行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

110 宵宮

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「あの…恥ずかしいお祭りの服、ってどんなの?」

ちびっ子達が不思議そうな顔をした後、顔を見合わせてにまっと笑い、せーの!と言って服を脱いだ。

「自分でできるように練習したんだよー!!」

と言って見せてくれたのは…

………

ふんどし。The 男祭り!

そりゃそうか。海の祭りで8割が男だったら普通はこれだよね。
ティス似の男の子がふんどし一丁なんて、ヤバ過ぎる!目の毒!絶対ダメ!!

…ちょっと見たい。

まさかとは思うけど、神巫の服はちがうよね?

「違うよ!神巫かんなぎはおひめしゃまの服だよ!」

そう言えば人形はお雛様のような姿だった。良かった!!

「みんなかわい…かっこいいね。」

「かっこいいでしょ!」
「かっこいいって!!」

褒めたら大喜びしてる。ほら、完成させるぞーって言われてそのままふんどし姿で作業をするちびっ子達。可愛いお尻が並んでる。大きい子はさすがに脱いでない。

頑張ってねーと手を振ってその場を後にした。

「タケル…タケルのふんどし姿はオレ達にしか見せたらダメだぞ?」
「当たり前だよ!俺だって恥ずかしいもん!! それにしても……リールはティスに似てたね。」
「そうだな。もしかしたら弟かもな。」

そう言えば4男からは少年の家に行くから弟が産まれても判らないんだね。
…正直に言うと、過去のティスに会えたみたいでちょっとときめいちゃった。未成年にときめくとか…ダメじゃん俺!!

『まま、あいらのとこ いってきましゅ!』
「え?うん、わかった。お土産買って行く?」
『しゃっき、おとこのこが くれたー。』

チビはいつの間にか魚の鱗で作った花を1輪持っていた。

『あいらに にあうから もってく。』
「それは良いね。いってらっしゃい!」
『はーい!』

高く高く舞い上がるチビを見送った。

「俺達もティスの所に行こうか。」
「なんだ、寂しくなったのか?」
「…う、うん。少しだけ…だけど。」

3人一緒が良いんだもん。
って、寂しそうな顔しちゃったようで抱き寄せられて頭を撫でられた。
ここ外だよ! 恥ずかしいよ!!

…たとえ子供が可愛がられているようにしか見えなくても。



町長さんちに戻ると、ティスが華やかに飾り立てられていた。

「頭が痛いです…」

男だから大振りな飾りをつけられているのだろうか?見るからに重そう。大きな真珠のイヤリング、波が頭を取り囲むようなデザインの青いガラスらしきサークレットに煌めく貝殻が嵌め込まれ、ゆるく編んだ髪に大小様々な鱗をちりばめてある。

「「男ならこれくらい我慢しなさい!」」

「あの…こんなに飾り立てないとダメなんですか?」

おずおずと質問すると、2人は顔を見合わせてニッと笑い、俺の方を見て怪しく微笑んだ。

「「この装飾品を2人で分け合えば軽くなるんじゃない?」」
「え?」
「「聞いたわよ!あなた、成人してるんでしょう? なら神巫のお供をしなさい!」」

神巫のお供?

「それは何だ?」

ストゥからも質問。

「「神巫の側仕えとして一緒に輿に乗るの。海神が来てくれるか微妙な神巫の場合の応援よ。」」

つまり、質より量作戦?
ストゥとティスを交互に見ると、ティスが縋るような目で見つめて来て、ストゥがやれやれと肩をすくめた。頷くときゃぁ!と嬉しそうな声。着せ替え人形が増えたとか思ってないよね?

俺の髪は短いし、お供だから派手にはならない。神巫のサークレットが少し小さな物になり、俺はお供用のハチマキみたいにリボンを巻いて、左右のこめかみに飾り付きの鎖が垂れるタイプの髪飾り。

「「似合うわ!!」」

娘さん達が喜んでいる。

「ティス、楽になった?」
「はい、ありがとうございます。タケルに似合いますね。」
「正式に衣装を着たら写真撮ってもらおうね。」

髪飾りを外して丁寧にしまい、明日は衣装をつけて宵宮、そして明後日が本宮。
衣装をつける前に身を清める、神巫だけが入れる海の温泉があるそうで、特別に今夜入っても良い事になった。頼み込んでストゥも一緒に入る許可をもらう。楽しみだなー。

「聞いてくれ!このタケルがお供をする事になった。ミーティスだけでも玄武は来てくれると思うが、この2人ならもう、確実に来てくれるだろう。今年は大豊漁だ!!」

おおう!と野太い歓声が上がったけど、出だしに戸惑いがあったのは年齢について混乱があったのだと思いたい。マイナス要因だと思われた訳じゃないよね…。



海の温泉ーーーー!!

