28 / 97
始まりは断罪の目撃から
28
しおりを挟む
「さて、皆にウィー君の素晴らしさを見てもらった訳だが」
早々にこちらのメインを端に置いたな。
もしかしてどころじゃなく、アーデルハイド殿下はウィー君を見せびらかしに来たんだろう。「盛大にお披露目したい」って言ってたのは聞き流したけど、今がお披露目の機会だとしたらドンと引く。
…もっといい機会設けてあげて。
「うさちゃんラブが全く衰えておられませんわね」
「もふもふしたいわぁ」
「陛下のお言葉と彼らの処遇の発表はついで扱いなのね」
「………どういう状況なの?」
ご令嬢方はアーデルハイド殿下の行動をすんなり受け入れているのに対し、ルーベンス殿下の婚約者として交流があるはずのアイローチェ様が若干慌てている。何故かな?
「アーデルハイド殿下はアイローチェ様の前では「乙女の理想の王子様」を崩したことがないそうよ」
義姉上がすっと耳打ちしてくれた。納得。
俺はウィー君にデロデロな姿を至近距離で見せられたのが出会いだったから「そんなもんか」って思えたけど、普段しっかり王子してる姿しか見てないなら確かに混乱するかもしれない。
ルーベンス殿下も困惑しているところを見ると、完璧王子な兄の姿しか見ていないのかもな。繕うのうますぎだな。ウィー君で崩壊したけど。
「まずはこの場の主役であるべき、マッチェレル学園を卒業する若人たちへ祝詞を。おめでとう」
そうだ。茶番長すぎて忘れてたけど、今卒業パーティ中だった。
「そして、第二王子ルーベンスを筆頭に起こした騒動について。生涯一度であろう晴れの舞台を汚してしまったことを本人達に代わり、謝罪を。申し訳ない」
会場がザワつく。王族のやらかしについてここまではっきりとした謝罪は初めてだ。
貴族ってほら、権威上等主義っていう隠蔽体質じゃん?基本何かあったら「無かったことになりませんかねぇ?」って水面下で交渉が始まるわけよ。
それがやらかしてる最中に、こんなにはっきり「すまんかった」って実兄(しかも親公認)が発するのは異例中の異例だろう。
更に言うと、王族がパーティ等人が集まる場所で謝罪すること自体が記録にもほぼない。過去資料を掘り起こしたら見つかるかもしれないけど、まだ見たことも聞いたこともない。
それくらいとんでもないことだから、全員動揺してもおかしくない。正直俺もビビっている。すげぇのぶっ込んできたな。
アーデルハイド殿下が見ている巻物に何て書いてあるのか気になる。見たいな。アレ。
「あ……兄上…」
ルーベンス殿下が紙みたいに白い顔になってる。一度もぶった事ない父親から「お前間違ってんぞ」ってビンタされる以上の衝撃だろう。気持ちはよくわからんが、同情は(ちょっとだけ)するよ。
「俺が…王族に…相応しくない…と……」
「陛下も私も「我が身を省みること」「王族として恥じぬ行いを」と何度も釘を刺したつもりだったのだけどね。私がこの場に立つことになった事は残念としか言いようがない」
ルーベンス殿下の震える声に、アーデルハイド殿下が本当に残念そうな表情を添えて答える。
我が国の最高権力者が刺した釘が通らないとか、そりゃ俺らの言葉が通じないわけだ。もう少し早く気づいていたら、ダメージ少なくて済んだのにな。
「もう少し早くウィー君に出会えていたら、ルーベンスも救われたろうに」
勿体なかったねー。と、ウィー君と目を合わせて微笑む。キラキラの破壊力は凄まじいけど、出始めていた緊張感が台無しだよ!一気に緩んだよ!
「聖女と節度ある交流するのは良しとしよう」
節度ある、に力を入れたな。
王族を筆頭に、貴族は特定の勢力に力を入れすぎないように幼少期より教育される。表面的には。
家門によってその辺の度合いは違うのだろうが、メロディアス家は俺が聖協会預りになったとはいえ、立場的には中立なので「広く浅く」という付き合い方を教えられた。
まあ我が家はいいとして、王族はパワーバランスに貴族以上に気を配りましょう。って話だ。
だから王子・王女は幼少期に歳の近しい貴族子息を集めて側近選抜戦(パワーバランス、能力、相性等を審査する機会)があるんだよな。
あんなに(俺との時間が削られるからという理由で)渋った兄上の姿を見ておきながら、それでも側近に決めたということは重度のブラコンでも構わないと言わせるものがあったのだろう。流石兄上。
「家の定めた婚約者を無下に扱うことや、家門の力を振りかざす事は認められない」
はい。これも「節度ある行動」に含みます。テストに出すまでもない基礎教養です。
「問題行動があった際、調査機関または第三者を交えての事実確認を行わず一方的に断ずることはあってはならない」
その通りです。冤罪、ダメ!絶対!
このタイミングでアーデルハイド殿下がちらりとこちらを見た。
あ、これは「追い打ちをかけたい?」って聞いてきてますね?
