3 / 6
親友を殺した飛美
しおりを挟む
僕らはすぐに教室から飛び出した。
近くの窓を開けて、下をみた。
「真夕(まゆう)!!!!!」
どうやら彼女の知り合いらしい。
たぶん、生きてないと思うけど……
「位置からすると、たぶん教室から落ちたんだろうね。」
振り向くと、隣の席のやつがいた。
「佐介くん。真夕が自殺なんて……」
「自殺とは限らないけどね。」
どうやら、隣の席のやつは佐介という名前らしい。
でも、自殺じゃないって?
「俺、聞いてたんだ。殺される!殺される!って叫んでたの。」
「それ、本当なの?まさか……」
まさか……その続きの言葉は、やっぱり“友達アプリ”だった。
何だ、どうなってるんだ。
何であのアプリで人が死ぬんだよ……
♪~~
「あ、電話だ。」
飛美ちゃんの携帯が鳴り、彼女は電話に出る。
「もしもし、どこにいるの?今から行く!!」
ブチッッ
電話を切るなり走り出した彼女。
「追いかけた方が良いんじゃない?飛美、たぶんかなり危ないよ。」
隣の席のやつ……佐介?は、僕にそう言う。
「本当に飛美と友達なら、ね。」そう付け加えて……
僕は、とりあえず走り回った。
飛美ちゃんを探して……
「ちょっと、何?どう言うこと?真夕は死んだんだよ?」
怒鳴り声の先には、飛美ちゃんがいた。
「ごめ……死ぬ、なんて。」
「まだ、わかんないの?友達アプリは遊びじゃないの!人が簡単に死ぬの!」
飛美ちゃん、何か知ってるのか?
そう、初めから疑問はあった。
メールのことだってそうだ。
友達アプリをやってるなんて一言も言ってないのに知ってたし。
紹介文がどうとかも言ってた。
「あすみ、待ってよ!待って!確かに私は、あの子の友達申請を拒否したよ。でも、私もヤバイの……見て!」
「これ……まさか、Yesにしたの?」
「だって……どうしよう。飛美、助けてよ!!!」
「バカ言わないでよ。こんなの無理でしょ。」
「お願い!私死にたくない、死にたくないの!!!」
泣きながら飛美ちゃんにしがみつく女の子。
名前は知らない。
「そんなこと言われたって……」
出ていくタイミングを完全に失って、壁に隠れる僕。
「何してんの?大輔。」
ビクッッ
後ろから声がして、肩が上がった。
「何だよ。」
佐介だった。
「だから言ったろ?飛美が危ないって。」
「飛美ちゃんは大丈夫でしょ。問題なのはあの子なわけで。」
「飛美はあの子を助けようとするよ。」
佐介はそう断言した。
この男は誰とでも仲良くしてるけど、特定の人と一緒にはいない。
浅く広く、付き合うタイプだと思う。
しばらくして……
放課後になった。
「おーい、大輔!一緒に帰ろう!」
無邪気な笑顔で亜欄が僕の机に来た。
こう言う瞬間、実は嬉しかったりする。
「うん。帰ろう。」そう言って帰ろうとしたところ、
「ごめん、亜欄。大輔はさ、今日俺と帰る約束してたんだ。」
「あ、そうなの?じゃあ、また今度!」
なぜか佐介にそんなことを言われ、佐介と帰ることに。
「飛美のこと、助けに行くぞ。」
と、全速力で走る羽目になった。
飛美ちゃんの姿を見つけたのは、公園だった。
ベンチに座り、あの女の子と一緒にいた。
なにやら深刻そう。
「飛美!なんか深刻そうだな。」
佐介は直球勝負に出た。
「佐介くん、大輔くん。びっくりしたー。2人ならいいや。見て。」
見せられたのはメール画面。
“友達アプリ運営です。あなたはルール違反しましたね。
Yes NO”
“協議の結果、あなたは友達から首を締められ殺される刑にしました。”
これが全て本当とは言わない。
けど、僕でもこんなのが来たら怯えると思う。
「なあ、ルール違反って?」
女の子が口を開いた。
「私、見せちゃったの。友達アプリの自分ページ。ばれないと思って。実際ばれてないハズなの!なのに、何で……」
「確かに。画面を見せたとしても、隠しカメラでもない限り……」
「もしかしてさ。その自分ページに仕込んであるんじゃない?カメラ。」
飛美ちゃんの言葉に佐介がすぐに反応した。
カメラが仕込んであるって。
「そんなことできるのかよ。」
本音をポロっと言ったが、すぐに佐介が説明する。
「出来るんだよ。そのページにだけカメラが作動するようにプログラミングされてるんだ。簡単に出来るさ。」
「ねぇ。さっきのメールは平気なの?」
「うん、あれはたぶんセーフだ。あれは友達アプリのページ内じゃないしな。たぶん、携帯自体のメールは対象外だと思う。」
僕と佐介のやり取りを聞き、飛美ちゃんも険しい顔つきで話す。
「もしくは、その見せた子がたまたま運営スタッフ又はスタッフ関係者だったか、運営チームに密告したか。」
運営スタッフに密告って。
そんなこと出来るのか?
