60 / 203
行ってみたいな!あちこちへ
20 別れと旅立ち 前編
しおりを挟む
応接間に移動して改めて自己紹介をする。
「オレはストゥディウム、上級冒険者だ。こっちはミーティス、同じく上級冒険者。そしてタケルは中級冒険者で、俺達の伴侶だ。」
恋人飛び越えたーーーー!
え?伴侶なんて紹介して良いの?いろいろすっ飛ばしてるけど…嬉しい……
「あれ?前はミーティスくんの恋人って聞いたけど。結婚したんだ!良かったね。」
サクリス…軽い。
「じゃぁ私の紹介だね。私はサクリス、人に有益な植物の研究をしている。タケル君にプロポーズして断られて飛ばされた所にトニトルスがいてね、柄の悪いのにナンパされてたから助けようと追いかけたらね。この優しい顔が鬼の形相になってナンパ男達を薙ぎ払うんだよ!もうかっこいいやら美しいやら、惚れるなって方が無理だよ!それでその場でプロポーズした。」
「軽ぅ。」
「惚れっぽい自覚はあるよ!でも想いを返してもらえたら決して裏切らないのが私だ。」
ナンパ男を撃退した途端に新たなナンパ男にプロポーズされてトルトニスさんは嫌じゃなかったんだろうか?
「もちろん僕も初めは殴り飛ばしましたよ。でもめげないし豹変した僕を美しいなんて言う人、初めてだったから可笑しくて興味を持ってしまったんです。」
豹変した所、見たいような見たくないような…
「それで、そのワイバーンの幼体はどうしたのですか?」
そうだった!
今回の目的のチビの両親探しを出会いから説明した。
「確かにその時、ワイバーン同士のケンカで竜巻が発生して卵がいくつか巣から放り出されました。その子の親も探していましたがそんなに遠くにまでは気配が辿れなかったのでしょう。今はその子の兄弟の卵を世話しているはずです。」
「良かった!じゃあチビは両親に会えるんですね。」
良かったな、と抱っこ紐の中のチビを撫でる。
「できるなら僕にも触らせて貰えませんか?」
トルトニスさんがそう言うのでチビを取り出したけど、尻込みしている。もしかして…
「あの、トルトニスさんの魔力属性は火か土ですか?」
「そう!火属性だよ。髪にぴったりだろう?」
サクリスが自慢げに言った。
「チビは風か水の属性じゃないとすぐには近づかないんです。」
「そんな!!」
あ、orzになってる。そうだよな、好きで研究してる対象が自分を避けるなんてがっかりだよね。
加護かけられるかな?
『森の王、水辺の王、トルトニスに加護を。』
手を組んで小さく呟いて祈ると、キラキラした水の粒が螺旋を描いてトルトニスさんの身体を包み込んだ。
「きゅい?」
加護の気配にさっそく反応したチビ。興味を示したチビにトルトニスさんが恐る恐る手を差し出すと、チビが飛び乗った。
「~~~~~!!
感動です!ワイバーンの、それもこんな小さな幼体に触れるなんて…」
気持ちが伝わったのかチビがドヤっている。
「今、何をして下さったのですか?」
森の王と水辺の王に加護を祈った事を伝える。間接的な加護だから永続性は無いような気がする。護符を手に入れるのが良いんじゃないかな?
「森の王の護符に必要なのはヒゲだよね。じゃあ水辺の王は?」
甲羅は取れそうもない。
「甲羅にしっぽみたいなのが生えてただろ。あれだ。」
あったっけ?覚えてないけど亀だし、おめでたい絵の亀みたいにふさふさだったのかな?今度、水辺の王に会ったら見てみる!しっぽも貰えるか聞いてみよう。
「それで、チビの両親にはすぐ会えますか?」
「雨期に入ってしまったら3日は土砂降りになり危険です。その前に会いましょう!」
卵が孵るのと雨期に入るのは通常、同期しているそうだ。だから他の卵はまだ孵っていないらしい。チビは飛ばされて落ちた衝撃で孵ったのかな?それなら無事に生まれてよかった!!
