行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

105 また飲み会?

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家に帰るとすぐにティスは封印したままの絵を部屋にしまった。

「…もうちょっと見たかったな。」
「さっきは泣いていたのに?」
「あれは当時のティスが可哀想で…絵を純粋に見られなかったから…」
「何か特別な事があった時に見せてあげます。」
「ご褒美?」

にっこりと頷くティス。

「どんな事をすればそのご褒美貰えるの?」
「今は思いつきませんから、考えておきますね。」

えー?
そのままずっと保留にされちゃわないかな?うん、その時は拝み倒そう。今はまだ我慢しよう、なんとなく。

「それにしても、ナトゥラの家、凄かったね。」
「宝探しができそうだったな。」
「借り物をあんな風に扱うなんて人としてあり得ませんね。」

まぁそうなんだけど…
芸術家のイメージ通りと言うか。

そうだ、ストゥとラティオさんの写真、プリントして貰おう。

『Lサイズでプリントお願いします。』

連写の中から良さそうなのを10枚ほど選んで送る。ストゥはやっぱりかっこいいなぁ。
…ストゥが1番かっこいい写真は1枚余分にプリントして貰おう。



ラティオさんとの約束のカツサンドを作るため、食材の買出しがてらお昼を食べに出かける。なんか久しぶりの市場だ。

パンと肉とキャベツと卵が必須。
あとは卵と…ゴーヤが!でっかいゴーヤが!
チャンプルーを作らなくては!!豆腐を買って来なくては!!
あとは冬瓜のスープにしよう。

前にも行ったことのあるお惣菜屋さんとパン屋さんに行ってオープンテラスでランチ。
あれ?サラダに生ハムがのってる。売ってるの?

こちらではまだ売っている所を見たことがなかった生ハムは近くの酒場で作っているそうだ。

場所を教えてもらって買いに行ったんだけど、なんかタイミングが悪かったようだ。店内は強いお酒の香りが充満していて、喋ることすらできずに回れ右して外に出る。

…げ、解毒…

「びっくりしたー…」

俺はティスと2人、外で待つことにして生ハムはストゥにお願いした。

出て来たストゥに聞くと、生ハムは少ししか作ってないのであまり多くは分けられないと言う。あとお酒の匂いは酒樽がネズミに齧られて溢れたからだって。

生ハム追加で作ってくれないかな?
大好きなんだけどなぁ。

とりあえず少しなら売って貰えるそうなのでお願いしたら500gで\3,500だった。高いような気がするけど500gって割と多いよね。量が多いからこの値段なのかな?

比べるべき相場はよく分からないし、一度はこっちの生ハムを食べて見たい!
と言う事で今夜のツマミはマッシュポテトの生ハム巻きに決定しました。

デザートはスイカサイズのメロン。
メロンに生ハムのせるの、嫌いじゃないけど一緒にする意義がイマイチ納得いかないので別々に食べます。

ついでに受け取って来たアイスクリームメーカー(改)でメロンシャーベットも作って見ようかな?



料理を作って待っていると、夕方になってラティオさん達が来た。

…なぜかナトゥラも一緒に。

「お願い、タケル!このダメ画家にご飯食べさせてあげて!こいつ、面倒くさいからって平気で3日くらい食事抜くんだって!!」

「美味しい食事は嬉しいですが、食べるのって面倒だから…」

「ティスとは食べてませんでした?」

「ティスと食べるのは楽しいから苦になりません。でも食事のためにわざわざ家を出て行くなんて面倒です。」

「なら人を雇うとか。」

「会話をするのが面倒で…」

どんだけ「面倒だから」と言うのか。
最初の印象と随分違うなー。

「タケルの料理を食べればもう少し食べる事に情熱が湧いて来ると思うんだ!!」

俺の料理がそこまで美味しいか自信はないけど、フォンスくんの褒め言葉は素直に嬉しい。こんな人でも面倒くさがらずに食べてくれるようになったら良いな。

もう絵も返してもらったし、ティスが気にしないなら構わないと言うとティスも微妙な顔ながら許可を出した。





「ストゥとフォンス、ティスとナトゥラ。こう来たらおれとタケルが何か関係を持たないと仲間外れな気がするな。」

真面目な顔を作って意味の分からない事を言い出すラティオさんにストゥが凄む。

「追い出されたいのか?」
「いや手を出す気はないがな。何かこう…共通の趣味とか。」

ラティオさんて変な事を気にするんだなー。

「俺の趣味…
料理くらいしか思いつきません。」

「レア素材蒐集とか興味ないか?」
「レア素材?どんな物ですか?」

青龍の鱗とか藍鸞の羽とか大きくて質の良い魔石とかなら持ってるけど。

「人魚の尻とか。」

え?

「魔物の干物とか。」

えぇっ?

小翅人ピクシーの足跡とか。」

「…すみません、何だか眉唾な響きがあるんですが。」

「よく分かったな。おれはそう言う胡散臭い物が大好きなんだ!」
「あれ、やめて欲しいんだけど…」

フォンスくんがジト目で見ている。
異世界だし、小翅人ピクシーとかいてもおかしくないとは思うんだけど、人魚の尻…なんでよりによって尻?人魚のお尻はもう魚じゃないの?

