあのムーブが大正義な世界なんてあってたまるか。
「貴女はまず。周囲をよく見る所から始めましょうね」
「私は聖女よ」
「如何なる地位に居ようとも、神の御前では等しく只人ですよ」
ラキアータ様、アリナ嬢の事全く気にしてなかったし。「私の世界に何か知らない子いるんですけど?どこの子?」って素振りもないレベルでしたよ。
まあ、増えまくった生き物全てを個体識別とか神様でも無理ですよね。
お前は子供の頃にやった箱庭ゲームのモブを、大人になった今でも覚えているのか?って問われてる感覚?
神様の前では生き物はオートムーブするゲームの駒感覚だろうし。重要なイベント以外見ないでしょう。
俺?俺はラキアータ様のお気に入り(のはず)だから、時々は見てくれているんじゃないかなぁ、多分。
お祈りしたら返事が来るくらいの仲だけど、気まぐれムーブで忘却されそうとかいう気はしている。
忘れられても加護が残ってたらいい生活できるし。加護無くしても今の人間関係が残ってたらいいと思うんだ。
「偉くなれない世界なんてつまんない」
送り返される理由はそういうとこだぞ。
「上に立つ者で苦労してない方はいませんよ」
「ルーベンスは生まれた時から勝ち組でしょ?王子様がそうなら聖女様もそうじゃなきゃずるいわ」
ルーベンス殿下を勝ち組の地位から引きずり落としたのはアリナ嬢ですよね?
今頃書庫の中で山ほどの資料に埋もれてるんだろうな…俺は資料編纂とか嫌いじゃないけど、ルーベンス殿下は地道な作業苦手そうだから辛かろうな。近場とはいえ、見に行くつもりは全くないけどな。
「立場に相応しい行動が出来なければ落とされますよ?」
「私に世界が従うべきよ」
その思考はおかしい。
「私は物心ついた時には王族の立ち振る舞いを始めとした諸々を叩き込まれていたのだが…」
ポツリとアーデルハイド殿下がこぼす。
ですよね。
ルーベンス殿下もアーデルハイド殿下程では無いだろうが、そこそこ(といっても一般帰属子息より多いはず)の学習量をこなしていたと思っている。その頑張りをたった一年も立たぬ間に砕き散らかした罪は重いぞ。
「わたくしはアーデルハイド殿下程ではありませんが、幼少期より学習の時間がありましたよ。民を支える貴族として学ばねばならない事は山ほどありますものね」
貴族の子は覚える事結構多いんだぞ。領地経営や処世術なんかは前世の教育より大変な部分がある。あと、人を使う事もなかなかに大変。
子どもになったとはいえ、今までブラックでこき使われてたワンオペ根性が抜けるのにしばらくかかったもの。
使用人がいる生活とか貴族になった気分…って、貴族じゃん今!というセルフボケツッコミを何度脳内でしたことか。
アーデルハイド殿下は大変さを表に出さない方なので、薬の森での初対面時に(あまりのフリーダムさで)少しの間第一王子だと気づかなかった、というのはここだけの話。
学園の一角で「うさちゃん!」ってもふもふに夢中になりすぎてるイケメンが自国の王子とか、普通結びつかないだろう。
「立ち位置を感じさせない」というのも貴族ムーブで大切なことなんだよな。俺、まだそれ出来ない…身につく気もしない…心はまだ平民だもの。
「生まれで将来の選択肢が狭められてしまうのは事実ではありますが、望む未来を得るための努力は惜しんではならないのですよ」
大企業の跡取りが尊敬されるか、(笑)扱いされるかは本人の努力にかかっているのと大差ないはず。
貴族も「跡取りだからー」ってぼんやりしてたら、有能な親族に乗っ取られるとかたまに聞く話だし。
その辺はこの世界の方がシビアだと思ってる。生まれた国にもよるだろうけど、理不尽な搾取とか…あったけど…魔物とかいなかっ…人こそ魔物だったけど…俺でもギリ生きれてたし…あ、うん。ちょっと辛くなってきた。
「聖女という肩書きも、持っているだけでは機能しないのですよ」
「…………あ、あなたパーティで私に説教した人ね?」
え?今頃?
「あなたのせいで皆いなくなったのよ!酷いわ!」
自業自得では?