入って来たのとは別の扉を出ると岩棚になっていて、入り江をまたいだ向こう側の崖にはいくつもの孔があいている。そしてたくさんのワイバーンの成体が飛び回っていた。
「タケルさん、チビを連れてこちらへ。」
示された場所はそれほど際どい場所ではないのに、ごつごつした岩に砕ける波しぶきが見え、飛び交うワイバーンの迫力で脚が竦んだ。
ストゥとティスが支えてくれる。
チビを両手に乗せて両親に見つけてもらい易いように持ち上げる。
「きゅいーーー!!」
チビが大きく鳴くと、1体のワイバーンがくるりと弧を描いて近づいて来た。目の前に降り立ち、顔を寄せてチビの顔を確認するように覗き込む。
「きゅいっ!きゅきゅ…」
「くー…くるるる!」
何事か会話をして成体のワイバーンが巣穴の方へ向かって声を発した。
真ん中あたりの巣穴から出て来たワイバーンがこちらへ飛んで来た。
「るるるる?るーるー、くるー!!」
チビの顔を覗き込んで我が子だ!と確信したように頷き、頬ずりをする。
大きな成体に頬ずりされて俺の手から転がり落ちそうになって飛び立った。
両親であろうワイバーンの周りを嬉しそうに飛び回る。
チビ良かったね。そう思ったら涙が溢れた。
死んだ俺の両親を思ってしまって余計に涙が止まらない。
チビは両親に促され、連れ立って巣穴へ行ってしまった。
俺はもう我慢できなくてストゥとティスにしがみ付いて泣いた。
雨が降り出し、研究所に戻っても泣き続ける俺を2人はずっと優しく撫でてくれた。
チビの両親は生きている。だからチビは両親と暮らすべきだ。
そう思うのに寂しくて悲しくて堪らない。
俺は結局、そのまま泣き疲れて寝てしまった。
「オレはストゥディウム、上級冒険者だ。こっちはミーティス、同じく上級冒険者。そしてタケルは中級冒険者で、俺達の伴侶だ。」
恋人飛び越えたーーーー!
え?伴侶なんて紹介して良いの?いろいろすっ飛ばしてるけど…嬉しい……
「あれ?前はミーティスくんの恋人って聞いたけど。結婚したんだ!良かったね。」
サクリス…軽い。
「じゃぁ私の紹介だね。私はサクリス、人に有益な植物の研究をしている。タケル君にプロポーズして断られて飛ばされた所にトニトルスがいてね、柄の悪いのにナンパされてたから助けようと追いかけたらね。この優しい顔が鬼の形相になってナンパ男達を薙ぎ払うんだよ!もうかっこいいやら美しいやら、惚れるなって方が無理だよ!それでその場でプロポーズした。」
「軽ぅ。」
「惚れっぽい自覚はあるよ!でも想いを返してもらえたら決して裏切らないのが私だ。」
ナンパ男を撃退した途端に新たなナンパ男にプロポーズされてトルトニスさんは嫌じゃなかったんだろうか?
「もちろん僕も初めは殴り飛ばしましたよ。でもめげないし豹変した僕を美しいなんて言う人、初めてだったから可笑しくて興味を持ってしまったんです。」
豹変した所、見たいような見たくないような…
「それで、そのワイバーンの幼体はどうしたのですか?」
そうだった!
今回の目的のチビの両親探しを出会いから説明した。
「確かにその時、ワイバーン同士のケンカで竜巻が発生して卵がいくつか巣から放り出されました。その子の親も探していましたがそんなに遠くにまでは気配が辿れなかったのでしょう。今はその子の兄弟の卵を世話しているはずです。」
「良かった!じゃあチビは両親に会えるんですね。」
良かったな、と抱っこ紐の中のチビを撫でる。
「できるなら僕にも触らせて貰えませんか?」
トルトニスさんがそう言うのでチビを取り出したけど、尻込みしている。もしかして…
「あの、トルトニスさんの魔力属性は火か土ですか?」
「そう!火属性だよ。髪にぴったりだろう?」
サクリスが自慢げに言った。
「チビは風か水の属性じゃないとすぐには近づかないんです。」
「そんな!!」
あ、orzになってる。そうだよな、好きで研究してる対象が自分を避けるなんてがっかりだよね。
加護かけられるかな?
