行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

4 おしおき

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目を覚ますとテントの中で、ティスが俺と並んで横になって俺の頭を撫でていた。幸せできゅっと抱きついちゃった。あれ?ストゥは?

「酒臭かったから外にいるんじゃないですか?」

テントを出てみるとアルクスさんが火の側で寝ていて、ストゥは座って下を向いていて寝てるのかどうか分からない。昼寝にしては長く寝てしまったけど、まだ夕方だ。夕飯の支度をしよう。

「ストゥ、テントで寝たら?」

あれ?髪が濡れてる…

「ストゥ?」

「……タケル、…オレもう臭くないか?」

「? 臭くないよ。あ!俺何か言った?」

「酒臭いから嫌、って言ってた。」

「ご、ごめん…さっきのお酒、匂いがきつかったから…もう大丈夫だからテントで休んで!」

座り直すストゥに手首を掴まれ、抱き寄せられて横抱きにされる。

「本当に臭くないか?」

不安そうなストゥの胸に顔を埋めて大きく息を吸い込む。いつものストゥの匂い。

「いつものストゥの匂いだよ。」

そのまま少しの時間抱き合って体温を交換した。髪が濡れてるのは水浴びして来たからだって。風邪引いたらどうすんだよ。

ティスがテントから出て来て俺を立たせる。ファケレさんが戻って来た。

「お!タケル目が覚めたのか。酔いも醒めたか?」

「…え? 俺また何かやらかしました?」

「いや全然!ただ呂律が回らなくなって足元覚束なくなって可愛かっただけだ。」

安心…なのかな?まぁいいや。

「コルを採って来たんですか?」

「あー、そうそう。コルとキトな。他の山菜は市場でも売ってるけどこの2つはないんだよ。」

そうなんだ。
あ、むかごと山芋とキクラゲを見てもらわなくちゃ。

「さっき見つけたんですけど、これ食べられますか?」

「お!山芋か。大丈夫、食べられるよ。むかごとキクラゲも大丈夫だ。他のキノコは自信ないけどキクラゲだけは手触りで分かるから大丈夫だ。」

手触り?
なんとこっちのキクラゲは毒があると見た目は同じなのに表面が硬くて採る時にパリンと割れる事があるので分かるらしい。ただ毒性は弱くて少しかぶれる程度。ならこれは大丈夫だ。

「あー、卵があれば良かったなぁ。」

討伐の食材としては考えもしなかったし、アルクスさん達が持って来てた分はスープに使ってしまった。キクラゲは卵と炒めたのが大好き、と話してたら目を覚ましたアルクスさんが任せろ!って言う。けどもう暗いよ?

「地面に穴を掘って巣穴にするやつなら、多分大丈夫だ。来る時に近くで見かけたし!」

心配だけど考え出したら食べたくてしょうがないから甘えちゃおう。

「無理はしないで下さいね。」

そう言って送り出した。王都の市場で売ってる卵は普通より少し大きいくらいだけど、とって来る卵は大きいんだろうか?

「今日は何を作るんだ?」

「うん。ヒグマモグラの肉を柔らかくする方法が分かったから1つは唐揚げでしょ。」

「ヒグマモグラ?」

「この魔獣、ヒグマくらいあるから勝手にそう呼んでた。」

ネーミングセンスへのツッコミは受け付けておりません。

「……ヒグマはもっとでかいな。あれじゃ子熊だ。」

じゃあ子熊モグラ?あのサイズで?こっちの動物はみんな大きいんだなぁ。

「とにかく唐揚げが食べたい。」

「そうだな、オレも食べたいな。あと初めに作ってた肉団子も頼む。」

ストゥが笑いながら手伝いを申し出てくれた。さっき採ってきたコルを切って鍋に入れ、そこに唐揚げサイズに切ってもらった魔獣の肉を入れて火にかける。

ミンチにした魔獣の肉にキトと塩、隠し味に味噌を入れて練って寝かせる。
山芋は擂って小麦粉を混ぜて乾燥ネギも練り込んで焼く。お好み焼きのようなクレープのような???

ご飯も炊いておく。

下茹でしている鍋を見ると、沸騰しているけどまだ肉は堅い。
…と、突然ぷくーっと膨らんで鍋から溢れそうになる。驚いて火を弱め、串で刺してみると柔らかくなっていた。この一瞬で!?

湯から取り出した肉を冷ますとだいたい元の大きさになった。少しだけ大きくなっているかな?
合わせ調味料に浸けて揉む。こっちはティスが手伝ってくれた。
後は山菜と乾燥トマトのスープ。

アルクスさんが遅い…

かなり暗くなって来て心配になる。風魔術で呼びかけるべきか相談し始めたところでようやく戻って来た。

「悪い!遅くなったな。ウズメラの雄雌の親鳥と卵8個だ。」

そう言いながら得意げに見せる卵は…10cm 近くある。鶏の卵より一回り大きくて模様はウズラ。
横穴を掘って巣作りして産んだ卵を隠すために穴を塞ぐことから「うずめる」が訛って「ウズメラ」になったとの説が有力だそうだ。親鳥の蹴爪が鋭くて少々苦戦したらしい。弓は地面すれすれにいる鳥には有効ではないのでスリング、いわゆるパチンコを使ったそうだ。

「ありがとうございます!!その鳥も唐揚げにして良いですか?」

「唐揚げってのが何だか分からねぇが捌いてやるよ!」

とご機嫌のアルクスさんに雄か雌か、どちらか柔らかい方を一口大に切ってもらって、もう1羽はぶつ切りにしてもらって朝まで煮込んで薄切りにしてお弁当のサンドイッチにしよう。

肉団子と唐揚げ2種とキクラゲと卵の炒め物、スープ、ご飯。山芋のクレープ生地(?)に具材を乗せて食べても良いのでキチシャの千切りも添えた。ラップサンド?

