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始まりは断罪の目撃から
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しおりを挟む「聖女が持つとされる浄化の力、使われたことはありますか?」
「勿論よ!大切な人達を毎日癒してあげているわ」
うん?わかりやすく聞いたつもりなのに、違う答えが返ってきたなぁ。
「わたくしがお聞きしているのは、瘴気の浄化の事ですが?」
「心の闇を払うのも聖女の仕事でしょ?」
……………なにかがおかしい。
「聖協会の司祭様方から、聖女の在り方についての話を聞かれたと思いますが…」
「聖女って皆から愛される存在なのよね!」
………ヤバい!ここまで時間かけておいて、アリナ嬢が話が通じない奴だという可能性が出てきた!
こんなに会話が成り立たないなんて、想定してなかった!どうしよう!
これ、愉快な仲間たちとのやり取りも解ってない(というか聞いてない)んじゃないか?
あんなに時間かけた茶番、ガンスルーかよ!報われろ、俺の時間!
焦った俺はアーデルハイド殿下や義姉上達に救援求むの視線を送ったが、「これは無理」って顔で首を横に振られた。助けてよ!
因みに今のやり取りを目の前で見ていた愉快な仲間たちは、現実を受け止めきれない顔をしている。貴方たちは今までどんな会話してきたの?
流石に兄上も「マジかよ」って表情でアリナ嬢を見ている。他の人にも視線は行くんだな、って安心した瞬間にギュン、って目が合った。怖ぇよ!視線の熱量で顔が焦げそう!
「あー…、聖女様。瘴気の浄化をされたことは?」
「悩みなら聞くわよ!聖女の力で解決よ!」
貴女との会話が成り立たないことが悩みなんですがー
聖女の力以前の問題です。
ギャラリーも「やべぇ奴だ」って引いてるかと思いきや、割と平常の様な……はっ!まさか!この成り立たない会話が基本形なのか?高等部ではこれが日常風景なの?嘘でしょ?
アリナ嬢の人となりは噂という人づてにしか聞いてなかったからなー。
面倒だから関わりたくないと近寄らない様にしていたのがここで仇となったか…
若干引き気味のご令嬢方は「話が通じないのは気づいてはいたけど、ここまでひどいとは思わなかった」という戸惑いが滲み出ている。
アーデルハイド殿下は「初対面の相手(しかも超格上)に「あんた死ぬわよ!」って言い放つくらいだから、話は通じないものとして扱う」って思ってそう。表情を見ても、ご機嫌じゃないんだろうな、くらいしかわからない。
どうしようかなぁ…どうやったら素早く場を収めて帰宅できるかなぁ…早く帰りたいなぁ…
「聖女様のお話にも出た「魔王」とは、どういう存在ですか?」
……これはここでする話じゃないような気もするけど、他に思いつかないしなぁ…
会話が成り立たないせいだな。うん。そう思うことにしよう。
「魔王、ね。悪いやつよ」
あ、通じた。
「自分の思い通りにいかない事は魔物を使ってどうにかしてるんだわ!」
…ん?……通じ……て…るの…か?
「だってそうじゃない!勝手に村を滅ぼしたり、向かってくるからって殺したりするのよ!」
勝手に村を滅ぼすのは悪いが、向かってくるやつに関しては過剰防衛の可能性も微レ存では?
