行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

30 ジャックと豆の木計画

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西の街に着いた。

ずっと街の名前が気になっていたけど『西の』と言う町だそうだ。
翻訳しちゃってるのかな?

まずはギルドに馬を預けて宿を探す。残念ながら祭りの参加者や見物客で満員御礼。どこも空いてなかった。ギルドに戻って聞いてみると、街の外にキャンプ場があるそうなのでそこに寝泊まりする事にした。

快適なテントとマットのおかげでキャンプが全然苦にならない!


でも…チビが…チビがイタズラする!!


点在する他の人のテントの上に乗っては強い雨を降らせる。雨音に驚いて飛び出して来た人を見ては次に移動。中に人がいるテントが分かるようで百発百中だ。

「チビ!!」

尻尾に繋いだ魔力の糸を縮め、引き寄せると逆らって逃げようとする。糸を強化して力ずくで引き寄せると、俺たちにも局地的豪雨を降らせる。

今、躾けなければ!

チビを包むボールをイメージして結界を張る。豪雨はおさまり、結界の中に水が溜まって行く。初めは楽しそうにしていたチビも球の中が水で満たされると暴れだした。

「雨を降らせるのを止めないとそのままだよ。」

内心、溺れてしまわないかとヒヤヒヤしていたが5分経っても水は抜けず、チビは平気な顔で中から出ようと暴れている。

さすがに心配なので金属を網目状にしたボールを作って閉じ込め、結界を解いた。
そのまま浮かぶんじゃない!!

油断してたら飛んで行ってしまいそうだった。それをストゥが捕まえてシェイク!

うわっ!…大丈夫かな?

チビは中で目を回したようだ。

このやり取りを見に来た被害者に謝ると、ワイバーンが雨を降らせるのは当たり前だと、誰も怒らなかった。

感謝!

ここには冒険者が多いようだけど、みんな腕自慢で来ているからきっとみんなノープランだよね。誰か有効な作戦を考えてくれるリーダーは居ないかなぁ?




しばらくして目を覚ましたチビが大人しくなっているようなのでカゴから出すと、大人しくなったけど拗ねた。

テントに入って正座して前に座らせ、真剣な顔で言い聞かせる。

「ねぇ、チビは楽しく遊んだだけだよね。悪い事してやろうと思った訳じゃないんでしょ?でもやられた方は困るんだよ。疲れて休んでいたのに驚かされて休めなかったらチビだっていやでしょ?遊びたかったら「遊んで」って誘って、「良いよ」って言ってくれた人と遊べば勝手に楽しんで怒られて嫌われるよりずっと楽しいよ。」

気まずそうに目を逸らしイライラと尻尾が揺れている。

それを見たストゥがチビにデコピンした。凄い勢いで弾き飛ばされ、転がって荷物に突っ込む。痛かったのか出て来たチビは涙目だ。泣いて甘えたいけど怒られてる自覚があるようで俺のところに来られず、困った顔で俺の顔色を伺う。

「どうだ、チビ。嫌われたら大好きなタケルに撫でてもらえないんだぞ。」

ガーーーーン!!

と衝撃を受けた様子でその場でぽろぽろ涙を零し始めた。小さな姿で肩を震わせて泣いている。

かわいすぎだろーー!!

