行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

129 肉食系客人

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【新幹線乗った】
【京都に着いた】
【烏丸線に乗り換えた】

森の中、と言っても広くて数カ所ある有力ポイントのどこに現れるか分からない。
でもチビが居るし、森の王の加護もある。向こうとこちらの時間は同じなので鞍馬口に到着する午前0時に合わせて有力ポイントへ向かった。

ピポパピポパポロン…

無料通話の呼び出し音!
いままで文字や画像は遅れても通話は出来なかったのに、かかって来たと言う事は世界が繋がり始めたのだろうか。

「はい、もしも…『あいつが来た!何でバレたのか分からないけど!!』

どうやってかストーカーが追いかけて来たらしい。
電波も悪く、雑音が多くて他の言葉が拾えない。

どうしよう!
森の王、水辺の王、天空の王!どうか…どうか那海なみを助けて!

ごぅっと強い風が吹き、木々を揺らす。舞い上がる木の葉が夜空に吸い込まれる。

『…ザザ…タケル、コイツ…は俺が…押さえた。那海をそっち…に呼び…込める…か?』
「呼んでるよ!那海!那海!どこ!?那海の気配が捕まらない!」
『那海!尊に助けを求めろ!樹があいつを押さえてるうちに!!』

電波が良くなってる。
確実に近づいてる。森の王、お願い!!

「チビ!空の上の方に飛んでみて!」

以前、チビがアンテナになったんだからここでも有効かも知れない。
すぐに理解してくれてチビが猛スピードで空を駆け上がる。

『尊!助けて!樹が切られた!あいつ、ナイフ持ってる!凪!』
『いいから行け!俺達を巻き込まないように離れた方が良いかも知れない!』
『わ…分かった!』

チビが夜空の中の雲に突っ込むとドンッ!と言う花火の破裂音に似た音が聞こえて姿が見えなくなった。

『な、なに?これ…』
『きゅきゅー!!』

え?チビそっちに行っちゃったの?

「そのワイバーンはうちの子だから大丈夫!掴まって!」
『分かった!』
『きゅーーーーーーーーーーー!!』

ドッ

…ガガーーーーーーーーーーーーーン!!

空で眩しい光が弾け、空気が震える。
光が収まり、ゆっくりと降りてくるチビの脚には確かに人間がぶら下がっていた。

目視できた所で転移。

目の前の空中に現れたチビと那海。那海をティスが抱きとめた。

「凪!樹!那海はこっちで保護したから安心して!怪我は?」

証拠として写真を撮って送信する。

『こっちの怪我は大丈夫。ストーカーも取り押さえたし、警察へ駆け込むわ。』
『しかし本当にそっちに行けたんだな。』
「うん!そのストーカーが諦めない限りそっちには戻らないから!」

え?戻らないの?

「だってこんなに綺麗な人がいるんだもん!」
「だ!だめ!ティスは俺のだからダメー!!」

抱きとめられたまま首に抱きついて甘える那海が自撮りして画像を送る。

『な…みく… そん…やつ…』

都合良く電波が途切れて音声は繋がらなくなった。
ストーカーの事は後で教えてもらおう。

「じゃぁ、那海、この森の研究所で一泊して、明日王都へ向かうからね。」
「え、あ…うん…」

「森の王ー、水辺の王ー、天空の王ー、ありがとうございましたー!」

心の中でも言葉でもお礼を言って、研究所へ転移する。
那海が驚いて固まってるかと期待して見れば、ティスに見惚れて転移に気づいていない。

「那海!研究所へ着いたよ!!ほら、降りて!」

しぶる那海を引き摺り下ろし、ティスに先導してもらって研究所に入る。
こんな遅い時間なのに、全員が出迎えてくれた。

客人まろうどだ!新しい客人だ!しかも更に可愛い!!」

いや、俺は普通だったでしょ?
まぁ、那海は美少年の誉れ高い人気者だけどさ。

「腹は減ってないか?」

あ、ダリュマさん。

「だ!だるま!だるまが居る!!」

那海、失礼だよ。
ぺたぺたと顔を触って驚く那海にひやひやしたけど、ダリュマさんは冷静に腹は減ってないかと繰り返した。

「あ、少し減ってます。」

「少しなら握り飯と味噌汁くらいが良いか?」
「えっ!?おにぎりとお味噌汁?食べたい!」

出てきたおにぎりはシャケとタクアン、味噌汁は豆腐。

「ここのお豆腐はダリュマさんが作ってたんですか?」
「そうだ。取り寄せるには店が遠いし、ここには良い湧き水があるからな。」
「ダリュマ…ぷぷぷ…」
「那海!」
「だって…」

「かまわん。うちのひぃじいさんも客人に面白がられてたと言うからな。」

「…す、すみません…」

出してくれたおにぎりはまだ温かくてとても美味しかった。

「じゃぁ、今日は休んで明日出発しよう。」
「どこへ?」
「さっき王都へ行くって言ったでしょ?」

客人は王様に謁見する義務がある事、しばらくは生活費が支給される事、魔術の勉強ができる事を説明した。

「ゆっくり旅する?さっさと王都へ行く?」
「ゆっくり行く!馬は?ティスと2人乗りしたい!!」
「ヤダ!もう、さっさと行くに決定!」
「え~?ケチ!」
「…王子様達も王女様達も超美形だよ?客人モテモテだよ?」
「すぐ行こう!」