「うん、その可能性も大いにあるな。でも、密告なんて出来るのか?確か友達アプリは、運営メール以外に返信は出来ないよな。」
そうなんだ。
確かにアプリ通知の場合は、YesかNOにカーソルを合わせてポチッと押すだけだ。
メールを送るなんて出来ない。
「個人的なアドレスを知ってるか、別の手段でアドレスを入手したか。」
飛美ちゃんは、そう続けた。
飛美ちゃんも佐介もおかしい。
何でこんなに詳しいんだ?
友達アプリについての情報なんて全然載ってないし、見たところ普通のアプリだ。
何で友達が出来るのかは不思議だけど。
「まあ、それより今は若菜ちゃんをどうやって助けるか、だよね。」
佐介は女の子をちらっと見た。
半泣きの彼女に優しく微笑んだ。
「若菜、大丈夫だからね。真夕のことは許せないけど、あんたは友達だから。絶対守ってみせる。」
こうして、この女の子……若菜ちゃん?救出作戦は始まった。
さっき死んだと思われる木ノ下真夕ちゃんと、中園飛美ちゃん、そしてこの子、戸部若菜ちゃんは同じ一組の子らしい。
友達アプリはみんな使ってたみたいだけど、それで友達になったわけじゃないみたい。
そして、重大なことが分かった。
友達アプリでの友達申請を断ると断られた子は死んでしまう、らしい。
嘘だと思うけど、それなら真夕という子の突然の死が説明がいく。
この友達アプリ、かなり危険だ。
でも、やめられない。
だって、友達と遊ぶ楽しさを覚えたから。
この状況ですら、僕はわくわくしている。
「若菜、とりあえず警察行こうよ。このメール見せてさ。」
「取り合ってくれたらな。」
警察署にて。
「すいません、これなんだけど。」
そう言って警察にメールを見せる。
「ああ、これか。今、この手の相談すごく多いんだよね。」
意外と取り合ってくれるらしい。
「うちのエース紹介するから。とりあえずボディガードとして、こいつ。それからサイバー関連のスペシャリストとしてこの子。」
そう言って紹介されたのは、ボディガード、浅部駿平。
サイバー関連のスペシャリスト、日影相太(ひかげそうた)。
日影さんは、僕らとそんなに年は変わらない。
若いけど、その腕はNo.1らしい。
そして、顔も整ってる。友達いっぱいいるんだろうな。
-----運営スタッフside
「どんどん減っていってるなぁ~。友達なんていらない。みんなみんな消えちゃえ!」
運営スタッフの僕は、どんどん減っていくアプリ使用者を見ていた。
このアプリも、初めは純粋な友達作りだった。
それが変わっていったのは一体いつからだったろう。
「でも、ついに警察まで動き出した。気を付けなきゃ。」
僕は、ワクワクしながら次のターゲットの死を待つ。
早く死ぬんだ、戸部若菜。
-----中根大輔side
「問題はさ、いつ来るか。だよね。この文面からして、たぶんクラスメイトの誰かが殺しにくるんだよね。」
佐介の言葉に、みんなが頷く。
「データによれば数日以内だね。」
日影さんがメガネを直しながらそう言う。
「じゃあ、みんなで交代で若菜の家を見張るか。お母さんには、誰が来ても開けないでって言っとこう。」
仕切り役は佐介らしい。
「あと、キミは学校休んだ方がいいな。校内は危険すぎる。あと、これ首に巻いて。」
日影さんは、タオルを渡す。
絞殺ってことは、首を締めるってことで。
これで空間を作り、死ぬことは避けられる、らしい。
「お前んち、一軒家だよな。なら鍵は家族だけだな。」
作戦会議も終わり、もう夜も更けた。
今日の当番は、ボディガードの浅部さんと、飛美ちゃん。
飛美ちゃんは、外してもいいんじゃないかって言ったけど、
友達は自分で守りたい、と聞かなかった。
震える若菜ちゃんのそばにいる浅部さんと、飛美ちゃんの声が聞こえる。
「浅部さんは、こういう警護もやるんですね。」
「最近、全国各地でこういう事件が多発してる。それで、急遽我らが出動することになった。普段は、総理とか芸能人とか、大臣とかそんなんばかりだ。」
僕らは、隣の部屋にいるのだが2人の会話はよく聞こえた。
「そうなんですか。若菜のこと、お願いします。私は、全然強くないから負けちゃうかもしれないけど。でも、ほっといていいですから。若菜のこと、守ってください。」
飛美ちゃんは、優しい子なんだ。
こんなこと考えるのは不謹慎だけど、友達アプリに出会えて良かった。
ひとりぼっちはラクだけど、こうやって誰かのために必死になれる子となら面倒なことも楽しいことに気付いた。
そこで、僕らはみんな意識を手放した。
再び意識を取り戻したのは、ある悲鳴からだ。
「きゃああああああああ!」
「若菜、若菜!しっかりして!若菜!どうしたの!?」