ヒートアップしてきたから、落ち着くまでツッコミはせずに聞いてみよう。「魔王」のワードはスイッチだったか…
「魔物で軍隊作るのもヤバいけど、お気に入りを集めた部屋もヤバいの!スチルがダークサイドで人気があったのよ!でも私の趣味じゃないの!生きたまま人形にするとか超悪趣味!」
スチル……パズルゲーでいうとステージクリア画像みたいなやつだとか。乙女ゲーム特有の呼び名だったりするんだろうか。その辺は詳しくないから、深く考えるのはやめよう。
遂に語りがゲームに入ってきたな。言ってる事は半分も理解出来てないが、前世もゲームの存在も知らない者にとっては未知のワード頻発で困惑するしかない。
ゲームの内容もアリナ嬢自身が状況が正しく理解出来ていれば「予言」として上手く世渡り出来ていたはず。その事を思えば、もったいないとしか言えない。過ぎた話ではあるが。
「だからラスの弟くんも魔王に殺されたのよ」
その知識はもっといい使い道があったんじゃないかと考えてた所、アリナ嬢のこの一言で現実に引き戻された。
一瞬、時が止まったかのような静寂が訪れる。
アリナ嬢はその事に「ん?」となったが直ぐに語りを再開する。片やザワつく愉快な仲間たち。
愉快な仲間たちはチラチラ兄上を気にしていり。まあそうだろう。俺が死んだという話は聞いてないだろうからな。
兄上の周りだけ温度が低そうなのが少し気になるところ。氷属性持ってなかったよね…
「ラスの弟…?ファルム様ってこと…?」
って義姉上が兄上と俺を交互に見ているので、にっこりと微笑んで見せた。俺は無事でーす。
「なる程。起点となったであろう事柄が異なっているから、聖女様のお言葉と眼前の事象が食い違っているという訳か」
アーデルハイド殿下が冷静に、そしてよく通る声で呟いた。
死亡宣告同盟として情報共有していたかいがあったな。
「でもまぁ、暫くラスフェルムに任せてみようか。言いたいことも出来たみたいだしね」
そう。アリナ嬢が「ラスフェルムの弟が魔王に殺された」という発言から、兄上が魔王復活のような雰囲気を醸し出しているのだ。
愉快な仲間たちがガチで怯えている。
「ファルム様が好きすぎるラスにとって、先程の発言は超級以上の地雷でしたわね」
義姉上がぽつりと呟く。
「やりすぎる様なら、止める努力はしますわ」
努力目標ということは、止まらない可能性が高いって事ですね。
兄上、貴方何をやらかす気なんですか…
「勿論よ!大切な人達を毎日癒してあげているわ」
うん?わかりやすく聞いたつもりなのに、違う答えが返ってきたなぁ。
「わたくしがお聞きしているのは、瘴気の浄化の事ですが?」
「心の闇を払うのも聖女の仕事でしょ?」
……………なにかがおかしい。
「聖協会の司祭様方から、聖女の在り方についての話を聞かれたと思いますが…」
「聖女って皆から愛される存在なのよね!」
………ヤバい!ここまで時間かけておいて、アリナ嬢が話が通じない奴だという可能性が出てきた!
こんなに会話が成り立たないなんて、想定してなかった!どうしよう!
これ、愉快な仲間たちとのやり取りも解ってない(というか聞いてない)んじゃないか?
あんなに時間かけた茶番、ガンスルーかよ!報われろ、俺の時間!
焦った俺はアーデルハイド殿下や義姉上達に救援求むの視線を送ったが、「これは無理」って顔で首を横に振られた。助けてよ!
因みに今のやり取りを目の前で見ていた愉快な仲間たちは、現実を受け止めきれない顔をしている。貴方たちは今までどんな会話してきたの?
流石に兄上も「マジかよ」って表情でアリナ嬢を見ている。他の人にも視線は行くんだな、って安心した瞬間にギュン、って目が合った。怖ぇよ!視線の熱量で顔が焦げそう!
「あー…、聖女様。瘴気の浄化をされたことは?」
「悩みなら聞くわよ!聖女の力で解決よ!」
貴女との会話が成り立たないことが悩みなんですがー
聖女の力以前の問題です。
ギャラリーも「やべぇ奴だ」って引いてるかと思いきや、割と平常の様な……はっ!まさか!この成り立たない会話が基本形なのか?高等部ではこれが日常風景なの?嘘でしょ?
