行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

文字の大きさ
上 下
200 / 203
連れて行きたい日本へ

しおりを挟む

「おはよ…あ!」
「ん?どうした?」

たまごがソフトボールくらいの大きさになっている。昨日はピンポン球と野球ボールの中間くらいだったのに…日本の濃密な魔力を取り込んだ感じかな?

「向こうで孵ったりしないか?」
「…あるかも。そうしたら騒ぎになっちゃうかなぁ?」

「ティスに預けて行くのはダメか?」
「…そうだね。孵りそうになったら呼んでもらえば飛んで来られるし。」

そうとなれば今朝は魔力を注がない方が良いだろう。帰ってきてからあげるからね。

今日はティスが留守番なので、朝食にティスが好きな茶碗蒸しを作る。ご飯と豚汁と塩鮭で和食ー♡ストゥがタイミングを合わせて起こしてきてくれた。おはよー!

朝の挨拶をして朝食を食べながらたまごをお願いする。もちろんティスは快く引き受けてくれた。

「それじゃあ行ってきます。」

少し濃厚な挨拶をして、今日も凪の家に転移する。ストゥを紹介したいから!

「おはよー!」
「おう。」
「はよー。」

「よう。」

「「わっ!」」

…驚きすぎじゃない?
ちょっといたずら心でストゥを凪と樹の後ろに転移させたけどさ。

「はははは、小さいな。お前たちもタケルと同じ歳か?」
「ストゥさんが大きいんでしょう?」
「尊よりは大きいです!」

ストゥは大きい方でティスが小柄なのだと言ってあったけど、間近で見るとやっぱり驚くよね。俺は森の王に会った後だったから感覚が麻痺してたけど。

それはともかく、服屋に行く。

面白いから、と2人も付いてくる。うん、めっちゃ注目されてる。ティスは前か横から見た人だけが見てたけど、ストゥは後ろから見た人もガン見する。こんなに大きい人、まずいないもんね。

店に入ると店長の他に顔色の悪い人がいた。

「本当にいるなんて…」

顔色の悪い人のつぶやき。
どう言う事なんだろう?

「あの…昨日お願いした服はどうなりました?」

裾上げくらいならまだしも、ストゥのサイズだとオーダーになると言われた。だからいつなら出来ますか?と聞いたけど翌日を指定されたのだ。出来てないかも知れないと思ってたんだけど…

「これだ!着てみてくれ!!」

渡されたジャケットは見事にストゥのサイズで、袖はまだ仮縫いだった。

さすがに一揃い頼むのは気が引けたのでジャケットだけ。魔術で気温操作できるから寒くはないしね。

「「「「かっこいい~~~!」」」」

ん?
俺と凪と樹と…いや、樹の声じゃなかった。店長と顔色の悪い人の声だ。

「店長!疑って悪かった…最高の素材だ!」

いつまでも顔色の悪い人、では失礼だけど名前も役職も分からないから仕方ない。この人が服を作ってくれたのかな?

…店長が目を逸らしてるから店長も信じてなかったようだ。でもそれなら何で作ってくれたの?

「昨日の彼にまたうちの服を着て欲しくて…」

そう言えば店長さん、ティスのサイズも測ってたっけ。洋裁師…って言えば良いの?お針子さん?あ、仕立て屋さんか。その人が喜々としてストゥの袖の長さを決め、脱がせて奥に持っていく。

…ちょっと胸を撫で回していたように見えたけど気のせいかな?

「あ!おいくらですか?」

徹夜作業のオーダー品だとやっぱり高いよね…。
ドキドキしながら聞くと5万円と言われた。

昨日のバイト代が…ティスには好きに使って良いと言われてるから大丈夫だけど…

「前払いするぞ?」

樹がそんな事を言い出した。
魔獣の写真はぜったい売れるし、風景写真もまだまだ売れるし、って。もしかして魔術使ってる動画を撮ったら儲かる?って言ってみたらちょっと公園で危なくないやつを試して欲しいと言われた。

目立たないのなら大丈夫だよね。

4人でマシマシのラーメンを食べて大きな公園へ行って魔術大公開!

って、言っても火は危ないから地属性。地中を探って鉄分(たぶん砂鉄)を取り出して…あれ?何だか思うように形が変わらない。鉛筆くらいのただの棒になってしまった。

「なんだか難しいなぁ…」
「いや、すごいだろ!サイコキネシスみたいじゃん!」
「でも浮かばないよ?」
「他の素材はどうだ?」

手放しで喜ぶ凪と冷静な樹。うん、いつも通りだ。

「見栄えがするのはガラスとか?」

改めて地中を探ると1カ所にガラスが集まっている場所があった。誰かが埋めたのか落して割れたのが埋もれたのか。とにかく素材として引っぱり出すとこちらはきれいな磨りガラスの粒になった。

「良いな、これ。きれいだし。」

俺もそう思う。厚みのあるおはじきって感じで…あ、現物から作った方が面白いんじゃない?

素材になるガラスを探してコンビニでお酒を購入。
俺達は未成年なのでストゥに買ってもらったけど、お店の人がびっくりして固まって面白かった。





…なんだこれ。

ガラスが粘土みたいに千切れる。
手のひらの上で勝手に丸まってへにょっと軽くつぶれて出来上り…ガラスは固まった液体であると聞いた事があるけど、そう言う事なのかな?

「面白いもんだな。」
「面白いってかすげぇ。」
「これは売れる…。顔出ししていいか?動画撮るぞ!」

わ、樹が興奮してる。
太陽光の角度と背景を考えて撮影場所を決め、三脚代わりの土の柱を作る。素材を限定しないでただの土の塊として一時的に固定するのは大変じゃなかった。

「ストゥ、ごめんね?退屈じゃない?」
「おもしろいから気にするな。」

空き瓶を作るためにお酒をあおる。小さなボトルだから3本目もすぐに空になった。

浄化できれいにした瓶を足下に並べて、指示された通りにガラス瓶をちぎって丸めていく。セリフはなし。あとで樹がBGMをつけるそうだ。1つめの瓶をおはじきにしてから入れ物がない事に気づき、ポケットに入れてもう1本の瓶にむにむにと穴を開けて変なお皿にした。

ポケットから出したおはじきを入れる。

そして3本目をまたおはじきにしてから、器に入れる時に手の中でカットして水晶のような形にした。うん、磨りガラスとカットガラスが混ざり合ってとてもきれいだ。これなら再生回数が稼げる気がする。

完成した物を持ってにっこり笑えば樹が動画の撮影を終了させる。

「サンキューな!これ、帰って編集して動画投稿サイトにUPするから!さっきの服代差し引いて残りは山分けするから。」
「なぁ、おれにも手伝わせてくれよ!」
「凪が?何する?」
「BGM演奏する!雅楽なら著作権ないし外国でウケるんじゃね?」

そんな相談しながら2人は帰っていった。

そして俺達2人は日が傾くまで公園で近寄って来たちびっ子を構って遊んでから、ティスと行ったホテルに移動した。
しおりを挟む
こちらの拍手ボタンをクリックすると
「連れて行きたい日本へ」で
ストゥとタケルがラブホに行った時のいちゃいちゃが読めます。
拍手する

感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...