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行ってみたいな!あちこちへ
142 成長
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翌朝、一緒に朝食を食べてからお別れ。
ウェーヌ様はスマホの使い方を教えたら少し元気になった。文字入力は難しいので音声入力でメッセージを送っている。
ティオはこれから学校だと言うのに号泣だ。
ケリルさんちには2ヶ月半もお世話になったけど居心地良かったな。
ティオが王都に来た時はぜひうちに泊ってもらおう。
まとめた荷物とストゥを一緒にチビに持ってもらって、俺達3人も引っぱってもらって空の旅。
帰ったらいっぱいご褒美あげなくちゃね。
「チビは本当にすごいな。こんなに早くこんな所まで来られるなんて!」
元気を取り戻したウェーヌ様。
良かった。
少しお茶を飲んで休憩して、また空の旅。途中でワイバーン2体とすれ違った。乾燥した空気に潤いを与えてくれるようで、彼らの後を追いかけるように霧がたなびいている。
すっかり忘れてたけど、ワイバーンが通ると雨が降るんだよね。チビは我慢する癖をつけてしまったけど。
「着いたー!」
那海の荷物があるからまずは王宮へ。
ウェーヌ様が預かってくれる事になってます。
しばらく大衣桁に掛けて眺めたいって。
光魔術で紫外線防げるかな?
ウェーヌ様の私室は居間と寝室に分かれているので居間にお邪魔して着物を飾る。ちゃんと畳めて無かったので少しシワになってるけど、掛けておけば直るだろう。
それにしてもさすがウェーヌ様。
部屋はすっきりと上品にまとめてあってイケメンに相応しい。
「何度見ても素晴らしい衣装だな。ありがとう、タケル。」
「俺は何も。あ、光を浴びて色が変わるといけないので結界を張りますね。」
光を分解して紫外線を取り出し、それだけを反射させるイメージを紡ぐ。
…あ、紫に光って怪しくなっちゃった。
やり直し!
うーん…うーん………
無理だった。
「すみません、無理そうなので誰かに相談してもらって、しばらくは紫外線カットの布か、透明な箱に入れるので良いですか?」
「構わない。この部屋には私とペルとウィオラくらいしか入らないから、箱でも布でも、状態を保てる物にしてくれ。」
「はい!」
せっかくなのでウェーヌ様の部屋に飾った事を画像付きで知らせよう。
写真を撮った後は部屋から直接家に転移した。
「「「ただいまー!お疲れ様。」」」
「きゅー!!」
みんなで声を揃える。
「ずっとサボってたからものすごく料理がしたい!!」
「オレもタケルの料理が食べたい。」
「私もタケルの料理に飢えてました。」
「ききゅ?」
冬だから!
鍋の季節だから!!
今日は水炊きとすき焼きだー!!
…と、言う事で買ってきました。
でも白菜がまとまってない…牡丹の花のように広がっている。違和感はあるけど味がよければ問題ないよ!
豆腐、シラタキ、ネギ、肉、白身魚、ニンジン、春菊、きのこ、大根。
大根はかんずりにして使う分と鍋に入れる分。締めはうどんと雑炊。たくさん食べるからひと鍋では心許ないと思って2種類にしたけど、まさか3回ずつ追加を入れて完食するとは思わなかったよ。
お腹パンパンで苦しいので、お風呂は少し遅くなりました。そして湯船で寝落ち。運んでもらって気がついたら朝。
生活リズムは徐々に立て直そう!
と言いつつぐうたらする事3日間。ティスがすっかり忘れていた事を提案した。
「最後の聖獣の加護を貰いに行きましょう。」
貰いにって…
「そう言えば朱雀は冬の方が穏やかなんだって言ってたか。」
「そう言ってたね。」
夏を司る聖獣なんだから夏の方が機嫌良さそうなのに、冬の方が機嫌が良いのはちょっと不思議。
「ウェーヌ様に聞いてみよう。」
スマホを開くと新しい友達追加申請が届いていた。
〔スマホ新しくした〕
【那海が俺のスマホぶんどって引きこもって困るから新規契約してきた】
引きこもってるのか。
そうだ、録画した動画見せて褒めてもらえば出てくるかな?