僕らはすぐに飛美ちゃんたちの部屋に向かう。
「頭が痛い!頭が痛い!助けて!飛美!!!助けてええええ!!」
若菜ちゃんは、ひたすら頭を抑えてる。
泣き叫ぶ若菜ちゃんは、壊れたように自分の頭を殴り続けた。
「……くそっ、やられた。その子縛って、早く!」
「日影さん、どういうこと?縛るって。」
「早くしろ、その子死ぬぞ!」
言われたとおり、手近な紐状のもので若菜ちゃんを縛る。
両手に両足、体全体。
まるで誘拐でもされた人質のようだ。
「縛ったけど。「どこか柱に縛って。ここから出れないように。」
「え……。」
「早くして!!」
柱に縛りつけようとした瞬間、若菜ちゃんはものすごい力で縄を振りほどき窓から飛び降りる。
ここは、二階。死なないはずだけど。
「若菜!どこ行くの!?」
「まずい!早く追わなきゃ!!浅部さん、後は任せる!僕はこっちで何とかする。」
「了解。」
浅部さんは、そのまま二階から飛び降りた。
痛そうだったけど、たぶん若菜ちゃんよりじゃない。
飛美ちゃんも急いで階段を駆け下りて後を追った。
そして、僕らは日影さんと一緒にパソコンを開く。
「確か、死ぬときはみんなあのアプリを開いたまんまだったらしい。たぶん、今回も……」
そう言って、パソコンを起動させる。
「いた。今、仙城大橋に向かってる。……よし、映像も出た。」
日影さんは、眠る前に若菜ちゃんのスマホをいじってカメラを起動させたらしい。
本当に遠隔操作って出来るんだ。
「もし、浅部さんが間に合わない、又は間に合ったけどやられたときが勝負だ。」
「え?でも、あの人はボディガードなんですよね?高校生相手に負けるかな。」
「普通なら負けないよ。普通なら、ね。よく見てて。浅部さん、追いついたよ。」
-----浅部駿平side
自分の仕事を全うするために、走って走って彼女を追いかけた。
さすがに毎日鍛えているだけあって、すぐに追いつけた。
「若菜ちゃん!どうしたの?」
そう声をかければ、若菜ちゃんは振り向く。
今にも泣きそうだ。何がそんなにこの子を苦しめてたんだろう。
「助けてええええ!死にたくない!私、死にたくない!まだ親孝行だってしてないのにいいいい!」
まだ17歳の高校生だ。きっと、これからやりたいことだってたくさんあったはずだ。
「大丈夫だ。俺が必ず守ってやるから。」
そうだ、俺は守れなかった対象はいない。
勘と身体能力で今まで生きてきた。
「友達アプリなんて使わなければ良かった……。私、あんなに良い友達いたのに。飛美と真夕がどんどん仲良くなって……嫉妬してたんです。」
この子なりに一生懸命悩んでいたんだ。
「初めは私が飛美と仲良くなったんです。なのに、後から真夕が入って来て。飛美を取られたみたいで、嫌だった……。こんなことで、別の友達作ろうって考えて。気がついたらハマってた。」
友達のこと、本当は誰よりも大切に思っていたんだ。
「こんなことになるなんて……。死にたくないよおおおおお!」
そう彼女が叫んだ。
そして、後ろから息を切らせて飛美ちゃんが来た。
危険なことは百も承知で。
「若菜!!!危ない!」
飛美ちゃんの言葉で、俺はすぐに彼女を庇いつつクラスメイトたちを殴っていく。
発砲許可も出てるけど、出来れば使いたくないな。
「みんな止めて!止めて!若菜は友達でしょ!」
飛美ちゃんの叫び声にも耳を貸さず、彼らは容赦なく若菜ちゃんに向かっていく。
所詮は高校生。
俺にかかれば一瞬だ。伊達に28年も生きてない。
「ふうー、楽勝。大丈夫?若菜ちゃ……」
ドカッッ
殴ったのは、飛美ちゃんだった。
なぜか持っていた大きな岩石で頭部を思いっきり殴られた。
「飛美……何で……」
コンクリートに倒れ込んだ俺は、うっすらと目を開けた。
そこには、飛美ちゃんが若菜ちゃんの首を締める姿があった。
飛美ちゃんも、同じクラス……だったのか。
俺は、目を閉じた。
あれだけ訓練したのに……
高校生にやられるなんて。
最後の任務は失敗だった。
ーーーーーーーーーーーーー
「浅部駿平です。今日からよろしくお願いします!」
入隊したては緊張しすぎて吐きそうだった。
「浅部~。今日も大活躍だったんだって?」
「まあ、天性の勘と並外れた運動神経でな。」
「バカ言うなよ。」
懐かしい、仲間との会話。
毎日毎日、仲間と命がけだった。
「浅部先輩!どこまでもついて行きます!」
可愛い後輩も出来て……
「あ、さべ。……先に行け。早く。しっかり守ってやれ……」
仲間の死にも出会った。
「浅部くん、好きだよ?」
「浅部くん、かっこいいね!」
大好きな彼女もいた。
こんな仕事をしてるから、隠し事が多くて、喧嘩もした。