崖の上の海に向かって建つお社の中に地下へ降りる階段があり、降りて行くと洞窟に出る。海面水位は大潮の満潮時にこの洞窟の床ギリギリになる。それが明後日の本宮だ。

輿は筏にもなっていて乗せられたまま海に流される。すると海流の関係で必ずここに流れ着き、祈りを捧げる事で海神を迎える事が出来ると言う。

周りに小舟が集まって音楽を奏でるので、放置される訳ではないから安心。

洞窟の真正面からほぼまん丸な月が見える。
壁に設置されたランプに明かりを灯さずとも互いの顔が見えるけど、月が登ってしまえば闇に包まれるだろう。

町長さんが一通りの説明をして帰って行った。3人で寄り添ってしばし月を眺める。

「月が綺麗ですね。」

ティスの言葉に最近話題のネタだ!って思ってしまった。ティスに説明をすると、タケルは恥ずかしいのに頑張って言葉にしてくれてるんですね、と言われた。

そうだよ、そこは頑張るところだもん。

そろそろ温泉に入ろうと言うと、月明かりに浮かぶタケルが見たいなんて言われて、月明かりの届くところで服を脱がされた。なんだかすごく恥ずかしい。

「ティスも、ストゥも…」

促して2人にも脱いでもらう。惜しげも無く晒された裸体は2人とも感動するほどきれいだった。幻想的と言っても過言ではない。

そこで1回ずつして部屋に戻って2回ずつして、イキっぱなしになった俺は朝食の準備を手伝えなかった。

お客さんだから手伝わなくて良いって言われてるんだけどね。

そして着付けの練習。
袖なしの膝上の襦袢みたいな下着は自分で着なくてはならないけど、着るのは簡単だった。その上に絹の服を羽織って帯を締める。ひらひらの長いスカートがドレスみたいな感じで乙姫様みたい。

…神巫の衣装は。

お供の衣装は子供服なのか裾が短く、膝が出る。長めのチュニックと言うかミニ浴衣と言うか時代劇の子供の衣装と言うか…何この中途ハンパ感…

まあ、輿に座ってるだけだし、良いか。
宵宮が始まるとあまり食べられないからと早めに夕食をいただいた。




宵宮は衣装を着ての宴会だった。
上座に座らされ、酌をされて、飲まされる。幸い俺はお供だから飲まされなかった。でもティスがね。
弱くはないはずだけど次から次に飲まされて、何度か解毒したけど…色っぽく酔っぱらって肘掛けにしなだれ掛かっている。大丈夫かなぁ?

すぐ近くにいるストゥもじゃんじゃん飲まされている。
町長が2人とも借りちまってスマン、アンタまで禁欲だなって笑ってる。昨日たくさんしたから今日明日くらい禁欲したって平気だよー!

って、あぁ!
ティアラが落ちる!! 外しといて良いかな?良いよね?

「町長さん、これ落としちゃいそうだから外して良いですか?」
「おぉ、ありがとう。神巫のイスの背もたれにそれを飾る場所があるんだ。そこに置いてくれ。」

イスの背もたれを見ると確かに上部にティアラを飾れる場所があった。これならかぶってなくてもかぶっているように見える。あれ?重い方だとしてもこれで良かったんじゃない?
そう考えながらティアラを乗せる。割と高くて立ち上がらないと届かなかった。

「ひゃっ!」

伸び上がって手を挙げてたら酔ったティスに腿裏を撫でられた。

「ゴルァッ!神巫がお供に手ぇ出してどうする!?禁欲しろっつたろ!!」

ぽやぽやするティスにその言葉は届いたのかどうか。
そのままティスは酔いつぶれ、ぱたりと倒れて眠りに落ちた。



「やっと潰れたか。」
「ずいぶん強かったな。」
「これなら相当期待できますね。」

町長達の話が聞こえて来る。

どう言う事かとストゥが聞くと、海神を酔いつぶれるまで歓待するのが目的だけど、実際に神さまが酔いつぶれるはずがない。海の神さまはいくらお酒を飲ませても海がお酒で満たされないように潰れる事はない。だから身代わりとして神巫を酔い潰すのだそうだ。危ないよ!!

そのしきたりは危険だけど、衣装に加護が宿っていて命に関わる事はないんだって。

それなら安心!………なのか?
俺も匂いで酔ってるのに、少しふわふわするだけで気持悪くならないのは加護のおかげかな?でも脚には来ている。

見れば周りの人達も半分以上潰れている。
でも宵宮にお開きはないらしく、平気な人はこのまま飲み続けるんだって。俺とティスも明日までずっとこの衣装って…聞いてない。たすけてー!トイレ行きたいのに汚しちゃったらどうしよう!?

浄化すれば良いのか。

「ストゥー、トイレ行きたいー。歩けないから連れてってー。」

脚に来ちゃったの?連れてってあげようか?って親切に言ってくれる人もいるけどストゥが良い。町長とピスカートさんに引き止められるストゥを呼んで抱っこで連れてってもらった。ついでにストゥも解毒する?

戻る前にかわいいかわいいっていっぱいキスされた。
ほとんど女装だけどストゥが嬉しいなら俺も嬉しい。

戻ったら町長とピスカートさんがクロスカウンターの状態で寝てた。
仲良しだなぁ。
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