行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

24 西の街へ向けて

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丸一日ぐうたらして起きたらどうにか身体は落ち着いていた。

「おはよう。身体はどうだ?」

「おはよ。うん、もう大丈夫そう。」

本当に良かった。
あのままになったら家から出られなくなっちゃうからね。

今日は夏至祭に向けて出発できるかな?
期待しながら窓の外を見ると雨はまだ土砂降りだった。

「止むかなぁ?」
「止みはしないがもう少しすれば雨が弱まる。そのままだいたい2週間だ。」

子供の頃の梅雨がそんな感じだったな。湿った匂いと、しとしと降り続く弱い雨、梅雨寒。

この町は暖かくてじめっとしているけど。

チビが起きて部屋の中を跳ね回る。起きた途端にテンションMAX?
窓を叩いて開けて欲しがるのでそっと開けたら目をキラキラさせて飛び出して行ってしまった。

「チビ!」

つい大きな声を出すと呼んだ?と言う表情で戻って来る。

「あんまり遠くに行っちゃダメだよ。」

チビは頷いて機嫌良く出かけて行った。

「この雨じゃ人も魔獣もいないから心配すんな。」

頭をポンポンされ苦笑いで頷く。
でも目の届かないところに行くの、初めてなんだよ?

「どうしました?」

珍しく自主的に起きたティスが後ろから抱きしめて来た。振り向きながら朝の挨拶…と言うには少し濃厚に触れ合ってチビが遊びに行っちゃった事を告げた。

「ワイバーンは雨と風を糧としていますから、絶対、大丈夫です。」

だから私を構って下さい、って。

思わず笑ってきゅっと抱き合ったらオレも構ってくれと抱き上げられた。

じゃれ合ってたら朝食の時間になった。チビは戻って来てないから窓を開けたまま食堂へ行く。心配してくれていた宿の主人にお礼を言って席に着くと、朝食には付かないはずのデザートが付いて来た。

「誤解して悪かったな。」

良い人だ!
俺は素直に餌付けされた。

「分かってもらえれば構いません!」

でも食べきれない料理をストゥにあげて、デザートを分けてもらってたら怒られた。

「それしか食べないから小さいんだ!もっと食べろ!!」

そんな事言われてもお腹苦しいのヤダ。

「こんなに可愛いのにムリして大きくなる必要はありません!」

ティスが文句を言ってくれた…けど…
期待と違う。

「じゃ、一口だけ頑張れ。」

とストゥがムニエルをフォークに刺して差し出したのでぱくっと食べた。

「!!…ならもうデザートで良いですね。」

とはっとしてから嬉しそうに笑顔でフルーツゼリーを食べさせてくれた。

「ほら、イチャつけばおっさんも邪魔できないだろ?」

え?それ作戦だったの?
いつも通りで気づかなかったのが恥ずかしい…




部屋に戻ると扉の前が水浸し。水を出しっ放しにしたはずないし、どうしたんだろう?

「きゅぴーーーっ!きゅん!きゅぅ!キュウゥゥゥ………」

扉を開けるとチビが飛びついて来た。
大粒の涙をぼろぼろこぼしながら泣いている。部屋の中で大雨が降っている。

部屋に戻ったら誰も居なかったのがショックだったらしい。うわぁ、ごめん!!

いつ戻るか分からなかったから…
姿が変わったとは言え、まだまだ赤ちゃんだから寂しかったよね。心から反省してチビをぎゅっと抱きしめた。

昼頃に雨が弱まって出発するまでチビは俺から離れなかった。
抱っこ紐のサイズを調節したのでまたずっと抱っこしてようね。



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霧雨のような雨の中、ギルドへテネリ達を引き取りに行く。
研究者についての情報をくれたギルドの受け付けの人にもお礼と育ったチビの顔見せに行く。

感動してくれた。ふふふ…そうでしょう!更に可愛くなったでしょう!!
もふもふの可愛さも堪らないけど、興味を引かれるまま動き回って世界を楽しむ姿の可愛さったら!!

あれ?親バカ過ぎた?引かれた?

でも自制する気なんてないから!

それはともかく、出発だ。雨が弱いと言っても霧雨で遠くは見通せない。来た道を戻る訳でもないから様子もよく分からない。食料は余裕を持って。甘い物も非常食に持って行こう。

棒鱈、煮干し、干しえび、干し貝柱、昆布の佃煮、切り干し大根、干し椎茸、棒寒天、乾燥海藻、ドライフルーツ、乾燥穀類、乾燥豆。調味料は藻塩、醤油、味噌、砂糖を補充。米と小麦粉も買った。小麦粉は穀類か調味料か?あ、乾燥ミツバなんてあるんだ!!

何を作る気なのか、自分にツッこみたい。

…おいおい考えよう。

お昼の分だけなら生でも大丈夫だろうと、メバルを買う。氷も付けてくれた。土砂降りで漁に出られないからって漁師のおっちゃんが暇つぶしに釣ってきたメバルなんだって。売れなかったら晩のおかずだ、って笑ってた。
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