出張だ、なんてベタな嘘ついて……
この任務が終わったら、仲直りしようと思ってた。
これが終わったら、仕事を辞めて
プロポーズしようと思ってた。
ラスト任務は、油断していた俺の負け。
そして、ボディガードの負けは死を意味する。
「ごめん、嘘ばっかついて。大好きだったよ、伽奈。」
-----中根大輔side
「浅部さん……ダメだったか。」
落ち込んだ様子の日影さんは、それでもパソコンをカチカチと動かす。
「それより、何で飛美ちゃんが!飛美ちゃんは友達だったじゃん……」
「たぶん、催眠かけられてるんだよ。運営にね。」
「どうやって?」
「さあ。調べてみないとわかんない。こんな手の込んだアプリを僕は初めて見た。」
日影さんの話に半分納得しながら僕はカメラ越しに飛美ちゃんを見守る。
「飛美……何で。」
飛美ちゃんはまだ自我を取り戻さないみたい。
彼女の首をひたすら締める。
タオルは飛び降りたときに取れたみたい。
直に首を締める。何とか止めさせたいけど、今からじゃ絶対無理だ。
「ねぇ、何とかやめさせられないんですか?」
「あれ、随分友情に熱いんだね。ついこの前まで名前も知らなかったのに。」
「人が死ぬとこなんて見たくないでしょ!!」
「だったら目でも瞑ってろよ!自分で助けにいく勇気もないくせに、正論言うな!」
冷静だった日影さんにそう言われ、改めて思い知る。
僕は、浅部さんや飛美ちゃんのように強くないんだと。
日影さんのように頑張ってもないんだと。
そして、ついにカメラ越しの若菜ちゃんは息絶えた。
飛美ちゃんは、若菜ちゃんから手を話した瞬間に意識を取り戻したみたいでずっと叫んでいた。
「いやあああああああ!若菜あああ!ごめんなさいごめんなさい。」
その叫びが本当に痛々しくて、
言葉が見つからない。
そんなとき、全速力で走って来たのは佐介だった。
「はあ。はあ。……間に合わなかったか。」
「佐介えええええ!私、若菜のこと……若菜のこと……あああああああ!」
「飛美のせいじゃないから。助けようとしたんだろ?若菜のこと、全力で救おうとしたんだろ?ちゃんと若菜に伝わってるよ。」
さっきまで泣いていたはずなのに、彼女にもう涙はなかった。
「分かった?あれが、“友達”だ。」
そう、日影さんに言われた。
ずっと友達がいなかった僕にはわからなかった。
ピンチのときに助けるのが友達だ、なんて。
何だか探偵みたいでワクワクしていた自分が本当に情けなかった。
「僕、友達いなかったから。舞い上がってたのかも。ほんと、最低……」
そう、独り言のように呟いた僕に日影さんはこう呟く。
「僕もいないよ。まあ、昔1人だけいたんだけど。今はなにしてんのかわかんない。」
なんて寂しげに話してくれた。
こんなに頭も良くて顔も良かったらすぐ友達出来そうなのに。
「行くぞ、反撃開始だ。」
-----中園飛美side
私が殺してしまった……
私が……
メールにあった友達って私のことだったんだ。
最初から私が殺すシナリオだったんだ。
ーーーーーーーーーーーーー
「若菜っていうんだ?可愛いね。あたし、飛美っていうの!よろしくね。」
声を掛けたのは私からだった。
高校一年の春。出席番号が近くて、席が正面だった。
若菜は人見知りみたいで、初めは全然話してくれなかったけど
徐々に挨拶もしてくれるようになった。
恋の話なんかもして、あんなアプリにさえ出会わなかったら
もっともっといろんなこと話してた。
高校二年に上がった時、真夕とも仲良くなった。
すごく気が合って、毎日笑いっぱなしだった。
でも、その頃から若菜は私から離れるようになった。
人伝えに友達アプリをやってる、と聞いた。
若菜を救いたくて、真夕も私も友達アプリを始めた。
でも、若菜を苦しめたのは私だ。
真夕とばっかり話して、若菜に寂しい思いさせたのは私だ。
全部、私のせいだ。
ーーーーーーーーーーーーーー
「うわあああああああ!!」
若菜の首筋についた指の後を見ながら、必死に泣き続けた。
ーーーー大きくなったら看護士になるんだ。
ーーーー早くお母さんを楽にさせてあげたい。
ーーーー結婚するなら、やっぱり若いうちがいいな。
若菜の夢を奪ったのは、
私だ……。
記憶がないで許されることじゃない……
近くの窓を開けて、下をみた。
「真夕(まゆう)!!!!!」
どうやら彼女の知り合いらしい。
たぶん、生きてないと思うけど……
「位置からすると、たぶん教室から落ちたんだろうね。」
振り向くと、隣の席のやつがいた。
「佐介くん。真夕が自殺なんて……」
「自殺とは限らないけどね。」
どうやら、隣の席のやつは佐介という名前らしい。
でも、自殺じゃないって?