《那海の動画送るね》
《すごくきれいだったよ》
《褒めてあげたら出てくるんじゃない?》
ビデオからSDカードを抜き取って転移で送る。
小さくて軽いから負担がほとんどない。
予備のSDカードをもう少し用意してもらおう。
【さんきゅー!】
それはともかく、ウェーヌ様に連絡。
《ウェーヌ様、朱雀に会うにはどうしたら良いですか?》
[ちょっと待ってて]
[面会申請すれば朱雀のいる山に入れるそうだ。]
《そんなに簡単に?》
[もちろん父上の許可が下りないと入れないが、タケルならすぐに許可されるだろう。]
なるほどー。
よし!まずは申請してみよう。加護貰えるかは分からないけど朱雀にも会ってみたいし。
今は昼過ぎだからすぐに申請しちゃおうと王宮に行く。もちろん申請しに行くんだから正門から申請窓口を教えてもらって行った。
お役所的な(広義のお役所だけど)窓口で腹黒インテリ眼鏡風の(失礼!)受付係さんから書類を貰い、ストゥに書いてもらって提出。審査には数日から1週間かかるそうだ。
『まま… からだ いたい…』
返事が来るまで何をしてようかと城下町を歩いていたらチビがくたりと肩に乗って来た。
「どうしよう!?何で急に???」
「どうした?」
「チビが体、痛いんだって!!」
「治癒は効きませんか?」
「そうだった!えっとえっと…」
「先ず家に戻ろう。」
ストゥに促されて急いで転移してベッドに寝かせる。
どうしよう…
治癒、できない!!
「トルトニスに相談するしかないですかね。」
「連れてくる!」
俺は魔石を引っ掴んですぐに転移した。
帰りにトルトニスさんを連れて来る事を考えると1人で行った方が良いから。
ドンドンドンドンッ!!
一気にトルトニスさんの研究所まで転移したから身体が重くて辛い。持っている魔石から魔力を補充するも2人で転移するのはとてもじゃないけど無理そうだ。
そう不安に思いながら研究所の玄関を叩いた。
「はーい。」
玄関が開くまでがとても長く感じたけど、きっと実際はそれほど経っていないんだろう。サクリスはのんびりとしていた。
「おや、タケルじゃ…「トルトニスさんに会わせて下さい!!」
サクリスの言葉を遮って急かす。
すぐに応接間に通され、やきもきしながら待っていると、魔力の補充が進んで少し体が軽くなって来た。
「お待たせしました。どうしました?」
「トルトニスさん!チビが体が痛いって倒れちゃって!見てもらえませんか!?」
「えぇっ!?でも私は研究者であって治癒師ではではありませんし…」
「原因の分からない病気は治癒できないんです!」
言葉が通じるか分からないけど、チビのお父さんお母さんにチビの状態を説明しに岩棚に行った。
「チビのお父さーん!お母さーん!チビが病気なんです!助けて下さい!!」
大声で叫ぶとお父さんお母さん弟らしきワイバーンが舞い降りた。
耳を傾けている様子の彼らに必死で説明をすると、なにやら頷き合って俺に向き直った。
お母さんが俺の襟首を咥え、ひょいと自分の背に乗せ、空へ舞い上がる。乗せて運んでくれるらしい。落ちないように必死でしがみついた。
魔力糸で固定すれば良かったって事に思い当たったのは家に着いてからだった。(苦笑)
王都の家までは1時間くらいだったと思うけど、もっとずっと長く感じた。小さな家の中にはワイバーンの成体は入ることができないので、ティスがチビを抱いて出て来た。
「チビ!お母さんが来てくれたよ!すぐ良くなるからね。」
『まま…おかあさん?』
「そうだよ。」
「きゅるるる?ききゅ?」
「きゅ…くー…(からだいたい、くるしい…)」
お母さんはチビをそっと揺すったり口(クチバシ?)で撫でたり優しい声を出したりしている。チビ、大丈夫かなぁ?
大丈夫だよね。
『まま…』
「なぁに?」
『あのね、ちび、せいちょう するんだって。』
「………せいちょう?」
『だから しんぱい しないでね。』
え?
だってワイバーンは一年ごとに脱皮して何年かかけて大人になる、ってトルトニスさんが言ってたよ。
くーーーーるーーーるるーー…
戸惑う俺をよそにきれいな声で歌い始めるチビのお母さん。その声に合わせて、チビも歌い出した。
くーーーーるーーーるるーー…
2人の声が重なり合い、不思議な響きが辺りを包む。光の粒がそこかしこに浮かび、声に合わせて明滅する。空から白片が舞い降りる。雪だ。
やがて光の粒が1つ、また1つとチビの体に集まり、とうとうすっぽりと包み込んでしまった。
明滅が止まり、チビを包む繭が淡く光るだけになると、歌声も終わった。
お母さんはチビを一回り大きくしたサイズの繭にすりすりと頬ずりをしてから飛び去った。
「脱皮するって…こうなるんだ。」
「脱皮というか繭ですね。」
「羽化するのか?」
どれくらいで出てくるのかな?
