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始まりは断罪の目撃から
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もう一度振り返っておこう。
姿絵に描かれているのは「金髪黒目の女性」、御子と呼ばれる人物だ。
アリナ嬢は深い茶に見えなくもない黒髪黒目。現代日本の女子高生らしい色をしている。
姿絵の人物とは、(当たり前だが)明らかに違う。
「それは…金髪の方が映えるからでしょ?私の美貌の前に特徴なんて関係ないのよ!」
美貌!自分で言うなよ!第三者がいる場でなければ派手に吹き出した後、指差して笑ってやれたのに。
あと、「映える」って何?見映えが良いって事か?
画家はパトロンを得るために肖像画を敢えて依頼主の好みに寄せて描いていた、というのは前世で読んだ本に書いてあった気がする。どこまで本当かは不明だが、理解はできる。
こちらの世界でもそうなのだろうが…今回に関しては違いすぎしませんかね、お嬢さん。
完全に別人だということ、お解りいただきたい。
この姿絵はアーデルハイド殿下が持っていたもので、王家への献上品であることを「言うまでもないよね」と態度が示している。
聞いたら「そうだよ」って言うだろう。言わなかったら出処を聞く。そして出処に「本人の許可取ってないでしょ?」って詰め寄る。
聖女の姿は面会を済ませている陛下は当然ご存知な訳で、この姿絵を「聖女様です!」と見せられても「そうか、片しておくように」と(持ってきた奴諸共)一蹴するだろうし、ジョークアイテムにしてもアーデルハイド殿下がこの場に持ってくる理由にならない。
そして恐らく、陛下は御子の姿をご存知のはずだ。アイローチェ様経由で。
アイローチェ様は王子妃教育の為に王城に日参しており、陛下や王妃様ともよい関係を築いていると聞いている。
ルーベンス殿下とアリナ嬢の困った話も当然共有している事だろう。
当たり前だが、アリナ嬢に嫌がらせするような暇なんてない。
まあ、アイローチェ様が語らなくても護衛からの報告で大体察しておられるだろうが。
だからこそアーデルハイド殿下が学園まで来て俺に接触したのだろうと思っている。
ウィー君との出会いは…偶然だろう。それこそ運命じゃないの?
兄上は別枠として、ロン毛が姿絵を持っていたのは「噂の御子を確認する」「トレンドを押さえておく」という理由じゃないかと思う。
グッダグタだったけど、一応商人の息子だからな。俺にあっさり論破されたけど。
疑問はいくつもあるが、愉快な仲間たちは姿絵とアリナ嬢をイコールで見ていないだろう、というのが俺の見解だ。
ロン毛も判ってはいたのだろうが、あの発言はマジでないので親父殿にグーで(最低でも)一発くらい殴られておけばいいと思う。
解ってないのはアリナ嬢だけだよな。現実ちゃんと見て。
すぐ側にいて姿絵を書かせることが出来る立場にいる奴が、自分の想像画を持ち歩いて「私の運命」とか言っちゃうのは奇行が過ぎると思うんだ。俺だったら即没収してどういうことか問い質す。
帰ったら兄上が持っている(と聞いた)御子の姿絵を没収の後焼却する(固い決意)
また話が逸れたな。早くアリナ嬢を片付けて兄上のヤバいコレクションを廃棄しよう。
「髪色が違うのは理想を詰めた結果なのですね。ではなぜ「黒い瞳」なのでしょう?聖女様の仰る「映え」ならば瞳の色も変わるはずです」
「私の目は黒いわよ!」
「そうですね。一番目立つ髪色ではなく、瞳だけ色を合わせるというのは不自然だということもご理解下さいませ」
通じろ!話!
「そんなの描いた人にしか判らないわよ」
「この姿絵、見るからに貴方とは別人ですよ?」
「私はヒロインなんだから愛されて当然なの!」
あぁー!また通じなくなったよォー!早く帰らせろ!
「えっと…この姿絵を陛下に献上したのはとある辺境伯なんだけどね」
あまりにも不毛すぎる会話に、アーデルハイド殿下がついに動いた。
その辺境伯はラウレスタ様ですよね。献上するくらいだから、作成の段階でかなり吟味しましたよね。きっと同じものをご自身の邸宅に飾っているに違いない。なんか怖い。
しかし、「この姿絵は陛下に献上されたもの」とはっきり言い切りましたね。最後まで明言しないと思っていました。
献上品ならば多少の脚色はあれど、イメージイラストの可能性は無くなった。アリナ嬢がそこを理解しているかは別として。
「彼が「神の祝福を見た」と瞳を輝かせながら言うものだから、この姿絵の人物は領地で奇跡を起こしたのだろうね」
加減が分からずにやらかしたやつですね。喜んでもらえているならいいのですが、何故俺に姿絵を作っていいかを相談しなかったのか。全力で止めたかった!
「さて、ここで問題です」
「「!?」」
今の流れでクイズとかある?
流石にアリナ嬢もポカンと口を開けたよ。
「話題の姿絵、王家に献上した辺境伯とは誰でしょう?」
…あっ、二人にじゃなくてアリナ嬢に向けたやつか!
