行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

90 要救助者発見

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「あ、それ拾った方が良いですよ。」

天井から落ちた岩盤を砂に変えてから壁や天井を強化している時、タートリクスさんが言った。

「鉄鉱石と銅鉱石はともかく、これは小さいけど魔石です。」

俺とタルパとイアソンに短剣使いのムラトが教えてくれる。原石のままの魔石は初めて見たのでありがたい。

ピラミッドが2つ、くっついたような形。正八面体だっけ?表面は磨りガラス状で乳白色。5mmくらいのこれを見つけるなんて、凄い!

「良くこんな小さいの、見つけられますね。」
「小さくても魔石だから気配が違う。魔力を感じるだろう?」

そう言われて注意を向けると、確かに魔力に包まれている。一度気配を覚えると所々に有るのが分かる。

「こことここ?」

砂山の中から探り当てると、そうそうと頷かれた。

「ここにもありますよ。」

タルパがもう1つ、俺が取り出した場所のすぐ近くから拾い上げた。

「「「全然気づかなかった…」」」

俺もタートリクスさんもムラトさんも見逃すレベルの小ささなのに、無色透明の結晶。透明度が高いほど質が高い。タルパ、将来有望!

そこをきれいに片づけて進むと、はぐれモグラ魔獣が1匹、こちらに向かって来た。

「新人、頑張れ!」

ストゥに促されて慌てて躍り出る初級2人。
イアソンはリーチが変わったせいか苦戦しているし、タルパは攻撃が届くも致命傷が与えられない。

先輩達に見守られながら何とか2人がかりでトドメを刺した。

「こっち使ってみるか?」

ストゥが使っていた短めの片手剣を持たせる。
短剣よりは良さそうだ。バゼラードはストゥが使うって。

その先は道が分かれていたので、二手に別れることにした。アルクスさん達とムラトさん達が右、俺たちとイアソンが左。

タートリクスさんに魔力糸で通信ができる事を教えて繋ぐ。連絡用だ。

進むにつれて魔獣が増える。
ここのモグラも水を嫌うようで、それを利用してティスが誘導する。

タルパとイアソンもだんだん慣れて来て1人でも倒せるようになって来た。

またしても崩落現場。
ここは斜め上辺りに穴が空いている。調べようとした時、左の壁際から呻き声が聞こえた。

「誰かいるのか!」

ストゥが大きな声を出すと、またしても呻き声が聞こえた。それから上の穴からも人の声。

「おーい!」

そして魔力糸の通信が届く。

【タケル、斜め下に向かって穴が空いている。そこからストゥの声が聞こえましたが、繋がっているのでしょうか?】

調べてみると、確かに繋がっている。でも狭い。途中がモグラ1匹分だ。

【繋がってるけど狭いです。怪我人が居るようなので助け出してから広げます。少し待っていて下さい。】
【判った。】

気配を探って要救助者を捜す。
壁の方に大きめの岩が落ちたおかげで空間ができて、この人は生きていられたようだ。その岩に潰されなくて良かった!!

手前の崩れた岩盤を砕き、岩の隙間を広げて引きずり出した。
衝撃で気を失っただけで目立った怪我はなく、頭の内部にも損傷はない。ただ、少しヘルメットが歪んで外れなくなっていた。

ストゥが慎重にヘルメットを広げ、頭から外す。ヘルメットがなかったら死んでいたかも知れない。もう人は居ないので岩を砂に変えた。

気づかなかったけどそこにいた数匹のモグラ魔獣が飛び出して来る。さくっと倒した。

アルクスさん達の所までの穴を広げるため、邪魔な凸凹を少しずつ削るとさらさらと滑り落ちて来る。風で壁を1カ所に集める。あまり大きくするのも時間の無駄なのでパティエンスさんが通れるくらいのスライダーにした。

【砂で衝撃を吸収しますから1人ずつ滑り降りて下さい。】

通路を塞いでいた岩を砕いた砂も穴の下に集めて待つ。
ムラトさん、トドリスさん、パティエンスさん、アルクスさん、そして連絡担当のタートリクスさんの順で降りて来た。全員無事。

「うぅ…」

救助した人が気がついたようだ。

「大丈夫か?」

「…あ?魔獣は?」
「今はいない。他に人も居ないようだが、奥はどうなってるか判るか?構造を教えてくれ。」

「…この奥には広い採掘場があって、そこと外を繋ぐ坑道は3本。1つはここだから通路は他に2つだ。どうなっているかは判らない。」

殴り飛ばして身を守る事はできても、採掘用のピッケルではあの魔獣には歯が立たず、防戦一方になってしまったようだ。

「この魔獣は普段は出ないのか?」

「…あぁ、ここは上質の魔石が採れるから魔獣除けの結界もしっかりした物を使っていた。それでも多少は出ていたが鉱夫で何とかなる程度だったんだ。」

「判った。1人で戻れるか?」

「大丈夫そうだ、ありがとう。」


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