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行ってみたいな!あちこちへ
閑話 建国の瑞鳥
しおりを挟むリクエストをいただいたチビとあいらの物語です。
あいらが予想外に堅い…読まなくても問題ありません。
あいら視点、2000字程度です。
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小さきものがやって来たのは突然だった。
取るに足らない小さな気配。だが微かに白虎と玄武の気配を纏うていた。
小さきものにとっては遥かな上空である此処に、何をしに来たのか。
結界に弾かれると思った。
だがそれは結界をすり抜け、我の前に姿を現した。
『おしょら きれい』
「我は藍鸞。おしょら、ではない。」
『あいら! あいら、きれい! おおきい!! かっこいい!』
小さきものは恐れもなく我を褒め称える。幼き故に力を求める事も知らず、怯えもせず。
なんとも心地良い。
無遠慮に我に触れるも、何故か我の強過ぎる力を受け流している。多くのものは触れる事も適わずにその身を我が力に焼かれて消滅すると言うのに…
『あいら あったかいねぇ』
そう呟いて我の翼の中に潜り込み、眠る。あり得ぬ。創造神の力の一端として生じた我に触れ、活力を漲らせるならまだしも、穏やかな眠りに落ちるなど!
我が僅かに力を込めれば小さきものなどひとたまりもない。
…跡形も無くなるであろう。
身動ぎすら出来ぬ。
微睡む姿をしばし見つめていると、小さきものは目を覚ました。
『また あしょびに くるね。』
そう言ってまた結界をすり抜けて地上へと降りて行った。
「また」などと口にしていたがその言葉が守られるとは思わなかった。
しかも我のまばたきの間に…
『あいら あしょぼー』
遊びなど知らぬ我の下に来て無理難題を押し付けるか。
そう考えもしたが我が動かずとも我の周りを飛び回り、我の巣で転がり回って楽しかったと言って帰る。
『おみやげ もってきたー。』
おみやげ、とは…
『おいしいから たべてー』
黒くて丸い物を首に下げた包みから取り出し、我の嘴を叩いて開けろと要求する。興味を引かれて口を開けば甘くて苦くて濃厚な香りが舌の上に広がる。これが糧と言う物か。
『かたくないよー すぐとける でしょ?』
「かたい、ではなく 糧と言うたのだ。 生きとし生けるもの達が命を繋ぐための物。」
『 ? しょこらだよ。たべたくなったら たべるの。ままの ごはん おいしいから たべると しあわせなの。』
「そうか…しあわせか。」
『うん、しあわせー』
糧の礼に気に入って遊んでいた我の尾羽を土産とやらに、と持たせると
『なかよしの しるし?』
これが仲良しと言うものなのか分からぬが肯定を期待しているように見えたので頷いた。
小さきものは嬉しそうに礼を述べて帰って行く。
それからも焼きそら豆だの唐揚げだの、何かしら土産を持ってやって来る。更にはある日持って来た魔力の糸を纏わせた青龍の鱗。触れると言葉や何者かの姿が浮かぶ。「あんてな」と言っておったが小さきものも何か判らぬ物のようだった。
おかげで無聊をかこつ間も微睡む必要も無くなった。
何度目かの折り、仲良しはすきすきすると言って我の顔に口を押し当てた。同じ事をするように、と促され嘴を当てると小さきものは触れた衝撃で転がった。
『いたーいっ! あいらは チビのこと きらいなの!?チビは しゅきなのに!!』
涙を流しながら不満を述べ、見当違いな怒りを撒き散らす。我はこの小さきものを気に入っておるに、己の力不足に思い至らぬとは。
『かえる!』
巣に帰ったか。
次に来たら鍛えてやろう。我が触れたくらいで転がらぬよう、撫でても押しつぶされぬよう。
だが小さきものは来なくなった。
怒りが治まらぬのか、我への興味を失ったのか。
…これが「淋しい」と言う感情か。
生きている事を心の底から楽しみ、我など構わず幸せを振りまく小さく弱きもの。その存在にどれほど満たされていたのか…
あの輝きを失ってしまったのか。
また来て欲しい。姿を見たい。道などないこの天空で迷うたかの如き不安な心持ち。ならぬ。我が安定せねば世の理も乱れかねない。だが…
『あいら?』
その気配に気付かぬほどに動揺していたのか。気がつけば小さきものが不安げな様子で我の顔に触れている。
『あいら かなしいの? しゃびししょう…』
小さきものが転がらぬよう、細心の注意を払って触れる。これで心が伝わるだろうか。
『あいら チビのこと きらいじゃない?』
「嫌う筈がない。」
『がーんて しない?』
「力の差が有り過ぎるのだ。我が弱くなる事は出来ぬ。そなたが強くなれ。」
それからは共に飛び、撫で、少々つつき、鍛えている。小さきものもゆっくりと、だが確実に力を付けている。
あまり力を付けすぎては結界を抜けられなくなるだろう。
だがまだ、もう少し…
鍛えても大丈夫だろう。
我の終わる時は世界の滅びる時。小さきものとは存在する理が異なる。
故にいつかは別離の時が来る。
願わくばその時が少しでも先であるように。この暖かく光り輝く数多の記憶を胸の内に残しておくれ。
我の愛しきものとして…
存在ある限り幸せであれ。
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「連れて行きたい日本へ」で
ストゥとタケルがラブホに行った時のいちゃいちゃが読めます。
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