「私悪くないもん!」
ご自身の行動を客観的にご覧下さい。
「女神様が「好きに生きたら世界が合わせてくれる」って言ったし!」
「「はぁ?」」
うっかりアーデルハイド殿下と声が合ってしまった。
何だそれ?そんな事言っ………いや、ラキアータ様も俺に「好きに過ごしていいですよ」って言った気がする…いや、アリナ嬢は聖女として呼ばれている。俺とは違う!
「聖女の肩書きを持ちながら使命がない…」
気づいてしまった。「好きに生きろ」は使命でもなんでもない。フリープランのツアーで過ごす日中くらいノープランなやつだ。
それ、聖女じゃない!ただの人扱いじゃん!
俺の「御子」、ならされ損じゃないか…「聖女改心」とか「打倒アリナ嬢」とか畳み掛けられて着たくない服とか着せられてる(現在進行形)の…俺だけ損じゃん…ヘコむわぁ…
「神託が、無かった…」
アーデルハイド殿下も愕然である。わかるよ。聖女は神託を受けて召喚される存在だっていわれてるからね。
「ルーベンス…」
弟の姿を思い出したのだろう。しゅん、と悲しそうな顔になった。
また声を掛け辛い領域に入られたな。聖女だと思ってた只の人に翻弄されて人生狂ったとか辛すぎる。
これ以上はアーデルハイド殿下のメンタルが保たない。
そう判断した俺はアリナ嬢に「また明日お会いしましょう」と一言告げ、アーデルハイド殿下と部屋を辞した。
俺も精神疲労がヤバめだったので、王城の一室(アーデルハイド殿下が用意していたかなりいい客間)にお泊まりさせてもらった。
アーデルハイド殿下は人前では何も無かった風に見せていたが、気づいてしまった衝撃が抜けきれていない感じがしたのでウィー君にケアを任せた。頼むぞウィー君。
ベッドはふっかふかだった。さすが王城。
そんな、生まれた意味を知るRPGの主人公みたいな台詞吐かれても困るんですけど。
明日送り返されるんだから、巻き返すチャンスないよ?
アリナ嬢の事はこの世界の歴史書に「あの聖女ガチャは失敗だった」って苦い一文が記されるんでしょうね。
良くも悪くも記録に残るなんて、偉業ですよ。すごいですね(棒読み)
「はっ………元の世界に戻ったら、正しい世界に呼ばれる可能性が…」
それはない。
アリナ嬢のあのムーブが大正義な世界なんてあってたまるか。
「貴女はまず。周囲をよく見る所から始めましょうね」
「私は聖女よ」
「如何なる地位に居ようとも、神の御前では等しく只人ですよ」
ラキアータ様、アリナ嬢の事全く気にしてなかったし。「私の世界に何か知らない子いるんですけど?どこの子?」って素振りもないレベルでしたよ。
まあ、増えまくった生き物全てを個体識別とか神様でも無理ですよね。
お前は子供の頃にやった箱庭ゲームのモブを、大人になった今でも覚えているのか?って問われてる感覚?
神様の前では生き物はオートムーブするゲームの駒感覚だろうし。重要なイベント以外見ないでしょう。
俺?俺はラキアータ様のお気に入り(のはず)だから、時々は見てくれているんじゃないかなぁ、多分。
お祈りしたら返事が来るくらいの仲だけど、気まぐれムーブで忘却されそうとかいう気はしている。
忘れられても加護が残ってたらいい生活できるし。加護無くしても今の人間関係が残ってたらいいと思うんだ。
「偉くなれない世界なんてつまんない」
送り返される理由はそういうとこだぞ。
「上に立つ者で苦労してない方はいませんよ」
「ルーベンスは生まれた時から勝ち組でしょ?王子様がそうなら聖女様もそうじゃなきゃずるいわ」
ルーベンス殿下を勝ち組の地位から引きずり落としたのはアリナ嬢ですよね?
今頃書庫の中で山ほどの資料に埋もれてるんだろうな…俺は資料編纂とか嫌いじゃないけど、ルーベンス殿下は地道な作業苦手そうだから辛かろうな。近場とはいえ、見に行くつもりは全くないけどな。
「立場に相応しい行動が出来なければ落とされますよ?」
「私に世界が従うべきよ」
その思考はおかしい。
「私は物心ついた時には王族の立ち振る舞いを始めとした諸々を叩き込まれていたのだが…」
ポツリとアーデルハイド殿下がこぼす。
ですよね。
ルーベンス殿下もアーデルハイド殿下程では無いだろうが、そこそこ(といっても一般帰属子息より多いはず)の学習量をこなしていたと思っている。その頑張りをたった一年も立たぬ間に砕き散らかした罪は重いぞ。
「わたくしはアーデルハイド殿下程ではありませんが、幼少期より学習の時間がありましたよ。民を支える貴族として学ばねばならない事は山ほどありますものね」
貴族の子は覚える事結構多いんだぞ。領地経営や処世術なんかは前世の教育より大変な部分がある。あと、人を使う事もなかなかに大変。
子どもになったとはいえ、今までブラックでこき使われてたワンオペ根性が抜けるのにしばらくかかったもの。
使用人がいる生活とか貴族になった気分…って、貴族じゃん今!というセルフボケツッコミを何度脳内でしたことか。
アーデルハイド殿下は大変さを表に出さない方なので、薬の森での初対面時に(あまりのフリーダムさで)少しの間第一王子だと気づかなかった、というのはここだけの話。
学園の一角で「うさちゃん!」ってもふもふに夢中になりすぎてるイケメンが自国の王子とか、普通結びつかないだろう。
「立ち位置を感じさせない」というのも貴族ムーブで大切なことなんだよな。俺、まだそれ出来ない…身につく気もしない…心はまだ平民だもの。
「生まれで将来の選択肢が狭められてしまうのは事実ではありますが、望む未来を得るための努力は惜しんではならないのですよ」
大企業の跡取りが尊敬されるか、(笑)扱いされるかは本人の努力にかかっているのと大差ないはず。
貴族も「跡取りだからー」ってぼんやりしてたら、有能な親族に乗っ取られるとかたまに聞く話だし。
その辺はこの世界の方がシビアだと思ってる。生まれた国にもよるだろうけど、理不尽な搾取とか…あったけど…魔物とかいなかっ…人こそ魔物だったけど…俺でもギリ生きれてたし…あ、うん。ちょっと辛くなってきた。
「聖女という肩書きも、持っているだけでは機能しないのですよ」
「…………あ、あなたパーティで私に説教した人ね?」
え?今頃?
「あなたのせいで皆いなくなったのよ!酷いわ!」
自業自得では?
「私悪くないもん!」
ご自身の行動を客観的にご覧下さい。
「女神様が「好きに生きたら世界が合わせてくれる」って言ったし!」
「「はぁ?」」
うっかりアーデルハイド殿下と声が合ってしまった。
何だそれ?そんな事言っ………いや、ラキアータ様も俺に「好きに過ごしていいですよ」って言った気がする…いや、アリナ嬢は聖女として呼ばれている。俺とは違う!
「聖女の肩書きを持ちながら使命がない…」
気づいてしまった。「好きに生きろ」は使命でもなんでもない。フリープランのツアーで過ごす日中くらいノープランなやつだ。
それ、聖女じゃない!ただの人扱いじゃん!
俺の「御子」、ならされ損じゃないか…「聖女改心」とか「打倒アリナ嬢」とか畳み掛けられて着たくない服とか着せられてる(現在進行形)の…俺だけ損じゃん…ヘコむわぁ…
「神託が、無かった…」
アーデルハイド殿下も愕然である。わかるよ。聖女は神託を受けて召喚される存在だっていわれてるからね。
「ルーベンス…」
弟の姿を思い出したのだろう。しゅん、と悲しそうな顔になった。
また声を掛け辛い領域に入られたな。聖女だと思ってた只の人に翻弄されて人生狂ったとか辛すぎる。
これ以上はアーデルハイド殿下のメンタルが保たない。
そう判断した俺はアリナ嬢に「また明日お会いしましょう」と一言告げ、アーデルハイド殿下と部屋を辞した。
俺も精神疲労がヤバめだったので、王城の一室(アーデルハイド殿下が用意していたかなりいい客間)にお泊まりさせてもらった。
アーデルハイド殿下は人前では何も無かった風に見せていたが、気づいてしまった衝撃が抜けきれていない感じがしたのでウィー君にケアを任せた。頼むぞウィー君。
ベッドはふっかふかだった。さすが王城。
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