そう言うあり得ないものを見つけては買ってしまうんだそうだ。さすがに高価なものは買わないらしい。

「売主の心意気と言うか洒落心と言うか、まぁそう言う所を楽しみたいんだがな。フォンスが邪険にするんだ。だから仲間が欲しいな、と。」

「お前にそんな趣味があったのか。」
「おお、依頼であちこち行っては変な物を見つけて来るんだ。」
「結構嵩張るんだよ。」

自分で変な物って言ってるし、趣味に合わないものが大量に家にあったら困るよね。

「持ち家なんですか?」
「そうだ。だが少し手狭になって来たな。」
「少しじゃないし!!」

リビングと寝室以外には変な物が溢れて4部屋あるのに2部屋が倉庫になっていて、玄関や廊下も何かしら飾ってあるそうな…

「私の家と同じですね。」
「「それは違う!!」」

ナトゥラの家は壊れた家具や食器も放置されてたけど、ラティオさんは変な物コレクションを綺麗に並べて週に1度は掃除をしている。これを一緒にされるのは心外だよね。

「集める気はありませんが、見せてもらえるなら興味はあります。」

「おお!今度見に来てくれ。歓迎するぞ!」

遊びに行く約束をした。そしてナトゥラもついて来るって。


ナトゥラはゴーヤチャンプルーの苦さにジタバタしてたけど癖になったようで箸が進んでいる。お酒も進む。
ストゥとフォンスくんはゴーヤは苦手、ティスとラティオさんは好きみたい。
カツはみんなで取り合いをしてた。俺はカツ丼だけでお腹いっぱいで、後は本当につまむ程度だった。

そして帰ってきたチビがご飯を食べたらまたラティオさんにちょっかいを出す。ラティオさんも面白がって相手をしてくれているようだ。室内だから双方手加減しています。

「その子はワイバーン?ちょっと良く見せてもらえませんか?」

チビは促しても無視している。

「チビ、ナトゥラさんがかっこいいポーズ見たいって。」

きらーん!
チビの目が光って「仕方ないなぁ」と言わんばかりの仕草でナトゥラの前に行ってノリノリでポーズを決める。

感じるところがあったようでナトゥラもスケッチを始めた。

「そのまま動かないで!」
「向こうを向いて顔だけこっちに向けて」
「両手をテーブルにつけて尻尾をぴんとあげて!」

とか言われてカメラマンの撮影みたい。こんなに次々とポーズを変えて描けてるのかな?

「はい、じゃあセクシーポーズ!」

変態!!

って、思ったけどチビには意味が分からなかったようで困惑して首を傾げている。かわいい。

「変な言葉教えないで下さい!」
「通じなかったなら良いでしょう?」
「ダメです!まだ子供なんですから!!」

チビを抱き上げてナトゥラから隠すように抱きすくめる。まぁ、大人になったってワイバーンにセクシーポーズの概念があるのか分からないけどね。

『まま、しぇくしーってなぁに?』

「えーっと…ママにも良く分からないんだけど、恥ずかしい感じがするから大好きな人にしか見せちゃだめな感じかな?」
「チビ~、この相手の赤ちゃんが欲しい、って思った時にする、赤ちゃんちょうだいっておねだりするポーズだよ~。」

えっ!?
フォンスくんチビの言葉分かるの?

「分からないけどタケルの言葉で見当をつけたの。」

な~んだ。
って!チビにそんな説明まだ早いよ!!

『赤ちゃん?たまご?ちょうだい?』

良かった、分かってない。と、言うかワイバーンって交尾するのかな?半分精霊で半分魔獣、とかだとやっぱりするのか…

………考えたくない!

「チビ、人間ならこんな感じ…」
「もう帰れ。」

ストゥがセクシーポーズを教えようとするフォンスくんをつまみ出そうとする。やだやだお風呂入る泊まるとジタバタするフォンスくんまでスケッチをし始めるナトゥラ。何でも良くなって来たみたい。

それを見ていたティスが紙と木炭で絵を描き出した。

「この前、私が襲われた時に助けに来てくれたタケルがこんな感じでした。」

正座してバカうさぎにお尻ペンペンする俺の目が虚ろですごくシュール。

「ナニコレ見たい!」
「絵心ははイマイチだな。」
「お前の絵初めて見たな。」

ティグリスではお絵かきしないのか。みんなで好き勝手言うのは楽しいけど、お尻ペンペンの再現なんて出来ないよ!?

「フォンスの尻を叩いてやれ。」
「それじゃタケルの顔見られないじゃん!」
「全然痛くないらしいですよ?」
「非力そうだもんな。」

やってみろと尻を向けるラティオさん。

その場のノリでパーンと叩いて見たらすごく面白がられた。衝撃は骨に響くのに全然痛くないんだって。

…おかしい。


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