「俺、聞いてたんだ。殺される!殺される!って叫んでたの。」
「それ、本当なの?まさか……」
まさか……その続きの言葉は、やっぱり“友達アプリ”だった。
何だ、どうなってるんだ。
何であのアプリで人が死ぬんだよ……
♪~~
「あ、電話だ。」
飛美ちゃんの携帯が鳴り、彼女は電話に出る。
「もしもし、どこにいるの?今から行く!!」
ブチッッ
電話を切るなり走り出した彼女。
「追いかけた方が良いんじゃない?飛美、たぶんかなり危ないよ。」
隣の席のやつ……佐介?は、僕にそう言う。
「本当に飛美と友達なら、ね。」そう付け加えて……
僕は、とりあえず走り回った。
飛美ちゃんを探して……
「ちょっと、何?どう言うこと?真夕は死んだんだよ?」
怒鳴り声の先には、飛美ちゃんがいた。
「ごめ……死ぬ、なんて。」
「まだ、わかんないの?友達アプリは遊びじゃないの!人が簡単に死ぬの!」
飛美ちゃん、何か知ってるのか?
そう、初めから疑問はあった。
メールのことだってそうだ。
友達アプリをやってるなんて一言も言ってないのに知ってたし。
紹介文がどうとかも言ってた。
「あすみ、待ってよ!待って!確かに私は、あの子の友達申請を拒否したよ。でも、私もヤバイの……見て!」
「これ……まさか、Yesにしたの?」
「だって……どうしよう。飛美、助けてよ!!!」
「バカ言わないでよ。こんなの無理でしょ。」
「お願い!私死にたくない、死にたくないの!!!」
泣きながら飛美ちゃんにしがみつく女の子。
名前は知らない。
「そんなこと言われたって……」
出ていくタイミングを完全に失って、壁に隠れる僕。
「何してんの?大輔。」
ビクッッ
後ろから声がして、肩が上がった。
「何だよ。」
佐介だった。
「だから言ったろ?飛美が危ないって。」
「飛美ちゃんは大丈夫でしょ。問題なのはあの子なわけで。」
「飛美はあの子を助けようとするよ。」
佐介はそう断言した。
この男は誰とでも仲良くしてるけど、特定の人と一緒にはいない。
浅く広く、付き合うタイプだと思う。
しばらくして……
放課後になった。
「おーい、大輔!一緒に帰ろう!」
無邪気な笑顔で亜欄が僕の机に来た。
こう言う瞬間、実は嬉しかったりする。
「うん。帰ろう。」そう言って帰ろうとしたところ、
「ごめん、亜欄。大輔はさ、今日俺と帰る約束してたんだ。」
「あ、そうなの?じゃあ、また今度!」
なぜか佐介にそんなことを言われ、佐介と帰ることに。
「飛美のこと、助けに行くぞ。」
と、全速力で走る羽目になった。
飛美ちゃんの姿を見つけたのは、公園だった。
ベンチに座り、あの女の子と一緒にいた。
なにやら深刻そう。
「飛美!なんか深刻そうだな。」
佐介は直球勝負に出た。
「佐介くん、大輔くん。びっくりしたー。2人ならいいや。見て。」
見せられたのはメール画面。
“友達アプリ運営です。あなたはルール違反しましたね。
Yes NO”
“協議の結果、あなたは友達から首を締められ殺される刑にしました。”
これが全て本当とは言わない。
けど、僕でもこんなのが来たら怯えると思う。
「なあ、ルール違反って?」
女の子が口を開いた。
「私、見せちゃったの。友達アプリの自分ページ。ばれないと思って。実際ばれてないハズなの!なのに、何で……」
「確かに。画面を見せたとしても、隠しカメラでもない限り……」
「もしかしてさ。その自分ページに仕込んであるんじゃない?カメラ。」
飛美ちゃんの言葉に佐介がすぐに反応した。
カメラが仕込んであるって。
「そんなことできるのかよ。」
本音をポロっと言ったが、すぐに佐介が説明する。
「出来るんだよ。そのページにだけカメラが作動するようにプログラミングされてるんだ。簡単に出来るさ。」
「ねぇ。さっきのメールは平気なの?」
「うん、あれはたぶんセーフだ。あれは友達アプリのページ内じゃないしな。たぶん、携帯自体のメールは対象外だと思う。」
僕と佐介のやり取りを聞き、飛美ちゃんも険しい顔つきで話す。
「もしくは、その見せた子がたまたま運営スタッフ又はスタッフ関係者だったか、運営チームに密告したか。」
運営スタッフに密告って。
そんなこと出来るのか?
「うん、その可能性も大いにあるな。でも、密告なんて出来るのか?確か友達アプリは、運営メール以外に返信は出来ないよな。」
そうなんだ。
確かにアプリ通知の場合は、YesかNOにカーソルを合わせてポチッと押すだけだ。
メールを送るなんて出来ない。
「個人的なアドレスを知ってるか、別の手段でアドレスを入手したか。」
飛美ちゃんは、そう続けた。
飛美ちゃんも佐介もおかしい。
何でこんなに詳しいんだ?
友達アプリについての情報なんて全然載ってないし、見たところ普通のアプリだ。
何で友達が出来るのかは不思議だけど。
「まあ、それより今は若菜ちゃんをどうやって助けるか、だよね。」
佐介は女の子をちらっと見た。
半泣きの彼女に優しく微笑んだ。
「若菜、大丈夫だからね。真夕のことは許せないけど、あんたは友達だから。絶対守ってみせる。」
こうして、この女の子……若菜ちゃん?救出作戦は始まった。
さっき死んだと思われる木ノ下真夕ちゃんと、中園飛美ちゃん、そしてこの子、戸部若菜ちゃんは同じ一組の子らしい。
友達アプリはみんな使ってたみたいだけど、それで友達になったわけじゃないみたい。
そして、重大なことが分かった。
友達アプリでの友達申請を断ると断られた子は死んでしまう、らしい。
嘘だと思うけど、それなら真夕という子の突然の死が説明がいく。
この友達アプリ、かなり危険だ。
でも、やめられない。
だって、友達と遊ぶ楽しさを覚えたから。
この状況ですら、僕はわくわくしている。
「若菜、とりあえず警察行こうよ。このメール見せてさ。」
「取り合ってくれたらな。」
警察署にて。
「すいません、これなんだけど。」
そう言って警察にメールを見せる。
「ああ、これか。今、この手の相談すごく多いんだよね。」
意外と取り合ってくれるらしい。
「うちのエース紹介するから。とりあえずボディガードとして、こいつ。それからサイバー関連のスペシャリストとしてこの子。」
そう言って紹介されたのは、ボディガード、浅部駿平。
サイバー関連のスペシャリスト、日影相太(ひかげそうた)。
日影さんは、僕らとそんなに年は変わらない。
若いけど、その腕はNo.1らしい。
そして、顔も整ってる。友達いっぱいいるんだろうな。
-----運営スタッフside
「どんどん減っていってるなぁ~。友達なんていらない。みんなみんな消えちゃえ!」
運営スタッフの僕は、どんどん減っていくアプリ使用者を見ていた。
このアプリも、初めは純粋な友達作りだった。
それが変わっていったのは一体いつからだったろう。
「でも、ついに警察まで動き出した。気を付けなきゃ。」
僕は、ワクワクしながら次のターゲットの死を待つ。
早く死ぬんだ、戸部若菜。
-----中根大輔side
「問題はさ、いつ来るか。だよね。この文面からして、たぶんクラスメイトの誰かが殺しにくるんだよね。」
佐介の言葉に、みんなが頷く。
「データによれば数日以内だね。」
日影さんがメガネを直しながらそう言う。
「じゃあ、みんなで交代で若菜の家を見張るか。お母さんには、誰が来ても開けないでって言っとこう。」
仕切り役は佐介らしい。
「あと、キミは学校休んだ方がいいな。校内は危険すぎる。あと、これ首に巻いて。」
日影さんは、タオルを渡す。
絞殺ってことは、首を締めるってことで。
これで空間を作り、死ぬことは避けられる、らしい。
「お前んち、一軒家だよな。なら鍵は家族だけだな。」
作戦会議も終わり、もう夜も更けた。
今日の当番は、ボディガードの浅部さんと、飛美ちゃん。
飛美ちゃんは、外してもいいんじゃないかって言ったけど、
友達は自分で守りたい、と聞かなかった。
震える若菜ちゃんのそばにいる浅部さんと、飛美ちゃんの声が聞こえる。
「浅部さんは、こういう警護もやるんですね。」
「最近、全国各地でこういう事件が多発してる。それで、急遽我らが出動することになった。普段は、総理とか芸能人とか、大臣とかそんなんばかりだ。」
僕らは、隣の部屋にいるのだが2人の会話はよく聞こえた。
「そうなんですか。若菜のこと、お願いします。私は、全然強くないから負けちゃうかもしれないけど。でも、ほっといていいですから。若菜のこと、守ってください。」
飛美ちゃんは、優しい子なんだ。
こんなこと考えるのは不謹慎だけど、友達アプリに出会えて良かった。
ひとりぼっちはラクだけど、こうやって誰かのために必死になれる子となら面倒なことも楽しいことに気付いた。
そこで、僕らはみんな意識を手放した。
再び意識を取り戻したのは、ある悲鳴からだ。
「きゃああああああああ!」
「若菜、若菜!しっかりして!若菜!どうしたの!?」
僕らはすぐに飛美ちゃんたちの部屋に向かう。
「頭が痛い!頭が痛い!助けて!飛美!!!助けてええええ!!」
若菜ちゃんは、ひたすら頭を抑えてる。
泣き叫ぶ若菜ちゃんは、壊れたように自分の頭を殴り続けた。
「……くそっ、やられた。その子縛って、早く!」
「日影さん、どういうこと?縛るって。」
「早くしろ、その子死ぬぞ!」
言われたとおり、手近な紐状のもので若菜ちゃんを縛る。
両手に両足、体全体。
まるで誘拐でもされた人質のようだ。
「縛ったけど。「どこか柱に縛って。ここから出れないように。」
「え……。」
「早くして!!」
柱に縛りつけようとした瞬間、若菜ちゃんはものすごい力で縄を振りほどき窓から飛び降りる。
ここは、二階。死なないはずだけど。
「若菜!どこ行くの!?」
「まずい!早く追わなきゃ!!浅部さん、後は任せる!僕はこっちで何とかする。」
「了解。」
浅部さんは、そのまま二階から飛び降りた。