『森の王、水辺の王、トルトニスに加護を。』
手を組んで小さく呟いて祈ると、キラキラした水の粒が螺旋を描いてトルトニスさんの身体を包み込んだ。
「きゅい?」
加護の気配にさっそく反応したチビ。興味を示したチビにトルトニスさんが恐る恐る手を差し出すと、チビが飛び乗った。
「~~~~~!!
感動です!ワイバーンの、それもこんな小さな幼体に触れるなんて…」
気持ちが伝わったのかチビがドヤっている。
「今、何をして下さったのですか?」
森の王と水辺の王に加護を祈った事を伝える。間接的な加護だから永続性は無いような気がする。護符を手に入れるのが良いんじゃないかな?
「森の王の護符に必要なのはヒゲだよね。じゃあ水辺の王は?」
甲羅は取れそうもない。
「甲羅にしっぽみたいなのが生えてただろ。あれだ。」
あったっけ?覚えてないけど亀だし、おめでたい絵の亀みたいにふさふさだったのかな?今度、水辺の王に会ったら見てみる!しっぽも貰えるか聞いてみよう。
「それで、チビの両親にはすぐ会えますか?」
「雨期に入ってしまったら3日は土砂降りになり危険です。その前に会いましょう!」
卵が孵るのと雨期に入るのは通常、同期しているそうだ。だから他の卵はまだ孵っていないらしい。チビは飛ばされて落ちた衝撃で孵ったのかな?それなら無事に生まれてよかった!!
入って来たのとは別の扉を出ると岩棚になっていて、入り江をまたいだ向こう側の崖にはいくつもの孔があいている。そしてたくさんのワイバーンの成体が飛び回っていた。
「タケルさん、チビを連れてこちらへ。」
示された場所はそれほど際どい場所ではないのに、ごつごつした岩に砕ける波しぶきが見え、飛び交うワイバーンの迫力で脚が竦んだ。
ストゥとティスが支えてくれる。
チビを両手に乗せて両親に見つけてもらい易いように持ち上げる。
「きゅいーーー!!」
チビが大きく鳴くと、1体のワイバーンがくるりと弧を描いて近づいて来た。目の前に降り立ち、顔を寄せてチビの顔を確認するように覗き込む。
「きゅいっ!きゅきゅ…」
「くー…くるるる!」
何事か会話をして成体のワイバーンが巣穴の方へ向かって声を発した。
真ん中あたりの巣穴から出て来たワイバーンがこちらへ飛んで来た。
「るるるる?るーるー、くるー!!」
チビの顔を覗き込んで我が子だ!と確信したように頷き、頬ずりをする。
大きな成体に頬ずりされて俺の手から転がり落ちそうになって飛び立った。
両親であろうワイバーンの周りを嬉しそうに飛び回る。
チビ良かったね。そう思ったら涙が溢れた。
死んだ俺の両親を思ってしまって余計に涙が止まらない。
チビは両親に促され、連れ立って巣穴へ行ってしまった。
俺はもう我慢できなくてストゥとティスにしがみ付いて泣いた。
雨が降り出し、研究所に戻っても泣き続ける俺を2人はずっと優しく撫でてくれた。
チビの両親は生きている。だからチビは両親と暮らすべきだ。
そう思うのに寂しくて悲しくて堪らない。
俺は結局、そのまま泣き疲れて寝てしまった。
0
「連れて行きたい日本へ」で
ストゥとタケルがラブホに行った時のいちゃいちゃが読めます。
→拍手する
お気に入りに追加
1,442
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる