行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

35 夏至祭(2)

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流されて育ったツタも見に行くと、建物に絡まってしまっている。迷惑かけちゃってるのは何の建物かな?

「ここならむしろ喜ばれるぞ。」

どう言う事かと思ったら連れ込み宿的な、酒場とラブホが一緒になったようなお店だって。実の効果を確認してから話をすれば良いか。ツタの重さで潰れても申し訳ないのでここにも支柱を立てた。ついでに枝を生やしてバネを作る。こうすれば良かったんだ!!

なんてやってたらお店の人が出て来て突然の事に驚いている様子だったけど面白がっている感じだった。

チビが金属バネに乗ってみたけど軽過ぎて弾まなくて不満げ。

「そろそろ青龍のお出ましだ。」





気がつけば辺りが緊張に包まれている。
と、町中にどこかで聞き覚えのある低音ヴォイスが響き渡った。

『天空を統べる空の王、青龍よ!今年も夏至がやって来た。祭りのときは来れり!我は王太子クルトゥス・ステルラ・ウェルテクス。その高貴なる姿を現し、いざ尋常に勝負!!』

魔術で増幅されたその言葉は風に乗り空を駆け抜ける。すると程なくして晴れているのに東の空に稲妻が轟き、雷をまとった青龍が姿を現した。

「王族が青龍を招くのですね。」

ティスが感心したように呟く。
みるみる大きくなる龍の姿は神々しくて、白虎と玄武の可愛らしさとは違うな、と失礼な感想を持ってしまった。いや、白虎はカッコ良かったよ?でも玄武は癒し系以外の何者でもないよね。尻尾の蛇はツッコミだし…

町の上空までやって来た青龍が高く天を駆け上がりすごい速さで駆け下りて来た。

ゴォォォォッ!

青龍の巻きおこす突風は油断した人を何人も吹き飛ばす。俺も飛ばされて浮かんだ所をストゥが捕まえてくれた。

「大丈夫か?」
「びっくりした!!」

びっくりした!そして同時にワクワクする!!
チビも吹き飛ばされたけど空飛べるから大丈夫だね。

周りの人たちも体制を立て直し、青龍の再来に備える。先ほどとは違う方向から青龍が飛来した。

青龍は今度はまっすぐ高台へ向かう。
クルトゥス殿下がそこに居た。

俺が作った支柱のてっぺんに立っている。遠くて見えるはずがないのに存在感の強さでそれが分かる。王族って、濃い。

青龍が身体をひねる。長い尾を振ったり螺旋を描いて上昇と下降、きゅっと縮こまったと思ったらバッと身体を伸ばす。空気が震えた。

衝撃波だ。

殿下が体勢を崩して、でもすぐ立て直し、人々が一斉に攻撃を仕掛ける。

弓や槍、水弾、石つぶて。アクロバットよろしく1人がもう1人を跳ね上げて切り込む。巨大ツタは支柱に絡まり、良い足場を作っている。役に立ってて嬉しい。

少しするとどこからか音楽が聞こえて来た。
もちろん祭囃子ではなく、耳慣れない音楽だ。太鼓と弦楽器と笛。
そして何よりキレッキレの群舞。

それが目の前で始まった。空中で回転したり膝を付いたり、高く跳んだり。バレエのようでもあり、コサックダンスのようでもあり、アイリッシュダンスのようでもある。そしてそのどれでもない。自分の表現力の乏しさに腹が立つ。

するとそれをめがけて青龍が飛来した。

「舞踊で青龍を引き寄せるんだな。」

引き寄せた青龍へ周囲から攻撃が集中する。俺はただただ呆気にとられて見惚れるばかり。

「ちょっくら行ってみるか。」

そう言ってストゥが攻撃に参加した。ごっつい人達を足場にして人だかりを乗り越え青龍に切り掛かる。十把一絡げで吹き飛ばされて戻って来た。

「大丈夫?」
「何ともないがあんなのじゃ届かないな。」

そりゃぁね…

バネ使ってみて、と言うと使い方が分からないと言う。見た事ないか。

「ぐるぐる巻いた所の上の板を踏んでジャンプするの。」

と行った途端にツタを足がかりにひょいと1番上のバネに飛び乗った。
びよーーーーん!と跳んでバランスを崩してるけど空中で回転して立て直し、切り掛かるも紙一重で躱された。それを見ていた人達が真似してどんどん飛び跳ねる。かなりの高さまで跳んでるけど怖くないのかな?

軽くイタズラ程度に砂糖菓子を3つ風で飛ばして青龍の顔近くで爆発させた。

あ、ちょっとビクッてなった。

ジャーーーン!

向こうの方から澄んだ金属音が聞こえる。次の舞踊が始まったようだ。見に行こう!!

見に行けば今度は中国舞踊だ。
袖の長い綺麗な服を着てひらひらと踊る姿は優雅で美しい。でも…なんだかみんな背が高すぎると言うか…

綺麗なお兄さん達だった。

後ろから出て来て入れ替わった人達は大きな羽扇をひらひらと動かして舞う。

「ティスに似合いそう…」

そう呟くとティスがそっぽ向いて言った。

「私は音楽的な才能がないので無理です。」

もしかして音痴?リズム感がないのかな?そんなに悔しそうに言わなくてもいいのに…
頭上で踊りを真似ようと身体を動かすチビを睨むのは大人げないよ。チビはどう動いても可愛いんだから誰も敵わないよ!!

それからもあちこちで戦闘と舞踊が繰り返される。この賑わいで岩山に行くのは無理そうだと判断し、高台へ行く。きっとまだクルトゥス殿下が何かするはずだ。それに乗っかろう。
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