いいでしょう。やろうじゃないか。
すっ、と視線をアリナ嬢に固定する。アリナ嬢がビクッと肩を跳ねさせた。
「お聞きしたいことはいくつかございますが…聖女様、何故お力を示されなかったのですか?」
「な…何?力を示す、って何よ!」
おい、しっかりしろ聖女(仮)
「聖女として召喚された貴女様は、御身に宿りし神の光を人々の安寧のために行使されることを期待されておりました」
ストレートに言うのもアレかな?って儀式風(偏見)な言い回しをしたのだが、よく分かってない顔をされた。
うん、まあそうだろうな。
早々にこちらのメインを端に置いたな。
もしかしてどころじゃなく、アーデルハイド殿下はウィー君を見せびらかしに来たんだろう。「盛大にお披露目したい」って言ってたのは聞き流したけど、今がお披露目の機会だとしたらドンと引く。
…もっといい機会設けてあげて。
「うさちゃんラブが全く衰えておられませんわね」
「もふもふしたいわぁ」
「陛下のお言葉と彼らの処遇の発表はついで扱いなのね」
「………どういう状況なの?」
ご令嬢方はアーデルハイド殿下の行動をすんなり受け入れているのに対し、ルーベンス殿下の婚約者として交流があるはずのアイローチェ様が若干慌てている。何故かな?
「アーデルハイド殿下はアイローチェ様の前では「乙女の理想の王子様」を崩したことがないそうよ」
義姉上がすっと耳打ちしてくれた。納得。
俺はウィー君にデロデロな姿を至近距離で見せられたのが出会いだったから「そんなもんか」って思えたけど、普段しっかり王子してる姿しか見てないなら確かに混乱するかもしれない。
ルーベンス殿下も困惑しているところを見ると、完璧王子な兄の姿しか見ていないのかもな。繕うのうますぎだな。ウィー君で崩壊したけど。
「まずはこの場の主役であるべき、マッチェレル学園を卒業する若人たちへ祝詞を。おめでとう」
そうだ。茶番長すぎて忘れてたけど、今卒業パーティ中だった。
「そして、第二王子ルーベンスを筆頭に起こした騒動について。生涯一度であろう晴れの舞台を汚してしまったことを本人達に代わり、謝罪を。申し訳ない」
会場がザワつく。王族のやらかしについてここまではっきりとした謝罪は初めてだ。
貴族ってほら、権威上等主義っていう隠蔽体質じゃん?基本何かあったら「無かったことになりませんかねぇ?」って水面下で交渉が始まるわけよ。
それがやらかしてる最中に、こんなにはっきり「すまんかった」って実兄(しかも親公認)が発するのは異例中の異例だろう。
更に言うと、王族がパーティ等人が集まる場所で謝罪すること自体が記録にもほぼない。過去資料を掘り起こしたら見つかるかもしれないけど、まだ見たことも聞いたこともない。
それくらいとんでもないことだから、全員動揺してもおかしくない。正直俺もビビっている。すげぇのぶっ込んできたな。
アーデルハイド殿下が見ている巻物に何て書いてあるのか気になる。見たいな。アレ。
「あ……兄上…」
ルーベンス殿下が紙みたいに白い顔になってる。一度もぶった事ない父親から「お前間違ってんぞ」ってビンタされる以上の衝撃だろう。気持ちはよくわからんが、同情は(ちょっとだけ)するよ。
「俺が…王族に…相応しくない…と……」
「陛下も私も「我が身を省みること」「王族として恥じぬ行いを」と何度も釘を刺したつもりだったのだけどね。私がこの場に立つことになった事は残念としか言いようがない」
ルーベンス殿下の震える声に、アーデルハイド殿下が本当に残念そうな表情を添えて答える。
我が国の最高権力者が刺した釘が通らないとか、そりゃ俺らの言葉が通じないわけだ。もう少し早く気づいていたら、ダメージ少なくて済んだのにな。
「もう少し早くウィー君に出会えていたら、ルーベンスも救われたろうに」
勿体なかったねー。と、ウィー君と目を合わせて微笑む。キラキラの破壊力は凄まじいけど、出始めていた緊張感が台無しだよ!一気に緩んだよ!
「聖女と節度ある交流するのは良しとしよう」
節度ある、に力を入れたな。
王族を筆頭に、貴族は特定の勢力に力を入れすぎないように幼少期より教育される。表面的には。
家門によってその辺の度合いは違うのだろうが、メロディアス家は俺が聖協会預りになったとはいえ、立場的には中立なので「広く浅く」という付き合い方を教えられた。
まあ我が家はいいとして、王族はパワーバランスに貴族以上に気を配りましょう。って話だ。
だから王子・王女は幼少期に歳の近しい貴族子息を集めて側近選抜戦(パワーバランス、能力、相性等を審査する機会)があるんだよな。
あんなに(俺との時間が削られるからという理由で)渋った兄上の姿を見ておきながら、それでも側近に決めたということは重度のブラコンでも構わないと言わせるものがあったのだろう。流石兄上。
「家の定めた婚約者を無下に扱うことや、家門の力を振りかざす事は認められない」
はい。これも「節度ある行動」に含みます。テストに出すまでもない基礎教養です。
「問題行動があった際、調査機関または第三者を交えての事実確認を行わず一方的に断ずることはあってはならない」
その通りです。冤罪、ダメ!絶対!
このタイミングでアーデルハイド殿下がちらりとこちらを見た。
あ、これは「追い打ちをかけたい?」って聞いてきてますね?
いいでしょう。やろうじゃないか。
すっ、と視線をアリナ嬢に固定する。アリナ嬢がビクッと肩を跳ねさせた。
「お聞きしたいことはいくつかございますが…聖女様、何故お力を示されなかったのですか?」
「な…何?力を示す、って何よ!」
おい、しっかりしろ聖女(仮)
「聖女として召喚された貴女様は、御身に宿りし神の光を人々の安寧のために行使されることを期待されておりました」
ストレートに言うのもアレかな?って儀式風(偏見)な言い回しをしたのだが、よく分かってない顔をされた。
うん、まあそうだろうな。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる