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行ってみたいな!あちこちへ
91 ヒーロー登場!
しおりを挟むまた更に進むと、広い空間の気配がある。さっき聞いた広い採掘場だろう。でも何だか…
全員が何かの違和感を感じて斥候を出す事にした。買って出たのは武闘家のトドリスさん。
トドなのかリスなのか…ゴツいからトドかな?とか失礼な事考えてたらムラトさんに「トッド」と呼ばれてた。トドだったか。
そのトドリスさんが青い顔で戻って来た。
「無理だ…これは無理だ…」
広い採掘場に敷き詰めたようにひしめき合うモグラがいて、その中に4匹の中型モグラがいたと言う。ひしめき合う小型モグラは200や300はいるだろう。…想像しただけでげんなりする。
「誰かいるのか!?」
突然、採掘場から声が聞こえた。要救助者だ。
「行くぞ。」
ストゥの号令一下、無理だと言っていたトドリスさんも含めて臨戦態勢を取る。
「救助に来た!もう少し持ちこたえてくれ!!」
ストゥの声を合図に狭い入り口を広げ、俺は壁の補強をして安全を確保。
脚を踏み入れれば向かって来るモグラ達。コグマモグラと同じように水を嫌うので手前から水をかけて統制を乱し、乱戦に入った。じわじわと増える死骸。咽せ返る血の匂いに目眩がしそうだ。
要救助者は左手奥に小さな結界を張って身を寄せ合っていた。
「大丈夫ですか?怪我は?」
水の流れを作って通路を確保すると、モグラ達がそこを避けてくれた。時々飛んで来るけど。
1人が脚に酷い怪我を負っている他、肩に怪我をした人と腕に怪我をした人がいた。無傷の人も1人。軽い順に治癒して化膿しないよう念のため全員に浄化と解毒をした。
小型モグラが半分に数を減らした所で中型モグラが動いた。怪獣対人間みたいに見える。しかもコグマモグラと同じく俊敏で連携を取るから苦戦している。ティスがタイミング良く水をまき散らして隙を作れば、上級冒険者3人、中級4人で4匹の中型くらい倒せないはずがない。
仲間を応援する気持で見ていると不意に浮遊感を感じ、視界が動き出す。
「!タケルさん!!」
何が起きているのか理解できない俺を見てタルパが叫んでいる。
「タケルさんが攫われた!!」
え?俺、攫われてるの?
驚いてよろけて尻餅をつくと、小型モグラの上に居る事が判った。
そして運ばれる先は採掘場の奥の通路のようだ。逃げ出そうと思っても踏ん張りが利かず、自由にならない。
「「「タケル!!」」」
ストゥ達の声が聞こえたけど、振り向く事もままならず確認ができない。
と、行き先であろう坑道からのっそりと大型のモグラが現れた。1番広い通路を塞ぐ大きさのそいつは他の個体と毛艶が段違いに良くて、王か女王然としている。
その象サイズの大型モグラの前に差し出された俺は、覆い被さって来る大モグラになす術もなく抱き込まれた。
…そう、抱きしめられたのだ。
どう言う事なのかさっぱり判らない、と頭をひねっていると徐々に襲って来る脱力感と疲労感。
魔力を吸い取られている!!
道を阻む小モグラ達を蹴散らして追いかけて来たストゥ達に何とか現状を伝えようと口を開いた。
「…魔力を…! 吸い取られている、から…」
俺の魔力を吸って更に毛艶が良くなり、輝いているようにも見える。
これはヤバいかも知れない…
チビはまだあいらの所から戻って来ていない。そうだ、チビならここにも大量の雨を降らせる事ができる。
魔力糸で助けを請うた。
【チビ、助けて…ここに雨をたくさん降らせて!】
ストゥ達は減っていた小モグラがまたしても増えて来た事で進めずにいる。タルパとイアソンは疲労の色が濃い。アルクスさんは短剣に持ち替えているから矢が尽きたのだろう。
ドガガガガガガガッ!!
大きな音を立ててぽっかりと天井に穴が空いた。幸い誰も落ちた瓦礫に潰される事はなかったが、怪我はしたようだ。治癒しなきゃ…魔力切れ寸前でぼんやりとそう思ったのも一瞬で、飛び込んで来た緑色の風。
『ままーーーーーーー!たしゅけにきたよーーーーーーー!!!」
身体の周りに小さな竜巻を作り、そこに水の粒が凍って煌めきながら渦巻いている。
そのまま縦横無尽に飛び回りきちんと人間を避けてモグラ達だけを切り裂いて行く恐怖の氷刃旋風。
…これをチビが?
数に押され、苦戦していたモグラ達がそこら中で息絶えている。
俺に覆い被さっている大モグラも脊椎辺りを抉り取られて瞬殺されたそうだ。…見えなくて良かった。
生き残った小モグラは大モグラが事切れた途端に蜘蛛の子を散らすように居なくなった。
チビがかっこいいポーズを披露して称賛を浴びている。
あいらの特訓の成果はこんなに凄い事になっていたんだね。
「あの…魔獣の中に魔石の気配があるんですが…」
勝利の興奮も治まり始めた頃、タルパがそう切り出した。
ティスに助け出されたけど魔力切れで動けずにいる俺の脇を通って大モグラの身体を切り開き、手を突っ込んで取り出したそれは血まみれで…ティスが浄化をするとそれは天井から降り注ぐ光を受けて輝いた。
4cmはあろう大きな結晶で完全に無色透明。
タルパはそれを俺の胸の上に置いた。
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「連れて行きたい日本へ」で
ストゥとタケルがラブホに行った時のいちゃいちゃが読めます。
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