夕飯を食べ始めてから、ストゥがお酒を断っている。

「ストゥ、気にしてるの?」
「まぁな。けどタケルなしじゃいられないが酒は飲まずにいられない程じゃないしな。」

申し訳なく思いながら聞いたらそんな返しをされた。

「さっきのお酒みたいに強いとダメだけど、大丈夫なお酒もあるからね?」
「じゃぁ、いろいろ試さないとな。」

そう言えば酒場はまだ行ってなかった。今度連れて行ってもらおう。

「タケル!この唐揚げってのもめちゃくちゃ旨いな!!このキクラゲと卵の炒め物も!」

アルクスさんが上機嫌で言う。

「この酒にもすごく合いそうなのに飲んだらタケルに嫌われるのか…」

とか言ってる。いや、嫌う訳じゃないよ?て言うかもしかして褒めて欲しがってる?

「お口に合って良かったです。卵も鳥もアルクスさんのおかげです。ありがとうございます!」

そう言ってにっこり笑ったらでれっとして

「頑張ったからな?少しで良いから、その…ぎゅっと…」
「お前は失礼な事言ったからダメだ!」

お礼のハグをして欲しいのかな?失礼な事って何だっけ?

首を傾げていたらティスが客人は世界の宝だからみんなに触らせろって言ったんですよ、と教えてくれた。そう言えばそれ聞いたな。

「あれは失言だった!! 本っ気で反省してる。だから強制じゃなくて自由意志で褒めてもらえるように努力したんだ。だから頼む~。」

うっ、情けない中年って…なんだか和む。でも恥ずかしいしなぁ…

「オレ達が嫉妬するからダメだ。」

ストゥが言ってティスが頷いている。ちょっと嬉しい。

「自由意志だろ!?タケルに決めさせろよ!」

注目が集まってしまった。

「そうですね、俺の食い意地につき合ってもらった訳だしハグぐらいなら良いと思うけど…ストゥとティスが嫌がる事はしたくない、かな。」

見るからにがっくりとしてしまったアルクスさんに心が痛む。でも俺にとって1番大事にしたいのはストゥとティスで… なんて考えていたら

「あ!ポーション飲んでないのか!?」

タートリクスさんが突然大きな声を出した。え?ケガしてるの?

「大した傷じゃないから、いいかと…」
「ウズメラの蹴爪は土掘ってる時に毒性の植物を引っ掛けてる事があるから油断してると危ないだろうが。」

ポーションを取りに行こうとするファケレさんを止めて、治癒をする。見ると腕に20cmほどの引っかき傷があった。

「ちゃんと言って下さいよ!」

浄化と解毒と治癒。さくっと終わらせて睨むとでれっとして言い訳をする。

「かっこよく褒められたかったから失敗はなかった事にしようと思って…」
「ならポーション飲んどけよ!」

タートリクスさんに怒られている。上級冒険者でリーダーだよね?みんなから怒られてない?

「タケル、アホ中年にはその可愛い睨み顔でじゅうぶんなご褒美のようですよ。」

可愛い睨み顔って何?

「あぁ~!確かに上目遣いで睨まれるとか、たまらん!」

もう、もったいぶる方に問題があるような気がして来た。呆れてため息がでちゃうよ。

「ストゥ、ティス、ごめん。後でちゃんと怒っていいから。」

そう言ってからアルクスさんの頭を抱きしめた。
…ら、足払い掛けられて膝に横向きに座らされて首にしがみ付く形になった。

「ぅおぉぉぉ~!!細い~~~! 子供でももうちょい骨太だよな。 こんな華奢な身体でよくストゥに抱き潰されないな。」

驚いて固まっている俺をティスが取り上げ、ストゥのげんこつが飛ぶ。
軽々とげんこつを受け止めてにやりと笑うおっさん。やばい…ときめいてしまった。

「じゃぁ、俺達はタケルにたっぷりとお仕置きしなきゃならんからテントに戻るな。」

「おう!そいつらに潰されそうになったらおっちゃんの所へ来いよ!やさし~く可愛がってやるからな。」
「要りません!」

ティスにしがみ付いて叫ぶ。
テントに入って入り口をしっかり閉めて。

「はぁ… あのおっさんに掛かったら俺達なんか青臭くて良いおもちゃだな。」

ストゥが青二才扱いされてるのなんて珍しいけどまだ20代だもんね。

「それにしてもタケル。さっきおっさんに心を動かしてたでしょう。」

うぅ…ごめんなさい。

「やっぱり分かっちゃった?だってギャップが、その…どきどきしちゃって…」

「お仕置きです。」

そう言ってまた触れてもらえないままキスでイかされて、次はオレの番だとストゥにすぐに入れられてキツイくて苦しいのに気持ち良くて、後ろだけでイっちゃって。その後さらにティスに騎乗位で突き上げられて、後背位でストゥに入れられながらティスのと一緒に扱かれて意識が飛んで、朦朧としながら治癒して今度は素股させられて咥えて奉仕してたのはどっちだったか覚えていない…
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