行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

145 新たな使命

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「タケル!大丈夫か!?」
「「タケル!!」」

心配して駆け寄ってくれる3人に大丈夫だと言いながら立ち上がり、服についた土を払う。

……?

右耳たぶが熱い???

「怪我ですか!?」

気にしていると心配された。耳たぶの怪我程度で慌てる必要は全くないのに、心配性だなぁ。

「これは…朱夏の王の契約印です。」
「「「えっ!?」」」

ウェーヌ様の言葉に驚いてスマホで自撮りして確認すると、まるでルビーのピアスの様に火の玉の様な模様が浮き上がっていた。どうして突然、闘いもせずに…?やっぱりあいらの羽根が原因?

それしか考えられないね。

突然…

突然、なんとも呆気なくコンプリートしてしまった。

そしてコンプリートしたけど…、何かが起きる気配はない。

「何にも起きない、かな?」
「そうだな。」
「そうですね。」
「少し残念だな。」

肩透かし食らった感じ…いや、勝手に期待してただけだけどさ。

まぁ、帰ろうか…

来た道を戻る。
そこそこ険しい山だけど、何度目かなのでそれほど苦にならない。

と、油断したのだろうか?

大きな岩に隠れる様にぽっかりと空いた深い穴に落ちた。…いや、吸い込まれた?

浮遊魔道具も風の加護も効かず、何故か転移もできなくて戻ることができない。もしかしてやばい?

いつもなら絶対、俺から注意を逸らさない2人が何かに気を取られたのもおかしい。



これは何?



どこに落ちるの?



誰の仕業?



—————— 神の御業みわざ

ダジャレ神キターーーーー!!


あれだよね、ダジャレ三猿とかこの世界の人に分からない様なダジャレを仕込む神さまだよね、きっと。


—————— 世界とは滑稽で愚かで侭ならぬもの。そして我は神ではない。


世界を作ったのは貴方ではないの?


—————— 我と我が妻が荒れ狂う力に道を示したに過ぎぬ。それが世界と成った。


世界を作るきっかけになっただけって事?


—————— 然り。この世界は誕生した瞬間から己の行くべき道を歩んでいる。傲慢にも、教え、導こうとした事も有った。歪みを正そうとした事もある。だがその歪みはこの世界が辿るべき成長過程で有った。


つまり…余計なお世話?


—————— その通り!!


脳筋ワールドの神さま(もどき)は、やっぱり暑苦しかった。
そしてここに呼んで話しかけて来た理由は…

余計なお世話を焼いた結果、ここから動けなくなり妻を探しに行けない。妻は意識が歪んでここに戻って来られない。妻の力を借りないと世界は本来の形に戻れない…

だから俺の手を借りたい、と。

別次元の存在で四聖獣の加護を持ち、さらに荒れ狂う力の片鱗を授けられた俺にしか出来ない事らしい。…荒れ狂う力、ってもしかして…あいら?


……断る事は出来ますか?


—————— 否。


引き受けるしかないんじゃん!
でも俺に何が出来るの?


—————— 妻を捜してここへ導いてくれ。


妻?


—————— 既にまみえた事があろう。


と、言う事はあの幽霊だと思われてた精霊みたいな人か。天地創造の女神さま(もどき)だからあれほど慈愛に満ちていたんだね。

あー…、もどきは失礼か。
もう神さまと女神さまで良いや。


どこを探せば良いの?


ーーーーー呼べ。


呼ぶ?


ーーーーー妻の名はウィタだ。
そなたはこの世界の揺らぎを引き寄せる性質を持つようだ。すでに縁が芽生えたそなたなら、名を呼べば、きっと…


貴方では呼べないの?


ーーーーー我は妻の哀しみに関わりすぎている。我の声はアレには届かぬ。情けない事だ。


哀しみに暮れる私をあの人は見つけてくれない… って言ってたよ。


ーーーーーアレが哀しい記憶と共に我との縁を封じたのだ。頼む。どうかこの世の秩序を回復してくれ。


分かりました。
できるだけのことはしてみます。




「「「タケル!!」」」

あれ…?
さっき穴に落ちたはずの岩陰、かな?
でも穴はないし、すでに辺りは暗くなっている。

「俺、どうしたの?」

穴に落ちたと思ったけどそもそも穴などなく、突然倒れたようだ。そしてなぜか俺の身体は大地に縛り付けられたようにストゥでもウェーヌ様でも3人がかりでも持ち上がらなかった。

「説明は後で良い。早く戻ってまずは休もう。」

ウェーヌ様に言われて転移で家に帰る。
心配だから、と言われたのでウェーヌ様も一緒。

転移は魔力消費が激しいのではないかとまた心配されるけど、加護も魔力量も増えているから王都内ならなんの問題もない。

いつものようにティスが淹れてくれたお茶を飲みながら 、俺は神さまのような存在からのお願いを伝えた。

「…創世神…」
「神ではない、って言ってたよ。」
「確かに神とは少しイメージが違うが人でも精霊でもないしな。」

余計なお世話焼いて奥さん探しに行けなくなるなんてね。

で、俺が頼まれたことは名を呼ぶこと。

それは明日にしてウェーヌ様を王宮に送って家に帰って、簡単な夕食を作って食べて、お風呂入っていちゃいちゃして寝た。




どこで呼べば良いのか。
そこらで呼んで良いものか悩むけど、試しに家で呼んでみる。

「***さま」

「何?」

あれ?もう一度。

「***さま」

心の中ではウィタさまって呼んでるのに言葉にすると音にならない。

「阻害する何かがあるのでしょう。…場所を変えて見てはどうでしょう?」

聖域的などこか?
きっと1番は朱雀のいる山なんだろうけどウィタさまが拒否してるらしいので無理だろう。なら東の森と南の海の祠(?)と西の町…かな?