ちゃんと助け舟だったんだな、よかった。
「ヒントは先程の私の話。要らないとは思うが、少しだけ考える時間をあげよう」
「そんなの…わかるわけないわ!」
でしょうね。
「ねえ、あなたはわかるの?」
「存じ上げております」
やったの俺ですもん。
「ヒントその1、この姿絵の人物は辺境伯に「神の祝福」と言わせる程の奇跡を見せている様だよ」
森を丸ごと浄化したら、それはもう立派な奇跡ですよね。
ははっ、やりすぎは自覚してるけど謝らないぞ。
姿絵に描かれているのは「金髪黒目の女性」、御子と呼ばれる人物だ。
アリナ嬢は深い茶に見えなくもない黒髪黒目。現代日本の女子高生らしい色をしている。
姿絵の人物とは、(当たり前だが)明らかに違う。
「それは…金髪の方が映えるからでしょ?私の美貌の前に特徴なんて関係ないのよ!」
美貌!自分で言うなよ!第三者がいる場でなければ派手に吹き出した後、指差して笑ってやれたのに。
あと、「映える」って何?見映えが良いって事か?
画家はパトロンを得るために肖像画を敢えて依頼主の好みに寄せて描いていた、というのは前世で読んだ本に書いてあった気がする。どこまで本当かは不明だが、理解はできる。
こちらの世界でもそうなのだろうが…今回に関しては違いすぎしませんかね、お嬢さん。
完全に別人だということ、お解りいただきたい。
この姿絵はアーデルハイド殿下が持っていたもので、王家への献上品であることを「言うまでもないよね」と態度が示している。
聞いたら「そうだよ」って言うだろう。言わなかったら出処を聞く。そして出処に「本人の許可取ってないでしょ?」って詰め寄る。
聖女の姿は面会を済ませている陛下は当然ご存知な訳で、この姿絵を「聖女様です!」と見せられても「そうか、片しておくように」と(持ってきた奴諸共)一蹴するだろうし、ジョークアイテムにしてもアーデルハイド殿下がこの場に持ってくる理由にならない。
そして恐らく、陛下は御子の姿をご存知のはずだ。アイローチェ様経由で。
アイローチェ様は王子妃教育の為に王城に日参しており、陛下や王妃様ともよい関係を築いていると聞いている。
ルーベンス殿下とアリナ嬢の困った話も当然共有している事だろう。
当たり前だが、アリナ嬢に嫌がらせするような暇なんてない。
まあ、アイローチェ様が語らなくても護衛からの報告で大体察しておられるだろうが。
だからこそアーデルハイド殿下が学園まで来て俺に接触したのだろうと思っている。
ウィー君との出会いは…偶然だろう。それこそ運命じゃないの?
兄上は別枠として、ロン毛が姿絵を持っていたのは「噂の御子を確認する」「トレンドを押さえておく」という理由じゃないかと思う。
グッダグタだったけど、一応商人の息子だからな。俺にあっさり論破されたけど。
疑問はいくつもあるが、愉快な仲間たちは姿絵とアリナ嬢をイコールで見ていないだろう、というのが俺の見解だ。
ロン毛も判ってはいたのだろうが、あの発言はマジでないので親父殿にグーで(最低でも)一発くらい殴られておけばいいと思う。
解ってないのはアリナ嬢だけだよな。現実ちゃんと見て。
すぐ側にいて姿絵を書かせることが出来る立場にいる奴が、自分の想像画を持ち歩いて「私の運命」とか言っちゃうのは奇行が過ぎると思うんだ。俺だったら即没収してどういうことか問い質す。
帰ったら兄上が持っている(と聞いた)御子の姿絵を没収の後焼却する(固い決意)
また話が逸れたな。早くアリナ嬢を片付けて兄上のヤバいコレクションを廃棄しよう。
「髪色が違うのは理想を詰めた結果なのですね。ではなぜ「黒い瞳」なのでしょう?聖女様の仰る「映え」ならば瞳の色も変わるはずです」
「私の目は黒いわよ!」
「そうですね。一番目立つ髪色ではなく、瞳だけ色を合わせるというのは不自然だということもご理解下さいませ」
通じろ!話!
「そんなの描いた人にしか判らないわよ」
「この姿絵、見るからに貴方とは別人ですよ?」
「私はヒロインなんだから愛されて当然なの!」
あぁー!また通じなくなったよォー!早く帰らせろ!
「えっと…この姿絵を陛下に献上したのはとある辺境伯なんだけどね」
あまりにも不毛すぎる会話に、アーデルハイド殿下がついに動いた。
その辺境伯はラウレスタ様ですよね。献上するくらいだから、作成の段階でかなり吟味しましたよね。きっと同じものをご自身の邸宅に飾っているに違いない。なんか怖い。
しかし、「この姿絵は陛下に献上されたもの」とはっきり言い切りましたね。最後まで明言しないと思っていました。
献上品ならば多少の脚色はあれど、イメージイラストの可能性は無くなった。アリナ嬢がそこを理解しているかは別として。
「彼が「神の祝福を見た」と瞳を輝かせながら言うものだから、この姿絵の人物は領地で奇跡を起こしたのだろうね」
加減が分からずにやらかしたやつですね。喜んでもらえているならいいのですが、何故俺に姿絵を作っていいかを相談しなかったのか。全力で止めたかった!
「さて、ここで問題です」
「「!?」」
今の流れでクイズとかある?
流石にアリナ嬢もポカンと口を開けたよ。
「話題の姿絵、王家に献上した辺境伯とは誰でしょう?」
…あっ、二人にじゃなくてアリナ嬢に向けたやつか!
ちゃんと助け舟だったんだな、よかった。
「ヒントは先程の私の話。要らないとは思うが、少しだけ考える時間をあげよう」
「そんなの…わかるわけないわ!」
でしょうね。
「ねえ、あなたはわかるの?」
「存じ上げております」
やったの俺ですもん。
「ヒントその1、この姿絵の人物は辺境伯に「神の祝福」と言わせる程の奇跡を見せている様だよ」
森を丸ごと浄化したら、それはもう立派な奇跡ですよね。
ははっ、やりすぎは自覚してるけど謝らないぞ。
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