呼吸をするように微かに明滅する柔らかな光がチビの無事を確信させてくれる。
離れがたくてそれから3日間、ずっと側に付き添った。
4日目に朱雀の山への入山許可が下りた。
繭チビを連れて行こうか迷っていたらトルトニスさんが訪ねて来た。
「チビがどうなったか心配で来ちゃいました。」
「ありがとうございます!チビのお母さんが来てくれて歌ったら繭になったんです!」
「…えぇ!?繭ですか?それに歌?」
「2人で一緒に歌ったら光が集まって繭になったんです。」
ティスが淹れてくれたお茶を飲みながらベッドにしているカゴに乗ったチビの繭を見せて話をする。
連絡できなかったけど、心配してくれてたよね。来てくれて嬉しい!!
「春にワイバーン達が姿を見せなくなる時期があって、その最初の頃に海が歌うと言われています。」
ワイバーンが姿を隠す時期に海が荒れるので海の神が危険を知らせているんだとも、かつて亡くなった海の男達を悼んでいるんだとも言われていた。ワイバーンが姿を見せなくなってやがて幼体が姿を見せる事からこの歌とワイバーンの関係性について提唱した研究者もいたけど、巣穴に入れてもらえる人間なんていないから歌う姿を見る事は出来なくて、確証が得られなくて説の1つでしかなかったらしい。
「海精霊の歌声と言われていましたが、ワイバーンの歌声だったんですね。」
聞きたかったし見たかった!ととても残念がられたけど取り乱してたから動画も撮ってません。雪は季節のせいで通常は雨が降るそうだ。
「チビは何から何まで規格外ですね。いや、タケルが規格外なのかな?」
異世界仕様だからね!
でもチビが特別なのはあいらのおかげじゃないのかな?
ウェーヌ様はスマホの使い方を教えたら少し元気になった。文字入力は難しいので音声入力でメッセージを送っている。
ティオはこれから学校だと言うのに号泣だ。
ケリルさんちには2ヶ月半もお世話になったけど居心地良かったな。
ティオが王都に来た時はぜひうちに泊ってもらおう。
まとめた荷物とストゥを一緒にチビに持ってもらって、俺達3人も引っぱってもらって空の旅。
帰ったらいっぱいご褒美あげなくちゃね。
「チビは本当にすごいな。こんなに早くこんな所まで来られるなんて!」
元気を取り戻したウェーヌ様。
良かった。
少しお茶を飲んで休憩して、また空の旅。途中でワイバーン2体とすれ違った。乾燥した空気に潤いを与えてくれるようで、彼らの後を追いかけるように霧がたなびいている。
すっかり忘れてたけど、ワイバーンが通ると雨が降るんだよね。チビは我慢する癖をつけてしまったけど。
「着いたー!」
那海の荷物があるからまずは王宮へ。
ウェーヌ様が預かってくれる事になってます。
しばらく大衣桁に掛けて眺めたいって。
光魔術で紫外線防げるかな?
ウェーヌ様の私室は居間と寝室に分かれているので居間にお邪魔して着物を飾る。ちゃんと畳めて無かったので少しシワになってるけど、掛けておけば直るだろう。
それにしてもさすがウェーヌ様。
部屋はすっきりと上品にまとめてあってイケメンに相応しい。
「何度見ても素晴らしい衣装だな。ありがとう、タケル。」
「俺は何も。あ、光を浴びて色が変わるといけないので結界を張りますね。」
光を分解して紫外線を取り出し、それだけを反射させるイメージを紡ぐ。
…あ、紫に光って怪しくなっちゃった。
やり直し!