アリナ嬢の人となりは噂という人づてにしか聞いてなかったからなー。
面倒だから関わりたくないと近寄らない様にしていたのがここで仇となったか…
若干引き気味のご令嬢方は「話が通じないのは気づいてはいたけど、ここまでひどいとは思わなかった」という戸惑いが滲み出ている。
アーデルハイド殿下は「初対面の相手(しかも超格上)に「あんた死ぬわよ!」って言い放つくらいだから、話は通じないものとして扱う」って思ってそう。表情を見ても、ご機嫌じゃないんだろうな、くらいしかわからない。
どうしようかなぁ…どうやったら素早く場を収めて帰宅できるかなぁ…早く帰りたいなぁ…
「聖女様のお話にも出た「魔王」とは、どういう存在ですか?」
……これはここでする話じゃないような気もするけど、他に思いつかないしなぁ…
会話が成り立たないせいだな。うん。そう思うことにしよう。
「魔王、ね。悪いやつよ」
あ、通じた。
「自分の思い通りにいかない事は魔物を使ってどうにかしてるんだわ!」
…ん?……通じ……て…るの…か?
「だってそうじゃない!勝手に村を滅ぼしたり、向かってくるからって殺したりするのよ!」
勝手に村を滅ぼすのは悪いが、向かってくるやつに関しては過剰防衛の可能性も微レ存では?
ヒートアップしてきたから、落ち着くまでツッコミはせずに聞いてみよう。「魔王」のワードはスイッチだったか…
「魔物で軍隊作るのもヤバいけど、お気に入りを集めた部屋もヤバいの!スチルがダークサイドで人気があったのよ!でも私の趣味じゃないの!生きたまま人形にするとか超悪趣味!」
スチル……パズルゲーでいうとステージクリア画像みたいなやつだとか。乙女ゲーム特有の呼び名だったりするんだろうか。その辺は詳しくないから、深く考えるのはやめよう。
遂に語りがゲームに入ってきたな。言ってる事は半分も理解出来てないが、前世もゲームの存在も知らない者にとっては未知のワード頻発で困惑するしかない。
ゲームの内容もアリナ嬢自身が状況が正しく理解出来ていれば「予言」として上手く世渡り出来ていたはず。その事を思えば、もったいないとしか言えない。過ぎた話ではあるが。
「だからラスの弟くんも魔王に殺されたのよ」
その知識はもっといい使い道があったんじゃないかと考えてた所、アリナ嬢のこの一言で現実に引き戻された。
一瞬、時が止まったかのような静寂が訪れる。
アリナ嬢はその事に「ん?」となったが直ぐに語りを再開する。片やザワつく愉快な仲間たち。
愉快な仲間たちはチラチラ兄上を気にしていり。まあそうだろう。俺が死んだという話は聞いてないだろうからな。
兄上の周りだけ温度が低そうなのが少し気になるところ。氷属性持ってなかったよね…
「ラスの弟…?ファルム様ってこと…?」
って義姉上が兄上と俺を交互に見ているので、にっこりと微笑んで見せた。俺は無事でーす。
「なる程。起点となったであろう事柄が異なっているから、聖女様のお言葉と眼前の事象が食い違っているという訳か」
アーデルハイド殿下が冷静に、そしてよく通る声で呟いた。
死亡宣告同盟として情報共有していたかいがあったな。
「でもまぁ、暫くラスフェルムに任せてみようか。言いたいことも出来たみたいだしね」
そう。アリナ嬢が「ラスフェルムの弟が魔王に殺された」という発言から、兄上が魔王復活のような雰囲気を醸し出しているのだ。
愉快な仲間たちがガチで怯えている。
「ファルム様が好きすぎるラスにとって、先程の発言は超級以上の地雷でしたわね」
義姉上がぽつりと呟く。
「やりすぎる様なら、止める努力はしますわ」
努力目標ということは、止まらない可能性が高いって事ですね。
兄上、貴方何をやらかす気なんですか…
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