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始まりは断罪の目撃から
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「う…嘘よ!そんなの!シナリオが変わっちゃうじゃない!」
アリナ嬢が叫ぶ。
なんだ、話通じるじゃないか。
こんなことなら、もっと早くに暴露しておけばよかった。
「そうですね。ファルムファス少年の生存で魔王登場の道筋が無くなりました。そこで浮上する疑問が「何故聖女召喚が行われたか」です」
喚ぶ理由が無くなったのにわざわざ膨大な金と労力を使って異世界から少女を誘拐するとか、おかしいとしか思えない。
「メロディアス侯爵令息は言っていました「召喚理由を調べたけど判らなかった」と。提案者もハッキリしない、許可を出した国王陛下や関わった側近、聖協会の高司祭も何故儀式を行う事になったか記憶もなければ記録すらない。というのはどう考えてもおかしいと思いませんか?」
思うよね?思わないとか言われても語り続けるだけだけど。
「ここで都合のいい解釈を入れるとしたら…」
アリナ嬢とアーデルハイド殿下をゆっくり見つめ、アリナ嬢に視線を合わせて告げる。
「全部魔王って奴の仕業なんだ」
と。
俺はラキアータ様から世界のバグの話を聞いてるから、魔王がいるとか思ってないけどな。
でも、アリナ嬢にはダメージだろ?
ついでにアーデルハイド殿下の驚く顔が見れたらラッキーじゃないか。
「いやあああ!嘘よぉぉ!」
アリナ嬢がテンプレみたいな叫びを上げた。
ドアの外に待機していた護衛が反応するが、アーデルハイド殿下が「問題ない」と下がらせてくれた。
確かにアリナ嬢以外は問題ないもんな。
「今の話は君の仮説、なんだよね?」
俺の話が受け入れられないアリナ嬢がブツブツやってるのを視界の端に入れたまま、アーデルハイド殿下が聞いてきた。
「勿論です。どうにか辻褄を合わせたい人向けに考えついた「都合のいい解釈」です」
にっこり微笑んで、こう続ける。
「神様じゃないんですから、真相なんて判りませんよ」
正直、ラキアータ様も判ってない(興味もない)と思う。
「まあ、この説は「異世界から召喚された聖女様」を大人しくさせるに相応しいと判断しての発言です」
「殺意の高そうな含みを感じた気がするのだが?」
「気の所為です」
「そうか、気の所為か。私もウィー君に癒されたい」
ははは、うふふ、と視線を交わすことなく腹黒達が笑う。
俺たち、死亡扱いされた事に対して礼を尽くしただけだもんな。
貴重な学園生活を削られた恨みは深い。
「まあ、もしもの話ではありますが…聖女様が瘴気の浄化や民に寄り添う動きをして下さっていれば、魔王陰謀説を思いつくこともなかったでしょう」
「欲望のままに振舞った結果というわけか」
「そうですね」
アリナ嬢が聖女の役目を丸投げせずにやってくれていたら、時間かけてあれこれしなくてすんだのだろうな。
ご令嬢方には「あんな男とはすっぱり縁を切って、もっといい相手を探すべき」って早い段階で言えたはず。
俺も兄上の執着から解放されて安堵でき…いや、アリナ嬢とルーベンス殿下がくっついた後、慰めから深まる執着が垣間見えた。どっちにしろ俺だけ損してる…?
……もしもやたらればを思うと悲しくなるからやめよう。もう過ぎたことだ。
「さて、聖女様。貴方様を追い詰めるつもりは全くございませんが、もう一つ、申し上げておかねばならないことがございます」
つもりはなくても、結果はそうなるんだが…という点は伏しておく。言葉が足りない?ええ、わざとですとも。
「こちらの姿絵、ご覧になられたことはありますか?」
アーデルハイド殿下が持っていた「御子」の姿絵をアリナ嬢に見せる。
何故そんなものを持ち歩く必要が?とは思ったが、恐らくどこかのタイミングで兄上辺りに見せびらかそうとしていたのだろう。
ラウレスタ様が浄化報告の手土産のひとつとして王家へ献上した物らしく、かなり良い素材を使っているのだろうことがわかる。
モデルの俺には何も無いんだが?いや、もらっても困るけど。肖像使用料とかないんですかね?
「………ラスとアンディが持ってたわ」
兄上…ッ!
アーデルハイド殿下、「持ってると思った」って笑いを堪えながら呟くの止めてください。俺の心にダイレクトアタックしてますから。
「その姿絵がどうしたのよ。私を描いたのでしょう?」
「………は?」
今、妄言が聞こえた気がするんですが?
「……この姿絵は、聖協会が浄化遠征に同行した「御子」を描いたと王家に献上されたものです」
そう。繰り返す様だが、俺の変装だ。
金髪のウイッグと黒い瞳が特徴的な姿絵。
「何故聖女様だと?」
明らかに髪色違うだろ?