うーん…うーん………
無理だった。
「すみません、無理そうなので誰かに相談してもらって、しばらくは紫外線カットの布か、透明な箱に入れるので良いですか?」
「構わない。この部屋には私とペルとウィオラくらいしか入らないから、箱でも布でも、状態を保てる物にしてくれ。」
「はい!」
せっかくなのでウェーヌ様の部屋に飾った事を画像付きで知らせよう。
写真を撮った後は部屋から直接家に転移した。
「「「ただいまー!お疲れ様。」」」
「きゅー!!」
みんなで声を揃える。
「ずっとサボってたからものすごく料理がしたい!!」
「オレもタケルの料理が食べたい。」
「私もタケルの料理に飢えてました。」
「ききゅ?」
冬だから!
鍋の季節だから!!
今日は水炊きとすき焼きだー!!
…と、言う事で買ってきました。
でも白菜がまとまってない…牡丹の花のように広がっている。違和感はあるけど味がよければ問題ないよ!
豆腐、シラタキ、ネギ、肉、白身魚、ニンジン、春菊、きのこ、大根。
大根はかんずりにして使う分と鍋に入れる分。締めはうどんと雑炊。たくさん食べるからひと鍋では心許ないと思って2種類にしたけど、まさか3回ずつ追加を入れて完食するとは思わなかったよ。
お腹パンパンで苦しいので、お風呂は少し遅くなりました。そして湯船で寝落ち。運んでもらって気がついたら朝。
生活リズムは徐々に立て直そう!
と言いつつぐうたらする事3日間。ティスがすっかり忘れていた事を提案した。
「最後の聖獣の加護を貰いに行きましょう。」
貰いにって…
「そう言えば朱雀は冬の方が穏やかなんだって言ってたか。」
「そう言ってたね。」
夏を司る聖獣なんだから夏の方が機嫌良さそうなのに、冬の方が機嫌が良いのはちょっと不思議。
「ウェーヌ様に聞いてみよう。」
スマホを開くと新しい友達追加申請が届いていた。
〔スマホ新しくした〕
【那海が俺のスマホぶんどって引きこもって困るから新規契約してきた】
引きこもってるのか。
そうだ、録画した動画見せて褒めてもらえば出てくるかな?
《那海の動画送るね》
《すごくきれいだったよ》
《褒めてあげたら出てくるんじゃない?》
ビデオからSDカードを抜き取って転移で送る。
小さくて軽いから負担がほとんどない。
予備のSDカードをもう少し用意してもらおう。
【さんきゅー!】
それはともかく、ウェーヌ様に連絡。
《ウェーヌ様、朱雀に会うにはどうしたら良いですか?》
[ちょっと待ってて]
[面会申請すれば朱雀のいる山に入れるそうだ。]
《そんなに簡単に?》
[もちろん父上の許可が下りないと入れないが、タケルならすぐに許可されるだろう。]
なるほどー。
よし!まずは申請してみよう。加護貰えるかは分からないけど朱雀にも会ってみたいし。
今は昼過ぎだからすぐに申請しちゃおうと王宮に行く。もちろん申請しに行くんだから正門から申請窓口を教えてもらって行った。
お役所的な(広義のお役所だけど)窓口で腹黒インテリ眼鏡風の(失礼!)受付係さんから書類を貰い、ストゥに書いてもらって提出。審査には数日から1週間かかるそうだ。
『まま… からだ いたい…』
返事が来るまで何をしてようかと城下町を歩いていたらチビがくたりと肩に乗って来た。
「どうしよう!?何で急に???」
「どうした?」
「チビが体、痛いんだって!!」
「治癒は効きませんか?」
「そうだった!えっとえっと…」
「先ず家に戻ろう。」
ストゥに促されて急いで転移してベッドに寝かせる。
どうしよう…
治癒、できない!!
「トルトニスに相談するしかないですかね。」
「連れてくる!」
俺は魔石を引っ掴んですぐに転移した。
帰りにトルトニスさんを連れて来る事を考えると1人で行った方が良いから。
ドンドンドンドンッ!!
