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行ってみたいな!あちこちへ
20 別れと旅立ち 後編
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「…チビ…俺のこと振り返りもしなかった…」
親元に返せた事を喜ばなきゃいけないのに、別れが辛くて朝からまたメソメソ。情けない…
ストゥに甘える。
「ぐぅ~~~…」
「く~~きゅるるる…」
夕飯食べずに寝たから2人の腹の虫が揃って自己主張した。
「ぶぷっ…」
「くくくっ…」
「くぅぅぅ…」
俺達が笑い出しそうになった時、ティスのお腹も鳴った。2人は何か食べても良かったのに俺を心配して夕飯食べずに我慢したんだって。
「サクリスがタケルの料理をトルトニスに食べさせたいと騒いでたぞ。」
美味しいと思うものを好きな人に食べさせたいというのは共感できる。
「ふふっ…朝食作るね。ティス起こしてく…」
「おはようございます。」
あ、起きた。珍しい。
「ティスおはよう。昨日はありがと。」
ずっとそばに居てくれた事が嬉しい。
「そばにいる事しかできなくて…」
「それが良いんだよ。何も言わず寄り添ってくれて心強いもん。」
今朝また泣きそうだったけど。
「生きているんだから2度と会えない訳じゃないし、俺の感情に影響されるとチビが泣き虫になりそうだからしっかりしなくちゃ!」
とにかく朝食を作ろう。作業をして気分転換して、「またね。」を言いに行こう。
えらいえらい、と頭を撫でられて両方の頬に2人からキスをもらった。
台所を借りて持ってきた食材で朝食を作る。あまり料理をしないのか研究所の台所は鍋もフライパンも1つずつしかない。でも包丁は4本もあって立派だ。細長いのは柳刃包丁?
トルトニスさんが魚料理が好きだそうで包丁だけはこだわっているらしい。かっこいい!
柳刃包丁があるなら和食を知っているだろうと、青菜のおひたし、ワカメの味噌汁、高野豆腐、玉子焼き、で、干物を焼いて。
「和食です!!」
と出したら喜ばれた。良かった!
「もう雨が降り出したから、早めに帰らないと大荒れになりますよ。」
あまり足止めを食うのも困るし、未練が募るからチビにしっかり挨拶して帰ろう。
お礼を言ってワイバーンの巣の方の扉を開ける。
「チビー!」
どの巣穴だったか分からないので大きな声で呼ぶ。少し待つと、真ん中辺りの巣穴の中から顔を出す2体のワイバーンの間から若草色の小さな生き物が飛び出して来た。
「きゅーーー!」
俺の腕の中に飛び込んで来たそれは、トカゲのようなドラゴンのような姿で翼はコウモリのように腕と翼膜が一体化している。
その翼と尻尾は確かにチビだけど、もふもふが!もふもふが無くなってる!!
「その姿は巣立ちの証です。」
驚いた顔をしたトルトニスさんが言った。
え?
ワイバーンはもふもふが赤ちゃん(幼体)、親の魔力のみで育つ。通常2~3週間で脱皮してずんぐりとした小さなトカゲ風の姿になり色々なものを食べるようになる。これが幼成体。ここから年に一度脱皮をして大きくなる。
興味を持った物なら何でも食べさせて良いそうだ。
追いかけて来たチビの両親が俺に頭を擦り付ける。そして大きく頷いてチビをペロリと舐めて巣へ帰って行った。
残ったチビは当たり前のように抱っこ紐に入ろうとしたが少し小さくて入らない。
「チビ、おかっ、えり…チビ…チビぃ~~~~!!」
俺は大切に抱きしめて言った。
良かったな、と言われ笑おうとしたけど、嬉し涙が止まらない。
「ある程度大きくなったら独り立ちしますよ。大丈夫ですか?」
後ろからトルトニスさんに言われたけど、それまでには俺が子離れするべきだろう。
「なんとかします。」
泣き笑いで答える。雨が強くなって来た。
これは雨期の雨だからチビが我慢しても関係ない。だから我慢させなくて済む。
「チビ、俺達の家に帰るよ。」
「きゅきゅーっ!!」
元気に返事をして俺の肩に移動する。
おお!鷹匠みたい!
ストゥとティスに撫でられてさらに嬉しそうなチビを連れて帰り仕度をする。
サクリスとトルトニスさんが見送ってくれた。
護符を手に入れてもっと近くでワイバーンの観察ができるように頑張ります!だって。俺もそのうち森の王に加護のお礼を言いに行くから、会えたらヒゲもらえないかお願いしてみよう。
笛で呼び出す事は可能だけど、たくさん助けられているのに呼びつけるなんて失礼な事したくないし。
つづら折りの崖の階段は強い雨で怖い。でも風の結界が雨も弾いてくれて助かった。
夜までには街に戻れるかな。
----------------------------------------------------------------------------------------
サブタイトル詐欺再び。
「(ひとときの)別れと(新たな仲間との)旅立ち」でした。
悲しい別れを引っ張りたくなかったのでこうなりました。チビにとってはちょっとした里帰り?