「ラスが「私の運命」っていう相手は私だけよ」
「……………」
アリナ嬢、兄上が執着している「運命」の相手は(認めたくないけど)俺です。
「それに姿絵って写真じゃないから、正確じゃないもの。想像なら会わなくても描けるでしょ?」
姿絵が写真とイコールじゃないのは真実だが、どこから突っ込めばいいのか…
「聖女様の御髪はこの国では稀有な特徴となります。この姿絵に描かれていないのは何故でしょうか」
行ったことないから他国の事は知らないが、この国の住民は鮮やかな髪色が多い。
王侯貴族は天(太陽や月)に近しいから金髪や銀髪が多いのだとか、自身の属性に関わる色が出やすいとかいう話を聞いている。
レアな闇属性の俺が黒髪黒目なので、属性云々は間違いではないのだろう。
アリナ嬢が叫ぶ。
なんだ、話通じるじゃないか。
こんなことなら、もっと早くに暴露しておけばよかった。
「そうですね。ファルムファス少年の生存で魔王登場の道筋が無くなりました。そこで浮上する疑問が「何故聖女召喚が行われたか」です」
喚ぶ理由が無くなったのにわざわざ膨大な金と労力を使って異世界から少女を誘拐するとか、おかしいとしか思えない。
「メロディアス侯爵令息は言っていました「召喚理由を調べたけど判らなかった」と。提案者もハッキリしない、許可を出した国王陛下や関わった側近、聖協会の高司祭も何故儀式を行う事になったか記憶もなければ記録すらない。というのはどう考えてもおかしいと思いませんか?」
思うよね?思わないとか言われても語り続けるだけだけど。
「ここで都合のいい解釈を入れるとしたら…」
アリナ嬢とアーデルハイド殿下をゆっくり見つめ、アリナ嬢に視線を合わせて告げる。
「全部魔王って奴の仕業なんだ」
と。
俺はラキアータ様から世界のバグの話を聞いてるから、魔王がいるとか思ってないけどな。
でも、アリナ嬢にはダメージだろ?
ついでにアーデルハイド殿下の驚く顔が見れたらラッキーじゃないか。
「いやあああ!嘘よぉぉ!」
アリナ嬢がテンプレみたいな叫びを上げた。
ドアの外に待機していた護衛が反応するが、アーデルハイド殿下が「問題ない」と下がらせてくれた。
確かにアリナ嬢以外は問題ないもんな。
「今の話は君の仮説、なんだよね?」
俺の話が受け入れられないアリナ嬢がブツブツやってるのを視界の端に入れたまま、アーデルハイド殿下が聞いてきた。
「勿論です。どうにか辻褄を合わせたい人向けに考えついた「都合のいい解釈」です」
にっこり微笑んで、こう続ける。
「神様じゃないんですから、真相なんて判りませんよ」
正直、ラキアータ様も判ってない(興味もない)と思う。
「まあ、この説は「異世界から召喚された聖女様」を大人しくさせるに相応しいと判断しての発言です」
「殺意の高そうな含みを感じた気がするのだが?」
「気の所為です」
「そうか、気の所為か。私もウィー君に癒されたい」
ははは、うふふ、と視線を交わすことなく腹黒達が笑う。
俺たち、死亡扱いされた事に対して礼を尽くしただけだもんな。
貴重な学園生活を削られた恨みは深い。
「まあ、もしもの話ではありますが…聖女様が瘴気の浄化や民に寄り添う動きをして下さっていれば、魔王陰謀説を思いつくこともなかったでしょう」
「欲望のままに振舞った結果というわけか」
「そうですね」
アリナ嬢が聖女の役目を丸投げせずにやってくれていたら、時間かけてあれこれしなくてすんだのだろうな。
ご令嬢方には「あんな男とはすっぱり縁を切って、もっといい相手を探すべき」って早い段階で言えたはず。
俺も兄上の執着から解放されて安堵でき…いや、アリナ嬢とルーベンス殿下がくっついた後、慰めから深まる執着が垣間見えた。どっちにしろ俺だけ損してる…?
……もしもやたらればを思うと悲しくなるからやめよう。もう過ぎたことだ。
「さて、聖女様。貴方様を追い詰めるつもりは全くございませんが、もう一つ、申し上げておかねばならないことがございます」
つもりはなくても、結果はそうなるんだが…という点は伏しておく。言葉が足りない?ええ、わざとですとも。
「こちらの姿絵、ご覧になられたことはありますか?」
アーデルハイド殿下が持っていた「御子」の姿絵をアリナ嬢に見せる。
何故そんなものを持ち歩く必要が?とは思ったが、恐らくどこかのタイミングで兄上辺りに見せびらかそうとしていたのだろう。
ラウレスタ様が浄化報告の手土産のひとつとして王家へ献上した物らしく、かなり良い素材を使っているのだろうことがわかる。
モデルの俺には何も無いんだが?いや、もらっても困るけど。肖像使用料とかないんですかね?
「………ラスとアンディが持ってたわ」
兄上…ッ!
アーデルハイド殿下、「持ってると思った」って笑いを堪えながら呟くの止めてください。俺の心にダイレクトアタックしてますから。
「その姿絵がどうしたのよ。私を描いたのでしょう?」
「………は?」
今、妄言が聞こえた気がするんですが?
「……この姿絵は、聖協会が浄化遠征に同行した「御子」を描いたと王家に献上されたものです」
そう。繰り返す様だが、俺の変装だ。
金髪のウイッグと黒い瞳が特徴的な姿絵。
「何故聖女様だと?」
明らかに髪色違うだろ?
「ラスが「私の運命」っていう相手は私だけよ」
「……………」
アリナ嬢、兄上が執着している「運命」の相手は(認めたくないけど)俺です。
「それに姿絵って写真じゃないから、正確じゃないもの。想像なら会わなくても描けるでしょ?」
姿絵が写真とイコールじゃないのは真実だが、どこから突っ込めばいいのか…
「聖女様の御髪はこの国では稀有な特徴となります。この姿絵に描かれていないのは何故でしょうか」
行ったことないから他国の事は知らないが、この国の住民は鮮やかな髪色が多い。
王侯貴族は天(太陽や月)に近しいから金髪や銀髪が多いのだとか、自身の属性に関わる色が出やすいとかいう話を聞いている。
レアな闇属性の俺が黒髪黒目なので、属性云々は間違いではないのだろう。
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