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始まりは断罪の目撃から
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「え?何?レースは好きだけど作れないよ?」
違う。そうじゃない。
「聖女様がこの世界に招かれたのは、神のご意志が働いているのでしょう?」
「?」
聞いてないのか、聞く気がないのか、解ってないのか、さっぱりだな。
「この世界に生きるもので神に触れる機会に恵まれているものは極わずかです」
「ふーん」
あ、これ解ってないやつだ。しかも話の内容を解ろうとする努力を放棄した方の。
丁寧に言おうとしたら、難しい話だと思われたパターンもあるかもしれない…
正直めんどくさい。この衣装見せられた瞬間から発生している「もう帰りたい症候群」ゲージがMAXに近い所まで来ている。早く帰りたい。
「………皆、神様の話は聞きたいのですよ?」
「そうなんだ」
後ろでアーデルハイド殿下が吹き出した気配がした。見てないからバレないとかないからな。
今日ウィー君連れて帰ろうかな…
「えっと、女神様の話を聞きたいの?」
「女神様?」
「この世界の神様よね?顔はよく見えなかったけど、身体が女の人だったし、言葉も女神様だったわよ?」
だったわよ?って言われても。
この世界に伝えられている創世神像の性別はどちらにも見えるように造られているし、俺の知るラキアータ様も中性的ではあるが、女性と確信できるシルエットではないし、会話する時の口調もどちらかといえば青年に近い。
つまり、アリナ嬢をこの世界に招いた推定女神(本当に神様か未だ判らないから推定を付けてみた)は乗っ取り犯の可能性がある。
これは、手掛かりを掴めそう…か?
俺の読解力が試される気がする。アリナ嬢との対話能力…頑張るしかないな。
「確かオープニングムービーで出てきた…【「アンケルデフェーニア」によって創られた世界は「ウェルツハマウフ」の子に救われる】だったかしら?キャラ設定以外はうろ覚えなのよね」
アン…何?ウィー君の本名(ウィスフェルメルメス)も長くてびっくりしたのに、名前らしきものがふたつも出てきて思考が止まりそうになったよ?
しかも、うろ覚えでこれ?好きなゲームとはいえ、ストーリーにほぼ噛まないであろうオープニングムービーの固有名詞を覚えているのか。しかも体感一年前だぞ。凄いなこの子。
まあ、俺も好きなキャラの決め台詞とか、魔法詠唱とか、繰り返し見まくったアニメのオープニングフレーズとか主題歌とかは体に染み付いている訳なんだが。
活かしたい、前世で身につけて活きなかったこの記憶。
ただ、趣味記憶を活かせる好きな世界に転移だの転生だのできる可能性はほぼゼロなんだよなぁ…その点ではアリナ嬢の状況は正直羨ましい。活かし方失敗した例だけど。
俺も物欲センサーに機能停止を何度命じたことか…全く聞いて貰えなかったよね。
「だから、私をこの世界に喚んだのは女神「ウェルツハマウフ」よ!私が世界を救うのだから!」
うん。自信満々に言ってくれるのに申し訳ないが、世界は全く救われてないですよ?
魔王がいないから最大の問題も起きてないし。
アリナ嬢は学園を引っ掻き回した上に王子の1人と側近の未来を厳しい立場に引きずり込んだという…逆に国をピンチにしてますよね。
そこに居るだけで世界が救われるとか、もうそれは神の領域です。そんなの生み出した本人も「は?マジでできちゃったんですけど?」ってびっくりするレベルのやつでしょうね。
俺なら驚いて自分の才能を疑うね。
「女神、ウェルツハマウフ…」
アリナ嬢が自信たっぷりに言ってくれましたが、聞いたことない名前ですね。
俺はラキアータ様との会話や聖協会や神学で学んだので、この世界の神様の名前は一通り頭に入っているつもりだ。王族であるアーデルハイド殿下もそうだろう。「それはどなた様ですか?」って目をしてるし。
俺たちの学んできた知識の中に「ウェルツハマウフ」という神はいない。
いるとすれば「これから生まれる可能性がある神」だが、その線で行くと世界乗っ取り事件が完全に迷宮入りするので、なしという方向として考えるのが筋だろう。
だって、創世神の名前…!「アンケルデフェーニア」(言いにくいな!)という神が本当にこの世界の創世神なら、俺をこの世界に連れ込んだラキアータ様が嘘になってしまう。俺の世界が根本から揺らぐ…!
俺はラキアータ様の方を信じたいから、そんな長い名前の神は信じないぞ!
「私の記憶している限り、貴女の言う「ウェルツハマウフ」という女神はこの国に伝えられてはいません。そして、この世界をお創りになられたのはラキアータ神です」
ですよね?と、アーデルハイド殿下に同意を求める。
「私は王太子教育の一つとして、この国を中心とした信仰についても学んでいるが、そのような名の神はどの教本にも、そしてどの教師も私に示してはくれなかった。創世神の名も然り」
やっとアシストしてくれた…!こっちから振らないとダメだったのか…
「そんな…」
そんな神いねぇ!って言われてショックなのはわかる。だが、居ないものは仕方ない。
「もしかして、違う世界の神なのでは?」
「それよ!」
ほんそれ!じゃねぇよ、とは思ったが話が脱線しそうだから黙った。
まあ、知ってるキャラクターがいるのに別世界、とか思わないだろうし。
名前と容姿が合致するだけでもなかなかのミラクルですものね。思い込んじゃうのも解る気はする。
「神様が違うならストーリーが変わっててもおかしくないわよね?だから私は悪くないのよ」
その結論はおかしい。
違う。そうじゃない。
「聖女様がこの世界に招かれたのは、神のご意志が働いているのでしょう?」
「?」
聞いてないのか、聞く気がないのか、解ってないのか、さっぱりだな。
「この世界に生きるもので神に触れる機会に恵まれているものは極わずかです」
「ふーん」
あ、これ解ってないやつだ。しかも話の内容を解ろうとする努力を放棄した方の。
丁寧に言おうとしたら、難しい話だと思われたパターンもあるかもしれない…
正直めんどくさい。この衣装見せられた瞬間から発生している「もう帰りたい症候群」ゲージがMAXに近い所まで来ている。早く帰りたい。
「………皆、神様の話は聞きたいのですよ?」
「そうなんだ」
後ろでアーデルハイド殿下が吹き出した気配がした。見てないからバレないとかないからな。
今日ウィー君連れて帰ろうかな…
「えっと、女神様の話を聞きたいの?」
「女神様?」
「この世界の神様よね?顔はよく見えなかったけど、身体が女の人だったし、言葉も女神様だったわよ?」
だったわよ?って言われても。
この世界に伝えられている創世神像の性別はどちらにも見えるように造られているし、俺の知るラキアータ様も中性的ではあるが、女性と確信できるシルエットではないし、会話する時の口調もどちらかといえば青年に近い。
つまり、アリナ嬢をこの世界に招いた推定女神(本当に神様か未だ判らないから推定を付けてみた)は乗っ取り犯の可能性がある。
これは、手掛かりを掴めそう…か?
俺の読解力が試される気がする。アリナ嬢との対話能力…頑張るしかないな。
「確かオープニングムービーで出てきた…【「アンケルデフェーニア」によって創られた世界は「ウェルツハマウフ」の子に救われる】だったかしら?キャラ設定以外はうろ覚えなのよね」
アン…何?ウィー君の本名(ウィスフェルメルメス)も長くてびっくりしたのに、名前らしきものがふたつも出てきて思考が止まりそうになったよ?
しかも、うろ覚えでこれ?好きなゲームとはいえ、ストーリーにほぼ噛まないであろうオープニングムービーの固有名詞を覚えているのか。しかも体感一年前だぞ。凄いなこの子。
まあ、俺も好きなキャラの決め台詞とか、魔法詠唱とか、繰り返し見まくったアニメのオープニングフレーズとか主題歌とかは体に染み付いている訳なんだが。
活かしたい、前世で身につけて活きなかったこの記憶。
ただ、趣味記憶を活かせる好きな世界に転移だの転生だのできる可能性はほぼゼロなんだよなぁ…その点ではアリナ嬢の状況は正直羨ましい。活かし方失敗した例だけど。
俺も物欲センサーに機能停止を何度命じたことか…全く聞いて貰えなかったよね。
「だから、私をこの世界に喚んだのは女神「ウェルツハマウフ」よ!私が世界を救うのだから!」
うん。自信満々に言ってくれるのに申し訳ないが、世界は全く救われてないですよ?
魔王がいないから最大の問題も起きてないし。
アリナ嬢は学園を引っ掻き回した上に王子の1人と側近の未来を厳しい立場に引きずり込んだという…逆に国をピンチにしてますよね。
そこに居るだけで世界が救われるとか、もうそれは神の領域です。そんなの生み出した本人も「は?マジでできちゃったんですけど?」ってびっくりするレベルのやつでしょうね。
俺なら驚いて自分の才能を疑うね。
「女神、ウェルツハマウフ…」
アリナ嬢が自信たっぷりに言ってくれましたが、聞いたことない名前ですね。
俺はラキアータ様との会話や聖協会や神学で学んだので、この世界の神様の名前は一通り頭に入っているつもりだ。王族であるアーデルハイド殿下もそうだろう。「それはどなた様ですか?」って目をしてるし。
俺たちの学んできた知識の中に「ウェルツハマウフ」という神はいない。
いるとすれば「これから生まれる可能性がある神」だが、その線で行くと世界乗っ取り事件が完全に迷宮入りするので、なしという方向として考えるのが筋だろう。
だって、創世神の名前…!「アンケルデフェーニア」(言いにくいな!)という神が本当にこの世界の創世神なら、俺をこの世界に連れ込んだラキアータ様が嘘になってしまう。俺の世界が根本から揺らぐ…!
俺はラキアータ様の方を信じたいから、そんな長い名前の神は信じないぞ!
「私の記憶している限り、貴女の言う「ウェルツハマウフ」という女神はこの国に伝えられてはいません。そして、この世界をお創りになられたのはラキアータ神です」
ですよね?と、アーデルハイド殿下に同意を求める。
「私は王太子教育の一つとして、この国を中心とした信仰についても学んでいるが、そのような名の神はどの教本にも、そしてどの教師も私に示してはくれなかった。創世神の名も然り」
やっとアシストしてくれた…!こっちから振らないとダメだったのか…
「そんな…」
そんな神いねぇ!って言われてショックなのはわかる。だが、居ないものは仕方ない。
「もしかして、違う世界の神なのでは?」
「それよ!」
ほんそれ!じゃねぇよ、とは思ったが話が脱線しそうだから黙った。
まあ、知ってるキャラクターがいるのに別世界、とか思わないだろうし。
名前と容姿が合致するだけでもなかなかのミラクルですものね。思い込んじゃうのも解る気はする。
「神様が違うならストーリーが変わっててもおかしくないわよね?だから私は悪くないのよ」
その結論はおかしい。
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