親元に返せた事を喜ばなきゃいけないのに、別れが辛くて朝からまたメソメソ。情けない…
ストゥに甘える。
「ぐぅ~~~…」
「く~~きゅるるる…」
夕飯食べずに寝たから2人の腹の虫が揃って自己主張した。
「ぶぷっ…」
「くくくっ…」
「くぅぅぅ…」
俺達が笑い出しそうになった時、ティスのお腹も鳴った。2人は何か食べても良かったのに俺を心配して夕飯食べずに我慢したんだって。
「サクリスがタケルの料理をトルトニスに食べさせたいと騒いでたぞ。」
美味しいと思うものを好きな人に食べさせたいというのは共感できる。
「ふふっ…朝食作るね。ティス起こしてく…」
「おはようございます。」
あ、起きた。珍しい。
「ティスおはよう。昨日はありがと。」
ずっとそばに居てくれた事が嬉しい。
「そばにいる事しかできなくて…」
「それが良いんだよ。何も言わず寄り添ってくれて心強いもん。」
今朝また泣きそうだったけど。
「生きているんだから2度と会えない訳じゃないし、俺の感情に影響されるとチビが泣き虫になりそうだからしっかりしなくちゃ!」
とにかく朝食を作ろう。作業をして気分転換して、「またね。」を言いに行こう。
えらいえらい、と頭を撫でられて両方の頬に2人からキスをもらった。
台所を借りて持ってきた食材で朝食を作る。あまり料理をしないのか研究所の台所は鍋もフライパンも1つずつしかない。でも包丁は4本もあって立派だ。細長いのは柳刃包丁?
トルトニスさんが魚料理が好きだそうで包丁だけはこだわっているらしい。かっこいい!
柳刃包丁があるなら和食を知っているだろうと、青菜のおひたし、ワカメの味噌汁、高野豆腐、玉子焼き、で、干物を焼いて。
「和食です!!」
と出したら喜ばれた。良かった!
「もう雨が降り出したから、早めに帰らないと大荒れになりますよ。」
あまり足止めを食うのも困るし、未練が募るからチビにしっかり挨拶して帰ろう。
お礼を言ってワイバーンの巣の方の扉を開ける。
「チビー!」
どの巣穴だったか分からないので大きな声で呼ぶ。少し待つと、真ん中辺りの巣穴の中から顔を出す2体のワイバーンの間から若草色の小さな生き物が飛び出して来た。
「きゅーーー!」
俺の腕の中に飛び込んで来たそれは、トカゲのようなドラゴンのような姿で翼はコウモリのように腕と翼膜が一体化している。
その翼と尻尾は確かにチビだけど、もふもふが!もふもふが無くなってる!!
「その姿は巣立ちの証です。」
驚いた顔をしたトルトニスさんが言った。
え?
ワイバーンはもふもふが赤ちゃん(幼体)、親の魔力のみで育つ。通常2~3週間で脱皮してずんぐりとした小さなトカゲ風の姿になり色々なものを食べるようになる。これが幼成体。ここから年に一度脱皮をして大きくなる。
興味を持った物なら何でも食べさせて良いそうだ。
追いかけて来たチビの両親が俺に頭を擦り付ける。そして大きく頷いてチビをペロリと舐めて巣へ帰って行った。
残ったチビは当たり前のように抱っこ紐に入ろうとしたが少し小さくて入らない。
「チビ、おかっ、えり…チビ…チビぃ~~~~!!」
俺は大切に抱きしめて言った。
良かったな、と言われ笑おうとしたけど、嬉し涙が止まらない。
「ある程度大きくなったら独り立ちしますよ。大丈夫ですか?」
後ろからトルトニスさんに言われたけど、それまでには俺が子離れするべきだろう。
「なんとかします。」
泣き笑いで答える。雨が強くなって来た。
これは雨期の雨だからチビが我慢しても関係ない。だから我慢させなくて済む。
「チビ、俺達の家に帰るよ。」
「きゅきゅーっ!!」
元気に返事をして俺の肩に移動する。
おお!鷹匠みたい!
ストゥとティスに撫でられてさらに嬉しそうなチビを連れて帰り仕度をする。
サクリスとトルトニスさんが見送ってくれた。
護符を手に入れてもっと近くでワイバーンの観察ができるように頑張ります!だって。俺もそのうち森の王に加護のお礼を言いに行くから、会えたらヒゲもらえないかお願いしてみよう。
笛で呼び出す事は可能だけど、たくさん助けられているのに呼びつけるなんて失礼な事したくないし。
つづら折りの崖の階段は強い雨で怖い。でも風の結界が雨も弾いてくれて助かった。
夜までには街に戻れるかな。
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サブタイトル詐欺再び。
「(ひとときの)別れと(新たな仲間との)旅立ち」でした。
悲しい別れを引っ張りたくなかったのでこうなりました。チビにとってはちょっとした里帰り?
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「連れて行きたい日本へ」で
ストゥとタケルがラブホに行った時のいちゃいちゃが読めます。
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