「…那海ってこんなにがっついてたっけ?」
「お年頃なの!でも向こうじゃマスコミがジャマで恋愛も難しかったしさ。」

そっか…有名人だもんね。でもティスはダメ。

4人で連絡できるように新しいグループが作ってあったから参加してから寝た。




寝坊して昼近くに目が覚めた。
那海に声をかけたけど部屋にいなかったので食堂へ行くと、取り囲まれてちやほやされてた。

…彼シャツ状態で。

「那海…着替え持って来てるでしょ?」
「あるけど、お風呂上がりの湿気があるうちはゆったりしたの着ていたいじゃん。」
「それで借りたの?」
「そう。こっちの人優しいしかっこいいし面白いね。」

仲良くなれて何より…

「ご飯食べたら出ようか?」

那海はもう食べたらしいのでダリュマさんが俺とティス用にとっておいてくれたご飯を食べて、お弁当用のパンとスープと肉料理をもらって研究所を出ようとすると、那海が全員とハグしてなかなか進まない。そんなんだから凪からビッチなんて言われるんだぞ!

それを眺めてたらティスが後ろから抱きついて来て、ダリュマさんにやっぱりお前らくっついたのか、って言われた。恥ずかしい…

「那海、行くよ!いつもあんな事してるの?」
「向こうでしたら騒ぎになっちゃうからせいぜい握手だよ。」
「…そう言えば、那海の恋愛対象って…?」
「性別にこだわりはない!」

バイだったのか…

みんなに見送られて転移で山を下りる。
平地に出てから作っておいたブランコに那海を乗せてチビに引っぱってもらうと那海が感嘆の声を上げた。

「すっごーい!ワイバーンて、凄いね!」

「チビが特別なの!もっと大きなワイバーンならこれくらいできると思うけど、人間に使役される生き物じゃないから。」

「そうなの?チビ凄いねー!」

那海に褒められてもチビの反応はイマイチだ。那海の属性は火か地かな?

途中で少し休憩して、3時間半程で王都に着いた。もうすぐ夕方だ。ちゃんと門を通過しないと住民登録できないそうなので並ぶ。15分程で中に入れた。

那海が人目を引くので注目の的だ。

人目を避けて路地裏に入り、王宮の門へ転移する。門番さんから連絡してもらうと、今日は謁見室じゃなくて会議室に通された。

会議中?大丈夫?

「早かったな。」
「はい、ワイバーンに運んでもらった所、東の森からこちらまで半日でした。」

ティスが答えると、会議に出席している人達がざわざわと話し始めた。

「ワイバーンの話も詳しく聞きたい所だが、新たな客人まろうどについても訪ねたい。」
「はい、こちらが新たに参りました客人のナミです。」

前と違って随分簡略化してるな、と思いながら那海を紹介する。

「お初にお目にかかります。尊の友人の那海、16歳です。この国にしばらくご厄介になりたく、お願い申し上げます。」

那海は優雅にお辞儀をした。

「16歳と?タケルと良い、そなたと良い、やはり客人は幼く見えるものだな。国として出来る限り世話をする。好きなだけ滞在するが良い。」

「心より感謝申し上げます。」

宰相さんが呼んだ侍従さんが客間に案内してくれて、お茶を淹れてくれた。

「っは~~~…すっごい威圧!さっすが王様だね!」
「全然緊張してなかったじゃないか。」
「そりゃ、お偉いさん達には慣れてるもん。ね、ティスさん褒めて褒めて~!」

「ふふっ…よく出来ました。」

頭を撫でてもらって嬉しそうにする那海にヤキモチ妬いちゃう。俺、こんなに嫉妬深かったかな?

とモヤモヤしてたら部屋の扉がノックされた。

「第二王女殿下のお越しです。」
「タケル!もう!随分来なかったじゃないの!」
「ウィオラねえさま、ご無沙汰してます。」
「尊、この人が王女様?」

那海をねえさまに紹介するとねえさまは那海をぬいぐるみのように可愛がった。

「なんて可愛いの!?それにタケルと同じくらい肌が綺麗で…羨ましい!!」
「王女様もとっても美人ですね!」

なんか抱き合ってきゃっきゃっしてる。男女なのにノリが女子校っぽい?

「新たな客人が来たと聞いた!」

大きな声でノックもせずに入って来たのは王太子のクルト兄さま。

那海がぽ~っと見惚れてる。
バイだって言ってるけど反応からすると男の人の方が好きなのかな?

それから第二王子、第三王子が来てみんなに可愛がられて大喜びの那海。みんなに代わる代わる抱っこされてる。

「あの…ウェーヌ様は?」

「もうすぐ来るんじゃないかしら?」

どこかに出かけてるとかじゃないのか。
しばらくして現れたウェーヌ様は顔色が悪い…具合悪いのかな?
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