そう言えば加護が増えたから一気に転移できるかな?
東の森までストゥとティスも一緒に転移できるかどうか探ってみた。

…………

行ける!

2人に相談して朝食を食べたら出かける準備をして出発!!あ、たまごももちろん連れて行くよ~。





疲れたぁ!!

さすがに魔力量無限ではないから疲れる。

「ちょっと休憩…。」
「タケル、補充しますよ。」
「ん…ありがと…。」

「ここはどの辺だ?」

東の森の奥深くの少し開けた所。なるべく神聖な場所、と願って当たりを付けた、研究所から北西へ5kmくらいの場所。なんとなく惹き付けられただけなんだけど、自分の引きの強さを信じよう。

ストゥは見廻りに行った。


「タケル、こっちに小さな泉が会って森の王の眷属がいるぞ。」

小さな泉。不思議と心に引っかかる…。それにあの子虎みたいな眷属達に会えるの?どうせならそっちで休もう。もう歩けるって言ったのにストゥが抱っこで運んでくれた。

そこはすっかり葉の落ちた木のに囲まれて、木漏れ日がキラキラと水面と遊ぶ、とても綺麗な泉で、子虎にしか見えない眷属達がのんびりと水を飲んだり寝そべったりじゃれ合ったりしている。

楽園だぁ~~~~~~♡

しばしモフモフと戯れる。

そして満足した所で女神さまの名を呼ぶ。

「**タさま」

お?

「**タさま」

1音だけ。
でも音になったと言う事は、聖域で名を呼ぶのはアリかもしれない。

「他の聖域(推定)に行くのか?」
「うん。でも魔力量が足りないからここで一泊したいな。」

モフモフに埋もれて寝たいけど。流石に無理か。
眷属達にここにテントを張って良いかと聞いてみても返事はない。可愛く首をかしげるだけ。くぅ…!!

「ダメならテント張りの邪魔するだろ。」

ストゥの言葉に頷いてテントの設営を始める。俺は未だに見てるだけだけど。だってチビだから届かないんだよ!

ガサガサガサ…

「森の王!」

姿を現した森の王は冬毛なのか、前に会った時よりさらにモフモフでボリューミーだった。元々、軽トラより大きかったのが一回り大きくなっている。冬毛♡

テントを張るのは構わないのか一瞥しただけで気にする風もなかった。

眷属達がじゃれつく。

「**タさまにお会いしたくて来てみたのですが。」
「ぐるる…?」
「今日はここで休ませて下さい。」

森の王も特に嫌そうではないので夕食の準備。パンは持ってきているのであったかいシチューと鳥の丸焼きと温野菜サラダを作る。

森の王にも鶏肉を持ってきているので、丸焼きと生を並べて選んで貰ったら、丸焼きが良いらしい。野性…あぁ、聖獣だから良いのか。

眷属達の分も焼いて配ると喜んで食べてくれた。

食べ終わり、寛いでいると眷属達が近寄って来てくれた。みんなでしきりとチビのたまごを気にする。ワイバーンは風の眷属でもあるからだろうか?

たまごを取り出してみんなに見せると、1体が飛びついて来て奪われた。

「だっ!ダメ!返して!!」

猫のようにちょいちょいと転がし、他のが飛びついて蹴り飛ばす。飛んで来たのを口で受け止めて取られまいと隠す。隠したのがひっくり返されてたまごを取られる。

そのうちサッカーっぽくなって来た。

たまごはゴムのような感触でかなり乱暴に扱っても割れないのは確認済みだけど、やっぱり心配だ。

「たまご返して!」

転移で取り返してもまた他の個体が飛びかかって来てたまごを取られる。ストゥやティスが取り返しても同じ事の繰り返し。

あうぅ…多勢に無勢。

「がぁっ!!」

森の王の一声で、子虎がたまごで遊ぶのを止める。なんで俺に返さずに森の王に持っていくのか。

と、見ていると森の王がたまごをコロコロと弄び、顔を近づけて匂いを嗅ぐ。そしてペロリと舐めてから牙を当てた。

割れる!!

…って事はなかった。
むにっと変形したけど牙が離れれば元どおりになって少し転がり、ぷくー!っと大きくなった。

うずらのたまごサイズからピンポン球サイズへ。

もしかして白虎の魔力を栄養に成長したのかな?膨らむたまごかぁ。

白虎はたまごを優しく咥えて俺の手に返してくれた。
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