行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

107 水祭りへ

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朝食をガッツリ食べて3人は帰って行った。

「ねぇ、俺、海に行きたい。」

なんだか毎日が夏休みみたいだから忘れてたけど、夏だし、海に行きたい。キャンプはしょっちゅうやっているので、次は海だ。前に少し行った時は海水浴にはまだ早かったし。

「海に何しに行くんだ?」
「泳いだり、潜ったり、新鮮な魚を食べたり!」
「遊びに行くわけですね。」
「そう!日本では夏にまとまった休みがあったから、家族で普段行かない場所に泊まりがけで遊びに行くのが定番だったの!」

「…ふふっ、タケルがそんなに盛り上がってるの、初めて見ました。」
「そ…、そうかな?こっちの世界ではわくわくしっぱなしだよ?」
「それでもここまではしゃぐのは初めてだな。」

夏休みの旅行って考えたからな。

「じゃあ、良い依頼がないか、久しぶりにギルドに行ってみるか。」
「うん!」



ギルドに行ってみると、浅黒い肌の精悍な顔立ちの老マッチョが部屋の奥から睨みを利かせていた。目力がハンパない…。

「ねぇ、あの人俺たちの事睨んでない?」
「ん?んー…そうかもな。」
「何か用があるなら声を掛けて来るでしょうから、気にしなくていいですよ。」

そうなんだろうけど、気になるよ。

びくびくしながらティスとストゥに隠れるようにしながら掲示板を見る。ストゥが1枚の紙を取った。

「リートスの水祭りの神巫かんなぎを務める見目麗しい水の魔術師を求む。祭り装束で豊漁を願う祝詞を唱え祈りを捧げるだけ。報酬:\500,000。要面談。紹介なら仲介料¥30,000」

「ティスのための依頼?」
「タケルの方が可愛いですよ。」
「俺、見目麗しくはないよ?それに地と火と光だし。」

そんな事を言い合っていたら老マッチョが近づいて来た。

「お前さん、水使いか?」

まっすぐティスを見つめながら聞く。

「そうです。」

「合格じゃ!」

「じーさん、この依頼の事か?」

「おう!ワシはリートスのピスカート。南東の町リートスで漁師を取りまとめておる。毎年違う神巫でなくてはならんのでこうして募集するんじゃ。」

神巫が美しいと海神わたつみが玄武まで連れて来て豊漁が約束されるんだって。
じゃぁ、ティスなら確実に豊漁だね!
ほどほどだと海神しか来てくれないって…そんなぞんざいな扱いで怒らないの?ローカルヒーローと人気ゆるキャラじゃあるまいし。

って、思ったけど海神の加護は安全は守ってくれるけど近海の魚の豊漁だけで遠洋の魚は呼び込んでくれないと言う。玄武は遠洋や深海の高級魚を連れて来てくれる。なるほど、扱いに差が出るのは実力差か。

「で?引き受けてくれるんじゃな!」

ぐいぐい来るピスカートさんだけど、内容は簡単で報酬は破格。

…怪しくない?

「条件が良すぎる。依頼内容に書いてない事があるんじゃないか?」

ストゥもそう思うよね。

「…実はな、7日かかる所を5日で行かなきゃならんのだ。」

うわぁ…それは…

転移で稼げる時間だね。

「ピスカート、荷物を最小限にしてくれ。タケルが運んでくれる。馬は貸し馬か?」
「もちろん、貸し馬だ。強行するから乗り換えが必須だからな。」
「じゃぁ、馬はカウテスで借りる事にしてくれ。明日の朝にここで落ち合って出発で良いか?」
「馬を使わずに間に合う訳ないだろう!それに人数が増えても報酬は変わらないし、宿でゆっくりする事も出来ないぞ?」
「報酬は充分だし、宿も自前のテントで問題ない。それからカウテスまでの移動手段は…明日のお楽しみだ。」

ストゥが俺にそれで良いか?って聞くのでもちろん!と答えた。





「勝手に転移を使わせる事決めて悪いな。」
「ううん!役に立つの嬉しいし、人間だけならかなり転移できるよ。…でも、カウテスってどこ?」
「言ってませんでしたか?ワイバーンの営巣地…チビの故郷の近くの港町ですね。」
「それなら3日で行ける!」

今日は魔術を使ってないので充分な魔力があるので魔石にたっぷりチャージしておく。夕飯はいつも豆腐を買っている料理屋さん、ダリュマさんのお父さんの和食屋さんに行った。

麻婆豆腐が看板メニューになってた…。
ごめん、和食屋さんじゃなくなっちゃったね。でも料理屋さんも豆腐屋のおじさんも喜んでくれているので良いよね。

チビにも席を用意してくれたので家族で外食したのを思い出した。

茶碗蒸しが一味違う…っていうか…あれ?

唐揚げ入り!!