一気にトルトニスさんの研究所まで転移したから身体が重くて辛い。持っている魔石から魔力を補充するも2人で転移するのはとてもじゃないけど無理そうだ。
そう不安に思いながら研究所の玄関を叩いた。
「はーい。」
玄関が開くまでがとても長く感じたけど、きっと実際はそれほど経っていないんだろう。サクリスはのんびりとしていた。
「おや、タケルじゃ…「トルトニスさんに会わせて下さい!!」
サクリスの言葉を遮って急かす。
すぐに応接間に通され、やきもきしながら待っていると、魔力の補充が進んで少し体が軽くなって来た。
「お待たせしました。どうしました?」
「トルトニスさん!チビが体が痛いって倒れちゃって!見てもらえませんか!?」
「えぇっ!?でも私は研究者であって治癒師ではではありませんし…」
「原因の分からない病気は治癒できないんです!」
言葉が通じるか分からないけど、チビのお父さんお母さんにチビの状態を説明しに岩棚に行った。
「チビのお父さーん!お母さーん!チビが病気なんです!助けて下さい!!」
大声で叫ぶとお父さんお母さん弟らしきワイバーンが舞い降りた。
耳を傾けている様子の彼らに必死で説明をすると、なにやら頷き合って俺に向き直った。
お母さんが俺の襟首を咥え、ひょいと自分の背に乗せ、空へ舞い上がる。乗せて運んでくれるらしい。落ちないように必死でしがみついた。
魔力糸で固定すれば良かったって事に思い当たったのは家に着いてからだった。(苦笑)
王都の家までは1時間くらいだったと思うけど、もっとずっと長く感じた。小さな家の中にはワイバーンの成体は入ることができないので、ティスがチビを抱いて出て来た。
「チビ!お母さんが来てくれたよ!すぐ良くなるからね。」
『まま…おかあさん?』
「そうだよ。」
「きゅるるる?ききゅ?」
「きゅ…くー…(からだいたい、くるしい…)」
お母さんはチビをそっと揺すったり口(クチバシ?)で撫でたり優しい声を出したりしている。チビ、大丈夫かなぁ?
大丈夫だよね。
『まま…』
「なぁに?」
『あのね、ちび、せいちょう するんだって。』
「………せいちょう?」
『だから しんぱい しないでね。』
え?
だってワイバーンは一年ごとに脱皮して何年かかけて大人になる、ってトルトニスさんが言ってたよ。
くーーーーるーーーるるーー…
戸惑う俺をよそにきれいな声で歌い始めるチビのお母さん。その声に合わせて、チビも歌い出した。
くーーーーるーーーるるーー…
2人の声が重なり合い、不思議な響きが辺りを包む。光の粒がそこかしこに浮かび、声に合わせて明滅する。空から白片が舞い降りる。雪だ。
やがて光の粒が1つ、また1つとチビの体に集まり、とうとうすっぽりと包み込んでしまった。
明滅が止まり、チビを包む繭が淡く光るだけになると、歌声も終わった。
お母さんはチビを一回り大きくしたサイズの繭にすりすりと頬ずりをしてから飛び去った。
「脱皮するって…こうなるんだ。」
「脱皮というか繭ですね。」
「羽化するのか?」
どれくらいで出てくるのかな?
呼吸をするように微かに明滅する柔らかな光がチビの無事を確信させてくれる。
離れがたくてそれから3日間、ずっと側に付き添った。
4日目に朱雀の山への入山許可が下りた。
繭チビを連れて行こうか迷っていたらトルトニスさんが訪ねて来た。
「チビがどうなったか心配で来ちゃいました。」
「ありがとうございます!チビのお母さんが来てくれて歌ったら繭になったんです!」
「…えぇ!?繭ですか?それに歌?」
「2人で一緒に歌ったら光が集まって繭になったんです。」
ティスが淹れてくれたお茶を飲みながらベッドにしているカゴに乗ったチビの繭を見せて話をする。
連絡できなかったけど、心配してくれてたよね。来てくれて嬉しい!!
「春にワイバーン達が姿を見せなくなる時期があって、その最初の頃に海が歌うと言われています。」
ワイバーンが姿を隠す時期に海が荒れるので海の神が危険を知らせているんだとも、かつて亡くなった海の男達を悼んでいるんだとも言われていた。ワイバーンが姿を見せなくなってやがて幼体が姿を見せる事からこの歌とワイバーンの関係性について提唱した研究者もいたけど、巣穴に入れてもらえる人間なんていないから歌う姿を見る事は出来なくて、確証が得られなくて説の1つでしかなかったらしい。
「海精霊の歌声と言われていましたが、ワイバーンの歌声だったんですね。」
聞きたかったし見たかった!ととても残念がられたけど取り乱してたから動画も撮ってません。雪は季節のせいで通常は雨が降るそうだ。
「チビは何から何まで規格外ですね。いや、タケルが規格外なのかな?」
異世界仕様だからね!
でもチビが特別なのはあいらのおかげじゃないのかな?
0
「連れて行きたい日本へ」で
ストゥとタケルがラブホに行った時のいちゃいちゃが読めます。
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