痛そうだったけど、たぶん若菜ちゃんよりじゃない。
飛美ちゃんも急いで階段を駆け下りて後を追った。
そして、僕らは日影さんと一緒にパソコンを開く。
「確か、死ぬときはみんなあのアプリを開いたまんまだったらしい。たぶん、今回も……」
そう言って、パソコンを起動させる。
「いた。今、仙城大橋に向かってる。……よし、映像も出た。」
日影さんは、眠る前に若菜ちゃんのスマホをいじってカメラを起動させたらしい。
本当に遠隔操作って出来るんだ。
「もし、浅部さんが間に合わない、又は間に合ったけどやられたときが勝負だ。」
「え?でも、あの人はボディガードなんですよね?高校生相手に負けるかな。」
「普通なら負けないよ。普通なら、ね。よく見てて。浅部さん、追いついたよ。」
-----浅部駿平side
自分の仕事を全うするために、走って走って彼女を追いかけた。
さすがに毎日鍛えているだけあって、すぐに追いつけた。
「若菜ちゃん!どうしたの?」
そう声をかければ、若菜ちゃんは振り向く。
今にも泣きそうだ。何がそんなにこの子を苦しめてたんだろう。
「助けてええええ!死にたくない!私、死にたくない!まだ親孝行だってしてないのにいいいい!」
まだ17歳の高校生だ。きっと、これからやりたいことだってたくさんあったはずだ。
「大丈夫だ。俺が必ず守ってやるから。」
そうだ、俺は守れなかった対象はいない。
勘と身体能力で今まで生きてきた。
「友達アプリなんて使わなければ良かった……。私、あんなに良い友達いたのに。飛美と真夕がどんどん仲良くなって……嫉妬してたんです。」
この子なりに一生懸命悩んでいたんだ。
「初めは私が飛美と仲良くなったんです。なのに、後から真夕が入って来て。飛美を取られたみたいで、嫌だった……。こんなことで、別の友達作ろうって考えて。気がついたらハマってた。」
友達のこと、本当は誰よりも大切に思っていたんだ。
「こんなことになるなんて……。死にたくないよおおおおお!」
そう彼女が叫んだ。
そして、後ろから息を切らせて飛美ちゃんが来た。
危険なことは百も承知で。
「若菜!!!危ない!」
飛美ちゃんの言葉で、俺はすぐに彼女を庇いつつクラスメイトたちを殴っていく。
発砲許可も出てるけど、出来れば使いたくないな。
「みんな止めて!止めて!若菜は友達でしょ!」
飛美ちゃんの叫び声にも耳を貸さず、彼らは容赦なく若菜ちゃんに向かっていく。
所詮は高校生。
俺にかかれば一瞬だ。伊達に28年も生きてない。
「ふうー、楽勝。大丈夫?若菜ちゃ……」
ドカッッ
殴ったのは、飛美ちゃんだった。
なぜか持っていた大きな岩石で頭部を思いっきり殴られた。
「飛美……何で……」
コンクリートに倒れ込んだ俺は、うっすらと目を開けた。
そこには、飛美ちゃんが若菜ちゃんの首を締める姿があった。
飛美ちゃんも、同じクラス……だったのか。
俺は、目を閉じた。
あれだけ訓練したのに……
高校生にやられるなんて。
最後の任務は失敗だった。
ーーーーーーーーーーーーー
「浅部駿平です。今日からよろしくお願いします!」
入隊したては緊張しすぎて吐きそうだった。
「浅部~。今日も大活躍だったんだって?」
「まあ、天性の勘と並外れた運動神経でな。」
「バカ言うなよ。」
懐かしい、仲間との会話。
毎日毎日、仲間と命がけだった。
「浅部先輩!どこまでもついて行きます!」
可愛い後輩も出来て……
「あ、さべ。……先に行け。早く。しっかり守ってやれ……」
仲間の死にも出会った。
「浅部くん、好きだよ?」
「浅部くん、かっこいいね!」
大好きな彼女もいた。
こんな仕事をしてるから、隠し事が多くて、喧嘩もした。
出張だ、なんてベタな嘘ついて……
この任務が終わったら、仲直りしようと思ってた。
これが終わったら、仕事を辞めて
プロポーズしようと思ってた。
ラスト任務は、油断していた俺の負け。
そして、ボディガードの負けは死を意味する。
「ごめん、嘘ばっかついて。大好きだったよ、伽奈。」
-----中根大輔side
「浅部さん……ダメだったか。」
落ち込んだ様子の日影さんは、それでもパソコンをカチカチと動かす。
「それより、何で飛美ちゃんが!飛美ちゃんは友達だったじゃん……」
「たぶん、催眠かけられてるんだよ。運営にね。」
「どうやって?」
「さあ。調べてみないとわかんない。こんな手の込んだアプリを僕は初めて見た。」
日影さんの話に半分納得しながら僕はカメラ越しに飛美ちゃんを見守る。
「飛美……何で。」
飛美ちゃんはまだ自我を取り戻さないみたい。
彼女の首をひたすら締める。
タオルは飛び降りたときに取れたみたい。
直に首を締める。何とか止めさせたいけど、今からじゃ絶対無理だ。
「ねぇ、何とかやめさせられないんですか?」
「あれ、随分友情に熱いんだね。ついこの前まで名前も知らなかったのに。」
「人が死ぬとこなんて見たくないでしょ!!」
「だったら目でも瞑ってろよ!自分で助けにいく勇気もないくせに、正論言うな!」
冷静だった日影さんにそう言われ、改めて思い知る。
僕は、浅部さんや飛美ちゃんのように強くないんだと。
