行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな!あちこちへ

2 討伐?採集?調理?

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「おれ、ティスとタケルの2人がストゥの恋人だと思ってたんだけど、違ったの
か?」

アルクスさんが言った。俺も俺もとタートリクスさんもファケレさんも言う。パティエンスさんは無言で頷いている。ストゥがオレとティスがタケルの恋人だよ、と言ったら驚かれてた。
ティスはかっこいいけど綺麗で色っぽいからなるほど、そう見えるかも知れない。

ティスは俺にテントから追い出されて少し離れた所で落ち込んでいる。

俺がテントから出たらストゥが「悪かった、心配のあまり怪我の確認をせずにはいられなかった。」って。まぁ、俺もストゥとティスがケガした時はパニックだったもんなぁ。
ストゥに頷いてからティスの側に行く。

「ティス、心配かけてごめん。もう大丈夫だよ。」

側に行ってそう言うと無言で抱きしめられた。震えている。

「…聖獣の加護がなかったら…即死だったはずです。」

確かにあの服のダメージから察するに相当深い傷だったはずだ。加護の重ね掛け効果だろうか?
心配かけて申し訳なくて、抱き返してゆっくり頭を撫でているとだんだん落ち着いて来たようだ。

「これからどうするか。タケル、岩の硬さは調べられるか?」

足場しか固めてなかったけど、狩り場にしている部分の洞窟全体を強化してしまえば今回のような事にはならないだろう。

「調べられるし、強化もできると思う。ついて来てもらえる?」

当たり前だ、と全員で行く。
上部にぽっかりと空いた穴を見るが暗くて肉眼では何も見えない。壁に手を当てて魔力を流して探るとかなり大きな穴だった。埋めてしまうには無理のある大きさで、とにかく中まで行って調査する。ランタンに灯をともした。

壁面に沿って階段を作って固定、俺が岩にくぼみを付けるとタートリクスさんがヒグマモグラの獣脂を入れて簡易燭台を作る。光属性の魔術でもっと明るくできたら良いんだけど、イメージができなかったので物理的な灯りをともした。

それでも目が慣れて来ると周りが見えて来た。ひんやりとした水分を含んだ空気に満たされている。奥からは小さな水音。足下を強化しながら緩やかに上り下りを繰り返す洞窟を進む。闘っていた洞窟とは趣がまるで違う滑らかな岩肌になって来た。

そして突然展ける空間は見事なまでの鍾乳洞。秋芳洞の百枚皿にそっくりだ。

だがここには生き物が通った気配がまるでない。途中に横道があったのだろうか。来た道を戻ると途中に向こう側から見ただけでは気づきにくい横道があった。奥は埋まっている。隠すだけの知能があるのかも知れない。

幸い鍾乳洞の方に気配はないので手前の壁や地面を強化し、穴を掘る事も崩落が起きる事もないようにする。横穴の所はたまたま柔らかい地層だったようだ。もちろん塞いで強化する。

狩り場に戻って周りを強化していたら奴らが襲って来た。その場で戦闘開始。

そう言えば鍾乳洞に行った気配がなかったのは何故だろう?と戦いながら考える。鍾乳石は石灰質で比較的柔らかいから掘ってもおかしくないはず。考えられるとしたら水が嫌い、とかだろうか?

試したい事がある、と皆に一時引いてもらって水辺の王の加護を発動する。

「彼の魔獣に水の恵を。」

そう声に出して祈ると、どこからともなく水滴が集まり大きな球体の水になってヒグマモグラ1体を包み込む。違ぁうぅぅぅぅぅ!!!!!窒息させたいんじゃなくて水が嫌いかどうかを試したいんだけど!!

「魔獣を水浸しに!」

再び声に出すと水球は魔獣を渡り歩くように移動してモグラ達を濡らして行く。びしょ濡れになった魔獣は期待通り慌てふためいて統制を欠き、あっという間に5体を倒す事ができた。もう2体くらいいたはずだが逃げたようだ。加護で自分にない属性の魔術が使えるの、ありがたいな。

弱点が分かって壁面の強化もじゅうぶん。明日の最終日はがんがん行こうぜ!と言う事でキャンプに戻った。

夕飯は焼き肉。肉が固いのでしゃぶしゃぶ用くらい薄くし。ニンニク風味の味噌を作って野生のネギのみじん切りを添えて。レタスっぽい葉っぱをサンチュのかわりにしても美味しい。山菜の味噌汁も作った。
そして!竹が生えていたのでご飯を炊く事ができた!!竹で炊くご飯てやって見たかったんだよね~。雑炊の出番があるかもと思ってお米持って来てて良かった!

でも他の肉が食べたい。鶏肉か兎肉は手に入らないかな?唐揚げにしたいな。



今日はさすがに疲れたので早めに休む。

討伐目標数は50体なので明日は4体倒せばOKだ。余分に倒せば報酬に上乗せされるけど無理する必要はない。

ティスを抱きしめ、ストゥに抱きしめられて眠る。




朝はファケレさんとタートリクスさんがストゥと剣の稽古をするのでパティエンスさんと野草採りに行く。なぜパーティーに1人は無口キャラがいるんだろう?パティエンスさんは常に穏やかな微笑の熊さんタイプ。

コルとキトとレタス風のキチシャを採りに行くと、パティエンスさんが上を見上げて立ち止まる。

「サルイチゴ…すごくうまい。」

見上げるとラズベリーそっくりの赤い実が大きな木になっているのが見えた。ただ、ストゥくらい背の高いパティエンスさんでも後少しで手が届かない。枝は細く、登る事もできそうにない。

「食べてみたいです!」

そう言ったら少し考えてから俺を肩車してくれた。届いた!!

「美味しい~~~~!!!」

ラズベリーより柔らかな香りで甘さと酸味のバランスがとっても良い。日本の野いちごの味だ。しかも普通のイチゴくらいのサイズ。…あ。

「森の王の加護にて春の恵みを」

そう祈ってみたら爽やかな風が熟したサルイチゴを枝から落して運んでくれた。採集カゴにたくさん!!

「すごい!肩車してもらわなくても良かったですね。」

そう言って笑いながら、俺の足を支えてくれてて両手が塞がってるパティエンスさんの口に一粒入れてあげた。なぜか肩車のままキャンプまで運ばれた。

俺達を見てアルクスさんがオレにも肩車させろって言った。何で?
アルクスさんがむりやり俺を肩車したところでストゥ達が戻って来て、俺の取り合いになった。だから何で!?

朝食作るんだから!とやっと降ろしてもらって蕗を刻んで茹でて灰汁抜き。
そして薄切り肉と一緒に炒めて生地で包んでお焼きにする。山菜と卵のスープと、キチシャのサラダ。
そしてデザートのサルイチゴ!!

卵はアルクスさん達が持って来ていたのを使わせてもらったけど遠出するのに卵って…考えもしなかった。

お焼きは俺は一つで足りちゃうけど、みんな3~4個食べる。でも!めちゃくちゃ美味しいサルイチゴだけは皆できっちり等分した。1人1パックくらいになったけどデザートは別腹だし。

お昼用にコルの煮物を仕込んで行く。燃料は七輪でも使う魔道具だから火事になる心配がないので1時間分の魔力を注いで鍋を放置して行く。ご飯もすぐ炊けるように竹にセット。

さぁ、がんがん行くぞー!!





水が弱点である事が分かったので、ティスは水弾ではなく、ただ濡らす方向へ作戦変更。濡れるとヒグマモグラ達は統制を欠き、慌てふためいて暴れるので各個撃破が楽になった。さくっと7体倒した所で魔獣が姿を現さなくなった。

追撃するべきかどうか、見張りを立てながら相談する。

「数を減らして大人しくさせるのが目的だし、無駄な殺戮は必要ないな。」

相談するほどの事ではなかったようで、一瞬で討伐終了が決まった。
後で調査隊も来るので洞窟の壁の強度を点検して、倒した魔獣を解体して帰る。
こんな洞窟の中で解体しても血生臭くならない浄化魔法ってすごい!

キャンプに戻って昼食の準備。
竹製の飯ごうを火にかけてコルの煮物の様子を見ると、一緒に煮込んだヒグマモグラの肉が膨らんでぷるぷるになってる!!どう言う事!?

試しに塊肉を水に浸けて茹でてみる。魔術で火を通しても何ともなかった。
3パターンで実験。ただ水に浸けて経過を見るものと、蕗と一緒に入れて水に浸けるものと、蕗と一緒に煮るもの。
水に浸けただけでは変化はなかった。沸騰しても変化なし。
…と、思ったら蕗を一緒に入れて水に浸けたものが蓋を押し上げている。水に浸けてから小一時間だ。蕗の何かが肉を柔らかくするのか。
一緒に煮たものは沸騰してから10分弱で変化が現れた。
堅くて噛み切れなかった肉が豚ロースの柔らかさになってめちゃくちゃジューシー。
取り出して切って生姜焼きにしたらめちゃうま!

この巨大蕗のコルがどんな肉も柔らかくするのか、ヒグマモグラ限定なのか分からないけど、持てるだけ持ち帰ろう、そうしよう!!あぁ、早く転移魔方陣すいすい書けるようになって家の貯蔵庫に送り込みたい!!

俺が興奮してたらファケレさんが寄って来た。

「料理全部任せちゃって悪いな。どうかしたのか?」

「これ!見て下さい!!魔獣の肉がこんなに柔らかくなったんですよ!」

そう言って生姜焼きを一切れ差し出す。一口で食べて驚いた顔を見せ、破顔した。

「すっげぇ!これは美味いわ。大量に作ろう!!」

手順を教えるとすぐにコルと一緒に下茹でを始めてくれて茹で上がりを待つ。生姜を下ろしてもらって醤油に漬け込む。醤油は町で売ってるけど使った事はなかったそうで、町に戻ったら買う!って気合い入れてた。

「タケルー、サルイチゴ採ってくれ!」

ティスが採ろうとしたけど普通の風魔術では熟した実が分からないので無駄が多いらしい。俺は森の王の加護だから美味しいのばっかり集まる。今度、お供え持ってお礼に行こう!

調理をファケレさんに任せて採集かごを持って呼ばれた方へ行く。必要ないのに肩車された。祈りを捧げて恵みを分けてもらうとカゴ一杯のサルイチゴ。じいさんになったら森で暮らそうかな?

「ねぇ、ストゥなんで肩車?」

「太ももが柔らかくて気持ち良いからな。」

昼間っからなに言ってるの!?他のやつに触らせただろとか、え?焼きもち???

「アルクスもパティエンスもそれで肩車したがったんだぞ?」

パティエンスさんは純粋にサルイチゴ採るためだったよ!って言ったら始めはともかく下ろさずに帰って来たのは手放せなくなったからだ、って言われてパティエンスさんを見ると頬染めて目を逸らした。ちょっとショック。

昼なのに討伐終了で宴会になった。こんな所までお酒持って来てるの?
ずいぶん勧められたけど固辞した。まぁ、ストゥが代わりにどんどん飲んでたけど。普通に飲めるようになりたいなぁ。
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