行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

32 準備開始

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ストゥはいつも朝から機嫌がいいけど、今日は一段と嬉しそう。ティスも寝ながら微笑んでるし、もう、居た堪れない。

朝のキスもおざなりに朝食作りに逃げる。いつの間にか起きたチビが肩に乗って来た。
雨が止んで爽やかに晴れ渡っている。雨期が終わったんだ!

「アラケルおはよう!」

恥ずかしさを忘れるように元気に挨拶。

「おう、おはよう。」

あれ?なんか… アラケルも色気が…
いやいやいや、野暮な事は言いっこなし!!

「何作る?俺、白ご飯が食べたい!」

「今、市場でこの辺でしか売れないんだって言って売ってたんだけど、知ってるか?」
「コル!?コルが売ってるの?」

「知ってたか。煮ても炒めても良い、って言ってたぞ。」

「そうそう、それに一緒に煮ると魔獣の肉がすごく柔らかくなるんだよ!」

「なら雷鹿らいが使うか?」

そう言ってアラケルが出したのは雷鹿らいがの肉だった。おかゆだー!おかゆにするぞー!!

朝食は
雷鹿らいが入り中華粥、コルの含め煮、ワニの照り焼き、ポテトサラダ、空芯菜の塩炒め。
雷鹿らいがはすっかり溶けて完全に出汁になっていた。うまー!

食べ終わったら一休みしてみんなで種まきー!

ティスはチビが起こしてくれたけどマグさんが起きられないらしいので迎えに行った。予想通りだったので治癒して連れてきた。

「魔術が使えるようになったんですね。」

マグさんに言われて以前会った時はまだ魔術が使えなかった事を思い出した。

「火と地の光の属性で森の王と水辺の王の加護があります。」

なんでアラケルまで口開けて驚いてるの?

「治癒もできるし加護2つは知ってたけど、火と地の属性もあったなんて…闇があれば全属性か。」

基本を教えてなかったっけ。

「それにしてもアラケル、もう少し手加減してあげられないの?」

マグさんがかなり辛そうだった。治癒できるならまだしも、ポーションでは疲労回復しないんだから無理させちゃ可哀想!

「昨日のはストゥが悪い!」

「タケル、心配しなくてもマグがせがんだはずだから大丈夫だ。」
「たから見透かすなっての!」

ストゥとアラケルのやり取りにマグさんが何も言えずに突っ伏してしまった。気持ちは分かる!

「なんであんな風になっちゃうんだろう…」
「…人は期待される役割を演じてしまう性質があります。それは好意が大きいほど顕著になる傾向が…」

俺のぼやきにマグさんが答える。
2人で顔を見合わせて、真っ赤になってテーブルに突っ伏した。朝食はもうできてるから、配膳は3人に任せよう。

「あれ?チビは?」

ティスを迎えに行って俺は入れ違いになったけど、どこに行ったんだろう?

「ワイバーンならここです。」

チビはマグさんの背中に張り付いていた。テントを出た時からくっついていたらしい。

「マグさんは…水属性ですか?」

「はい。植物を育てるのに重宝してます。」

それで植物を研究するようになったのか。朝食が並ぶと1度わざわざ頭に抱きついてから俺の肩に移動した。

「チビ、マグさん好きなんだ?」
「きゅきゅー!」

嬉しそうにしている。好きな人に囲まれるの幸せだよね。チビ用に色々少しずつ並べると中華粥とワニの照り焼きとコルの含め煮を喜んで食べた。

ワニの照り焼きを喜んでいるのを見ていたらチビがワニを獲っている姿を想像してしまって笑ってしまった。



********************************************



先ずは町の高台。町の東だ。

そこはかなりの高さがあって、町のむこうの水墨画のような景色が見応え充分だ。観光名所になっている。観光名所に巨大蔦を勝手に生やす…

やっぱり罪悪感が…

他の人は誰1人罪悪感を感じていないようだ。チビは当たり前だけど何をしてるか分かっていないので、不思議そうに眺めている。

種を蒔いて固形の成長促進剤を埋め、水を撒く。

水の魔術で水やりをしたのがまずかった…。
お手伝いしたかったのかチビが豪雨を呼んだ。直径50cmのゲリラ豪雨。地面はえぐれ、種も成長促進剤もどこかへ行ってしまった。

「チビ…雨が強すぎると種が流れちゃうからね。優しい雨をちょっとだけ降らせてくれる?」

チビはうんうんと頷いて種が蒔かれるのを期待を込めて待つ。もう一度種を蒔き、成長促進剤を差し込む。チビ、出番だ!

「きゅ!」

さぁっと優しい雨が地面をしっとりと潤した。これまた直径50cmで綺麗な円を描いている。

「チビすごい!!えらい!上手にできたね!」

ぎゅっと抱きしめて撫でるときゅーきゅー嬉しそうに頬ずりして来る。

「器用なものですねぇ。」

マグさんの感心も心地良い。
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