「チビ、俺がダメだと言った事は止めてくれる?まだ何がダメか分からないもんね。教えるから覚えてね?」

おいでと手を伸ばすと、さらに涙を流しながら抱きついてきてきゅうきゅう泣いた。
よしよし。仲直りだね。

「ストゥ、ありがとう。」

「では、街に行きますか?」

俺がストゥにお礼を言うのを見計らってティスがそう言った。
情報収集も兼ねて酒場へ行く。

お酒の匂いがキツかったら情報収集はストゥに任せて帰ろう。



********************************************



そこはまだ雨が降っているのにビアガーデンみたいになっていた。いくつもの繋げたパラソルの屋根で覆われた席は、外なのでお酒の匂いがあまりしない。

まだ時間が早いからお客さんは少なく、好きな席が選べたので雨が吹き込まない席に座った。

お酒とジュースと料理を注文する。

鹿肉のステーキ、レタスみたいなキチシャのサラダ、鶏肉の串焼き…は大きな焼き鳥。山芋の素揚げ、レンコンの炒め物。残念ながらご飯がなかったのでピザ。

チビのために鱒の塩焼きを塩控えめでお願いした。鱒はチビの2倍以上のサイズだった…

初めは遠巻きにしていた他の人がチビに興味を示して近づいてきた。

「なぁ、こいつってワイバーンか?」

「はい、そうです。」

珍しいなぁ、と言いながら触ろうとしたらチビが避けた。

あれ?と言いながらもう一度触ろうとしたら今度は俺にしがみついた。

「もしかして地属性か火属性ですか?」

「お、おう。オレは地属性だ。」

「悪いがこいつは風か水じゃないと嫌がるんだ。時間をかければ懐かないとも限らんがな。」

その人は少しがっかりしてたけど、それを聞いて他の人が近づいて来た。

「風属性だ。触らせてくれ!」

今度の人には触らせている。やっぱり属性見知りだ。

それからも入れ代わり立ち代わり人がやって来た。仲良くなって祭りの対策を聞いて見たけど、だいたいノープランだった。

この国は!!

「祭りなんて騒げれば良いのがほとんどですよ。」

まぁそうだけどさ。

「あれ?久しぶり!
わっ!何それ!ワイバーン?何で!?」

「あ!アラケル!…と、マグさん!?」

「そっちこそどうしたんだ?知り合いだったのか?」

ストゥが聞くと、2人は顔を見合わせてから言った。

「付き合ってるんだ。」
「付き合ってます…。」

えぇっ!?いつから?

話を聞くと、例の蔦の研究情報を研究所に送ったり受け取ったりするのを、他の依頼のついでに請け負ったのが出会いだって。

「あ、前になし崩しでちゃんと告白してないとか言ってた人?」

ショコラを買ってくれた時だよね。

「そうそう、それ!おかげでちゃんと告白できたんだ。」

もじもじして、マグさん何だかキャラ変わってない?ちょっと可愛いよ。

一緒に飲みながら馴れ初めを聞いた。

アラケルが訪ねた時、学術的興味が抑えきれず媚薬効果付きの実を試しに食べて悶えて居たのでそのまま効果が切れる朝まで…

「もう、可愛くて可愛くて手放せなくなってさ。」
「マグはアラケルなんかで良かったのですか?」

ティス…なんか、って…

「僕みたいなつまらない男を可愛いなんて言ってくれる人は他にいませんし…」

「ふーん。仕方なくか。」
「!!…そんな事…」

ストゥが意地悪。

「仕方なくなんて…
ほっ、他の人なんて考えるのも嫌です!」

あ、泣いちゃった。

「良かったな、アラケル。」
「見透かすな。」

あれ?
アラケルも不安だったのかな?

「条件付けなんて要らないんです。
その人とだけ一緒に居たいのかどうか、それさえ聞ければ良いんです。」

ティスが俺の手を握って目を見ながら言った。

「あぁぁぁ、後で言う…」

リアルに顔から火が出そうだから!そんな顔で見つめないで…でも前に言わなかったっけ?

「そうだ!アラケル達も夏至祭に参加するんだよね?」

話を変えると、そのために来たと言うので考えがあるのか聞いてみた。

「マグの薬で蔦を巨大化させたら足場が出来て青龍に届くんじゃないかと思ってさ。」

初めてちゃんと考えてる人が居た!!
町の高台と西の岩山に蔦を植えるつもりだって。

「騒ぎにならない?」
「もともとお祭り騒ぎだろ!」

そうでした。むしろ盛り上がるかもね!
明日一緒にツタの種を蒔く約束をしてキャンプ場へ戻る。アラケル達も割と近い所にテントを張っていたので朝食の約束もした。

久しぶりに料理仲間と合流したので一緒に料理するのが楽しみだ!

チビはもう抱っこ紐の中で寝ている。

おやすみのキスをしたら2人ともお酒臭かった。ティスがタケルもお酒臭くなりなさい、って隠し持ってたお酒を口移しで飲まされた。

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