日影さんのように頑張ってもないんだと。
そして、ついにカメラ越しの若菜ちゃんは息絶えた。
飛美ちゃんは、若菜ちゃんから手を話した瞬間に意識を取り戻したみたいでずっと叫んでいた。
「いやあああああああ!若菜あああ!ごめんなさいごめんなさい。」
その叫びが本当に痛々しくて、
言葉が見つからない。
そんなとき、全速力で走って来たのは佐介だった。
「はあ。はあ。……間に合わなかったか。」
「佐介えええええ!私、若菜のこと……若菜のこと……あああああああ!」
「飛美のせいじゃないから。助けようとしたんだろ?若菜のこと、全力で救おうとしたんだろ?ちゃんと若菜に伝わってるよ。」
さっきまで泣いていたはずなのに、彼女にもう涙はなかった。
「分かった?あれが、“友達”だ。」
そう、日影さんに言われた。
ずっと友達がいなかった僕にはわからなかった。
ピンチのときに助けるのが友達だ、なんて。
何だか探偵みたいでワクワクしていた自分が本当に情けなかった。
「僕、友達いなかったから。舞い上がってたのかも。ほんと、最低……」
そう、独り言のように呟いた僕に日影さんはこう呟く。
「僕もいないよ。まあ、昔1人だけいたんだけど。今はなにしてんのかわかんない。」
なんて寂しげに話してくれた。
こんなに頭も良くて顔も良かったらすぐ友達出来そうなのに。
「行くぞ、反撃開始だ。」
-----中園飛美side
私が殺してしまった……
私が……
メールにあった友達って私のことだったんだ。
最初から私が殺すシナリオだったんだ。
ーーーーーーーーーーーーー
「若菜っていうんだ?可愛いね。あたし、飛美っていうの!よろしくね。」
声を掛けたのは私からだった。
高校一年の春。出席番号が近くて、席が正面だった。
若菜は人見知りみたいで、初めは全然話してくれなかったけど
徐々に挨拶もしてくれるようになった。
恋の話なんかもして、あんなアプリにさえ出会わなかったら
もっともっといろんなこと話してた。
高校二年に上がった時、真夕とも仲良くなった。
すごく気が合って、毎日笑いっぱなしだった。
でも、その頃から若菜は私から離れるようになった。
人伝えに友達アプリをやってる、と聞いた。
若菜を救いたくて、真夕も私も友達アプリを始めた。
でも、若菜を苦しめたのは私だ。
真夕とばっかり話して、若菜に寂しい思いさせたのは私だ。
全部、私のせいだ。
ーーーーーーーーーーーーーー
「うわあああああああ!!」
若菜の首筋についた指の後を見ながら、必死に泣き続けた。
ーーーー大きくなったら看護士になるんだ。
ーーーー早くお母さんを楽にさせてあげたい。
ーーーー結婚するなら、やっぱり若いうちがいいな。
若菜の夢を奪ったのは、
私だ……。
記憶がないで許されることじゃない……
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
トゴウ様
真霜ナオ
ホラー
MyTube(マイチューブ)配信者として伸び悩んでいたユージは、配信仲間と共に都市伝説を試すこととなる。
「トゴウ様」と呼ばれるそれは、とある条件をクリアすれば、どんな願いも叶えてくれるというのだ。
「動画をバズらせたい」という願いを叶えるため、配信仲間と共に廃校を訪れた。
霊的なものは信じないユージだが、そこで仲間の一人が不審死を遂げてしまう。
トゴウ様の呪いを恐れて儀式を中断しようとするも、ルールを破れば全員が呪い殺されてしまうと知る。
誰も予想していなかった、逃れられない恐怖の始まりだった。
「第5回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
他サイト様にも投稿しています。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
オサキ怪異相談所
てくす
ホラー
ある街の、ある処に、其処は存在する。
怪異……
そんな不可思議な世界に迷い込んだ人を助ける者がいた。
不可思議な世界に迷い込んだ者が今日もまた、助けを求めにやってきたようだ。
【オサキ怪異相談所】
憑物筋の家系により、幼少から霊と関わりがある尾先と、ある一件をきっかけに、尾先と関わることになった茜を中心とした物語。
【オサキ外伝】
物語の進行上、あまり関わりがない物語。基本的には尾先以外が中心。メインキャラクター以外の掘り下げだったりが多めかも?
【怪異蒐集譚】
外伝。本編登場人物の骸に焦点を当てた物語。本編オサキの方にも関わりがあったりするので本編に近い外伝。
【夕刻跳梁跋扈】
鳳とその友人(?)の夕凪に焦点を当てた物語。
【怪異戯曲】
天満と共に生きる喜邏。そして、ある一件から関わることになった叶芽が、ある怪異を探す話。
※非商用時は連絡不要ですが、投げ銭機能のある配信媒体等で記録が残る場合はご一報と、概要欄等にクレジット表記をお願いします。
過度なアドリブ、改変、無許可での男女表記のあるキャラの性別変更は御遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる