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始まりは断罪の目撃から
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「落ち着きましたか」
「うん…ふっ、ふふっ、まだ少し残ってる、けど、大丈夫、に、なった…かな」
軽く装備を解いた俺に少し慣れてきたのだろう。紅茶タイム中、アーデルハイド殿下の言葉が大分文章になってきた。
頭と片目の包帯を取ったのが良かったんだろうな。あと、このケープ。
笑い倒すアーデルハイド殿下を見て、隠すものが必要だと手配したロシェル様、マジ有能。あと、普通なら不敬扱いされてもおかしくないのに受け入れてくれる懐の広さよ。
「まさか、ウィー君に浮気されるとか思わなかった…」
俺の装いよりもウィー君の方が重要案件なんだな。初対面の森から一貫した行動だけれども。
「どこが刺さったんでしょうね?」
「ホントそれ!ねえ、教えてよウィー君!」
ウィー君は俺の膝でプスプス言ってる。
「俺の本日のおめかしがお気に入りなら、殿下もするんですかね?」
「!!!…………い、いや、ウィー君の、為なら…」
「ダメですからね。正気に戻ってください?」
危ない。一瞬目が本気だった。
「おかしいというのは、自覚して、るんだ……ふふっ…」
あ、またツボに入ったか?
「正直、城に入れないんじゃないかとは思ってました」
「くっ…「どんな姿でも受け入れるように」と言ったのが仇になったか…」
「そんな事言ってたんですか」
笑いに耐えるように肩と腹筋を震わせながら自らの発言を悔いているようだ。
御子姿で来るとか思ったんだろうか。残念だがあれは本意ではないのですよ。
傍から見ればどっちもどっちなのだろうが、要は俺の心の問題です。
「まあ、御子の安売りをするとブランドイメージが下がりますからね」
「異世界の聖女が軽かった分、御子は勿体ぶるという訳ですか」
適当な話で誤魔化してみたけど、バレてるんだろうなぁ…
アーデルハイド殿下の言葉には否定も肯定もせず、笑顔で返す。「あの衣装、着たくないんです」という思いを込めて。
「……ふふっ、その反動が、これ、とか……ふっ」
「本題が吹っ飛ぶ威力だったようで、とても喜ばしいです」
膝上のウィー君も「ぎゅう」って同意してくれた辺りで、またしてもアーデルハイド殿下の腹筋が崩壊した。
よし。この日は記念日にしよう。
「そろそろ呼んだ理由をお聞かせ願えますか?」
見ていて面白いのはいいんだが、いつまでもこの状態でいるわけにもいかない。あの茶番の余波が聖協会に押し寄せて、対応に追われているんだ。マジ困ってる。どういうことだってばよ・・・
「本題を吹っ飛ばした原因が…」
「ははっ、何の事でしようね」
俺は精一杯の「おめかし」をしただけですよ?他意は少ししかないです。
何か言いたげな眼差しで俺を見つめていたアーデルハイド殿下は、ふぅ、と息を吐く。そのタイミングでロシェル様が紅茶のおかわりを淹れてくれた。給仕も出来るとか凄い!
メイドさんがつけない所でも主が不自由なく過ごせるようにしているんだな。無理だとは思うけどうちにも欲しい。
「……まあいいか。君を呼んだ理由だけど、私が個人的に話をしたいのが一つ、聖女の話が一つ、そして瘴気の浄化に関しての話が一つ。大きく分けるとこの3つの案件がある」
「じゃああと二つですね」
「私の話をなかったことにしないでくれないか。まだ本題にも入ってないからね」
いい顔でウインクぶつけるの止めてください。散々笑ったからいいでしょう?
今日も(体感が)長丁場な予感がする。
「早く終わる話からしようか。聖女の帰還が決まったよ」
おっと、いきなり重要案件だ。
「思っていたより早かったですね」
よくある召喚ものでは帰還方法が「魔王を倒す」とか「国の危機を救う」とか「帰れないから永住ルートです」とか召喚側は喚ぶだけ喚んで放置!みたいなパターンをよく見てたから、調査にもっと時間がかかるのかと思ってました。
「これに関しては、ラスフェルム君の下準備の賜物だね。彼が成果を見ることができないということが残念だ」
そうですね。ランカ様に連れていかれなければ追い返しの儀に立ち合えましたもんね。
「それだけ兄上が有能だったということでしょう。お褒めいただきありがとうございます」
「ルーベンスも君くらい素直なら…いや、素直に分類していいのかな?」
何故そこで疑問が出るのでしょうか?俺はこれ以上ないくらい素直な子どもですよ?
「色々おかしな点もありますが、兄上の能力が高いというのは真実ですから」
「君たち兄弟が羨ましいね」
アーデルハイド殿下はそう言いながら複雑な表情で微笑む。
王族(特に継承権上位の方々)というのは色々あるのだろう。
仲睦まじい兄弟を望んでも叶わないという点に関しては、他人である俺が何を言おうが気休めにもならないだろうが、これだけは言ってもいいだろう。
「超重い愛をぶつけてみたら、変わるかもしれませんね」
帰宅する度にベッタリ張り付いて、余暇時間はもちろん風呂やトイレまで付きまとってあげるといいと思います。あと、砂糖を吐くような口説き文句を近距離で囁くのもありかと。
「………は…ははっ、それは、ちょっと厳しい、かな…」
アーデルハイド殿下、目が泳いでますよ。きっと兄上の俺に対する態度を自分に当てはめて思い描いたのだろう。王太子が弟のストーカーとか国がヤバい。
あと、兄上の重すぎる愛をぶつけられている俺が言うのもなんですが、あれをやるのは常人には無理です。
因みに、前世という積み重ねがなかったら、俺も潰れていたと思う。
兄の愛は、受ける側にも特殊な訓練がいる案件です殿下。
まあ、病み系キャラがいるギャルゲーを数本クリアした程度の経験なんですけどね。
「うん…ふっ、ふふっ、まだ少し残ってる、けど、大丈夫、に、なった…かな」
軽く装備を解いた俺に少し慣れてきたのだろう。紅茶タイム中、アーデルハイド殿下の言葉が大分文章になってきた。
頭と片目の包帯を取ったのが良かったんだろうな。あと、このケープ。
笑い倒すアーデルハイド殿下を見て、隠すものが必要だと手配したロシェル様、マジ有能。あと、普通なら不敬扱いされてもおかしくないのに受け入れてくれる懐の広さよ。
「まさか、ウィー君に浮気されるとか思わなかった…」
俺の装いよりもウィー君の方が重要案件なんだな。初対面の森から一貫した行動だけれども。
「どこが刺さったんでしょうね?」
「ホントそれ!ねえ、教えてよウィー君!」
ウィー君は俺の膝でプスプス言ってる。
「俺の本日のおめかしがお気に入りなら、殿下もするんですかね?」
「!!!…………い、いや、ウィー君の、為なら…」
「ダメですからね。正気に戻ってください?」
危ない。一瞬目が本気だった。
「おかしいというのは、自覚して、るんだ……ふふっ…」
あ、またツボに入ったか?
「正直、城に入れないんじゃないかとは思ってました」
「くっ…「どんな姿でも受け入れるように」と言ったのが仇になったか…」
「そんな事言ってたんですか」
笑いに耐えるように肩と腹筋を震わせながら自らの発言を悔いているようだ。
御子姿で来るとか思ったんだろうか。残念だがあれは本意ではないのですよ。
傍から見ればどっちもどっちなのだろうが、要は俺の心の問題です。
「まあ、御子の安売りをするとブランドイメージが下がりますからね」
「異世界の聖女が軽かった分、御子は勿体ぶるという訳ですか」
適当な話で誤魔化してみたけど、バレてるんだろうなぁ…
アーデルハイド殿下の言葉には否定も肯定もせず、笑顔で返す。「あの衣装、着たくないんです」という思いを込めて。
「……ふふっ、その反動が、これ、とか……ふっ」
「本題が吹っ飛ぶ威力だったようで、とても喜ばしいです」
膝上のウィー君も「ぎゅう」って同意してくれた辺りで、またしてもアーデルハイド殿下の腹筋が崩壊した。
よし。この日は記念日にしよう。
「そろそろ呼んだ理由をお聞かせ願えますか?」
見ていて面白いのはいいんだが、いつまでもこの状態でいるわけにもいかない。あの茶番の余波が聖協会に押し寄せて、対応に追われているんだ。マジ困ってる。どういうことだってばよ・・・
「本題を吹っ飛ばした原因が…」
「ははっ、何の事でしようね」
俺は精一杯の「おめかし」をしただけですよ?他意は少ししかないです。
何か言いたげな眼差しで俺を見つめていたアーデルハイド殿下は、ふぅ、と息を吐く。そのタイミングでロシェル様が紅茶のおかわりを淹れてくれた。給仕も出来るとか凄い!
メイドさんがつけない所でも主が不自由なく過ごせるようにしているんだな。無理だとは思うけどうちにも欲しい。
「……まあいいか。君を呼んだ理由だけど、私が個人的に話をしたいのが一つ、聖女の話が一つ、そして瘴気の浄化に関しての話が一つ。大きく分けるとこの3つの案件がある」
「じゃああと二つですね」
「私の話をなかったことにしないでくれないか。まだ本題にも入ってないからね」
いい顔でウインクぶつけるの止めてください。散々笑ったからいいでしょう?
今日も(体感が)長丁場な予感がする。
「早く終わる話からしようか。聖女の帰還が決まったよ」
おっと、いきなり重要案件だ。
「思っていたより早かったですね」
よくある召喚ものでは帰還方法が「魔王を倒す」とか「国の危機を救う」とか「帰れないから永住ルートです」とか召喚側は喚ぶだけ喚んで放置!みたいなパターンをよく見てたから、調査にもっと時間がかかるのかと思ってました。
「これに関しては、ラスフェルム君の下準備の賜物だね。彼が成果を見ることができないということが残念だ」
そうですね。ランカ様に連れていかれなければ追い返しの儀に立ち合えましたもんね。
「それだけ兄上が有能だったということでしょう。お褒めいただきありがとうございます」
「ルーベンスも君くらい素直なら…いや、素直に分類していいのかな?」
何故そこで疑問が出るのでしょうか?俺はこれ以上ないくらい素直な子どもですよ?
「色々おかしな点もありますが、兄上の能力が高いというのは真実ですから」
「君たち兄弟が羨ましいね」
アーデルハイド殿下はそう言いながら複雑な表情で微笑む。
王族(特に継承権上位の方々)というのは色々あるのだろう。
仲睦まじい兄弟を望んでも叶わないという点に関しては、他人である俺が何を言おうが気休めにもならないだろうが、これだけは言ってもいいだろう。
「超重い愛をぶつけてみたら、変わるかもしれませんね」
帰宅する度にベッタリ張り付いて、余暇時間はもちろん風呂やトイレまで付きまとってあげるといいと思います。あと、砂糖を吐くような口説き文句を近距離で囁くのもありかと。
「………は…ははっ、それは、ちょっと厳しい、かな…」
アーデルハイド殿下、目が泳いでますよ。きっと兄上の俺に対する態度を自分に当てはめて思い描いたのだろう。王太子が弟のストーカーとか国がヤバい。
あと、兄上の重すぎる愛をぶつけられている俺が言うのもなんですが、あれをやるのは常人には無理です。
因みに、前世という積み重ねがなかったら、俺も潰れていたと思う。
兄の愛は、受ける側にも特殊な訓練がいる案件です殿下。
まあ、病み系キャラがいるギャルゲーを数本クリアした程度の経験なんですけどね。
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