不味くはないけどびっくりした。あ、ティスがすんごい微妙な顔してる。

「タケル…タケルの作った茶碗蒸しが食べたいです。」

涙目になってるよ?
帰ったらすぐ作るね。

明日、明後日に食べる分の豆腐を買って帰る。冷や奴って3cmの立方体に切った豆腐の事を言うんだって。凪がテレビで見た、って面白がって教えてくれた。

お出かけ前のイチャイチャは役目のあるティスは向こうに行ったら忙しくなるだろうとストゥが遠慮したからティスと2人。
お出かけ前のテンションで甘えまくったらとっても喜ばれた。



 早めの簡単朝食はナスと油揚げの味噌汁、魚の西京焼き、きゅうりの浅漬け、冷や奴、ご飯。

旅の道具一揃いと保冷容器に豆腐を入れて、チビの安眠用に治癒の護符も持って出発~♬

そう言えばチビのために作った青龍の鱗のチョーカー…忘れてた。折角だから付けようか?

『ままと おしょろい!』

俺のは足用だけど、素材が一緒だからお揃いだね。とっても喜んでいる。ティスもペンダントを、ストゥは手甲を付けてみんなでお揃いです!

パーティー名「青鱗」とかつけても良いんじゃないかな?自慢してるみたいになるかな?

合流したらピスカートさんの目が点になってた。

そして人気のない裏通りから転移すると、半日分くらいの距離の村の手前だった。ピスカートさんのアゴが心配だ。

「この人数で連続転移すると魔力の消費が激しいので、ここから2時間くらい歩いてまた転移して、しばらく歩いたらお昼を食べて転移して歩いて…もう一度転移したらキャンプです。」

ぎこちなく頷いたピスカートさんを促して歩き始める。ストゥと同じくらいの身長があるから歩くのも速い。足の魔道具がなかったら確実に置いてけぼりだったな、と魔道具屋さんに感謝した。

「ボウズ、ちっちぇのにスゲェな。見習いだと思ってたが違うのか。」
「タケルです。18歳ですが客人まろうどなので若く見られるんです。」

凄いって言われて嬉しい。
お世話になってたじいちゃんとは全然似てないのに、じいちゃんに褒められたみたいな気分になる。

ティスが俺を休ませたいから抱っこするって言うけど、魔道具のおかげで全然疲れないから大丈夫!

途中の森で豆粒鹿の子供を見かけた。
手のひらサイズだったのが猫サイズになっていたけど、ちょこちょこ親の後を追う姿がすごく可愛い!

だから雌は狩らない。

ピスカートさんが格好良く投げ槍で雄を仕留めてくれたのでステーキにする。

付け合わせにポテトフライと人参のソテー、オニオンコンソメスープ、レタスとトマトのシーザーサラダ、パン。

シーズニングソルトが良かったのか、簡単だけどとても喜ばれた。

食べ終わったら転移する。森を抜けて歩いて湿地の手前の村に到着した。
向こう岸までの距離を調べたら転移で渡るのは魔力切れの危険があるようだ。今日気がついたんだけど、念じると効率の良い距離が頭に浮かぶし、ここまで行ったらどうなるか、と事前に確認する事ができた。すでに3回目の転移だから向こう岸まではキツい。

だからここで1泊して舟で運んでもらう事にした。渦を作って高速移動できるもんね!

無理にキャンプしなくても良いか、と宿を取る。
前に仮装衣装をくれた宿屋の娘さんが新しい服をデザインしたそうで、俺の顔を見た途端あれこれ出して来た。全部を着て見せてくれたら宿代タダにするって言って、お父さんと少し揉めてた。娘さんの勝ち!
それに奇抜だけど恥ずかしいデザインではなかったのでOKする。

…いや、ある意味恥ずかしいかな?
だってゴーヤの着ぐるみみたいなのもあるんだよ?あぁ、収穫祭用か…(遠い目)
輪切りの丸太を隙間を作ってつなげたような服は…服?
思いついたから形にしてみた?…そう。

翌日の船をお願いすると、ピスカートさんが来る時に乗せて来た人で、前に俺たちを乗せてくれた船頭さんだった。また大きなオオサンショウウオを獲ってくれって頼まれた。

獲るのは向こう岸に近い方が良い?

どっちで獲っても祭りは一緒にやるから大丈夫だって。ここでも祭りがあるのか、と思ったら盆踊りだって。盆踊りあるんだ。

どっちでも良いなら向こう岸にしよう。
朝食を食べて船に乗り込み、渦を作って速度を上げる。

「ボウズも水使いだったのか?」
「違います。地と火と光です。この渦は魔力の糸を動かしているだけなので…無属性ですかね。」
「そんな使い方があるのか!海で凪いだ時に助かるな。」
「船の前の水を吸い込んで後ろから勢い良く出せばもっと速くなりますよ。」
「むぅ?うーむむむ…… 全く分からん!」

想像がつかなかったようだ。

「ティスは分かる?」
「すみません、よく分かりません…」

俺もよく分かってないから説明するのも難しい。
まぁ、良いか。
前は不安定になるかもと速すぎないようにしてたけど、今ならもっとスピードが出せそうだ。渦を大きくしてスピードアップ!!

…なんと1日で渡り切ってしまった!通常3日かかるのに。

あ、この前の方法で2日に短縮できてたのか。

そうだ、大きなオオサンショウウオ。

「チビ、近くにオオサンショウウオいるかな?」

チビは少し高く飛んでゆっくり1回周りを見渡してびしっと指を指す。

「きゅきゅ!!『いた!』」

船頭さんが用意したエサのカエルをその方向へ投げると、水面すれすれの辺りでオオサンショウウオはザバァッと姿を現してエサに食らいついた。
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